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【R-18】ストーカー気質の梟獣人は、勝手に私との巣を作って待っている。【執着/媚薬/乱交】

  仕事に就く為に親元から離れ田舎の町から単身で王都に越してきた凛の生活は、それなりに安定していた。

  いつか貴族夫人を相手にした洋装店に勤めたいと謂う夢を抱いている凛は、今はその下積みとして針子の仕事をしている。目まぐるしい生活は大変ではあるが金銭には困っていないし何より遣り甲斐があって充実していた。

  田舎にいた時は、やれ結婚はいつだの子供は早い方が良いだのと親戚一同に余計な世話を焼かれたが、今はあの口喧しさから解放されて気分が良い。

  針子仲間が集まる職場に出社した凛は、職場の女達に適当に挨拶をしながら前掛けを身に付け仕事に取り掛かる。

  「悪いんだけど誰か材料の買い出しに行って来てくれないかい?」

  陽も傾き、粗方今日の仕事が終わったところで奥の部屋から凛の雇い主の女が顔を出した。

  仕事の目途が立っている凛が名乗り上げ、雇い主から購入品のリストを手渡される。

  それを持って行きつけの生地屋に向かうその途中でちょっとした事故に遭ってしまう。道の端を歩いている凛に何か柔らかなものが衝突し、凛はその場に尻もちをついてしまった。

  「おっと、ごめんね?」

  凛と衝突したのは若い男だったが、その背には大きな羽を携えており、鳥類の獣人であることが分かる。その羽はかなりのボリュームがあり、茶色や黒などの配色をしている。凛がぶつかったのはその羽のようだ。

  男は道の真ん中で何か考え事に耽っていたらしく、正面から歩いて来た凛とすれ違う瞬間に歩を進めてしまい、その時に大きな羽が凛にぶつかった。

  「いえ、大丈夫です」

  凛が立ち上がろうとすると目の前に大きな手が差し出された為、好意に甘えて立ち上がる。

  「ありがとうございます……、?」

  立ち上がっても掴まれたままの手を不思議に思っていると、男は綺麗な顔をぐっと凛に近づけ言い放つ。

  「俺の羽に触っちゃったから君、死んじゃうかもね」

  薄っぺらい笑みで意味の分からない嫌味を言われた凛は、取り合えず「はぁ……。多分大丈夫ですよ」と返し、男の手からそっと逃れて歩き出す。

  男はキョトンとした様子で凛の姿が見えなくなるまで見送った。それからハッと我に返り頭を抱える。

  「僕は最低だ!!」

  おかしな挙動をする男に人々は怪訝な眼差しを向けながら通り過ぎて行く。

  ある事情から鬱憤が溜まっていた男は名前も知らない女の凛に八つ当たりをしてしまったことを深く悔いた。その罪の意識と己の心根の醜さに落胆し、自責の念に駆られながら自身を叱責する。

  すぐに凛の後を追ったが、地上からも上空からもその姿を捉えることはできずに終わってしまった。

  その夜は自分のしでかしてしまったことを何度も何度も反芻して殆ど眠れなかった。

  しかし、その翌日のこと。偶然にも凛の職場を突き止めてしまう。

  「あのっ!」

  奇跡的に街を歩く凛を見つけた男はその後を追って声を掛けた。凛が振り返るのと同時に職場の扉から従業員の女が顔を出した。すると、女は酷く狼狽した様子で男をこう呼んだ。

  「て、天使様!?天使様だわ!」

  「あ……、いや、僕は天使とかじゃなくて……」

  従業員の女は転げるようにしながら扉の向こうに逃げ込み残された凛は小首を傾げて男を見つめた。

  「……うちに何か?」

  凛に要件と問われた男は、あからさまに動揺しながら答える。

  「えっと……、あ、貴方に謝りたくて。昨日はぶつかってしまったうえに大変失礼なことを申し上げました。申し訳ありません。それと、私は街の方々が言うような天使などではなく――」

  「分かっていますよ」

  凛は敵意がないことを示す小さな笑みを浮かべて続ける。

  「あなたは獣人であって天使でないことぐらい分かっています」

  男の大きな眼が薄い涙の膜を纏ってきらりと輝く。

  この国の宗教概念の一つとして、神の使いである天使は人々を天界へと攫ってしまう死神とされる。まだ召される予定のない者が天使の羽に触れてしまうとその者の魂は強制的に天界に連れて行かれると口伝されている為、鳥の羽を有する獣人は人々にとって畏怖の対象であり、同時に嫌厭されている。

  人間と獣人が共存する世ではあるが、鳥の獣人達にとっては気分の良いものではない。人間から向けられる畏れの視線、時折浴びせられる拒絶からの罵倒は男の心を少しずつ傷つけた。そしてついに昨日のことだ。道端で凛とぶつかってしまったその時に積もりに積もった沈痛が爆ぜてしまった。

  しかし、凛は己に触れて、そして己に嫌味を言われようともケロッとした様子で立ち去った。

  人間が己に恐怖しなかった。良い意味で誰かに相手にされないのははじめてで、それが堪らなく嬉しかった。

  「ぁ……、えっと、す……、好きです」

  「……はい?」

  男はこの瞬間、凛に恋に落ち、口から想いの丈を溢した。

  角鴟(みみずく)の獣人であるセルジオは、国王の側近として王宮に勤めている。

  国王の側近とはまた随分と枢要な地位だと思われがちだが、セルジオからしてみれば大したことではない。

  国王の側近は何もセルジオだけではないし、セルジオの主な仕事は各所への指令伝達や、国にあだなす不穏分子の捜査の統率などであり、個人的には性に合っていると思っている。

  しかし、最近は少し多忙で心身ともに余裕がなかった。凛とはじめて出会った日も仕事中のことで疲労と焦燥からあのような態度をとってしまったことを心から悔いている。

  「凛、好きです。どうか受け取ってください!」

  その日の業務を完遂したセルジオは、凛の退社時間に合せて職場の前で出待ちをした。そして、凛の姿を確認するや否や求愛の証を差し出した。それは斑模様の角鴟の羽根を束にしたもので、花束ならぬ羽根束だ。

  「……またですか。結構です」

  「ど、どうしてですか?」

  凛は表情を少しも崩さずにセルジオを置いて帰路を歩むが、どうしても羽根束を受け取ってもらいたいセルジオは華奢な背中を追い駆ける。

  「待ってください。本気なんです。どうしても駄目ですか?僕の何が駄目なんですか?獣人だから?角鴟だから?羽があるから駄目なんですか?」

  「違います。しつこいですよ」

  「待って待って待って」

  情けない声を出しながら控えめ凛の指先を掴んで引き留めると、凛は足を止めて深い呼吸を一度する。それから振り返ってはっきりと好意は受け取れないと宣言する。

  「あなたが獣人だからとか関係ありません。私は今、誰ともお付き合いをする気がないんです」

  「ぼ、僕が角鴟でも良いんですか!?」

  「話を聞け!」

  自分の都合の良いところだけを抜粋して目を輝かせるセルジオに、凛は堪らず語気を強めた。

  ああでもない、こうでもない。好きだの、やめろだのと言っている間に二人は足並みを揃えて歩き出す。しっかり者に見えて案外抜けている凛は、意図せずにセルジオを自宅まで案内してしまい己の愚鈍さに頭を抱えた。

  それからセルジオのストーカー行為は過激化した。仕事の合間を縫って凛に会いに行き、飽きもせず羽根束を押し付ける。だが、凛はそれを頑なに受け取らない。何故なら、その羽根は凛からすれば体毛にしか見えないのだ。人の毛髪と変わらないものを束にして渡されても困るし正直気色が悪い。

  それに加えて、どうやらその羽根束は使い回しにされているのではなく、常に新しいものに変わっており、毎度自分の羽根を毟っているのかと思うと気持ち悪いよりかは恐怖が勝つ。だから凛はタイミングを見てはっきりと言ってやった。「それ、気持ち悪いから」と。

  「これは梟がやる求愛ですよ?知らないんですか?」

  嘘でしょう?と目を丸くするセルジオに凛はイラッとして額に青筋を立てた。

  梟の求愛なんて学ぶ機会がなかったから当然知らないし、そもそもこれまで幾度となく好意は受け取らないと言っているのにいい加減しつこ過ぎる。

  天使と言われても仕方がないほどに愛らしい童顔をしているセルジオは、自身の美貌を盾に凛に擦り寄るが、凛は簡単に距離を取ってしまう。

  色恋にまるで興味のない相手にはその美貌も色気も通用せず、凛はさっさと家の中へと入ってしまった。

  梟の雄は好きな雌に対して自分の羽根を贈る習性があり、雌が羽根を受け取れば番として成立する。

  獣人とは謂え、梟の種としての習性は抑えられるものではないのに、気持ちが悪いと言われてかなりショックではあった。しかし、セルジオはこれしきのことで挫ける男ではない。羽根束が駄目なら他にもやりようはあるのだ。

  その翌日のこと。出社するのに家から出て来た凛をセルジオは自信に満ちた表情で出迎えた。

  「……あなたって余程暇なのね」

  「暇じゃありません。ただ仕事よりも凛との時間の方が大切なだけです」

  それを暇だと謂うことを指摘してやろうかと思ったが、なんだかこの鬱陶しさにも慣れてきてしまった凛は「それで?」とセルジオに会話を促し歩き出す。

  セルジオは嬉しそうに凛の隣にピタリと張り付きある物を手渡した。

  「凛に昼食を作ってきました」

  「……なんで?」

  「好きだからです。凛のことが」

  セルジオが凛に手渡しのは、籠の弁当箱だった。

  この国で昼食を持参するのは別に珍しいことではないが、料理は女の仕事であるとされている為、男が料理をすると怪訝な顔をする者も多いうえに、料理をする男は女々しいと揶揄する者までいる。

  凛もそのような態度する人間だとは思わなかったのだろうか。そう謂う意味での問いだった。そもそも好きだから料理を振る舞うと謂う考えもよく分からないのだが、これもきっと梟の獣人故の習性なのだろう。

  「私にまた気持ち悪がられるとか思わないわけ?」

  「思いません。だって凛は僕を天使呼びませんから」

  多幸感に溢れた満開の笑みに凛は言葉を失う。

  セルジオにしてやれたことはたったそれだけで、そこまで好かれるようなことではないはずだ。たったあれだけのことで人を好きになってしまうほど、セルジオの人生はどれだけ荒んでいたのか考えさせられ同情心を抱く。

  しかし、だからと謂って絆されるわけにはいかない。自分は今、夢を叶えるのに忙しくて男にかまけている暇はない。

  「……自信作なの?」

  「はい!愛情いっぱいです」

  それはどうでもいいわ。とじとりと睨むが、セルジオは気にした様子はなく、凛が弁当箱を受け取るのを待った。

  まぁ、折角だし、今日ぐらいいいか。と凛は弁当箱をそっと受け取った。すると、セルジオは両手で口元を押えてまるで乙女のように涙ぐみ歓喜する。

  これはまずったかもしれないと凛は嫌な予感を抱くが、もう引き返せない。

  「凛が……、凛が僕の手作りしたものをっ」

  「あぁ、もう鬱陶しい!金輪際何も貰わないから」

  「えぇ!?そ、そんなこと言わないで!また明日も作って来ますから」

  「いらないってば」

  歩幅を大きくしてセルジオを置いて行こうとする凛だが、案外背が高くて脚の長いセルジオは少しも遅れを取らなかった。

  それがまた凛を苛立たせてしまうが、セルジオは気にした様子はなくだらしない笑みを浮かべたまま何度も凛の名前を呼んだ。当然、「用もないのに呼ぶな」と怒られた。

  その日の昼食に恐る恐るセルジオから受け取った弁当を口にすると、凛が作る料理よりもずっと手が込んでいるうえに美味く、あっと言う間に平らげてしまった。

  それから幾日も経たないうちにセルジオはまた凛の許に訪れる。

  「おはようございます、凛。今日はお休みでしょう?良かったら僕と一緒にお出かけしませんか?凛にどうしても見せたいものがあるんです」

  「……あなた、仕事は?」

  「凛がお休みの日に仕事なんてするわけないじゃないですか」

  凛の自宅を訪れたセルジオは、たった今起床したばかりのボロボロの凛を見ても「今朝も可愛いですね」なんて言って恍惚と笑む。

  低血圧でぼうっとする中、凛は無意識に「分かった」と言って一度家の中に引っ込み身支度をする。

  いつもと変わらない身形で再びセルジオと対面すると、何故かセルジオは緊張した面持ちで頬を赤らめて凛を再び賞賛する。

  「とっても可愛いです」

  「何処が?」

  これは凛にとって純粋な疑問であった。今の凛はいつもと変わらない装いにも関わらず、何故今さら褒められなければならないのか。

  「当然、凛は毎日に可愛いです。でも今日は、僕の為に支度をしてくれたと思うと嬉しくて、余計に可愛いと思ってしまうんです」

  きゃ~!と叫び出しそうな様子で色づいた頬を両手で押さえ隠すセルジオに、凛は珍しく多少照れくさい気持ちにさせられる。

  だが、このストーカーを相手に照れてしまう自分が許せない為、絶対に顔には出さないように真顔を貫いた。

  「行きましょう、凛」

  セルジオは凛の許可なくその手を取って目的の場所へと誘う。凛はその手を振り払うことができずに導かれるが、目的地に到着して早々にげんなりすることになった。

  「見てください凛!僕とあなたの愛の巣ですよ!上手にできていると思いませんか?」

  セルジオに連れられてきた場所は王都の南に位置する森だ。そこは王族の私有地のはずだが、セルジオは我が物顔で整備された森を突き進み、喜々として巨大な鳥の巣を二人の愛の巣と言って凛に紹介した。

  それも一つや二つではない。巨木の上空にある枝に作られたもの。枝と巨葉で組まれた小屋のようなもの。木の根元を掘って巣穴にしたものなど、様々な素材、様々な大きさ、様々なデザインのものがあちらこちらに点在している。

  「凛のことを想って作っているうちに気がついたら沢山出来上がってしまいました。凛はどの巣がお好きですか?いつかその巣で――」

  良い予感がしなかった凛は、セルジオの口を掌で覆い隠しながらじとりと睨む。

  「それ以上、何も言わないで」

  セルジオは凛に睨まれていることなど忘れて、凛から触れられたことに歓喜し目に涙を浮かべた。

  「夜会?」

  セルジオと凛の関係がいまだ一方通行のままのある日のこと。職場の同僚が凛に夜会参加の誘いを掛けた。

  夜会と聞くと偉い身分の者が参加する催しのメッセージだった為、凛は眉間に皺を寄せた。

  詳細を聞くとなんでも身分と顔を明かさない無礼講の夜会をとある貴族が企画しているらしく、同僚はそれに参加したいらしい。だが、一人での参加は少し勇気がいるから一緒に来てほしいとのことだ。

  仕事のことしか頭にない凛にとってそう謂った催しは極めて興味がないが、滅多にあることではないだろうし、人生経験の一環として見物するぐらいはいいかもしれないと思い参加することにした。

  夜会当日。女はコルセットのないワンピース、男はスラックスにサスペンダーと謂うラフな装いが指定されている。

  会場の入り口で目元を隠す仮面を係りの者から受け取り、主催者の屋敷に通される。はじめて入った貴族の屋敷の豪華な造りに凛は唖然とし、同僚はうっとりと感嘆した様子だ。

  繊細なデザインのシャンデリアが吊るされたホールでは、皆が立食しながら名前も知らない相手と談笑する。

  折角来たのだから美味いものぐらいは食って帰らなければと、凛が食事を楽しんでいる間に隣にいたはずの同僚がいなくなっていた。まぁ、子供でもあるまいし一人で楽しんでいるのだろう。

  凛は二枚目のローストビーフを口に入れようとした。

  「お嬢さん、宜しければご一緒しても?」

  夜会参加者の男が凛の横に立った。

  初対面の相手と何を話したら良いか分からないが、そもそもそう謂う場だ。凛はローストビーフを諦めて皿をテーブルに置いて「えぇ」と返事をする。

  まずはお互いの装いを褒め合い、どの料理が美味かったか、どの酒が口にあったかなどを話した。当たり障りのない世間話でこれぐらいなら気が楽で良いと思っていると、男から少し面倒な質問をされる。

  「今日の夜会に参加した目的を聞いても?良い男を探しに来たのかい?」

  そんなわけないだろう。と突っぱねたい気持ちをぐっと堪える。恐らく、大半の参加者はそう謂う相手を探しに来ているのだろう。あまり角の立った言動をすると悪目立ちするかもしれない為、凛は精一杯の笑みで答える。

  「いえ、友達の付き添いで来ただけなんです」

  「そうなの?僕と同じだ。こんな偶然あるんだね」

  そんなわけあるか。適当言いやがって。

  苦く笑う凛に男は赤ワインを差し出し自分のグラスを傾ける。凛は仕方がないかと割り切り同じようにグラスを傾けてからワインを少しだけ口にする。

  それからも男に捕まったままの凛はふと自分が体調不良を起こしていることに気がついた。身体が熱くてぼうっとして男の話が頭に入ってこない。

  「……少し、酔ってしまったみたいだね。風に当たろう。おいで」

  男に腰と手を引かれてテラスへと導かれる。テラスの階段を降りて薔薇園に入り、広い薔薇園を抜けた先に広がる光景に凛は漸く我に返った。

  そこでは、大勢の男女があられもない姿でもつれ合う、乱交場だった。

  「みんな、何っ……、して?」

  「まぁ、これも人生経験の一環さ」

  女等の嬌声、男等の獣のような息使いに凛は気圧され一歩後退するが、男は凛の腰を抱いたまま前に進む。

  貞操に危機が迫っていることを悟り逃げ出そうと身体を翻すが、背後から抱きつかれて身動きを封じられる。

  いよいよ身体に力入らず、もうどうしようもないのかと諦め掛けたその時、随分と耳に馴染んだ声音が凛の鼓膜を揺らした。

  「不粋かとは存じますが、彼女を譲って頂けませんか?」

  凛の正面に立った男――セルジオは、凛の二の腕を強く掴み、男に向かってニコリと微笑み掛けている。

  男は天使との遭遇に激しく狼狽し、凛を解放して何処かへと走り去った。

  今度はセルジオの腕の中に囚われた凛は、苦しいほどに抱き締められる。

  「なん……で、ここ……に……?」

  「それはこちらの質問ですね」

  セルジオは乱交が行われている場から離れるわけでもなく、木の幹の傍に凛を立たせて背後から華奢な身体を抱く。

  「ヒッ……、ぃ……、いやっ、な、なに、してっ」

  セルジオの男らしい掌が凛の腹や腰、乳房を滑るように撫で回す。

  「あなたは酷い人だ。誰とも恋仲になるつもりはないからと僕を袖にしておきながら他の男を漁りにこんな所に来るなんて」

  「ちがっ、違う!友達に誘われて……、断れなくて……。こんなことするような集まりだなんて知らなかったのっ」

  「言い訳は結構ですよ。それが嘘でも誠でも、今此処であなたには僕のものになって頂きますので」

  セルジオは、いつもは出さない低い声音を凛の鼓膜に吹き込みワンピースの裾をたくし上げていく。

  「やっ……、駄目、駄目駄目っ……」

  ワンピースの裾から両腕を差し込み、肌着もワンピースのごと形の良い乳房の上に乗せる。

  乳房を守る下着を引き下げ、愛らしい乳頭が外気に晒されるとツンッと起立した。

  「なんて、可愛らしい身体なんでしょう」

  「アッ――、……っ、っ」

  セルジオの掌が双峰を優しくもみくちゃにし、凛は咄嗟に自分の口を両手で塞ぐ。

  悪寒にも似た快楽が全身を駆け巡り、酷い罪悪感を抱いて目にいっぱいの涙を溜める。

  セルジオは双峰をとことん堪能しながら至福の嘆息を吐き出し、細い首筋に顔を埋めて凛のにおいを肺一杯に吸い込む。

  「凛、あなたは聡明な女性ではありますが、時折哀れになるほど抜けているところがありますね。僕を自宅まで案内してしまった時もそうですし、以前僕と一緒に森に行った時もそうです。そして今日もまんまと他の男に媚薬を盛られてこの有様だなんて……。少し反省なさってくださいね」

  「っ?っ??っ???」

  この男は本当に凛の知っているセルジオなのだろうか?凛の知っているセルジオは、いつも馬鹿みたいに犬のように尻尾を振って凛に媚びる男だ。この男が自分に対してこのような見下した眼差しを向けたことなど初対面の時以降からは一度もない。

  セルジオの豹変ぷりに驚いて話について行けない凛は、自分が媚薬を盛られている内容を聞き漏らす。

  「ひぅっ――!」

  「これ好き?いいですよ、気持ち良くなって」

  両の乳頭を三本の指で優しく扱かれると膝から力が抜け落ちてしまい、抵抗らしい抵抗はもうできそうにない。

  必死に嬌声を押し殺しながら身体を預ければ、背後のセルジオは恍惚とした様子で眦を下げる。

  「こっちはどうなっているんでしょうね」

  「――っ、や!やめっ」

  ショーツの中に長い指が滑り込み股座の仕上がりを確認する。そこは既にしとどに濡れそぼり、ショーツのクロッチに大きな染みを作っていた。

  セルジオはまるで凛を攻め立てるように「あーぁ」と声を漏らし、凛は羞恥のあまりついに涙をほろほろと溢しはじめる。

  「ぃやっ!あっ?あっ、や、やだっ、そ、それいやっ!」

  「クリトリス、自分で触ったことないのですか?」

  「っ、っ、っ、な、い……っ、ないっ」

  蜜液を纏った指先で陰核にそっと触れてやるだけで凛はカタカタと震えながら何度も頷いて応える。その反応にセルジオは心底嬉しそうな笑みを浮かべる。そのまま優しく陰核を指先で擦ってやれば凛の細い首に撓る。

  「~~~~~っ、アッ、アッ、や、やだっ、それ、びくび、くって、なっちゃ???」

  「うん、そうですね。気持ち良いですね」

  その反応を見ながら凛がより一層喜ぶ力加減を探す。そうしていると、凛の身体が急速に汗ばみ緊張していき、呼吸が止まった瞬間があった。しかし、すぐに身体は弛緩し凛はなんとも悩まし気な顔で奥歯を噛み締める。

  「凛、もしかして今イッちゃった?イくのもはじめて?」

  「?」

  清い身である凛は当然果て方もよくわからない。今の一瞬、何かが上り詰めるような感覚を覚えが、次の瞬間にその感覚はふわりと何処かへ行ってしまった。

  なんだか不完全燃焼で凛は無意識にちらりセルジオを見上げる。それがまたセルジオを喜ばせるとも知らずに……。

  「大丈夫ですよ。これからいっぱい練習しましょうね」

  「ひぅ!?――う、ぅ、あっ、アッ、も、それ、やめてぇっ」

  陰核への愛撫はさらに過激になる。二本の指の平を使って上下に擦り、円を描くように圧し潰し、挟み込んで扱いてやる。強烈な快楽に凛は嬌声を我慢するのも忘れて辛い快楽から逃れようと身体を捻るがどうすることもできない。

  その間にセルジオは自身の前を寛げ、ぐっしょりと濡れた陰裂に竿を擦り付ける。

  「へっ??あっ、それ??」

  「見てください、凛。あそこにいる彼女、同時に三人の男を相手にしてますよ。凄い精力ですね」

  セルジオに促されて見た方向には、女一人が背後から男に腰を振られながら二人の男の男根をしゃぶっている。その女は凛の同僚であった。

  知人の痴態を見てしまったことに対する動揺と、男三人に手籠めにされているのではないかと謂う心配が思考を占領し、同僚を助けに行こうとする。

  しかし、セルジオがしっかりと凛を抱き込んでそれを許さない。

  「ぁ、あ、あっ、や、まっ、えっ?あっ??」

  「よそ見しないで……。ねぇ、男に腰を振られるってどんな気持ちですか?」

  互いの性器を擦り付ける行為の淫靡さに戸惑う凛の耳介にべったりと唇を寄せて淫らな問い掛けをする。

  ふと凛の視線があちらの団体の一人の男とかち合い、凛はパッと俯く。

  それを察したセルジオは再び淫らな言葉で凛を追い詰める。

  「あの男、凛のことをいやらしい目で見てますね。見せつけてやりましょうか?僕等がどうやって愛し合ってるいのか」

  「いや!だめっ、だめっ!見せないでっ……、隠し、て?隠してぇっ」

  ぐずぐずに泣きじゃくって懇願する凛の姿にセルジオは、ぶるりと身震いを起こす。危うく射精してしまうところだった為、若干凛を恨めしく思いながらも愛らしいその要望を聞いてやる。

  「これで大丈夫ですね」

  大きな角鴟の羽で凛を隠して腰を振り続ける。

  区切られた空間に多少安心した凛は、肩から力を抜いてセルジオのされるがままだったが、蜜口をぷつりと割られる感覚に我に返った。

  「それはだめっ、いれちゃだめっ」

  「どうしてです?凛の身体はこんなに交尾したがってるのに可哀相ですよ?」

  亀頭で蜜口を僅かに割るがすぐに引き抜かれてまた陰裂を竿で扱かれる。また適当なところで蜜口を割られるが、その奥を犯そうとしないのがなんだかもどかしい。

  「心配しないで。凛が嫌だと思うことはしません。だから選んでください」

  セルジオは羽で凛を優しく抱き込み、再び蜜口に亀頭を強く押し当てる。

  「凛が良いと言うまでいつまでも待って差し上げます。だから。此処で僕と交尾するか、僕等の巣に帰って交尾するか……。どちらか選んでください」

  「っ???」

  凛が嫌なことはしない。と言いながらもセックスをするのは決定事項なのは些かおかしい。だが、媚薬を盛られている今の凛では正常な判断などできるわけもなく、少しでも羞恥のない方を選んでしまう。

  「~~っ、ここ、じゃ……、ぃゃ……」

  「分かりました」

  セルジオは凛が回答するや否や軽い身体を横抱きにして地上から飛び立った。その瞬間、どういうわけか景色がガラリと変わり、凛は優しくセルジオが作った巣に転がされる。

  そこは人間の凛が逃げ出すことができない巨木の上空に作られた巣であり、凛の視界から見えるものは満点の星空と興奮して汗ばむ雄の顔だけだ。

  「懸命な判断でしたね。あの場ではさすがに中を解して差し上げる余裕がありませんでしたから」

  セルジオはそう言って凛が着ている衣類を手早く剥ぎ取り全裸にさせ、片脚を自身の肩に掛けて股座を露出させる。それを慌てて隠そうと手を伸ばす凛の手首を掴んで阻止し、空いている手で股座をたんっと可愛がってやる。

  「アッ……、まっ、アッ!い、れちゃっ――、ぁ、あっ、だめ、だめ、だめぇっ」

  中指を蜜壺に挿し込むセルジオは、熱い吐息を溢してそこの感触を味わう。

  優しく抜き挿しを繰り返し、腹の裏を擦って此処が性感帯であることを教えてやる。

  本来ならゆっくり前戯を楽しみたいところではあるが、お察しの通りセルジオは決して我慢強い方ではない。

  早々に自らの衣服も脱ぎ捨て凛に覆い被さり、許可なく柔らかな唇にかぶり付く。

  「キ……、きす、しちゃったの?」

  すぐに離れていってしまったセルジオに、凛は乙女らしい顔で自分の唇を指先で押さえる。

  ひりついた劣情を抱いていたはずのセルジオは、そんな凛が愛おしくて可愛いくて堪らずへにゃりと笑う。

  「はい、しちゃいました」

  「――っ~~~~~、~~~~~~」

  平和ボケした笑みを見せたからと謂って状況が変わるわけではなく、セルジオは初物の蜜壺に自身の男根を真っ直ぐ挿入した。

  いきなり最奥まで入れるのはさすがに可哀想かと思い、半分ほど入れたところで一度腰を止める。

  「っ……、好きです凛。番になりましょうね」

  「――」

  セルジオなりの思いやりで一度は止めたはずの腰は、思いやりの鎖を一瞬にして振り切り深く進む。

  互いの恥骨がぶつかり、セルジオはさっそく覚える射精感をぐっと堪え、凛は強い圧迫感とはじめて感じる快楽と満たされるような多幸感に狼狽する。

  セルジオは肉襞がぴったりと男根に吸い付くのを感じてからゆったりと腰を前後させる。

  「アッ――、ァ、~~~ッ……、ッ、ッ、やぁぁっ」

  「ゆっくりは嫌?」

  互いの両手を絡め、愛らしい唇に噛付くような口づけをしながら少しずつ抽送を早めていく。

  「ぅ、ぅ、ぅ、ぅ、ぅあッ~~~~~、は、やぃっ、はやい、のま、て??」

  「ごめんなさい、凛。好きなんです、どうしようもなく、あなたのことが」

  答えになっていない返答だったが、凛は不覚にも女心を高鳴らせてしまい、無意識に男根をぎゅっと締め上げた。

  「っ……、締めてくれるんですか?嬉しいなぁ」

  「――!~~~~~~~っ、ぅあっ、あ、あ、あ、あ、まって、~~~っ、まってぇっ、あ、あ、うっ――、んっ、んっ、んっ、んっ、~~~~~、やぁぁっ」

  絡めていた指を離して華奢な身体を抱き込んで腰を振る。凛もまた無意識にセルジオの背中に腕を回した。

  「あっ――、ぅ、ぅ~っ、んっんっ、――アッ!アッ?アッアッアッアッ、やらっ!そこやらぁ!」

  「はじめてなのに此処が気持ち良いんですか?案外やらしいんですね」

  「っ~~~~~~」

  セルジオは過去に見せたことのない意地の悪い笑みで凛を見下ろすが、それが堪らなく扇情的で、またしても凛はときめきを抱いて蜜壺を締める。

  はじめての快楽に翻弄される哀れで艶めかしい凛の姿に、セルジオは瞬きを忘れて記憶に焼き付ける。これまでよく動いていた口を閉じて凛の性感帯を探りながら自身も射精に向かう。

  「アッ――、アッ、アッ、なん、かっ……、やらぁっ、やぁぁっ」

  はっきりと見えてきた絶頂に怯える凛の後頭部に掌を沿えたセルジオは、凛の耳元に顔を寄せてなんの根拠もない「大丈夫」を繰り返し言い聞かせた。

  「アッアッアッアッアッ!らめ、や、や、ァ――ッ、アッ、う、ぅぁ、アッアッアッ、やぁ、やぁっ、やぁぁ――、――ッ~~~~~~~~~~??~~~~~~~~~~??~~~~~~~~~~???」

  「……っ」

  絶頂を迎えた凛は食いしばるように男根を締め上げ、セルジオは予定していたタイミングよりも早い段階で凛の中で射精を迎えた。

  惚れた女に種付けをしていると思うと射精による快楽とはまた別に愉悦に身体がぶるりと震える。

  凛もまた絶頂の余韻と白濁を流し込まれる快楽に茫然とし、満点の星空を視界に映す。

  「凛……、凛?」

  落ち着きを取り戻したセルジオが凛の名を呼ぶ。しかし、凛はその呼びかけ答える前に深い眠りに落ちていった。

  次に目を覚ましたのはセルジオの羽の中だ。

  「うわぁっ!?」

  「おはようございます、凛」

  いまだ上空、樹の上の巣の中でお互い一糸まとわぬ姿であることに凛はカッと赤面して狼狽する。思わずセルジオの羽を引っ掴んで自分の身体を隠すが、やはり凛は少し抜けている。その素肌を隠す最上級品の羽毛はセルジオの身体の一部であることをすっかり忘れているのだ。セルジオからしてみれば、腕の中に凛を抱いている感覚となんら変わらない為、でれでれとだらしない笑みを溢す。

  「昨夜は少し手荒ない真似をしてしまい申し訳ありません。でも凛が悪いんですよ?僕と謂うものがありながら他の男を物色するなんて」

  「だ、だから違うってば!」

  昨夜のことを鮮明に覚えていた凛は、自分の軽率な判断と行動を呪った。しかし、その反面、相手がセルジオで良かったと安堵していた。

  セルジオは熟れた顔をする凛から羽を奪い、代わりに華奢な身体を腕の中に捉えて両羽で包み隠す。

  四方八方全てがセルジオに塞がれる感覚は心地良く、それを悟られないように藻掻き逃げようとすると、股座にセルジオの太腿が押し当てられた。

  「やぁっ!?」

  昨夜の名残が残るそこはささやかな刺激に驚き、溜め込んでいた白濁を溢してセルジオの脚を汚す。

  「でもこれであなたは僕と番ですから、もう何も心配はいりませんね。大丈夫、あなたのことは僕が命に掛けて幸せにしますから」

  凛は釈然としない。それも仕方がない。この男はストーカーで、強引で、話が通じない。そんな男に、凛は絆されつつあるのだから。

  だから苦し紛れに言ってやったのだ。

  「い、一回、エッチしたからって恋人ぶらな――」

  だが、すぐに口を紡ぐ。セルジオの表情が過去にないほど冷たい怒りを孕み、凛をぎらりと睨むのだ。

  走馬灯のようにセルジオの笑顔を思い出し、そのギャップに震え上がる。

  「よ……、よろしく?」

  「はいっ!愛してます。一生大切にしますから!」

  凛からの微妙な了承にセルジオは満面の笑みで頷いた。

  あとがき

  いつも大変お世話になっております。銀鹿です。

  久しぶりに甘ったるいものを書きたかったのですが、ちょっと個人的には甘すぎました(笑) 癖に刺さる方がお一人でもいらっしゃれば幸いです。

  少し宣伝なのですが、12月から当FANBOXで「ペットから番に昇格したら」(当pixivで公開中)を題材としたTL小説の連載を開始致します。ご興味ある方がいらっしゃいましたら、お付き合いくださると嬉しいです。

  また、今後FANBOXの運用方法として、期間限定で全体公開する作品もちらほら出す予定なので、是非フォローだけでもしてくださると励みになります。

  それでは、最後までお付き合いください、ありがとうございました!

  次回のお話でお会い致しましょう。

  銀鹿

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