邪神の調理

  その男は目を覚ましたとき、すでにすべてを失っていた。

  視界の上には、高い天井。冷たい石の匂いが鼻を刺す。手足は縛られ、仰向けに拘束されたまま台座に寝かされている。まるで、料理を盛るための皿のような感触だった。

  「……っ、ここは……?」

  彼――名をロシュといった。狼の獣人で、狩猟を生業とする山の民だった。仲間を守るために戦ったが、突如現れた“何か”によって世界が一変したのを最後に、意識を失った。

  そして今、自分の身体が完全に他者の管理下にあることに、ようやく気付いた。

  冷たい足音が部屋に響く。

  暗がりの中から現れたのは、彼の知るどんな存在とも違う異形だった。人のようでありながら、人ではない。獣でも、魔物でもない。神話から抜け出した何か――アングリマス。

  黒曜石のような皮膚、ゾウの頭、鎧のような体躯。そして、最も異様だったのはその腹部から生える“もの”。巨大な、一本の陰茎だった。人間の常識では考えられないほど太く、長く、まるでそれ自体が独立した生き物のように蠢いている。先端からは銀色の液体が滴り、地面にぽたぽたと音を立てて落ちていた。

  その男が言葉を失っていると、アングリマスが低く告げる。

  「おまえの肉体、感情、すべて味わわせてもらおう。前からじっくり壊してやる」

  意味がわからなかった。だが、直感的に察するものがある。こいつは喰らう。単に殺すのではない、調理して、壊して、味わう。そのために、自分はこの場に拘束されているのだと。

  「ま、待ってくれ……俺は、ただの狩人だ……! 戦士じゃない、食われるような値打ちは……っ!」

  「それが良い。恐怖が深く染みている肉のほうが、味が濃い」

  アングリマスはロシュの両脚の間に立つと、前方陰茎を持ち上げ、その巨塊の先端を彼の肛門に押し当てた。冷たく粘つく感触が、皮膚を通してじわじわと伝わってくる。

  「や……やめろっ!! 本当にやめろ……っ!」

  その悲鳴と同時に、ずぶり、と音を立ててそれは挿入された。否応なしに、身体の奥へと押し込まれていく。肛門の肉が裂けるような感覚が走り、ロシュの身体は全身をこわばらせる。

  「がっ……あ……ぁあああああ!!」

  思わず声が裏返った。奥にある器官――前立腺がこすられると、今まで経験したことのない快感のような、だがそれ以上に苦痛に近い衝撃が走る。思考が真っ白になり、同時に彼の陰茎から銀の飛沫がピュッと噴き上がった。

  「まさか……いまのが、イった……? 違う、違う、俺は……っ!」

  だが違わなかった。身体は、完全にアングリマスの調理に反応していた。下半身が上下にゆっくり揺さぶられ、そのたびに内部の敏感な一点が叩かれ、身体が勝手にビクビクと跳ねる。射精のような感覚が、何度も、何度も繰り返される。

  「気絶できぬように、おまえの意識には呪いをかけてある。何度絶頂しても、眠れぬ。苦しめ」

  何が起きているかを考える余裕すらなかった。自分の身体が自分のものではない。突かれるたびに噴き上がるガマン汁、自分の絶叫、視界が揺れる。羞恥と快感が混ざり、脳が焼かれていくようだった。

  そのうち、アングリマスの動きが止まる。

  「……調味液を注ぐ」

  その言葉の意味も分からぬまま、ロシュの身体が再び跳ねた。陰茎の内部から、熱いものが流れ出し、腸内に注がれてくる。重く粘るそれは、ただの液体ではなかった。

  「……あ、熱……ッ、くる、なにこれ、なにが……!」

  一度目の注入で腹が膨れる。二度目で喉元まで逆流する。三度目には――

  「ごぼっ、げぼ……ッおあああああ!!」

  口から銀白色の液体が吹き出す。食道を逆流し、胃の中から、直腸を通して押し込まれた“神の液”が口を割って世界に飛び出す。意識は朦朧としながらも、ロシュは自分の身体が「満たされている」のを理解してしまう。

  「もっと、もっと入るだろう。まだ“完成”には遠い」

  アングリマスの陰茎がうねり、再び液を注ぎ込む。四度目、五度目、六度目――そのたびに口から逆流し、鼻からこぼれ、顔がどろどろに塗れていく。呼吸が苦しく、だが死ねない。

  そして、最後。

  「七度目は特別製だ。五倍の量をくれてやる」

  瞬間、何かが破裂するような圧力が体内に走り、ロシュの身体は跳ねた。前も後ろも銀の液でびしょ濡れになり、目を見開いたまま、口から滝のように噴き上がる神の液を止められなかった。

  「あ゛……っぁ、あ、あ……ぁあああ……」

  泣きながら、痙攣しながら、すべてを放出しながら、ロシュはようやく“完成”された。

  アングリマスは満足げに陰茎を引き抜くと、ロシュの尻穴から銀の液がどろどろと流れ落ちた。

  「……良い肉だ。壊しがいがあった。さて――今度は、後ろから喰ってやろうか」

  暗がりから、新たな影が動き出す。蛇のように、太く長く伸びていく第二の陰茎。ゆっくりと、逃げ場のない“調理済みの肉”に向かって迫っていく。

  ロシュは、もう声を出すこともできなかった。ただ涙を流しながら、それを迎えるしかなかった――。

  宴は、まだ終わらない。