『牛窪さん、いらっしゃい。今日は早いですね』
できるだけ平静を装いながら。
小上がりに面した和室で休んでいた僕は、声をかけた。
声が少しだけ上ずったのを自覚してしまう。
「おう。さっきまで畑でスイカの出荷手伝っててな」
そう言いながら、牛窪さんは手の甲で額の汗を拭った。
少し渇きかけた汗。
その肌には土埃が薄く貼り付き――
まだかすかに陽の熱が滲んでいて。
そんな半裸の巨躯を晒す畑帰りの中年雄牛は。
――気楽そうな足取りで。
ゆっくりと、でも確実に子打ち処の廊下を進もうとする。
通りすがりに残された空気には―――……
汗と獣の匂い、そして。
"これから交尾をする"という圧が漂っていて。
何より短パンの前部分がもう。
―――はっきりと盛り上がっていた。
「今朝からずっとガチガチで参ったわ」
軽くぼやくような口調。
けれど、その膨らみはぼやきとは無縁の存在感で。
下着の中で――いや、むしろその中身はノーパンなんだろう。
既に暴れているそれが短パンを生地を押し上げ。
自己主張するようにカタチを浮かせ、先端部分が染みている。
『……っ、……♡』
その風格に、空気に、視界から入る情報に。
――僕のナカがじゅくじゅくと濡れてしまうのを感じ。
そのむず痒い感覚に正座する膝を擦り合わせるほど。
それでも。
そんな僕に構わず牛窪さんは。
何のためらいもなく――
小上がりを上り、奥の部屋へと続く廊下へと消えていく。
―――のっし、のっしと―――……
この島に来て、もう三ヶ月。
最初は目を、耳を疑った。
"子作りの処理"なんて言葉を――
平然と口にするなんて。
当たり前のようにナマで挿れて、奥に出して。
それを日常の営みとして受け入れさせられるなんて―――
今まで暮らしてきた感覚には無かったから。
でも。
今では、こうして受け入れてしまっている。
いや、受け入れることが"普通"なんだと思うように、
自分のナカを馴染ませてしまっている。
けれど。けれど、どこか、心の奥底――………
ごく小さな部分だけが、いまだに引っかかっている。
"ほんとうにこれで、いいの?"
そんな問いをしてしまう自分を自分自身の奥に押し込めている。
この島にいる以上、これが当然、なんだ。
牛窪さんの大きな背中を、
どこか呆けたように見つめて見送った後。
僕もようやく立ち上がり、歩き出す。
体はもう慣れているはずなのに、
なぜか心のどこかが落ち着かない。
廊下を進んだ先の、引き戸で仕切られただけの簡素な一室。
外の光がほとんど入らない、薄暗い空間。
古びた六畳間には――
陽に干されたばかりの布団をひと組、敷いただけで。
今朝沸かしてもうぬるま湯になった湯桶がぽつんとある。
この布団は横になるためのものじゃない。
受けるためのもの。
ここでは、そう決まりきっている。
その布団の前で牛窪さんは座るでもなく、仁王立ちで待っていた。
脚はやや開き気味に立ち、短パンの前は、明らかに盛り上がったまま。
まるで挿れることしか考えていない雄の姿勢だ。
その巨体が僕のことをじっと見下ろし喋ることも急かすこともない。
けれど、待っている。
僕が、その布団に横になるのを。
交尾される体勢をとるのを。
「……ユウ」
低い、響く声。
「見てみ。今朝からずっとこうや。仕事にならんて」
『………っ♡』
喉が、鳴った。
慣れたはずなのに、見慣れたはずなのに、
やっぱりこの島のアルファは――デカすぎる。
「もう抜かんと、熱で気ぃおかしなるわ」
牛窪さんの額には、じっとりと汗が滲んでる。
筋肉の隙間から流れ落ちるそれらが、胸板や腹筋を伝って――
短パンの中へと流れ込んでいく。
「……ほな、ヤんで」
それを合図に牛窪さんの声が落ちた。
静かで、くぐもっていて、
それでいて、何より、当たり前すぎる音色だ。
命令でもなければ、誘いでもない。
まるで「昼飯にするで」とでも言うかのような、日常の延長線。
そこに、ためらいも、背徳も、配慮も――何もなかった。
でも僕には、その一言がじゅくじゅくと刺さってくる。
この島に根付いた常識、子打ち処。
そんな"日常"の場に、僕はいる。
それが僕の仕事であり、役割。
だから、僕は。
引かれるようにその巨躯の前で膝をつき、
畳の上を膝でにじるようにして近づいた。
「ふぅ、あっちいな」
そうごちりつつも牛窪さんが。
自ら自分の短パンの、ウエスト。
ゴムの部分に両手をかけると―――……
そのままをズリっと下ろす。その瞬間。
……―――ぶるぅん"っ♡
―――――
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