ゴォォォォ…
暗黒の宇宙を切り裂くように光る、一筋の光があった。宇宙をまたにかける『エイブス』社所属の星間輸送船『スレイプニル3号機』。
「今日の仕事も、無事終了!だね!カケル君!」
茶髪の女性が、同じく『AIBS』と胸にロゴの入った制服を着ている黒髪の男性に対し、笑顔で話しかける。
「そうだな。無事に終わったよ。そっちは何もなかった?エミ。」
カケルは、エミのほうへ振り返りながら返事をする。
この二人は『スレイプニル3号機』の乗員である。
今、彼らは『スレイプニル3号機』内にある居住スペースで寛いでいた。ちなみに相部屋である。
「うん、こっちは何もなかったよ!あ、でも……。」
「ん?」
女性は男性のほうへと駆け寄り、そして両手を広げて言った。
「ぎゅってしてもいい!?」
「えぇっ!?いやちょっと待った!ここ居住区だよ!?誰が来るかもわからないし……それにもうすぐ夕食の時間だし……。」
「いいじゃん別にぃー!」
そう言いながらエミはカケルの背中に手を回し、抱きつくような体勢になる。
「ちょっ……だからダメだってばぁ……!ほら、みんな見てるし……。」
そう言われて周りを見ると、他の乗員達がニヤニヤしながらこちらを見つめていた。
「おーおー!お熱いこった!」
黒人のガッシリとした体型の男性が茶化してくる。
「茶化さないでくださいよ、ボブ先輩。ほら、エミも離れて。」
「……むぅー。」
不服そうな声を出しながらも、エミはカケルから離れる。
「……なんか、すみませんね。彼女が。」
「いやいや、全然いいってことよ!それより、もうそろそろ飯だろ?早く行かねえとなくなっちまうぞ!」
「ああ、そうですね。行こうか、エミ。」
「はーい。」
そうして二人は食堂へと向かい、食事をとったのだった。
――――――
その頃、別の部屋の一室では、4人の男女が集まっていた。
「あー……疲れたわぁ……。」
黒髪のロングヘアーの女性が言う。
「ほんとですよねぇ。もうちょっと機械をいたわってくれたらなぁ…」
「………………。」
「ま、俺たちは仕事をするだけだろ。ぶっ壊れちまったら無理だけどな!がはは…」
スレイプニル3号機はときに急ぎの案件で無茶な運転をするときもある。そのため、整備員である彼らの体には負担がかかっているのだ。
「そうね……そうよね!私たちは私たちのやるべきことをするだけよ!さあ、今日も頑張っていきましょう!」
「はい!」
「うむ。」
「了解!」
4人はそれぞれの仕事場へと向かうため、部屋を出ていった。
――
「日本の時間では朝…かな。」
仮眠をとり終えたカケルが時計を見て言う。
「そうだね。じゃあ、私、シャワー浴びてくるから、カケルは先に着替えて待ってて。」
「うん、わかった。」
そう言うと、エミは着替えを持ってシャワーを浴びに行った。
(ふぅ……)
カケルは大きく伸びをし、そして身支度を整えるために洗面所へ向かった。
しゃかしゃか…
歯ブラシを口に入れ、歯を磨く。鏡に映る自分の顔を見て思う。
(相変わらず、冴えない顔だなぁ……)
カケルには昔から、他人とは何か違う雰囲気があった。そのせいか、あまり友達はいなかったし、女子にもモテたことはなかった。
ただ、彼は決して暗い人間ではない。むしろ明るいほうだと自分では思っている。
しかし、彼の両親は彼に厳しかった。勉強しろ、運動しろ、挨拶はきちんとしなさい、など、とにかくうるさく、それが嫌になり、家出をしたこともあった。
そのときにたまたま出会ったのが、この『エイブス』社の社長だった。
「わたしたちエイブス社の社員は、『星と星を繋ぐ懸け橋』となり、皆さまの生活を支えます!」
エイブス社のスローガンだ。
※架け橋…実際の橋
懸け橋…抽象的、比喩的表現の橋
「星と星を繋ぐ懸け橋」―――その言葉にカケルは惹かれたのだ。
それからというもの、カケルは必死に働き、両親を説得して、今ここにいるというわけだ。
「星と星を移動?ばかな。そんな危ないことは他の人に任せなさい。もし事故があったらどうするんだ!」
「そうよ、カケルにはもっといい仕事が……」
「うるさい!!俺は決めたんだ!ここで働くって!」
「「……!」」
結局、カケルは半ば強引に家を出て、一人暮らしを始めた。
その後、紆余曲折あり、今の会社に就職した。いまやエイブス社は巨大企業だ。
そもそもこれまでの星間輸送はデブリ帯や船外活動など、危険なため、主に各星の連合軍で行われていた。だが、地球以外の星にだんだんと移住がすすみ、軍だけでは「足りなくなった」らしい。そこで新たに提案されたのが、「民間企業による星間輸送」だった。
最初は輸送の質が落ちるだの、護衛がいないから貴重な荷物は載せられないだの、そんな危険な行程を民間企業にまかせていいのか?
と批判も多かったのだが、蓋を開けてみると、意外にも民間のほうが効率的で安全な輸送をしていたということが判明した。さらに、さまざまな星系での需要が高まり、現在では多くの企業が参入している。「星間連絡輸送連合」という企業のグループも出来上がり、
「我々は宇宙に住むすべての人々のために存在するのです!!」
と標語まで掲げている始末だ。
(まあ、それも悪くないよな……)
そんなことを考えているうちに、身支度を整え終わったので、エミを呼びに行くことにした。
コンコンッ……
「エミ〜?そろそろ行こうか〜」
「あ、ちょっとまっててね!今乾かしてるから〜」
よく聞くとガー…というドライヤーの音が聞こえる。どうやら髪を乾かしているようだ。
待つこと数分―――
ガチャッ―――
扉が開き、中から下着姿のエミが現れた。まだ完全に乾いていないようで、少し湿っているように見える。
「ちょっ……!早く服着てよ!」
カケルは慌てて目をそらす。
「えー、だってすぐ乾くと思ったんだもん……」
ぶつぶつ言いながら服を着る。
「はぁ……髪、濡れてるよ?」
「大丈夫大丈夫!」
「……ほんとかなぁ……」
「……よしっ!行こっか!」
「うん……」
そう言うと彼らは『点呼』に向かう。
これは、毎日行われているもので、今日誰がどこにいるのかを把握するためのものだ。毎朝食堂で朝食をとる前に行う。また、定期的に行われる点検や整備などで人員が欠けていないかも確認するためでもある。
「おはようございます。」
「おっはよーございまーす」
二人は点呼を終えると食堂に入り、元気よく挨拶をする。
すると、奥のほうから、
「おお、来たか。おはようさん。」
と声がかかる。この船の船長である、フィリップ船長だ。
若くして船長となり、エイブス社の星間輸送船のフラッグシップでもある『スレイプニル形式』。その3号機の操舵を担う、実力者だ。
年齢は30代前半といったところだろうか。身長が高く、体つきもいい。髪は短く刈り揃えられており、さっぱりとした印象を受ける。
「あれ、他のみんなはどうしたんですか?」
いつもは何人かいるはずの乗組員の姿が見当たらないのだ。いつもなら朝でも数人くらいは見かけるはずなのだが……
「ああ、なんか今日はクルーの全員が忙しいらしくてな。整備班も朝からてんやわんやで、船は自動航行だから船長のおれは忙しくないうちに食事を摂りに来たんだ。」
「なるほど……」
確かに言われてみればいつもより静かだ。それに心なしか船内が少し暗い気がする。
「じゃあ、いただきまーす」
エミは手を合わせると、すぐに食べ始めた。
「おいおい、少しはゆっくり食えよ……」
「あはは……エミはいつもこんな感じなので……」
「まったく……でもお前らにも後でしっかり働いてもらうから、しっかり食っとけよ!特にカケル!お前はいつも元気がないから、もっと食べて体力をつけろ!」
「はーい」
そう返事をすると、カケルも食事を始める。
厳格すぎないこの社風も、タケルが気に入ってる点でもある。あまりハメを外すと叱責されるけども。
「そういや、さっき言ってたけど、今日の仕事は何をするんですか?」
「ん?ああ、言ってなかったっけか。貨物室にある荷物を整理してもらうんだ。昨日ちょっとごちゃごちゃしてたろ?」
昨日は急遽発生したデブリ帯を避けるため、大きく航路を迂回した。そのため、遅れが発生し、回復する必要があった。スレイプニルのエンジン回転数を上げたため、エンジンに負荷がかかった。港まではもったが、今になってエンジンの不具合が発生しているらしい。
遅れの関係で積み卸しも渋滞し、戻るときには『詰めるだけ積んでくれ!』と荷主から言われる始末。本来は目的地別に分けられる荷物も、全部一緒くたに詰め込んでしまっており、それを戻す作業も必要だった。
「了解です。」
「おう、頼んだぞ」
「はい」
そういうと、エミは先に食事を終え、部屋に戻っていった。
「ごちそうさまでした」
「お、相変わらず早いな。もう少し味わって食べたらどうだ?」
「いや、これでも味わって食べてますよ。じゃ、僕は準備してきます」
「あいよ、よろしく頼むぜ」
そう言って、カケルも部屋に戻り、着替えを始めた。
「さて、今日もお仕事頑張りますかね〜」
そういって、背伸びをする。
「よし、行くか!おーい、エミ〜!」
「あ、ちょっと待ってー!」
そう言うと彼女は急いで階段を駆け下りてきた。
「よし、じゃあ行こう!」
「うん!」
そうして、二人は部屋を出て、仕事に向かったのだった。
〜〜貨物室〜〜
ごちゃぁ〜〜〜〜〜。
「うわぁ……こりゃひどぃ……」
思わず声に出してしまうほどの光景が目の前に広がっていた。
中はまさにカオス状態であり、コンテナが無造作に置かれている。中身はよくわからないが、どれもこれも同じような物ばかりだ。とにかくアンカーに固定しただけの荷物が非常に多かった。
「これ、ほんとに直すの……?」
「いやぁ……どうだろ……わかんない……」
「どっちがクレーン操作する?」
コンテナを動かすのにクレーンが必要だった。無重力空間なので、人の力でも動かせるとはいえ、もし人の手だけで行い、誤って数トンもあるコンテナに押しつぶされてはたまらないからだ。移動は機械でおこない、誘導やロックは人が行うというのがセオリーだ。
「うーん、じゃんけんで負けたほうがやろうか」
「そうだね」
「「最初はグー、ジャンケンポン!!」」
結果は……
「やったー!!私の勝ち!」
「うう……負けちゃったかぁ……」
「へへん、私、運いいからね〜♪」
「はいはい……それじゃあ、僕が指示出すね」
「よろしくお願いしまーす」
こうして、二人は作業をはじめた。
「ふう、終わったねー」
「疲れたぁ……」
あれから3時間ほど経ち、ようやく全ての荷物を行き先別の位置に戻すことができた。こうしておかないと、積み卸し先で引き取りに来た車両が大渋滞を起こす。どこになにがあるか分からないでは荷主に申し訳が立たない。
「そういえば、そろそろ昼休憩の時間じゃないか?」
「あ、ほんとだ!じゃあ食堂行こっか」
「うん」
そう言うと、彼らは食堂に向かう。
食堂は広々としており、座席はたくさんあるのだが、今は誰も座っていなかった。
「あれ、誰もいない……」
「まだ修理してるのかなぁ…?」
すると、
「あ、貴方達、ここにいたのね!ブリッジにみんな集まってるから、すぐに来て!」
そう言うと、大人びた印象の金髪の女性はカケルとエミを手で招く。ケイシー先輩だ。
「え、みんなって……なにかあったんですか?」
「さあ……とにかく、早く!」
「は、はい!」
カケル達は急いでブリッジへと向かう。
「あの、失礼します……!」
「おお、来たか。まあ、そこに座ってくれ」
船長のフィリップが席を立ち、近くの椅子を指す。
「はい」
二人が席につくと、フィリップは話を続ける。
「それで、急に呼び出して悪かったな。実は、救難信号を受信したんだ」
「救難信号!?」
「ああ、そうだ。発信元はデブリ帯付近。昨日迂回した場所だ。そこから救難信号が発信されている。」
「救難信号ってことは、誰かが助けを求めているってことですよね?」
「ああ、おそらくそうだろう。だが、救助に行くには問題があるんだ。」
「問題……?なんですか?」
カケルが質問する。
「その船なんだが、救難信号は発信されているが、いくら通信を試みても、だれも応答しないんだ。」
「それってどういう……?」
「わからん。だが救難信号が出ている以上、本社にも連絡を取ってみたんだが、俺たちの船が一番近くにいるから、様子を見てきてほしいと言われたんだ。」
「なるほど、そういうことでしたか」
「そこで君たちに頼みたいことがある。」
「なんでしょうか?」
「この船を使って救護、または発信元の特定に向かうんだが、中の調査をお願いしたいんだ。生存者がいれば、助けてやってほしい。」
「わかりました、引き受けます!」
「ありがとう、助かるよ。あと、調査メンバーにはこの2人も同行する。ボブ、ケイシー、頼む。」
そう言うと、フィリップ船長は乗員の2名を指名し、二人に顔を向ける。
「了解です、船長。」
「任せてください!」
「よし、それじゃあ準備ができ次第出発する。各自、必要なものを準備してくれ。」
「「「「はい!」」」」
そうして、一同は準備を進めたのだった。
〜〜〜
しばらくして――――
ピッ。
『まもなく救難信号の発信先に到着する…と、おいおい、こりゃまたデカい船だな…』
フィリップ船長の感嘆の声が聞こえてくる。どうやら相当大きな宇宙船のようだ。
「すごいですね……こんなに大きな船は数えるほどしか見たことがありません」
カケルも思わず驚きの声を上げる。
「星間旅客船かな…?確かにすごく大きいね」
その大きさはスレイプニルの10倍ぐらいだろうか…?とにかく大きい。長期移動用の大型船なのだろうか? そんなことを考えているうちに、フィリップ船長が接岸用の出入り口を発見したようだ。
※船を陸地や岸壁に横付けすることを『接岸』といい、船を岸に横付けして動かないようにロープなどで固定することを『着岸』と言います。ただし大型船から大型船に移動することは想定されていない(この場合はタグボート等でお客さんを移動)ため、まぁフィクションとしてお楽しみください。
「ok、あそこから侵入する。各自、宇宙服チェック、忘れるなよ。酸素残量も念のためチェックしておけ。大型船内の酸素発生器が生きていることを願うばかりだな」
「「「はい」」」
作者
ダクトの説明飛ばして船の中入っちゃう?
はい→[jump:2]
いいえ→このまま読んでね!
シュー!!
接岸用のダクトのロックが開放される。本来ならば向こうの誘導員がプログラムによりダクトを自動接続してくれるが、今回は手動でダクトを接着し、ボルトを固定しなければならない。
ダクトのボルトは全部で4つ。これは相手船への接岸時に揺れなどでダクトが容易に外れないように、固定するためのものだ。ダクトだけでも自動で接合部が圧着し、巻き取られ、固定されることで簡単に外れることはなくなる。もし万が一外れたとしても、固定ボルトによって固定されているため、通路が大きく動くことは無い。あとは手動ハンドルで固定すればいいだけだ。
「全員、船外活動服着たか?おーし。全員外部待機通路にいるな?いまから内部密着扉閉めるから、少し離れてくれ。」
僕たちが今いるのは『外部待機通路』と呼ばれるものだ。そのままハッチを開けてしまうと、内圧の差により宇宙空間に放り出されて永遠に闇の中をさまよう可能性がある。そのため、一旦船内を密閉して、外部待機通路と遮断。及び外部待機通路の減圧を行う。宇宙空間との気圧差を無くすことで安全を確保するのだ。そしてその後、外部ハッチを開放し、僕たちは命綱をつけて宇宙に出ることになる。
プシュッ!ガチャン……
内部密着扉のドアが閉まり、外部待機通路に僕らは待機する。宇宙服のボタンを押し、バイザーを閉め、密閉する。酸素残量は
……うん、大丈夫だ。
『よし、じゃあ減圧するぞ。』
フィリップ船長が通信でそう言うと外部待機通路のアラームが鳴り響く。気圧がどんどん下がっているのだ。
『気圧が下がっています。直ちに宇宙服を着てください。繰り返します…』
((ゴォーーー))
「うわぁーすごい音だね……」
エミがつぶやく。たしかに凄い音がしてるなぁ。でもこればっかりはしょうがないか……しばらくすると音が止み、アナウンスが流れる。
『外部待機通路内の減圧が完了しました。現在船内空気は真空状態となっています。宇宙服を脱がないで下さい。繰り返します……』
「……さて、みんな、準備はいいかい?」
「「はい!!」」
「それじゃ、開けるぞ…」
ガコン!
外部待機通路と宇宙空間の気圧差はゼロになっている。静かに音を立てて開いたハッチは、暗黒の世界を僕らに見せつける。
「うっ……!」
真っ暗だ。何も見えない。
「よし、ヘルメット装着、命綱よし!ライト点灯!」
「「はい!」」
カケル達はそれぞれ、作業用ライトを点ける。これで少しは見えるようになっただろう。道具を持ち、
「よし、行くぞ」
「「はい」」
カケル達のここでの任務は
①ダクトを大型船の接岸用ハッチに案内する。
②固定ボルトを大型船の接岸用ハッチに固定する
この2つだ。
ダクトの隣にハッチがあり、そのダクトを大型船に繋いだあと、彼らはそのハッチから船内に戻り、ハッチを閉じる。そして減圧を解除すると、接岸対象の大型船に空気がある場合は、内部の空気が船内に戻るため、宇宙服無しでもスレイプニルと大型船を行き来出来るというものだ。
ない場合はそもそも生存者自体が絶望的なため、救助は中止となる。この場合、大型の酸素発生器を持っていかなければならないが、民間の輸送船にそんなものは積まれていない。救助自体が不可能なのだ。
つまり、今回の任務の目的は、最悪の場合を想定した救出ではなく、生存者の確認である。その場合、通常の手順通り、まず、生存確認をし、その後、救助隊の要請をすることになるだろう。
「よっ!!………と…」
命綱をつけ、宇宙空間にフワフワと移動するカケル。まずはダクトの案内からスタートだ。無線通信でフィリップ船長とやりとりをしながら、ダクトの射出口を案内する。
「船長、もう少し左です、左に20…
いや30度ほど角度を変えて下さい」
『OK、了解した』
「そのまま、上に3m…ok!Y軸はそれでokです。次は左に5mほど…そうです、そこで射出して下さい」
『ok、ダクト射出!』
バシュッ!
ダクトのロックが解除され、ゆっくりと大型船の接岸部に移動する。あとは人の手で手直しを行い、ダクトを密着させるのだ。
「おーい、そっちはどうだ?大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよー!」
エミが答える。カケルはダクトの左端、エミは右端を持っている。ダクトとともに接眼部に向かっていく2人。
ふよふよ…
ゆっくりと射出されたダクトは接岸に向かっていく。
「あと10m…7m…2m……1m……0!」
バシュン!
ダクトが接岸部に到着した。あとはコレを人の手で接着していくのだが、相手船の外部ハッチ部分に、ダクトを巻き取り固定するスイッチがある。
「命綱付け替えて…電気は…あった!」
2人は手際よく、別の命綱を大型船の接岸部に固定し、スレイプニルからの命綱は外しておく。しゅるるる!ともどっていく命綱。ボブとケイシーが2人の命綱を巻き取っている。こうしないとダクト圧着時に命綱が引っかかってしまう。
電気がない場合はこのスイッチのランプが消灯している。そうなると内部の電源が消失しているため、内部の酸素も絶望的…つまりは生存者の可能性は限りなく低いということだ。
最近は手動ハンドルもあるため、ランプが消灯していても手回しでダクトを固定することもできるが、外部ハッチの電源が落ちているのに、内部の電気がついているだろうか?という疑問が残るため、やはりこれは無いと考えるべきだろう。
カチッカチッ
レバーを下げていくと、内部に張り巡らされているゴムが収縮し、しっかりと固定される仕組みだ。
ガチン!
完全にダクトが巻き取られ、ストッパーがかかり、がっちりと固定された。
『よーし、ダクト固定完了だ。ご苦労さん』
「はい、ありがとうございます」
『じゃあ、こっちも固定しちまうぞ。そのまま待っててくれ』
「はい」
プシュー!ガコン! プシュッ! プシュッ!
ダクトの4隅に設けられた、固定ボルトを、それぞれ大型船のボルト固定用の穴に差し込んでいく。
「これが自動化されたら、ラクなんだけどな…」
チュイイイーン!!
ボブは悪態をつく。自動接続のダクトもあるものの、まだ共通の規格が追いつかず、その上その装備は非常に高価なものばかりだった。大型船ならば標準装備されているのだが、スレイプニル3号機のような中型船には特注の装備であり、一介の企業にそこまで資金を割く必要はないと判断されている。
「よし、全部終わったぜ、これからそっちに行くからな」
「わかりました、お願いします」
ガチャリ 無線が切れると、タケルたちは
「「ふぅ…」」
カケルとエミの2人は現在ダクト内部にいる。目の前の大型船の接岸部、そのハッチの前にしゃがみこんでいる。
「無事終わったね…」
「ああ、たまにスレイプニル側の命綱外すの忘れてて、ダクトに巻き込まれることがあるからなぁ…」
命綱を外すのを忘れると、ダクト内部に命綱が引き込まれ、命綱に繋がっている者ごと引き込まれてしまう。
それ以外にも、宇宙空間にスレイプニル側からの命綱が固定されているため、ダクトの内部に穴が空いた状態になる。
こうなると最悪命綱が破損するか、命綱を外すのを忘れて宇宙服が破れてしまうことがあるのだ。修理費は高額だし、最悪の場合は命を危険に晒すことになる。
シューーー!!ガチン!
スレイプニル側ダクト扉の隣りにある外部ハッチが閉じられる。先輩たちがボルトを挿入し終え、船内側の外部待機通路にいるようだ。
「船長!固定ボルト挿入完了!ダクト扉を開けてくれ!」
ボブが無線通信でフィリップ
に伝える。
『わかった、今開ける』
ブォン……ギィィ……
鈍い音と共に扉が開き始める。
ゴォオオオオオオオオオ……!!!
「「先輩!!」」
ダクト扉の先にはカケルとエミの姿。これで現在、宇宙服を着た状態ならば外部連絡通路とダクト内部を行き来出来るようになった。あとは大型船内に酸素があるかどうかだが…
「どうだ?酸素は…?」
「あり…ますね。相手方の外部待機通路、酸素計は動いてます」
「そうか、了解した。船長!外部待機通路、及びダクト内部に空気を送ってくれ!」
『わかった、いま送り込む!』
シューーーー……
またしても外部待機通路のアラームが鳴り響く。
『外部待機通路の圧力が上昇しています。繰り返します…』
このとき、僕たちはダクトに穴が空いてないか確認する。もし開いていたら気圧差により空気が漏れてしまい、空気が逃げるだけでなく、圧力差により最悪ダクトが破損してしまう。空気漏れの音は要チェックだ。
「空気漏れ…なし!お前ら!腕の酸素計、どうなってる…?」
「酸素濃度…正常値です!」
「こちらも正常値です!」
「………正常値よ!」
3人共宇宙服の右腕についている、酸素計で計測を行う。これも小型船と違い、計器で管理するタイプのものだ。3人の酸素数値は同じだった。つまりダクト内部に空気が行き渡ったということだ。
『シールド射出!』
ガコン!
ダクトの周りに4枚の厚い鉄板がせり出す。デブリからダクトを守るためのものだ。それは大型船の固定ボルト部分に接着すると、ガッチリと固定される。
[newpage]
「ふぅ…もういいぞ。」
「「ぷはっ!!」」
全員一斉にヘルメットのバイザーを上げ、空気を吸い込む。宇宙服のなかは息苦しくてたまらない。
「……はぁ……苦しかったぁ……」
「ホントですよ……」
「あなたたち、いい加減慣れなさい。船外活動はめったにしないけど、これぐらいは想定しておくものよ。」
ケイシー先輩にたしなめられるカケルとエミ。
「でも、やっぱり苦しいものは苦しいですよ…あと」
「『万が一』は怖いよねぇ…」
カケルとエミは顔を見合わせる。船外活動は一歩間違えれば簡単に命を落としかねない危険な仕事だ。特に今回みたいな未知の場所に行く場合は尚更だ。
「まぁ、確かにそうかもね……とにかく、今から船内に入ってみるわよ」
「はい!」「はーい!」
ピッ!
大型船側の外部ハッチのスイッチを押す。
プシュー!!
ゆっくりとハッチが開く。
「さぁ、みんな、行こう!」
ハッチが完全に開ききると、まず最初に先輩2人が入っていく。
「内部の酸素は…正常値だな。」
何らかの理由で外部待機通路に酸素が溜まっており、内部にないときが存在する。開けた瞬間に宇宙服のバイザーを上げたままの僕たちは真空である大型船内部に吸い込まれ、壁に叩きつけられて即死するだろう。この確認も非常に重要なのだ。
「大丈夫そうね、じゃあ次はあなた達が行ってきて?」
「あ……はい」
「わ、わかりました!」
僕とエミはゆっくりと、船内へ入っていく。
「あ、ちょっとまって!」
エミは指し示す。よく見ると矢印と『重力発生装置 弱』の文字。こちらに頭を向け、入ってくださいね。という案内である。忘れていると重力によって頭から叩きつけられることもある。大型船では装備されていたり、いなかったりするため、まちまちだ。ある方がいいのか、ない方が良いのかは船の設計者次第だろう。
「あっぶねぇ…エミ、ありがとう!」
そのまま行くとカケルは頭から地面に叩きつけられるところだった。案内通りに身体をくるくると回し、壁に書かれた通りの姿勢になる。
「いいってことよ!」
「じゃ、行こうか…!」
『船内に入ったか?』
「ええ、今入っていきます」
船内に入ると、そこには大きな空間があった。どうやら倉庫のようだ。
「すいませーん!!だれかいませんかーーー!!」
カケルは大声で呼びかけるも、返事はない。
「……いないね」
「うん……」
『よし、そのまま進んでくれ』
船内を進んでいくと、奥に扉が見えた。
「階段かな…?」
「上部に繋がる?」
『その可能性が高いな。おそらく上に生存者がいるはずだ』
「了解しました、行きます!」
手すりを持ち階段を上がっていく。僅かだが重力が発生しているため、少し上がりにくかった。
「う~ん……それにしても大きいね……」
「そうだね……僕、こんなに広いところ初めてだよ……」
「私もこんな大きさの船は初めて見たわね……」
先輩達ですら見たことがないような大きな船。色んなところを見て回るたび、感嘆の声が上がる。
「これは…?居住区か?」
ボブが指差す先には扉があり、その先にはいくつもの個室が見える。
「そのようだな、ちょっと見てみるか……」
そういってボブたちは扉の先へ進んだ―――――
(うーん……なんだここは?)
俺は辺りを見回す。しかし見えるのは一面の白一色のみ。空き部屋か?
すると
「ボブ先輩!こちらの部屋を見てもらっても…!!」
奥の部屋を探索していたカケルが俺を呼ぶ声が聞こえた。行ってみるか……
「どうした?何かあったのか?」
部屋に入るとそこは真っ白い壁で覆われた小部屋だった。中には何も置いておらず、家具すら無い。本当に何も無いのだ。
「何もないですね……」
「そうだな……」
「……こっちにも何もありません!」
エミが遠くから叫ぶ。この船はいったい…?民間の旅客輸送船ではないのか?
ボブは決断した。旅客輸送船でないのなら、ここにいても仕方がないからである。それになにより気味が悪い。
「任務を変更。みんな、救難信号の発信源の特定に向かうぞ!」
「「「了解!」」」
一同は部屋を後にし、別の通路に向かった。
(………気味が悪い部屋だったな…………………………………まるで……………………『独房』だ。)
ボブはひとり
「早くここから出たいものだ……」
ボソッとそう呟いた。
少女
「触手シーン飛ばしちゃう?」
はい→[jump:3]
いいえ→このまま読んでね!
「はぁ…はぁ…はぁ…」
ひとり、個室の中で息を荒げるものがいた。内部の電源が落ち、『ある容器』が解凍を始めていたのだ…
「はぁ…くぅ…暑いよ…」
空調が止まっているため、室内の温度は徐々に上昇している。ここはどこなんだろうか…?
カチャ!チャリ!
パイプに繋がれた手錠。わたしはなぜこんなところにいるのか。
「だれか…たすけて………」
カチャ!チャリ!
気がつけば少女はここにいた。外れるはずもない手錠を外そうとするが、外れない。
「あつぅい…………」
部屋の温度はどんどん上昇する。なぜ?ストーブでも炊かれているのだろうか?暑い……
だらだら…
汗をかくほどの暑さ。
「あついぃ……だれかぁ……」
意識が朦朧とする。視界が歪む。あぁ、私はここで死ぬのだろう―――
そのとき。
ピキッ!!
何かがヒビの入る音がする。ガラスが割れたような…?
パキッ!
「なんの、お、と――――――?」
朦朧とした意識の中、
少女はそちらを見ると
パキィン!
何かが容器を破り飛び出してきた。それは…?
「なに…あ、れ…?」
にゅるにゅるとしたタコのような生物。大きさは手の平ぐらいだろうか…?ぴょん!ぴょん!と飛び跳ねている。
「え……?」
そして、その生き物は少女を見つけると、少女に気づいたように、ぴょん!ぴょん!と近づいてくる。
「ひっ……!」
少女は恐怖で動けなくなった。怖い……!怖い……!!逃げなきゃ!
しかし暑さのせいで朦朧とした意識の中
「動けないよぉ……」
少女は逃げることも出来ず、その場で怯えることしかできなかった。
カチャ…
なんとかして逃げようとするも、パイプに繋がれた手錠のせいで動けない。
「誰か……助けてぇ……」
涙を流しながら懇願するも、その声は誰にも届かない。
ぴとっ……
謎の生物は少女の足に触れた。
「つめたい…」
あまりの暑さに朦朧としている少女。ただこの生物は妙にひんやりとしている。ぬめぬめしているものの、今は
「気持ちいい……」
この冷たさが心地よかった。
「ひゃ!?」
突然、触手が伸びてきて、少女の胸に巻きついた。ぬめぬめしているためシャツを濡らされ、
「やめてぇ……服が濡れちゃうからぁ……」
それでもお構いなしに胸に絡みつく。そして今度はスカートの中にまで侵入してきた。
「やだぁ……そんなとこ触らないでぇ……」
ぐちゅり……
パンツの上から大事なところを擦られる。
くちゅっ……くちゃっ……じゅ
「あっ……いやっ……だめぇっ!!」
ビクビクッ!!ビクン!! 絶頂に達してしまう。だが、それで終わりではなかった。
くちゅ!くちゅ!
なんと少女の身体の中に入り込もうとしている。しかも…
「だめ…そこはっ!はうっ!」
おしりの穴がひんやり、ぬめぬめと、
「んっ!いやぁ……そこ、ちがう……違うよぉ……」
ずぶっ!
「あぁっ!!」
ついに中に入り込まれてしまった。
「う、うごかないで……あぅっ!」
中で動き回る触手。それがまた快感を生み出し、頭が真っ白になる。
「あんっ!ああぁぁっっ!!!」
「もうやめてぇ……これ以上したら壊れちゃうぅ……」
触手は容赦なく責め続ける。さらに激しく動く。
「うぁっ!ああっ!!あああぁぁぁっっっ!!!」
もう何度目かわからない絶頂を迎える。
(なんでこんなことになってるんだろう……?)
いつの間にか、謎の生物は暴れなくなっているどころか、先程までの冷たさを感じなくなっていた。
「はぁ……はぁ……終わったのかな……?あれ?」
おしりの穴になにも感じない。何処かへ行ってしまったのだろうか…?
「あれ?暑くない…?なんでだろう…?はぁ……はぁ……うぅん……」
気が付くと、謎の生物は消えていた。
「…………へんなの。」
暑さを感じなくなった部屋で、少女はひとりごちる。少女からは見えないが、部屋の温度は50℃を指していた…
[newpage]
「はぁ…はぁ…先輩、この船、通路長すぎませんかね…?」
「そうだな……いくらなんでもこれはおかしいぞ……」
船内を探索するボブたち。この船にはなにかある。そう感じていた。
「先輩、ちょっと見てきますね……」
そういってカケルは一人、奥へと進んでいった。
「……なんだこれは?」
しばらく進むと、そこには扉があった。扉の横には何やら文字が書かれている。
『関係者以外立ち入り禁止』
どうやらこの先には入ってはいけないようだ。しかも…
「これ、核とかヤバい奴のマークじゃありませんでしたっけ…?」
黄色い丸に黒い風車のマーク。
間違いない、これは軍事用の危険物を示すものだ。こんなものは見たことがない。なぜこんなところにあるのか。それに――
「ここは貨物室じゃないのか……?」
扉が閉まっているため中の様子が分からないが、ここが貨物室でないことは一目瞭然だ。なぜなら――
「大型輸送船ならコンテナぐらい積んでても不思議じゃないですよね……でもここには何もない……」
つまり――
「ここに何かがあるってことか……」
スレイプニル3号機の乗員であるカケルとボブは、救助対象と思われる大型宇宙船を見つけたものの、その船内はまるで人がいないかのように静まり返っていた。白い独房みたいな部屋と、長い通路、そして、このマーク…
「僕たちはなにかヤバいもんに手を出そうとしていないでしょうか…?やっぱり帰った方がいいんじゃ――」
カケルはこの仕事を始めてからまだ日が浅い新人だった。そのため、こういった未知のものに対する警戒心が強かったのだ。しかし、ボブはその逆であった。
「バカ野郎!ここに生存者がいたらどうするんだ!?助けに行かねぇと……!」
「そ、そうですね……すみません……」
ボブの言う通り、もしこの中に人がいるとしたら大変だ。一刻も早く救出しなければ……! 二人は意を決して、扉を開けた。
ガチャリ……
扉を開けると、そこには、異様な光景が広がっていた。
「なんだ、ここ……」
たくさんのカプセル。大きな機械、ゴボゴボと音を立てて、機械だけが動き続けている。その光景はさながら研究室のようだった。
「一体ここでなにが行われているんだ……?」
明らかに怪しい雰囲気を漂わせるこの部屋で、一体何が行われていたのか。想像もつかない。
「……とりあえず調べてみましょうか。」
部屋の中を調べてみることにした二人だったが、調べると言っても、手がかりらしきものはほとんどなく、あったとしても、せいぜい関係者が飲んでいたと思われる飲みかけのコップぐらいだ。コーヒーにはカビが生えていた。
「コーヒーにカビが生えてるってことは…」
「随分、人が入ってないのかもしれんな…」
※淹れたてのコーヒーだと、およそ3日ほど経つとカビが生えます。
そんなことを言っていると、ふと、一つのカプセルが目に入った。中には虫のような…タコのような物体。しかも
「冷たっ!!」
カケルは思わず触った手を引っ込める。カプセルはまるで氷のようにつめたい。
「先輩、これって……」
「ああ、多分冷凍保存されてんだろうな……」
冷凍状態…しかも長期間保存されていたであろうことを考えると、やはり人体実験か何かをしていたのかもしれない。そう思うと背筋がゾッとした。
「しかしなぜ誰もいない…?」
「先輩、やっぱり他の人に任せましょうよ!多分ここはヤバいですって!!」
ボブも身の危険を感じていた。
だが、それでも――
「いや、ここまで来たんだ。俺は最後まで行くぜ。」
「えぇ~……わかりましたよぉ……」
しぶしぶながらも了承した。
「それにしても、この船ってなんのために作られたんでしょうね?」
「さあな……もしかしたらどこかの星から資源を調達していたのかもな……」
「このクラスの大型船ですよ?でも貨物室にも何もありませんでした。いったい―――?」
「おい、なんか書いてあるぞ!」
ボブはメモ書きを見つける。
そこにはこう書かれていた。
『人類未踏の地への到達』
人類未到の地……?なんのことだろうか?疑問が残るが、それ以上のことは分からなかったので、先に進むことにした――――
少女
「変身シーン飛ばしちゃう?」
はい→[jump:4]
※ただし物語が分かりづらくなるかも
いいえ→このまま読んでね!
食事中のひとは注意!
「ふぁ!ふぁっ!はぅん…!」
個室で手錠に繋がれた少女は悶えていた。室内の温度は80℃。もはやサウナ状態だ。だが、少女は暑さを訴えるどころか、むしろ気持ち良さそうな声を上げている。
(あつい……きもちいい……)
おしりの穴をいじられたせいで、少女のおしりの中はすっかりトロトロになっていた。そのせいで、おしりの穴から、おしりの中に溜まっていた体液が流れ出てくる。
(おみずが……おしりからあふれてくる……)
ぶびゅ!
ぬるぬるの何かがお尻の穴から噴き出してきた。
(あたまのなかがまっしろになる……わたし、もうだめかも……)
少女にはもう考える余裕などなかった。ただ、この気持ちよさに身をゆだねるだけ。それだけでよかったのだ
「はぅん…」
少女は四つん這いになると、臀部を高く上げ、激しく粘液を噴出させる。まるで犬のようだ。
ぶびゅっ!!
……メリメリメリ!
おしりの穴からぬるぬるした液体を吹き出しながら、少女の皮膚の下がモゴモゴと蠢き出す。それはメリメリと音を立てて成長し
ばりっ!
やがて、肌を突き破って、中から粘液にまみれた硬い何かが姿をあらわす。
ぐちょお…
少女は皮膚が裂けた自身の左手を見ると、4本の鋭い指が粘液をまとってヌラヌラと輝いていた。さらにその手は肘から先が異様に伸びており、その先にある手は、人間のものではなかった。
「うふ……」
少女は笑みを浮かべると、ゆっくりと立ち上がった。
ベリ!ベリ!
左足の皮膚が裂け、そこからまた新しい足が姿を現す。硬質な皮膚をまとい、足の皮膚が弾け飛ぶと、中から3本の指を持った足が姿を現した。右足も同様に、3本の指が生えた足が現れる。
「うふふ……」
少女は嬉しそうに微笑むと、自分の足を優しく、変わってしまった左手で撫でた。かっ!と硬そうなものがぶつかる音がする。
「私の体、どうなっちゃったのかしら……」
そうつぶやくと、今度は右足の皮膚が膝から裂け、新たな脚が現れた。そして、そのまま右足の足先が弾け飛び、中から、鋭い指を持った足が姿を現す。
ずりゅっ!めりめり!
「ああっ……!」
両足がグググ…と膝から足先まで伸びたところで、新たな足が顔を出す。両足の指は、槍のように鋭く、鉤爪のようになっている。
「ふふ……ふふふ……」
ばり!ばりっ!
手錠をつけられている右腕の皮膚が裂け、手錠がついたまま鋭い4本の指を持った右手が姿を見せる。手首が太くなったのか、少し手錠がきつくなる。力任せに引っ張ってみると
バキン!
手錠は壊れてしまった。
「ふふふ……」
少女は微笑みながら、今度は前かがみになる。ばり、ばり…と背中の皮膚がぱっくり割れ、中から粘液にまみれた硬質な肌が姿をあらわした。
バリバリ、バリバリ…
背中の皮膚が一気に裂け、少女の後頭部が裂けると、首の下から、新たに頭部が出現する。
「シャアアアアアア!!」
まるで蝶が蛹から羽化するかのように、背中から現れた頭が雄叫びをあげる。続いて、胴体からも胸部が出現し、その全貌を現す。その姿は、まさに昆虫のようだった。身長が少しだけ大きくなり、大人の男性くらいのサイズになる。体は薄い緑色に光を反射しており、両手足には鋭く尖った指。全身は昆虫のような外骨格に覆われている。頭はバイクのヘルメットのようになり、バイザーのような部分には左右3つ、合計6つの目が動いている。歯は鋭くなり、口の中からは2本の牙が見える。
「シャアアアアアア!」
怪物は咆哮すると、自身の身体を見る。全身にまとわりつく粘液。羽化したてのせいか、まだうまく動かせないようだ。
少女はしばらく自分の体を見ていたが、すぐに興味を失ったようで、部屋から出ようとする。すると掴んだドアノブがひん曲がってしまった。鍵がかかっていたようだ。
「シャア!!」
仕方なく怪物はドアに向かって自らの爪を突き刺した。
ガン!
鉄のドアに刺さる爪。
そのまま力を込めると、鉄製のドアが真っ二つに引き裂かれた。
メリメリメリィ!!
自分が、通れるくらいに縦に引き裂くと、今度は両手で掴み、その穴を拡げる怪物。
ジュウウウウ…!!
ギギ!ギギ!ギギィィ…
怪物の指についた粘液が蒸気を上げて蒸発する。熱くなりすぎた部屋の中の鉄は、水がすぐに蒸発するほどの温度だ。怪物はそれをもろともせず、力任せにドアの穴を拡げた。
もはやドアとしての意味をなくした鉄の裂け目は大きく開き、部屋の中から怪物の姿を覗かせる。
べちゃ!べちゃ!
力強くドアの裂け目から踏み込まれた足は、粘液をまとい、部屋からその姿を現す。廊下の床は怪物の足跡のように粘液がべっとりとついている。
「シャアアアア……」
怪物はゆっくりと歩きだす。
ぐちゃ、べちゃ、ぬちょ…
体にまとわりついた粘液が、鋭い3本指を持った足により床に塗りたくられていく…人間の意識があるのか、ドアの開け方ぐらいは分かるらしい。
「シャッシャッシャッ……」
怪物は笑うように廊下を歩いていく。
ぐちゃ、べちゃ…べちゃ…
[newpage]
「うわっ!!なにあれ…」
「何かしら…?」
別行動を取っていたエミとケイシー。床にてらてらと光る何かを見つける。
「うわ…キモ…」
明らかにネバネバした何か。しかしそれは足跡のように、ある部屋から出ていったように見える。
「先輩…どうしましょ?」
「……あまり行きたくはないわね…」
2人は顔を見合わせる。
「でも、もしかしたらあの部屋に要救助者がいるかもしれないわ。行ってみましょう」
「はい……」
と、部屋に近づくと
「ええ…?」
「なにかしら、これ…?」
部屋の中は真っ暗だ。ドアを開けなくとも分かる。なぜなら、鉄のドアが裂けている。無理矢理開けられたように、真ん中から広げられたそれは、もはやドアとしての役割を果たしていない。
「……行くわよ」
「はい……」
すると、
もわっ……
「あっつ!!」
「なにこれ…サウナみたいね。」
部屋に入ると、まるで蒸し風呂のような熱気が襲ってくる。思わず顔をしかめる2人。
「うう……暑い……」
「あついあついあつい……」
あまりの暑さに、ふらふらする2人。だが、この部屋に入った以上、引き返すことはできない。
「うっ……」
「これは……」
だだだ!
「おええええ!!」
エミは部屋の外に走り、吐いてしまった。
「なにこれ…人間の…皮?」
血にまみれた、服を着た人間の皮。幼い少女の顔をしたそれは、中身が無かった。空っぽだったのだ。
ぬちゃあ…
ケイシーは拾い上げてみると、
その皮は粘液でコーティングされており、手の中でグチョグチョと音を立てて崩れる。
「うえっ……気持ち悪い……」
「ケイシー先輩…勇気ありますね…
私なんてもう無理です……」
「私だってそうよ……早くここから出ましょう。」
「はいっ!」
2人は部屋を出ていく。
「先輩…『これ』追いかけます?」
少女の皮についた大量の粘液と、そこから続く粘液の跡。一定間隔でついているそれは、通路の奥をゆっくりと進んでいるようだった。
「そうね……行きましょうか。」
2人は跡を追いかけて行った。
その頃。
「シャアア……」
怪物は進む。廊下はまるで迷路のようだ。途中で何度も分かれ道がある。怪物はそのたび立ち止まり、匂いを嗅いだり、手で触ってみたりして、通路の奥に進んでいく。
ガチャ、キィィ…
たまにカギが開いているドアは、簡単に開けることが出来るが
メリメリ!
カギが閉まっているドアは勢い余ってドアノブがひん曲がってしまう。
ドガ!
ドガ!
メリメリィ!!
そうなると爪で無理矢理開けるしかなく、怪物はその度に爪が傷むのを感じていた。
(まったく不便だわ……)
苛立ちを覚えながら進んで行くと、やがて開けた場所に出た。
(ここは……?)
そこは広間だった。大きなテーブルがいくつも並べられており、椅子がたくさん置いてある。どうやら食堂のようだった。
(ここで食事をしていたのかしら?)
テーブルにはまだ食べかけの食事があった。お腹が空いていた怪物は、その皿に手を伸ばす。
ぐちゃ、べちゃ……
フォークやナイフ、スプーンなど、食器類は全て怪物の指によって破壊されてしまう。
(もっと食べたい…)
怪物は、そのまま厨房と思われる場所に入っていく。そこには、たくさんの食材が並んでいた。野菜、魚、肉……どれも新鮮そうだ。怪物はそれらを見るなり、食欲を刺激されたのか、よだれを垂らしている。そして、そのうちの一つ、トマトを手に取り、そのままかぶりつく。
じゅるるるるる!!!
「シャアア!!」
口いっぱいに酸味が広がり、舌の上でとろけるような食感を楽しむ。怪物は、それが気に入ったようで、次から次へと口に運んでいく。
もぎゅ、もぎゅ、もぎゅ……
あっという間に平らげてしまった。
「シャアア……」
お腹いっぱいになった怪物は、満足げにその場を後にする。
べちゃっ、べちゃっ、ぐちゃっ…
かしっ!かしっ!…
やがて足にまとわりついた粘液が乾いたのか、足音が変わる。
まるでハイヒールのような足音だ。怪物は気にすることなく、歩みを進める。
しばらくすると、目の前に階段が現れた。それは地下に続く螺旋階段。所々に灯籠が置いてあり、不気味な雰囲気を出している。
「シャア……」
怪物は階段を下っていく。
かしっ、かしっ、かしっ…
螺旋階段を踏み外さないように、慎重に降りる怪物。ハイヒールのような足で金属の階段を歩くというのは、かなり神経を使うようだ。
「ハァァァァ………」
ようやく一番下にたどり着いたようだ。そこには鉄の扉があり、何やら厳重なロックがかかっているようだ。
「シャッシャッシャッ……」
しかし、今の彼女には関係ないようだ。爪を使い、扉を強引にこじ開けようとする。
ガン!
ガン!
ガン!
しかし、なかなか穴が空かない。
かなり分厚い鋼鉄のようだ。
「シャッシャッシャッ!!」
苛立った彼女は、扉に向かって爪を振り下ろす。
ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!
相当頑丈に作られているらしく、彼女はへたばってしまった。目の前にはボコボコに凹んだ頑丈な扉がある。
「シャアアアア……」
ガックリとうなだれる怪物。
しばらくそこで休むことにしたようだ。
「先輩!」
「………食料庫が荒らされているわね…」
エミとケイシーは倉庫に来ていた。その惨状を見て愕然とする2人。
「トマトばっかりなくなってますけど…」
「確かに、肉や魚はそのままね…」
トマト料理ばかりしていたのだろうか?
トマトだけがぐしゃぐしゃになり、そのへんに撒き散らされていた。肉や魚、野菜類は無事である。床にはネバネバとした粘液が多数あった。
「さっきの足跡でしょうか……?」
「多分そうでしょうね……でもここから消えているわね。」
食料庫の先の、さっきと同じ、『裂けた扉』。その手前から、足跡が消えている。ということは、この先に何かがいるということになる。
「どうしますか?」
「…………これまで見てきたけど、『人間業』じゃないわよね…」
「……はい」
2人は覚悟を決めて進むことにする。
「じゃあ行きましょうか」
「はいっ!」
2人は手をつなぎながら、奥へと進んでいった。
少女
「生むシーン飛ばしちゃう?」
はい→[jump:5]
※ここまでで全て飛ばしたひとはこの方が分かりやすい
いいえ→このまま読んでね!
※何回か飛ばした人は物語が繋がらないかも
「ハァァァァァ…ハァァァァァ…」
息が苦しい。怪物は何かがお腹の中で蠢いていることに気がついた。ぐりゅ、ぐりゅ、と何かを吐き出すように動いているのだ。
やがて、それは口から勢いよく飛び出した。
「ゴェェェェェ!!」
びしゃ!!と吐き出した粘液が床に飛び散る。同時に臀部からもぶしゃ!!と粘液が噴出される。
怪物は、お尻から粘液の塊を吐き出したのだった。
べちゃあ……
粘液は床一面に飛び散り、部屋の壁まで侵食している。怪物はゆっくりと立ち上がると、自分の後ろを見る。
べちゃっ!べちゃっ!べちゃっ!
お尻から吐き出した『それ』は元気良く、粘液の上を飛び跳ねている。
(あれ?これ…さっきの…?)
怪物はそれを見るなり、つい先程、自分のお尻に入ってきたモノだと気がつく。
(私の体から出ていった…?)
べちゃっ!べちゃっ!ぴょん!
そうこうしてる間に、どこかに行ってしまうタコのような生き物。
「…………………。」
なにか愛おしいような、不思議な気持ちになったが、
「シャアア……(まぁ、いっか)」
すぐに興味を無くしてしまった。
[newpage]
「分かれ道ね…」
「どっちに行きますか?」
二人は廊下を歩いていた。通路にはいくつもの部屋があり、中には何かが入っていたであろうカプセルや、機械の残骸のようなものが転がっている。
「こっちかしら」
「わかりました」
右に行く二人。その先は行き止まりだった。どうやらこの廊下は一方通行らしい。反対側に向かうと
「先輩!こっちに何かあるみたいですよ!」
「え?」
ケイシーが見つけたのは、大きな扉だった。しかも、今まで見てきたものよりも大きい。
「何かしら……」
「開けてみましょうよ!」
「そうね…あ。」
カギがかかっている。カードキーが必要なようだった。
「これは……無理ね……」
残念そうにつぶやくエミ。その時だった。
ぐちゅ!ぐちゅ!ぐちゅ!
水が溢れる音がしたかと思うと、そこには…
「シャアアア!!」
「きゃっ!?」
「せ、せんぱいっ!」
音のする方向を見ると、人型の昆虫のようなものがいた。口の部分からよだれのようなものをたらし、臀部からはとろりとした粘ついたものを出している。鋭く、硬そうな爪を見ると、あれに引き裂かれれば無事ではすまないだろうと容易に想像がつく。
驚きのあまり腰を抜かしてしまうエミと、その姿を見て怯えてしまうケイシー。
「だ、大丈夫よ……」
「ひぇ…………」
ゆっくりと怪物はこちらに向かってくる。やられる!2人は目をつぶり、抱き合うが…
「ハァァァァァ……」
怪物は二人を一瞥すると、そのまま歩いて大きな扉の前に行く。すると
ガン!
ガン!
ガン!
「シャッ!シャッ!シャッ!!」
なんと、扉をこじ開け始めたではないか。
音がし始めたため、2人はおそるおそる目を開くと、その先の扉を先程の怪物が鋭い爪を突き立て続けていた。徐々に扉がへこんでいくのをみると
「………えーっと…」
「今のうちに逃げたほうが、良さそうね…」
「そ、そうですね……」
腰が抜けてしまって立てないエミを、ケイシーが背負ってその場を離れる。
ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!
ついに扉の向こうに穴が開くと
メリメリィ!
力任せに穴を拡げる怪物。
「シャアァァァァ!!!」
メリメリ…ギギィィ!!
爪でドアを縦に引き裂き、両腕でガッチリと持つと、今度は横に拡げ始める怪物。
ギギ!ギギ!ギギィィ!!
と金属の扉が容易に裂けるさまを見て、エミたち2人は恐怖におののく。なんて力だ。
やがて扉が怪物が入れるくらいの穴になると、怪物はそのまま入っていった…
「……くっ」
恐怖で体がすくんでしまった二人。怪物はそのまま走り去って行く。
「たすかった……?」
なんとか助かったことに安堵する二人。だが、なんなのだろうか?あれは…?
「先輩、大丈夫ですか?」
「ええ、もう大丈夫」
「それにしても、何だったんでしょうアレ……」
「わからないわ……」
「とにかく、戻りましょう」
「そうね……」
二人は来た道を戻ることにした。
「…そろそろ合流しませんか?カケル君達と…」
救難信号が出されていた船の中、未だに生存者はおらず、変わりに恐ろしい怪物が徘徊していた。みんなあの怪物に殺されたのでは?こんなところに本当に生存者などいるのだろうか?
「そうね、一度戻ったほうがいいかもしれないわね」
そんな会話をしながら、来た道を戻っていく二人。
そのころ、スレイプニル船内では
「………あいつら、ちゃんとやってるかな?」
船長のフィリップが指示を待っていた。もう捜索に向かわせてから3時間は経っている。これ以上は帰りの燃料のことを考えると、
「仕方ないか……」
ピッ!
『船長のフィリップだ。救助班、応答せよ…繰り返す…』
しかし通信は帰ってこない。どうも潜りすぎて通信が途切れているようだ。それとも――――
「………電波妨害、か…?」
「シャアアアアアア!!」
カチャン!カチャン!
金属の床を鳴らしながら小走りになる怪物。どこを探しても出口のようなものが見つからず、苛立っていた。周りにはなにかの機械がピッ!ピッ!と音を立てて動いていた。空気清浄機のようだ。
ドスン!ドスンッ!
バキッ!バキッ!
苛立ちをぶつけるように、近くにあった機械を蹴飛ばす怪物。
バキィン!
ボン!
蹴飛ばされた機械は音を立てて壊れる。煙を吹き上げ、もう使えないことを示していた。
「シャアア…(出口はどこなの?あームカつく!)」
カツン!カツン!
足音をたてながら歩き続ける怪物。その視線の先には大きな扉があった。
ギィィイ……! ゆっくりと扉を開ける。そこは倉庫のようだった。誰もいない、静かな場所だったが、ひとつだけ気になるものがあった。それは大きなカプセルのようなものだった。まるで棺のような形をしているが、中には何もない。
(???)
「シャア?」
不思議そうに見ていると、突然、後ろから声がかけられる。
「………だれかいるの?」
コツ…コツと足音がする。怪物はそちらの方を振り向くと、そこには女性がいた。20代ぐらいだろうか?少なくとも自分よりは年上に感じた。
「きゃっ!!ばけもの…!」
(まぁ…化け物だよね…)
女性は後ずさりをする。どうやら怯えているらしい。無理もないだろう。こんな不気味な生き物に出会ったのだから。そして、逃げようとしたのだろう、背中を向けて走り出そうとした瞬間、
ガッ!
「きゃっ!」
ドシャア!
派手に転ぶ女性。それを見て怪物は
(ドジだなあ…この人…)
と思った。
「ううっ……」
転んだ拍子に足をくじいてしまったようだ。立ち上がろうとするが、なかなか立ち上がれない。
「シャアア……」
怪物は女性に近づいていく。
「こ、こないで!」
必死に懇願するが、怪物は気にせずに近づいてくる。そして、とうとう目と鼻の先まで近づくと
「ハァァァァァ…」
息を吹きかける。白い息はちょっと生暖かい。
「ひゃあっ!?」
驚く女性。それに構わず今度は耳元まで近づき、ささやくように言った。
「シャア…(ねぇ…)」
「ひっ…!」
「シャアアア…(助けてほしい?)」
「ひええ…!」
どう見ても怯えているようなので、怪物は頭をポリポリと書くと、しゃがみこみ、今度は爪を使って
『Can I help you?』
と宙に文字を描く。
「え?」
それを見た女性はキョトンとしている。すると怪物は再び同じことを聞いてくる。
「シャアア……?(助けてほしい……?)」
「え?あ、はい……?」
よくわからないまま返事をする女性。それを聞くと怪物はニチャア…と粘液がまとわりついた口角を持ち上げる。怖い。
「シャアア…(わかった)」
その表情のままそう言うと、怪物はゆっくりと手を伸ばす。すると、女性をひょいと掴み、肩車を行う。
べちょお…
まだ首元の粘液が乾いておらず、女性の服に
「きゃああ!!」
悲鳴を上げる女性だが、次の瞬間には悲鳴とは違うものが口から洩れていた。
だっ!!
怪物はそのまま走り始める。
かっ!かっ!かっ!
速い。振り落とされそうだ。怪物の頭にしっかりしがみつく女性。
「ひぇぇぇぇぇ!!」
(たしか、さっき人がいたよね…)
「シャアア……」
怪物は先程確認した女性2人…エミとケイシー達のもとへ向かった。
かっかっかっかっ!!
「なんの音でしょう…?」
エミが聞くと
「さぁ…それより早くカケル達と合流しようか。」
ケイシーは
「そうですね……」
2人はもと来た道を戻っていく。
「………ボブ先輩。そろそろこの船に入ってから3時間程経ちます。」
カケルはボブに
「そうだな……よし、一度戻ろうか。」
謎の研究施設内に人の気配が無いことを確認した2人は、もと来た道を戻ることにした。あまり長居すると帰りの燃料が心細くなる。スレイプニルの帰りを考えてもここに滞在できるのはせいぜい5時間だ。戻るのにも時間がかかり、ダクトの切り離しにも時間がかかるため、できるだけ早い方がいいのだ。
「戻りましょう。」
「了解した。」
そう言って、二人はもと来た道を戻りだす。
「救難信号の発信源もつかめず、生存者もなし、か…」
「仕方ありませんよ、というか、本当にここから救難信号出されてるんですかね…?そもそも発信されてるんでしょうか?」
「うーん、それはわからないな……しかし時間切れだ。やむを得んだろう。あとは付近の大型船に任せよう。」
「はぁ……結局無駄骨でしたね……」
「そういうな、これも立派な仕事だぞ?」
「わかってますよ……」
そんな会話をしながら歩いていると、ふいに、ガタッという音がした。
「ん?」
「……今、音がしませんでした?」
「あぁ、確かに……何かいるかもしれん。」
と。
「シャアアアアアアーー!!」
かしっかしっかしっかしっ!
「ひぇぇぇぇぇ…!!」
先のT字路を、なにか大きなものと人…?が通っていった。人はなにか大きなものにしがみついてたような…
「…なんだあれは?」
「さあ……でも、人が乗ってませんでした?生存者かも…!追いかけますか?」
「いや、待て!ここは慎重に行こう。まずは様子を見るんだ。」
「わかりました。」
そうして、様子をうかがっていても、先程のものが戻ってくる気配がない。しぶしぶT字路に出てみると
ひゅおお…
「なにも…いませんね…」
「なんて速さだ…あの速度だと、この狭い通路では曲がれないはずだ……どこかに隠れているに違いない。」
「なるほど……どうします?」
「まずは戻って報告しよう。それから作戦を立てるんだ。」
「わかりました。」
本来ならば会えたはず?の彼らと彼女らは、こうしてすれ違ってしまった。
スレイプニル内…
ぴょん!ぴょん!
あのタコのような生物は、スレイプニル内に入り込んでいた。大型船と繋がっているダクトとハッチを開けっ放しにしていたため、
そこから入り込んだのだろう。船内の設備などお構いなしに進んでいくと、ある部屋に入った。
ぴょん!ぴょん!
そこは船員室…カケルとエミの部屋だ。ベッドは壁に埋められるようにして設置されており、その横に机がある。さらに奥に進むとシャワールームがあり、トイレもある。壁紙は薄いピンク色で統一され、棚の上に小物入れが置かれている。全体的に可愛らしい雰囲気だが、部屋の主は男性である。
エミのロッカーが開けっ放しになっている。彼女はズボラなので、こういうことがたまにあるのだ。
そして、その中には、彼女が仕事で使う道具がしまってあったりする。
タコのような生物はそのロッカーの中に入り込むと…
ごそごそ…
エミのバッグの中に入り込む。何か探しているようにごそごそと動くと
ぱたむ。
なんとロッカーが閉められてしまった。焦る生物。しかし…
ガタガタ、ガタガタ…
揺らしても揺らしても気づかれない。ロッカーは一切開く気配がなかった。
「あいつ、ロッカーも開けっ放しって…相方が男なの忘れてんのか?」
整備班の女性だ。ようやくエンジンの調整が終わったので、自室に向かうところだった。イヤホンで音楽を聞きながら来たため、
ロッカーの異音に気づかなかったようだ。
「さーて、わたしもシャワーあびよー!!ベッタベタだよ。ったく…」
ガタガタ、ガタガタ…
いつまでも気づかれない、エミのロッカーであった。
「うわ!」
「うわぁ…」
粘液だらけの螺旋階段。なんじゃこりゃ。先に降りたボブ先輩がこちらを振り向く。
「どうしたー?」
「いえ、なんでもないです……」
下に降りるにつれて、空気が冷えていくのがわかる。これは、かなり下まで続いているみたいだ。
「うっわ、ここどこなんですかね……」
「わからんなぁ……少なくとも、こんなところがあったとは知らなかったよ、と…もうすぐ下に…んん!?」
下まで降りると、相当尖った何かで殴ったのか、ボコボコに凹んだドアと、そこらじゅうに撒き散らされた粘液でベトベトに汚れた床が見える。
「うへぇ……きったねぇ……」
「ふむ……どうやらここで行き止まりのようだ……」
「え、じゃあ、さっきのやつはどこに行ったんですか……?」
「わからない……もしかしたら、このドアの先かもしれないな……」
そう言って、先輩はドアをガチャガチャやっているが、鍵がかかっているらしく開かない。
「………戻るか。」
「………できれば一刻も早く戻りたいです先輩」
「奇遇だな、俺もだ」
そう言って、来た道を戻り出す2人。よくわからないがこの船は旅客船ではなく、それ自体が研究所のような施設だったらしい。
「ところで先輩…道、覚えてます?」
「いや、全く覚えてない」
「ですよねぇ……すいません。」
2人は軽く迷っていた。なにか痕跡のようなものがあれば、まだ希望はあるのだが、そんなものは見当たらない。というか、そもそもこの船自体、ほとんど使われていないようなのだ。
「救難信号出した船、この中じゃないですよね?」
「うーん、どうだろう……可能性は低いと思うぞ?」
「やっぱそうっすよね……」
長い道がほとんど分かれ道が無いことだけが救いか。やがて彼らはあの『とても暑い部屋』の前にたどり着く。
「……なんじゃこりゃ」
「……ドアが裂けてますね」
「うん……こじ開けられたみたいだな」
「いったい誰がこんなことを……」
「わからんな……しかし、この部屋はなんなんだろう。これだけ荒らされているということは、ここにいた何かが、ここから出て行ったということか?」
「おそらく……しかし、なぜだろう……まるで意味がわからんぞ」
そんなことを話しながら、部屋の探索を始める。
「あっつ!!」
「なんだここは…サウナか?」
部屋の中は暑く、湿度が高い。また、なにやら生臭い匂いが立ち込めており、鼻が曲がりそうだ。
「なんだこれ……ってうわ!」
「おいおいどうした…!?」
人間の皮?が血と粘液を纏って落ちていた。ところが中身がないのだ。まるで昆虫の脱皮を間近で見たような感覚に陥る2人だった。
「少女?……ぽいですね」
カケルは皮を裏返すと、べちょっ!という音とともに、少女の顔をした皮を剥いでしまった。べろん…とちぎれた少女の顔。
「うわあああ!!!??なにやってんのお前!?!?」
「ひいい!違うんです!ちょっと好奇心で!!!」
「そんな言い訳通じるわけねーだろ!ばかやろう!早くもどせ!」
「そんなこといっても…ちぎれたんですから!あぁごめんよ!…マジでごめん…」
「シャック!!」
怪物はくしゃみのような音を出す。
「きゃあ!!」
頭にしがみついていた女性は危うく振り落とされかける。
「ねぇ………?」
(???)
「もう少し、ゆっくり歩いてくれない…?」
女性にそう促され、そういえば一生懸命走ってたな、と思う怪物。少しペースを落として、今度はゆっくりと歩き始める。
「ありがとう……あなた、優しいのね」
怪物は少し照れくさそうにした。
そもそも中身は少女である。こんな恐ろしい見た目をしていても、身体が怪物に変わってしまったためその力を試したいという好奇心があるだけで、性格はほとんど変わっていないのだ。
「ねぇ、名前、なんていうの?」
(……えーっと…)
「そっか、喋れないのね…」
「シャ…」
申し訳無さそうに怪物は答える。
女性は優しく微笑むと、
「じゃあ、私がつけてあげるね?」
と提案した。彼女はしばらく考え込んだ後、
「そうね……あなたの名前は……ラミエル。どうかしら?」
と提案してきた。
(……ま、それでいっか…)
首をコクコクと振る怪物。そもそも言葉を話せないので会話は一方的である。怪物や化け物と呼ばれ続けるよりいくらかマシだろうと少女は思った。
「よろしくね、ラミエルちゃん」
「シャ!(よろしく〜)」
カツン、カツンと今度はゆっくりと歩いていくラミエルと女性。いつになったらカケル達と合流出来るのだろうか…?
「あ、先輩、あれは…!」
「ドアが裂けてるな。」
同じように裂けたドアを見つけた2人。そのドアは縦に裂けており、中から光が漏れていた。
「よし、行くか」
「はい!」
ドアをくぐると、そこには大きな空間が広がっており食料庫のようだった。周りはベトベトしたものが床に点々と残っており、酷い匂いを放っている。
「うげぇ……くっさ……」
ボブ先輩は鼻をつまみながら進んでいく。すると、ドアの奥から話し声が聞こえてきた。
「あれ、誰かいますね……」
「そうだな、行ってみよう」
近づいていくと、向こうから足音が聞こえてくる。そして…
ガチャ!
「シャアアアアアア!!」
「うわぁ!」
「なんだコイツ!」
いきなり襲いかかってきたそいつに驚きつつも、なんとか応戦する2人。
しかし…
「人だ!人がいたよ!ラミエルちゃん!!」
怪物の頭には女性がしがみついている!!
「え、え、え?????」
混乱する2人を他所に、怪物の頭にしがみついていた女性は答える。
「安心してください。この子?優しいから襲ったりしませんよ。」
「そ、そうですか……」
「それより、あなた達こそ誰ですか?」
「俺たちは『エイブス』所属、スレイプニル3号機の乗組員です。救難信号を受信し、ここに来ました」
「救難信号を?ということは、この船、いま救難信号出されてるの?」
「スレイプニルのレーダーではここが発信源のようなんですが…あの、あなたは一体?」
「私はここで働いていた研究員なんですが、ある日目覚めると、船内に誰もいなかったんです。」
「なるほど、そうだったんですか……ところで、そちらのかた?…………は?」
カケルは怪物(ラミエル)の方を向き、おそるおそる聞いてみた。
「この子?はラミエル。足をくじいたわたしを助けてくれた人?です。こう見えて優しいんですよ!」
「シャ…(私の名前ラミエルじゃないけど…話せないから放っておこう)」
怪物はそっぽを向く。カケル達は少しホッとした。どうやら危険な奴ではないらしい。
「おれはボブ。スレイプニルの乗組員だ。こちらはカケル。おれ達の仲間だ」
「よろしくお願いします!」
ぺこりと頭を下げるカケル。それを見て慌ててお辞儀を返す女性。」
「他に生存者は?
「いえ、わたしたちの他には、誰も…」
「そうか…」
ボブは生存者がいたことに安堵したが、燃料のことを考えるとこれ以上ここに長居は出来ない。断腸の思いだった。
「よし。これより救護班は生存者2名を連れ、スレイプニルに帰還する。」
ボブ先輩がそう言い、みんなで出口へ向かうことにしたその時。
「やっと見つけた!カケ…きゃ!」
「どうしたエミ?…てうわっ!」
ラミエルの姿を見て驚くエミとケイシー。さっき扉を破壊してたおぞましい怪物だ。そりゃあびっくりするだろう。
「な、なんですかこの子は……」
「えっと、この人はラミエルさんって言って……」
「シャアァァァァ!!!」
「うわああああ!!!ごめんなさいいいいぃぃぃ!!!!食べないでぇ!!!」
エミとケイシーは思わず土下座する。逆に土下座されたラミエルはタジタジする始末。
「シャ…(え?なんで私、土下座されてんの!!)」
両手を振り、なにもしないよ!と意志を示すが、理解してもらうには時間がかかったのは言うまでも無い。
「まあ、こういうわけなんですよ……」
「はぁ……そうなんですか……」
「でも、いい人達ですよ、みんな」
「そうなんですね……」
談笑しながら、ゆっくりと外部待機通路まで戻ってきた5人と1体。ラミエルはあくまでジェーンの足代わりみたいなものである。
ザザ…ザ…!
『こちらはスレイプニル船長、フィリップだ。救護班、応答せよ!』
「お、フィリップ船長の通信だ」
そう言うとボブは通信機を取り出す。
「こちらスレイプニル3号機乗員、ボブだ。どうぞ」
『おお、ボブか!よかった、無事だったんだな』
「無事というかなんというか……ま、とりあえず全員いるぞ」
『そうか、それは良かった。それで、救難信号の発信源は見つかったのか?』
「それが…船長、時間内に発見できず。今も救難信号が出っ放しだと思うんですが、どうしますか?」
『本来ならば発信源を特定するまで…なんだが、我々の船の燃料が保たない。これ以上いたら最悪俺たちまで漂流者になっちまう。一度帰還するぞ。』
「救護は他の船に任せる…ってことですね?わかりました、すぐ帰還します」
「というわけで、おれたちは帰ることになった。それで、なんだが…」
ジェーンは救護者とわかるが、ラミエルちゃん?はどう見ても人間ではないため、取り扱いに困っていた。そもそもフィリップ船長にどう説明するべきか…?
「うーん、どうしたものか……」
悩んでいると、ジェーンが口を開く。
「あの…何か布かなんかで隠す…というのは…?」
……確かに、体長は180cm程度しかないため、布を巻けば、多少は隠せる。ただ、問題はどうやって巻くか、だが……
「あ、じゃあボクがやりますよ」
そう言ってカケルが名乗り出る。
「ありがとう、カケルくん」
「いえいえ、困った時はお互い様ですから」
カケルはニコッと笑うと、自分のカバンから包帯を取り出す。
「用意周到…だな?」
「いえ…みんながケガをしたときに、簡易手当キットとして持っているだけです」
「そうなのか……よし、準備できたな?」
「はい、大丈夫です!」
こうして、ラミエルちゃんは包帯でぐるぐる巻きにされ、ミイラみたいになった。目の部分は2つだけ開けておいたので前は見えてるとは思う。
「これでいいですかね?」
「……まあ、大丈夫だろ。あとはこれを着てもらうだけだな」
そういって、ジェーンの着ていた白衣を着せると、ラミエルの姿は見えなくなった。
「これでひとまず安心かな?」
「そうだな、それじゃあさっさと帰ろうぜ!」
「……………………。」
仕方ないとはいえ、まるで全身火傷を負った白衣の研究員である。さすがにかわいそうなので、後でこっそり脱がせてあげようと思うのだった。
(まぁいい…のかな?)
ラミエルは一人、包帯の中で
考える。この人たちと一緒にいれば安全そうだし、何より居心地がいい。それに―――
『私はこの人たちを護りたい』
なぜかはわからないが、そう思ったのだ。
来たときとは逆のことをし、ダクトを無事収納したカケル達。船外活動も終わり、シールドも外したところで帰路につく。
「はぁ…。」
「疲れたね…カケル…。私もうヘトヘトだよ……」
「俺もだ……」
みんな疲労困憊であった。特にケイシー先輩とボブ先輩は慣れない仕事だったからなのか、フラフラしていた。一方、エミはまだ元気だった。
「ねえカケル!帰ったらご飯食べようよ!」
「そうだね…あ、そうだ、ラミエルちゃん?とジェーンさんも良かったらどう?お腹すいてるでしょう?」
「いいんですか!?ありがとうございます!!」
「しゃー……(わーい!!)」
ジェーンは嬉しそうに、ラミエルは嬉しいのかよくわからない声で答える。
「そうと決まれば、急いで帰らなきゃね」
「おう、そうだな!!」
全員が外部待機通路から室内に入り、やがてスレイプニル3号機は漂流船から飛び立っていった。次なる目的地へ…
船内放送が流れる。
ピッ!
『船長から通達。本機はこれよりタイタンへ向かうぞ。少し長旅になるが各自ゆっくりくつろいでおけ。』
ピッ!
「タイタンって…木星の衛星だっけ?」
カケルが質問すると
「そうだね、木星軌道上にある衛星…4つのうちの一つじゃなかったかな?確か、地球と同じくらいの大きさの惑星だよね?」
ジェーンが答えてくれる。
「そう、地球より小さいけど、いまは移民者がいるんだ。開拓中らしいけどね。」
「ふーん、そうなんだ」
地球と同じ大きさ、ということは、地球でいうところの月にあたるのだろうか?
「ねぇジェーンさん、タイタンには何があるんですか?」
「えーっと……たしか、宇宙港があったような……」
「なるほど、そこに行くんですね」
「うん、そういうことだね」
「カケル君…わたしたちが帰港する星ぐらい覚えておこうよ…」
エミにたしなめられるカケル。タイタンにもエイブスの支社があるため、ちょいちょい帰港はしているはずなのだが。
「いや、でもさ、僕あんまり知らないんだよね」
「え、そうなの?」
「うん、ほら、僕まだ入社して半年くらいでしょ?」
「そういえばそうだったわね」
「だから、全然わからないんだよ」
「そっかぁ、ならしょうがないね」
そういうと、エミはそれ以上聞いてこなかった。
「それにしても、今日はいろいろあったなぁ……」
「そうね……まさか漂流船に遭遇するなんて思わなかったわ」
「ほんと、びっくりしましたよね」
「中は壊れたドアがあったりね…だれがやったんだろう?」
「…………。(わたしです。ごめんなさい)」
「そうだねー(ラミエルの方を見ながら)だれがやったんだろうねー?」
エミはわざとらしくラミエルの方に視線を送る。
(ギクッ!!)
「どうしたの?ラミエルちゃん?顔色が悪いわよ?」
「しゃっ!しゃっ!(な、なんでもないですよ!?)」
冷や汗をかきながら手を振って必死にごまかすラミエル。その様子をみて、カケル達は思わず笑ってしまうのだった。
「はぁ…疲れた疲れた。」
エミは自室のシャワールームに向かった。今日は船外活動したり、怪物(ラミエル)が暴れているのを見たり、色々ありすぎた。
「ところで、あの少女の皮は一体何だったんだろう…?」
ベトベトしていた足元の粘液も、結局なんだったのかわからなかった。
「まぁ、明日になればわかるかな……」
そういって、彼女はシャワーを浴び始めた。
翌朝、彼女は着替えを取るために自分のロッカーを開けるだろう。そしてその中には…
きゅう…
疲れ果てて気絶している、タコのような生物。
「しゃ、しゃ…(ふん、ふん♪)」
「あら、どうかした?ラミエルちゃん?」
あてがわれたジェーンの部屋でルンルンとくつろいでいる、包帯だらけの怪物。
その後、スレイプニル3号機の乗組員がどうなったかは誰も知らない…