元ノンケ同士の惚気話 5

  第一幕

  俺とワタルは最近、成瀬家に居る。とはいえそろそろ帰るんだけどね。

  『少し寂しいな』とか思いつつワタルが淹れてくれたホットココアを口に運ぶ。そういえば最近、ワタルの服の着方が少し変わったような...?なんか...気崩してるっていうか...なんだろ、露出が少し増えてる?寒くないのかな、アレ。あと、俺も色々と危ないからどっちにしろちゃんと着てくれ...

  ハルトとレンは相変わらずラブラブしている。お互いを膝に乗せて撫でたり、食べ物食べさせあったり。いつもあんな感じなんだろうか。羞恥心とかどこに捨ててきたんだあいつら。見せつけられるこっちの身にもなってくれ...

  あと部屋近いのもあってちょっと...アレな声がたまに聞こえてくるから控えるように。耳栓必須だから、聞かされる側は。そのせいで一回ワタルやばいことになってんだぞ。とはいえ顔がすごく赤くなってたってだけなんだけども。

  ワタル「ねぇ、春樹」

  春樹「ん?」

  ワタル「...やっぱなんでもない」

  そこで濁すな。気になるだろうが。という視線をワタルに送ると渋々口にし出した。

  ワタル「その...春樹は......ああいうやつに興味はあるのかなって...」

  ああいうやつ、というと多分...うん......なんとなく察した。

  きっとアレがそーなってコレがあーなるやつだろう、うん。興味『だけ』はある。やろうとは別に思わないかな...そもそも相手が居ない。

  春樹「う~ん...興味だけはある...かな」

  ワタル「そか...」

  そこから暫く俺とワタルの間に気まずい空気が流れた。

  沈黙を貫いていると寝起きのハルトが歩いて来た。さすがに服は着てた。珍しく毛がぼさぼさしている。

  春樹「珍しくはねてるね」

  ハルト「あれ、はねてる?」

  ワタル「はねてる。」

  レン「ねむい...」

  レンも一緒じゃないのか、と思ったけどハルトの足元を這いずっていた。

  ...なんで?

  ハルト「...ナメクジかお前は」

  レン「歩くのめんどい~」

  レンはそのまま床を這いずってこたつに潜っていった。

  その様はまるで水中の小屋に戻っていくカワウソみたいだった。カワウソ...あっそうだ水族館久しぶりに行きたいな。

  我ながら唐突な案が出てきた。

  ていうか下半身入りきってないぞオイ。

  冬に似合わない半ズボンを履いたレンがこたつから下半身だけ出している。多分入りきらなかったのだろう。頭隠して尻隠さずを体で表してるのかな?

  そういえばレンの太ももの内側って白いんだな。初めて知った...

  ハルト「こ~ら、せめて顔は出せ」

  レン「ん~...」

  顔がとろけてるままもぞもぞと移動し始めた。

  俺の横に居るワタルはすごい眠そうだ。寝たいなら寝ればいいのに。ていうか俺も眠い。ちょっと寝ようかな。

  俺はその場で横になった。それを見てワタルも横になった。こたつ暖かいなぁ...

  こたつの暖かさに負け、寝そうになっているとワタルがなにやらもすもす動き出した。落ち着かないんだろうか。

  少し小さいこたつなのと、俺とワタルが互いにイヌ科獣人なのもあってマズルが触れ合いそうなくらいの距離だ。正直心臓がバックバクで寝れたもんじゃない。

  ワタル「ぁぅ」

  こたつ布団をかけなおそうとしたワタルの鼻と俺の鼻が軽くぶつかった。その瞬間俺はびっくり二の腕を机にぶつけた。すげぇ痛い...

  ワタル「...そんな驚かなくてもよくない?」

  春樹「そうは言ってもいきなりだと誰でもびっくりする」

  ワタル「ふ~ん?」

  そう言いながらワタルが意味深ににじり寄ってくる。

  春樹「...?? ......???」

  ワタル「ねぇ、少し前に『そういうことに興味はある』って言ってたよね」

  春樹「...そだけど...それがどした?」

  ワタル「その相手が俺じゃダメ?」

  唐突なワタルのその申し出に俺は驚きと動揺が隠せなかった。嬉しいけど恥ずかしい。

  どこから見ても明らかに狼狽している俺を見てワタルは『俺じゃダメ?』と念を押しているのか耳がぺたーっとなった。

  あーもーこの際だ。やってやらぁ、えぇ。やってやりますよどうせワタルのこと好きなんだもん絶好のチャンスでしょ。

  春樹「わーったわーった。やってやるよ」

  ワタル「ヤケになってない?」

  春樹「正直ヤケだよ」

  ワタル「雰囲気台無しじゃん」

  春樹「雰囲気大事にするのか」

  ワタル「そりゃそうでしょ」

  春樹「...じゃぁ俺から。」

  雰囲気出せないなら自分から行って雰囲気出してやろうじゃないの、な魂胆でワタルの頬に手を添えて顔を近づけた。

  ワタル「えっちょぇぁっまってこっちの心の準備g」

  そっちから言っておいて文句はないでしょ、と思いつつワタルと口を重ねた。

  第二幕

  重ねた口を離したあと、少しの間ワタルは顔を赤くして、さらには口を半開きにしたまま固まっていた。そういう自分もワタルから目をこれでもかというくらい逸らしていた。長い沈黙を破ったのはワタルの方からだった。

  ワタル「......は...るき...?」

  春樹「ん...?」

  ワタル「...ほんとに...俺でよかったの...?」

  春樹「......そうじゃなきゃキスなんてしない」

  ワタル「ぁぅ...」

  もう恥ずかしがる必要なんてない、そう思ってワタルの体を抱き寄せた。やっぱりワタルの匂いは落ち着く。

  ...前にもこうしたことがあったような...無かったような......思い出せない...

  大事なはずなのに、思い出せない。生活が毎日早朝から深夜まで仕事だったから記憶が一部欠落したんだろうか。

  ワタル「...暖かい」

  その欠落した記憶のことをワタルに言えないでいる。今はもう仕事も辞めてるしわざわざ言う必要もない。またワタルと居られるわけだし。

  ハルト「俺とレンが居るってことも忘れてなんてことしてんだ」

  春樹「あっ」

  忘れてた、ここ成瀬家だった。

  レン「...お熱いね」

  ハルト「俺らだって負けてないんだからな」

  見せつけなくていいから。あんたらが死ぬほど仲いいのは周知の事実だから。

  普通のこたつよりもかなり大きくて使いやすいこたつ、その温もりに包まれながら四人で暫く世間話やら結婚生活はどんなものなのか色々聞いた。相変わらずレンは気の赴くままに寝たりお茶を飲んだりアイスを食べたりしていた。よく太らないなそれで。

  ハルトが言ってた『レンは子供っぽくてかわいいんだぞ』がなんとなく理解できた気がした。背も小さい方だし動きも子供っぽいからかわいいのは納得だ。そういうハルトだってたまに子供っぽくなるじゃないか、というのはその辺に置いておこう。

  ワタル「そういえば『レンは子供っぽくてかわいい』って言ってたけどハルトだってたまに尻尾ブンブンでレンに甘えるじゃん」

  こいつ普通に言いやがった。

  ハルト「たまにはいいじゃんたまには」

  春樹「尻尾振ってるワタルは見たことないな」

  ワタル「ま~ぁね」

  レン「自慢げに言わなくてもい~じゃん」

  そうレンは口を尖らせて言う。レンの尻尾はゆらゆら揺れていた。そもそもイヌ科とネコ科じゃ尻尾が揺れる条件的なものってたしか違うよな...?

  まぁいいや。とそんなことを考えているとワタルが俺に寄りかかってきた。

  春樹「ん?」

  ワタル「もう遠慮する必要ないもんね~」

  春樹「...あ~も~好きにしろ」

  ワタル「えへへ」

  ワタルが今までに見たことないくらい笑ってる...あ、尻尾

  春樹「...ワタルが尻尾揺らしてるの初めて見た...」

  ワタル「えっ」

  自分の尻尾が微かに揺れていることに気づいてなかったらしい。急に顔が真っ赤になった。

  そんな様子が可愛らしくて、ワタルの首に顔を埋めた。まぁワタルは首に顔を埋められるほどの長毛ではないのだけれど。でも、ふわふわで、いい匂い。だから顔を埋める。

  ワタル「わふぅ、くすぐったいってぇ...」

  ハルト「幸せそうで何より。」

  刹那「お~お~ここでおっぱじめるのか?」

  春樹「なんでそうなる」

  刹那「そりゃハルトとレンhムガ」

  春樹「...?」

  ワタル「?」

  レン「キニシナイデネ」

  春樹「なんで急にカタコト?」

  ワタル「さぁ。」

  第三幕

  予定より長く居座っちゃったので今日変えることにした。外に出るとやっぱり真冬の寒さを感じた。こんなに寒かったっけ、と思ったはいいものの中が暖かすぎただけだなこれ。

  ...欲を言えばここに住みたい...

  仮にもう少し居てもいいゾ、と言われたら素直に受け入れよう。

  春樹「さっむい...」

  ワタル「ね~」

  和也「...もう帰るのか?」

  ハルカ「想定より早いわね...」

  想定より早いってどれだけ居るつもりだと思われてたんだ...?

  峻「もうかえっちゃうの...?もっといっしょにいたい...」

  春樹「うっ」

  泣きそうな顔でこっちみないで...

  刹那「そうだぞ。もっと居てもいいんだぞ。なんなら住め」

  ハルト「うんさすがにそれは飛躍しすぎだね。」

  レン「でも結局はハルトもそう言う側に行っちゃうじゃん」

  ハルト「反論できないのが辛いよほんと」

  春樹「...ならもうちょっと居てもいいのかな」

  峻「...! わぁい! わぁい!」

  かぁゎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃッ!!!!

  ワタル「春樹、峻君の可愛さのあまり死んじゃいそう助けて」

  ハルト「とりあえず風邪引くから中に引っ張り込むぞ。じゃぁよろしく、レン」

  レン「えっそこで俺に振る!?」

  ハルト「だって春樹達の車、すぐ帰るのかなって適当に放置したままじゃん」

  春樹「待って、プラスで何日泊まると思ってるの?」

  成瀬家一同「2週間くらい?」

  ...もういいや。お言葉に甘えさせてもらおう。

  春樹「...じゃぁ2週間よろしくお願いします...」

  ハルト「よしきた。とりあえず車移動させるから先入ってて。」

  春樹「はいよ。」

  俺とワタルは成瀬家での生活延長編に突入した。ゲームみたいな呼び方してるけど実際この通りだから呼称を変えるつもりはない。

  暖かい室内でゆっくり過ごせそうだ...

  待ってそういえばワタル仕事どうした!? 後で聞かなきゃ...いや、在宅でもだいじょぶって言ってたっけ...?まぁいいや。ワタルはちゃんとやってるだろうし気にしなくてもいいや。

  ハルト「......よかったね。『元通り』になれて。」

  ワタルの話を聞いたところ、一度春樹と付き合ったことはあるらしい。けど、仕事のせいでそのことを忘れてるんだとか。

  ハルト「もう...心配しなくても大丈夫、だよね」