野望編 第五十四話 進む策謀

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  祝勝会の支度を整える為にプルルと別れたダイン達はティアスの部屋へと戻って、祝勝会までの一時を過ごしていた。

  リレッタは重要な話が有る様で、盗聴に対する防備が整ったティアスの部屋までその話題を控えていた様だ。

  リレッタ 「リッタはそれ程気にしてませんが、ルゥ様が心配性なのでここまで伏せてましたが、ルゥ様はダイン様との会談をお望みです、それも時期は指定せずにルゥ様が直接テガスに赴くとの事です」

  ダイン 「まぁ情報を隠匿するのは賢いやり方だとは思いますが、それだと豪華なおもてなしが出来ませんね」

  ティアス 「テガスに有るお菓子だけで満足なさると思いますよ、ティアスも昨日食べなかった事を後で後悔しましたから」

  ダイン 「まぁ、ある程度は常備してますが遊魔専用のモノが多いですからね、遊魔は穀物を糖分に変換してそれを母乳に含ませる事が可能なんです、ですが遊魔母乳の菓子は人間には色々と都合が悪いんですよ、ルゥに出したら一服盛ったと思われてしまいます」

  リレッタ 「確かにティアスの母乳は何だか凄かったです、美味しいんですけど頭がクラクラしてましたわ」

  ティアス 「そうなんですか、ティアスはプルルの母乳を美味しく頂きましたけど」

  ダイン 「遊魔用に調整されたモノですからね、お互いに母乳を与え合う事で絆が深くなるのを感じますよね」

  ティアス 「はい、プルルは姉妹で娘で母親って感覚です、とても安心出来るんですよ」

  ダイン 「遊魔同士の仲が良いのはその為ですよ、お互いの母乳を飲み合えばより深い絆が産まれる訳です」

  リレッタ 「乳魔も母乳を飲み合いますけど、そこまでの絆は無いと思いますわ」

  ダイン 「それは私がそういう風な意識を与えたからですよ、牝同士が仲良く成らないと新しい牝が増やせませんから、そして今のティアスは新しい牝にも興味有りますよね」

  ティアス 「はい、女性を見る目が変わってしまいました、重要なのは処女で有ることですよね、処女じゃ無いと遊魔の資格が有りませんから、それを満たした上で値踏みしてますね」

  リレッタ 「そんなにも変わるモノなのですか」

  ティアス 「ダイン様が求めているだけじゃ無くて遊魔達が家族に成れそうな娘を値踏みしてるんですよ、ティアスも候補を考えてますし」

  ダイン 「遊魔の為になる娘なら大歓迎ですよ、私もこの世界で楽しむ方法を模索していますので、遊魔の力になる人材は大歓迎です」

  ティアス 「はい、その為にもダイン様には貴族になって貰う予定です、今日の功績が有れば簡単なんですけど、問題は領地なんですよね、ダイン様が楽しめる領地が前提になりますから」

  ダイン 「難しいかも知れませんが、テガスは色々と気に入ってますね」

  ティアス 「ポロルグの重要な土地ですから難しいとは思いますけど、やり甲斐は感じますよ、ティアスもテガスは好きですし」

  ダイン 「実はフェカトとも策を考えてはいるんですよ、そこで上がった計画はポロルグの隣国ツェーリアをポロルグ領に併合する事です、ツェーリアとポロルグは元は一つの国だった様で、ツェーリア人はポロルグに憧れている様ですから」

  ティアス 「フェカトらしい策略ですね、領民が騎士を雇って独立する例は過去にも有りました、そして人類法の解釈によってはポロルグとツェーリアの合併は十分可能だと思います、問題は住民の煽動なんですが、今のツェーリア王は余り評判がよく無いので可能かも知れません」

  ダイン 「いや、可能ですよ、そして領地の増えたポロルグはククジア国内のバランスを取る為に弱体化が望まれます、そうならばテガスを手に入れ易くなりますし、後押しする手段も今日思い付いたんですよ」

  リレッタ 「面白そうな話しですわね、リッタもお手伝いしたいですわ」

  ダイン 「当然リッタにも働いて貰いますよ、具体的に言うと、エポポ・ゾッフォへの調整をテガスのみで行うんですよ、これならテガスに中立性を求められますよね」

  リレッタ 「確かにその条件を成立させるには、テガスがポロルグ領ではクガトの了承は難しいですね、でも無理矢理ダイン様を王都に拘束してしまうかも知れませんよ」

  ティアス 「それは有りますね、ですから今晩ティアスがテガスにお連れします、名残惜しいですがダイン様の自由が奪われるのは我慢出来ません」

  ダイン 「実力で逃げるのも可能ですが、ティアスに任せますよ」

  ティアス 「はい、今晩動けば何処にも手出しは出来ない筈です」

  リレッタ 「そもそもクガトは干渉しないと思いますわ、ルゥ様もダイン様とは仲良くしたい様ですから、リッタはその為の贈り物なのですわ」

  ダイン 「それは有難い、リッタに関してルゥの了承が得られた訳ですね」

  リレッタ 「はい、お互いが幸せなのが一番だと言っていましたわ、それとダイン様がリッタを手懐けた方法にとても興味を持っておられましたわ」

  ダイン 「私の感覚では何でも無い事ですが、アーグルとルゥ達の世界では異質な事なんでしょうね、アーキアも魂には干渉出来ないと言ってましたし、私は感じませんけど」

  ティアス 「そうなんですか、よくふわふわした魔力の塊が有るじゃ無いですか、アレが魂ですよ」

  ダイン 「それは感知出来ていますが、意思の様なモノは感じませんよ」

  リレッタ 「干渉出来ないのが魂ですからね、人が生きている時は身体に留まっていて死ぬとああして漂うんですわ、そして自然へと帰って行くんです」

  ダイン 「魔法世界独自の認識が有るんでしょうか、少なくともアレは私の世界には無かったと思います」

  ティアス 「魂が無いのに人が存在していたのですか?」

  ダイン 「それはアレが魂という認識を疑うべきでは、私にはただの魔力の塊ですが」

  ティアス 「人類法典には魂と記されてますが・・・」

  ダイン 「ああ、この世界の人間にとって絶対の教えでしたね、ですが、教えを信じて真実を追求しないのは愚かな行為です、人の言う事に絶対など存在しないですから」

  リレッタ 「現にダイン様はリッタ達に真実を授けてくれましたわ」

  ダイン 「アレは私に都合の良い真実ですよ、見方によっては邪教そのものじゃ無いですか」

  ティアス 「より証明出来る方が真実に近いというのがダイン様の考えでしたね、なら人類法典よりもダイン様の方が筋は通っていますよ、人類法典には魂である根拠など記されていませんから」

  ダイン 「魂であった方が上手く人を纏められるのかも知れませんね、私は人類法典をさらっと読んでみたぐらいですから」

  リレッタ 「ですが、ルゥ様の世界にも此処と同じ魂の概念が有るという事はやっぱり正しいのでは有りませんか」

  ダイン 「なら、何故リレッタやティアスは私に従ってくれるのですか?」

  リレッタ 「それはダイン様を愛しているからですわ」

  ティアス 「全くその通りです」

  ダイン 「ですが、昨日の朝は二人共私を愛してはいなかったですよね」

  リレッタ 「そもそもお会いしていませんでしたから、でも、それだと何故これ程愛おしく感じるのでしょう」

  ダイン 「その違和感が私が魂を否定する根拠ですよ、私は二人の脳に私を絶対視する情報を植え付けましたから」

  ティアス 「脳ですか、遊魔の情報だと思考を司るところですよね、これが正しいとすると確かに魂は存在しないと考えられます」

  ダイン 「人類法を犯す禁忌はこの世界の人間の根底に完全に根付いてますね、遊魔の常識を得ても引き摺られているとは、恋愛感情よりも根が深いですね」

  ティアス 「恋愛は無くても生きていけますが、人類法を犯すと人類圏からの放逐ですから、それはほぼ死と同意義です」

  ダイン 「生存本能に深く刻まれているという事ですか、確かに人類法の考えには共感しますが、偽りは正すべきです」

  ティアス 「ですが遊魔の中だけでお願いしますよ、いくら異世界人でも人類法典に異を唱えると秩序を乱すとして流刑ですよ」

  ダイン 「それなんですが、人類圏以外の土地があるんですね」

  ティアス 「はい、混沌とか暗黒って言われてる大陸が、魔王ザキトスが侵攻の為に放った魔獣が繁栄していて、とても危険なところだそうです、交流は有りませんからどうなってるか謎なんですよね」

  リレッタ 「ルゥ様も興味持ってましたね、フーティア使って何度か行ったみたいですわ」

  ダイン 「やはり飛行出来るマギガントはいいですね、私もこの世界を色々と見聞してみたいですよ」

  ティアス 「ザガルバに空きが有ればいいんですけど、あ、でも、あの計画が使えるかも」

  ダイン 「その言葉、気になるじゃ無いですか」

  ティアス 「実はポナリアをベースにした複座機を作る計画が有るんですよ、でも、予定していたフェカトの機体をテガスに送ってますので進んで無いんですよ」

  ダイン 「なるほど、確かにフェカトの機体は一段能力が劣っていましたから、要人移動仕様の複座機に改造するのは良いかも知れませんね、ですが肝心のフェカトが今は飛べませんからね」

  ティアス 「ダイン様が原因じゃ無いですか、ですがフェカトの妹達に命じて王都に運ばせましょう、ルゥ様との同盟が締結されれば選定戦は行われませんよね」

  リレッタ 「どうでしょう、ジノン王子はやる気の様ですから、リッタにも出場する様に依頼して来てますし、マギガントも欲しがってます、ムゥディ・フーティアを持ち出す事も考えてましたよ」

  ダイン 「まぁルゥの支援が無い限りは問題無いでしょう」

  ティアス 「はい、それに今日の勝利で大きくティアスに傾くでしょうから、ゾッフォの事でクガトにも貸しを作りましたからね」

  リレッタ 「第一、ダイン様に勝てる騎士なんていませんから、リッタは自信有ったんですけど」

  ダイン 「リッタも私を楽しませてくれましたよ、不利な状況からの勝利は格別ですから」

  基本お喋りな遊魔達は三人も居れば全く話題に困らない、むしろダインを含む三人でいる為に他の行為に及ばないが、これが密室で遊魔が二人ならばお互いを慰め合う行為が始まってしまう可能性が有るのだ、そう、ティアスとプルルは白昼闘技場の観客席でも事に及んでしまった前科もある。

  ティアス 「ダイン様って、交尾よりもお喋りが好きですよね、ティアスは何時でも使って貰って欲しいのに」

  唐突なティアスの問い掛けにダインは返答に困ってしまう、恋愛に疎いダインは女性から迫られる事などほぼ無く、自分が主導権を取っていない話題だと余り上手く話す事が出来ない、そして色恋沙汰はとても苦手な話題なのだ。

  リレッタ 「確かにこれ程魅力的な女性が二人もいるのに、触れようともしませんですわよね、実は女性がお嫌いだとか・・・」

  ダイン 「どうでしょうね、ですが女性について考える事よりも他を考える事の方が遥かに多いんですよ、今もテガスに戻った後の事を考えていたりします、勇者リエルが手に入りましたからね」

  ティアス 「これですよ、目の前の良い女より他の女の事考えているんですよ、でもダイン様が性交よりも女性を自分好みの遊魔に変える事の方が好きなのは解ってはいるんですよ、つまりティアスがもっともダイン様の気を引いていた時は終わってしまったわけです」

  ダイン 「悲しい事言ってますね、ですがそうでも無いんですよ、ティアスにはまだ淫魔形態の付与が残っていますし、淫魔形態の付与だけじゃ無くて他の能力の追加も有り得るんですよ、ですからティアスが思っている以上に私がティアスの事を考えている時間は多いかも知れません」

  リレッタ 「でもそれって、ダイン様の作品としてのティアスの事じゃ無いんですか、それと身体を弄って無いリッタはもっと思われてますよね?」

  ダイン 「鋭いですね、リッタが私のモノに成りたいのと同じぐらいに私ももっとリッタに触れてみたいんですよ、ですがルゥの了承は絶対です、未知の存在と争うのはリスクが大き過ぎますから、だから自由に出来るティアスの方が捗るんですよ」

  ティアス 「残念でしたね、ダイン様の愛は同族に対しての方がお強いんですよ、だからリッタよりティアスの方が思われてますね」

  ティアスが勝ち誇ったところで、部屋にメイドが訪れて祝勝会の準備が整った事を告げた。

  主賓であるティアスとダインの登場は会の序盤での登場まで猶予が有る様だが、出番の無かったリレッタは一般参加者として今から会場入りして欲しい様だ。

  三人目の協定戦のメンバーだったリレッタの存在が公に伏せられた理由はよりクガト側に恩を売る狙いが有り、リレッタもその事は了承している。

  だが、ダインと離れる事には素直に納得で出来ないところも有った、そう、リレッタが離れた隙を狙ってティアスが積極的な攻勢を掛ける事が目に見えていたからだ。

  おまけ

  ツェーリア王国 ポロルグ領の隣国、元はポロルグ王国と一つの国で有ったが王位継承争いがエスカレートして二つの国家に分裂してしまう、歴史柄ポロルグ王国とは何かと対立し、ポロルグの流通阻害された時は助けるどころか諸国に加担までしている。

  元々保守的なお国柄でマギガント開発の賛否で分裂した経緯を持つ、保守的な国家で有る為主な産業は農業で魔導技術は殆ど有していない、だが、その農業でさえも変わり映えしない農作物を進歩しない栽培方法で生産している為に生産性も低く、国民を十分に満足させれるほどの生産量を保有していない。

  ポロルグがククジアに併合されから発展している事を苦々しいしく思っているが、むしろこれは権力者達だけの認識で、民衆は国を富ませる事が出来ない元体制に失望している。

  民衆の一部では元国家体制を転覆させる為の地下組織が結成されているが、国家自体が貧しい為に加担してくれる勢力を見出せていない。