混沌探索編 第三十六話 蝙蝠遊魔リリルカ

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  眠りに落ちたリリルカに対して、ダインはその変容を観察する為に遊魔椅子の形を変形させて行く、具体的には変化の多い背中がよく見える様にリリルカを膝立ちで吊るす様な形に変化させたがリリルカの意識が目覚める事は無い。

  メファティ 「支柱が左右に別れて前後の姿が解りやすくなりましたね」

  ダイン 「遊魔への魔進化は記録されてますから、より全身の変化が解る方法を模索していたんです、虜囚の様な姿になってますが、これは解りやすいですね」

  メファティ 「はい、こうやって乳を吸う事も出来ますから」

  メファティはリリルカの乳首に口を移すと甘噛みしながら滲む母乳を堪能する。

  ダイン 「やはり哺乳類の因子を持つ方が乳質が良いですね、まぁ人間も哺乳類ですから相性は良さそうです、それにリリルカはフルーツ食のオオコウモリをベースに皮膜の形を大分アレンジしてますからね、何せオオコウモリには尻尾が無い様ですから」

  メファティ 「尻尾が無いって、遊魔にするには難しい動物ですよね」

  ダイン 「そこはイメージですよ、実は小さなコウモリで考えていたんですがアレは顔が可愛くありませんから、遊魔は私の美の体現ですから元が醜い生き物は使いたく無いんです、でも、小さなコウモリじゃ無いと尻尾が無いので両者の特徴を活かしてデザインしたんですよ」

  メファティ 「その姿が今からお披露目されるんですね、背中の膨らみから尻尾の先まで線が走ってますが、あの線も変化するんですよね?」

  ダイン 「翼と尻尾の先までの皮膜が成長する線です、風を受ける部分が大きい方が飛行性能が上がりますから」

  ダイン芸術たる遊魔は各種生物の特徴を備えるが、忠実に再現されているわけでは無い、むしろダインの美意識から外れているところは容赦なく排除されてデザインされる事が多い。

  メファティ 「参考にした生物はいるけど、ダイン様の創造の割合が大きいわけですね、遊魔自体が新しい生物の創造でもあるんですよね」

  ダイン 「私の居た世界では神の領域を犯す禁忌とか言われるでしょうね、神など所詮人間の想像物に過ぎないのにそれを崇めるなど馬鹿馬鹿しい話しです、与えられた力は存分に行使すべきです」

  メファティ 「でもそれはダイン様が用いるからだと思います、力のある愚者など世界の迷惑です」

  ダイン 「私も馬鹿だと思いますが・・・」

  メファティ 「いや、ダイン様は馬鹿を解ってやっているので愚者だとは思えません、本当の愚者は自分の愚かさを解っていませんから、現にメティはダイン様の馬鹿を楽しめてますから」

  ダイン 「メティが楽しめているなら良かったです、誰も楽しめていないならやる意味も薄いですから」

  メファティ 「ダイン様は好き勝手して下さい、それが結局遊魔の為ですから」

  ダイン 「それでリリルカに負担を強いているんですが・・・」

  メファティ 「そこは気に病む必要なんて有りませんよ、奇妙な山の探索など人のままだと絶対に叶わない夢ですから、例え命を落としてもリリルカは後悔なんてしませんよ」

  ダイン 「私は後悔しますけど」

  ダインが遊魔達を特に大事に扱っている事はメファティも十分理解している、本来のダインの立場なら幾ら使い捨てても次を作ればいいだけのはずだ、だが、ダインは本当に遊魔一人一人に愛情を注いでいる様で、その事が遊魔の弱点であるとメファティは感じていた。

  だが、そのメファティの不安は目先の興味に打ち消されられる、リリルカの背中が急激に膨れ上がって開花の時を告げているのだ、そしてリリルカの意識も戻った様で自身の置かれた状況を直ぐに理解した様だ。

  リリルカ 「背中がこそばゆいですね、延ばせばスッキリ出来そうです」

  ダイン 「腕を曲げたままでは辛いのと同じですよ、目一杯延ばせば楽になりますよ、遊魔部位にも血流は有りますから」

  メファティ 「目視出来なくても尻尾を感じます、手で探っても存在して無いんですけど、存在と魔力は感じるんです」

  ダイン 「今は実感し難いとは思いますけど、消した遊魔部位は別空間に存在していて本体を繋がってます、生えるのは今のリリルカの様に最初の一度だけで無くなるわけじゃ無いんですよ、切断した尻尾は別ですけどね」

  リリルカ 「さっきまで何だか解らなかった事が大体理解出来てます、これが遊魔の知識というモノですか、知らなかった真理の道が開けて多くの事に答えを出せそうです」

  ダイン 「それで北部の守護者に対しての感情はどうですか、多くを推測出来てしまうと恐怖は増すでしょうから・・・」

  リリルカ 「確かに怖さは認識してますけど興味が優ってます、それに遊魔の身体への自信も芽生えてます、この力で遅れを取るとは考え辛いです」

  ダイン 「余り過信しないで下さいね、確かに人間とは比べられない程の大きな力ですが、相手は未知数ですから」

  メファティ 「ダイン様は心配し過ぎですよ、遊魔の力を活用出来れば魔龍だってやり込める事が出来ますよね」

  ダイン 「ミュウは魔龍生活で馬鹿になってましたから」

  リリルカ 「酷い事言ってますね」

  ダイン 「生活が単調だと思考も鈍るんですよ、だから妄想する事は大事ですよ」

  メファティ 「自身の想像で相手を過大評価してる気もしますけど・・・」

  ダイン 「対抗策は多い方が安心出来ますから、それに北部の守護者の力は想定する材料すら不足してますから」

  リリルカ 「リリルカは大丈夫だと思いますけど、ルト姉様に仕込まれたインプラントはルト姉様を害する事は無かった様ですから、それにダイン様のお考えでもある高度知性体同士なら折り合えるという考えも理解出来ますから」

  ダイン 「私がそう思うだけで根拠は有りませんけど、ですが高度知性体は単体での進化は不可能だと思うんですよ、複数の個体で役割を分担しないと高い文明を築けるとも思えませんし、ですが、幾ら高い社会でも強引な方法で手中に収めてしまう個体がいる事も私の世界の歴史が証明しているんですよ」

  メファティ 「ディーラルの王政も近いかも知れません、三天人から統治権を認められたと言ってますが、あの三人が考える統治と今の王族が行っている統治は別でしょうから、そもそもあの三人は人を従えようとはしてませんよね」

  ダイン 「自らを滅びる存在だと達観してましたから、魔獣の居ないこの土地ならば耳長の自治領ぐらい築けそうですが・・・」

  リリルカ 「男はクフィカールに乗れないそうですよ、昔の文献でそういった記述を読んだ事が有りますから、男性が居ないから新しい世代も産まれませんし耳長の集落も築けませんよね」

  ダイン 「私はクフィカールに乗りましたけど、何も言われませんでしたよ」

  リリルカ 「面と向かってダイン様の望みを否定出来る遊魔なんて居ませんよね、それに遊魔の男なんてダイン様以外は想定されてませんよ」

  ダイン 「まぁ今度ルト達に尋ねてみましょう、本当に男はクフィカールに乗れないのか・・・」

  メファティ 「でも食後の会議で、クフィカールの修理はダイン様って決まったじゃ無いですか、あの時は何も言ってませんでしたよね?」

  ダイン 「あれは修理出来そうなのが私しか居ないからでしょう、耳長の誰もが魔導具を修理出来るわけじゃ有りませんから、むしろ修理は貴重な技術だと思います」

  リリルカ 「クフィカールという天人の翼については、リリルカも見た事有りませんから巨人の姿とは記述に有りましたけど」

  ダイン 「巨人魔導具に関しては、その内二人にも扱って貰いますよ、三天人が失った力を私が復活させれば良い力の証明に成りますからね」

  メファティ 「確かに・・・幾ら予言されているとはいえ三人ものにしただけで王だと言われても王国の民は納得出来ないでしょうから・・・」

  ダイン 「ユーマの技術を示す事で圧倒出来るでしょう、人類大陸ですら認めさせていますからね、これからディーラルは楽しくなりますよ」

  リリルカ 「今でも十分楽しいですけど、期待で背中が膨らんで来てます」

  メファティ 「本当ですね、中で指が蠢いてます」

  ダイン 「蝙蝠型は指の動きで推力を生み出しますから、手の甲にあたる部分までは固定された皮膜で固定翼の役割を担いますが、指の皮膜を扇ぐ事で推力を生み出します」

  リリルカ 「遊魔の知識があっても難しい事言ってます、ですがイメージは解ります、鳥が飛ぶ時の要領何ですね」

  ダイン 「まぁ実際に飛んでみて確かめて下さい、多分、レブナン島ぐらいまでは一日で飛べる筈です」

  メファティ 「なるほどリリルカは別の意図も有る遊魔というわけですか・・・」

  リリルカ 「人類大陸文明の島ですか、面白そうですよね、姉様達にも早く会ってみたいです」

  リリルカの前向きな思考は魔進化を加速させる、背中の膨らみが大きく横に拡がって裂けると中から液体と共に皮膜が付いた大きな手が左右に拡がって行く。

  ダイン 「想定通りの姿です、内側と外側で違う毛並みも我ながら良い仕事をしたと思います」

  メファティ 「細かいですね、何か意図が有るんですか?」

  ダイン 「下になる方が早く空気が流れて圧力が高くなります、そして圧力が低い上側に身体が浮かび上がるんですよ、魔力だけで飛行したならば一日でレブナン島までは飛べませんからね、リリルカは空を飛ぶ遊魔の最先端です」

  リリルカ 「ダイン様に気を使って貰えてリリルカも満足ですよ、早く空を飛んでみたいです」

  メファティ 「ダイン様って、何か思い付くと色々な方向に伸びて行きますよね、ルトは翼増やしてたのに・・・」

  ダイン 「ルトは高速飛行を追求した感じですね、対してリリルカは長距離飛行です、飛行と言っても延ばす方向性は色々と有るんですよ」

  メファティ 「でも一日で違う方向性の遊魔を生み出しちゃうなんて・・・ダイン様の創造性は人智を遥かに超えてます」

  ダイン 「一番遊魔歴が長いのは伊達じゃ有りません、常に進歩するのが遊魔、なら私が一番進歩しているんですよ、もっとも身体能力は下の方ですが・・・」

  メファティ 「確かに・・・メティよりも飛ぶのが遅かったですよね」

  ダイン 「私の飛行能力は後付けですからね、この世界に来てから発現させた能力です、つまり身体能力に関しては後発の遊魔の方が優れているんですよ」

  リリルカ 「遊魔としての経験の無さを身体能力で補ってるわけですね」

  ダイン 「あくまで遊魔の能力前提ですが、リリルカの様に人の時に蓄えた知識は遊魔になる事で更に活かせる筈です」

  メファティ 「つまり、リリルカや三天姉達は蓄えた知識があるから伸びるって事ですか?」

  ダイン 「いや、結局は本人のやる気です、幾ら知識が有っても使いこなせないと無意味でしょう、自分の得意な事を早く見つけるのが成功の近道です」

  メファティ 「既に自分の道を見極めているリリルカが羨ましいです、メティは何が得意なんでしょう」

  ダイン 「メティは知る事を望んでいたじゃ無いですか、例えリリルカと方向性が似ていてもメティなりのやり方をすればいいんですよ」

  メファティ 「ならダイン様にお願いが有ります、メティに人類大陸遊魔との接触をお命じ下さい」

  ダイン 「遊魔としてのメティは飛行能力でリリルカに劣るので、辛い旅になるかも知れませんよ」

  メファティ 「でも、リリルカが北部の守護者と接触している間に、ユーマ共栄国と接触している者が居た方が良いですよね?」

  ダイン 「確かにユーマの戦力を少しこちらに割り振りたいとは思ってましたが・・・それにメティには王都の情報工作を頼みたいと思っていましたが」

  メファティ 「それは光栄な仕事だと思いますが、多分メティよりも適任は直ぐにも見つかるでしょう、ならば早期にユーマ戦力を呼び寄せた方がダイン様の構想も捗ると思います、メティ辺境の村娘ですからディーラルの情勢は得意じゃ有りませんよ」

  ダイン 「私と居る誘惑を跳ね除けての希望ですから、その決意は本物でしょう、メティの望みを叶えましょう、早速明朝レブナン島に向かって下さい、ただし私が来たルートでは無く、西に移動して海上に出てから南下して下さい、ユーマ戦力の移動もそのルートでお願いします、混沌大陸の地下には何が潜んでいるか解りませんからね」

  

  メファティ 「ダイン様もちゃんと遊魔を増やして身の回りを整えて下さいね、三天姉様もリリルカもミュウ姉も家事は不得意な様ですから」

  ダイン 「拠点が確保出来たので大丈夫ですよ、牝を拐かして連れ込む場所を確保出来たのはありがたいです」

  リリルカ 「耳長屋敷は王国民を寄せ付けませんからね」

  ダイン 「リリルカは知る限りの有能な処女のリストを作り上げて下さい、王都で遊魔の数を増やして平和的にディーラルを手に入れましょう」

  リリルカ 「解りました、でもディーラル女性って身持ち悪いですよ」

  ダイン 「男性上位社会ですからね、まぁ私が直に探しても良いでしょう」

  リリルカ 「多分、その方が良いと思います、リリルカは籠る事が多いので」

  ダイン 「私も社交的じゃ有りませんけど・・・」

  ダインの北部活動はいよいよ本格的に動き出した、人類大陸でやり残している事も多いが、強い遊魔国家を産み出すにはこの地がより適していると判断したからだ。

  北部の守護者とディーラル王国、まだ思い通りにならない事も多いが、国土、埋没資源、人口の観点からディーラルは遊魔の国を作る場所として現時点の最適解でもある。

  おまけ

  リリルカ            遊魔リリルカ

  淫      125       淫   2235

  技      110       技    755

  体      280       体    875

  魔     2700       魔 125000

  学士という立場にあったリリルカはその知識と好奇心を買われて遊魔の仲間入りを果たした。

  リリルカは最初から北部の守護者の遺跡を探索する為の遊魔であり、その魔進化の方向性は逃げ足の早さである、厳密には足では無く飛行速度だが、同じ飛行強化型の天使型遊魔に比べて長距離移動に優れている。

  天使型が高速飛行戦闘型という分類であるのに対し、リリルカの蝙蝠型は負担軽減型長距離飛行遊魔で、同じ飛行重視遊魔でも明確な違いが生じている。

  また、蝙蝠型と名付けられているが元生物は存在せず、ダインの創造した今までに無い蝙蝠の遊魔でもある。

  具体的にはオオコウモリがベースとなっているが、狐的な耳と尻尾を備えている、特に尻尾は元生物からもっとも大きく掛け離れた部分で、ダイン蝙蝠はこの長い尻尾を波打つ様に上下させて推力を生み出すという、怪しげな飛行方法を備えており、この飛行方法を確立した結果、身体の負担を減らしながら長距離の高速飛行を可能としている。