ユキシロとロワンと新しい命

  ●

  「……なあ、ユキシロ」

  ロワンはその太い腕を僕の枕にしながら、静かに語りかけてきた。

  ただでさえずんぐりとしていたお腹は――なんて言うとロワンは僕の頬を思いっきり抓るのだろうけれど――まるで新鮮なベリーのような瑞々しい膨らみを有している。

  そこに宿るのは、未だ見ぬ新しい家族だ。

  今まではあまり見せなかったような柔和な笑みを僕に向ける。ちらと覗く白い牙は彼女の戦う姿を思い起こさせた。

  「コイツは、ユキシロとアタシ。どっちの姿で生まれるんだろうね」

  僕はロワンに似た子になって欲しい。咄嗟に思い、そして目を瞑ったロワンの横顔を見つめた。彼女は僕に似てほしいと思っているのだろうか。

  耳が声を拾う。

  通りから離れた宿だけれども、この冒険者の集う街は真夜中だろうとその喧騒を止ませることはない。途切れることのない雨音のような騒がしさが沈黙の中に滑り込んでくる。

  「ロワンはどっちが良い?」

  「うーん」

  半ば睡魔に囚われている、そんな声音を発してロワンは呻いた。

  何か考えるような少しの間があってから、息をするついでのようにロワンはこう述べた。

  「アタシは……アタシに似て欲しいかなぁ……」

  と。

  夜闇に慣れた目でその穏やかな横顔を見つめていた僕は、ロワンの言葉に思わず押し黙ってしまう。

  考える。

  確かに、子供の頃はこの体の事でからかわれる事もあった。一族の中でも小柄だったせいか、成人してからも時折舐められる場面はある。

  だから、ロワンに似て欲しいという返事には否やはない。

  ない、のだけれど。

  (ちょっと、……僕が期待しちゃっただけ)

  ロワンが僕を選んでくれなかった事に少し蟠りを覚えたまま、僕はゆっくりと寝息に上下し始めたロワンのお腹を見つめていた。

  

  ●

  「……かん、――教官。どうしたんですか、ボーッとして?」

  物思いに耽るようにして顔を伏せていたユキシロは、己を呼ぶ声に顔を上げた。

  「ああ、すみません」

  「お疲れですか?」

  と犬獣人の少年はユキシロの顔色を伺う。

  「いえ、大丈夫ですよ」

  ユキシロは杖を両手で握る大人しそうな少年に照れを隠す控えめな笑みを浮かべて、手を上げて詫びを述べた。

  思考に靄のかかるような感覚が拭いきれない。疲れが溜まっているのだろうかと自己分析をしながらも、特段解決策も模索しないままだった。

  「えっと……、魔力操作の基本についてでしたね。見たところ、基本は出来ているようですし――」

  周囲の魔力の流れを感じながら、ユキシロは少年に指導を再開する。見た目だけで言えば、あまり年の差があるように見えない二人だが、ユキシロは成人しており、少年は見た目のまま新入りの冒険者だ。

  夫婦となったロワンが妊娠したことで冒険者を休止したことで、ユキシロも冒険者からギルド所属の魔法教官に転身していた。ロワン自身はいつか復帰することを望んでいるが、ユキシロとしては現役の冒険者をやっていた時よりも今の方が性に合っていると思い始めている。

  元々、身体能力よりも魔力の感知に長けていたユキシロは、魔法を扱い始めて日の浅い使い手の魔力操作などを感じて調整するという作業は、能力的も性格的にも上手く噛み合っているのだ。事実、ユキシロの指導は概ね好評だとギルドからも言われている。新人の扱いも丁寧だからとギルド側からも信頼を高めているようだった。

  まあ、それはそれで問題もある事をユキシロはあまり聞かされていない。

  例えば、戦士職の冒険者が魔法練習で無理をして魔力切れからの失神を起こした際に、その冒険者の体内魔力を整えるついでに膝枕をしていたら半ストーカーしていた、なんて事もある。本人曰く「性別や倫理を超越して、ユキシロさんにママになって欲しい」とか言っていたので隔離措置が取られた次第である。

  ギルドとしても、変な拗れ方をしてユキシロがギルドから離れてしまう事を懸念した事案でもあった。

  ともあれ、転職を果たしたユキシロは波乱の少ない毎日を送っている。

  「お疲れ様、教官」

  「ああ、ゲルダさん、お疲れ様です。依頼の報告ですか?」

  新人の指導を終えた後、鍛錬場からギルド舎へと戻ったユキシロへと一人の女性が話しかけてきた。軽戦士の出で立ちの女性。彼女は教官を始めてから知り合った冒険者で、彼女のパーティにいる魔法使いを始めの方に指導してから仲良くしている。

  いつも通り三人揃った彼女らは、ギルドの中でも人気が高い冒険者だ。度々活躍と共に男性陣の中で美人パーティとしても話題に上がる。活発な弓士のゲルダに冷静な剣士レミリア、穏やかな魔法士のフルート。ゲルダ以外の二人は少し離れた場所で話していた。

  「そ。良い稼ぎがあったよ」

  「なるほど、良かったですね」

  自然とユキシロの顔に朗らかな笑みが浮かぶ。

  危険と隣り合わせの生業だ。知り合いの懐に余裕が出来るのは嬉しい事だった。

  「……」

  ゲルダは少し離れた場所にいる仲間二人を振り返り、それからユキシロの顔を覗き込むように腰を屈めてきた。

  「ねえ、この後私達と一緒に一杯どうだい?」

  軽戦士らしい身軽な装備。結婚したとはいえ、まだ女性に対しての免疫が高い訳では無いユキシロは、屈み込んだゲルダの革鎧の胸元から覗く谷間に思わず顔を赤らめて目を逸らす。あまりジロジロと見てしまうのは失礼というものだろう。

  とユキシロは思っているが、ゲルダはむしろその反応を楽しんですらいた。幼気ながらもユキシロの顔立ちは整っている。冒険者らしいと言えば冒険者らしく、狩人らしいと言えば狩人らしいのだが、ゲルダにとっては可愛らしい獲物であった。

  それこそ、一夜を共にしてみたいと思える程に。

  「……すみません、妻が待っているもので」

  だが、返ってきた返事は素気ないものだった。彼は手を上げながらその指に嵌めた指輪を強調してみせる。些か断り慣れた仕草にゲルダは苦笑を返した。きっと出会った頃ならば「ご飯くらいなら」とついてきてくれただろうに。

  「そ、じゃあ、またの機会に」

  「はい、お疲れ様です」

  ゲルダが後に引かない答えをすれば、ユキシロもそれに応えて返した。

  「振られちゃいましたね」

  と、ゲルダとユキシロを見ていたフルートが窘めるように話しかけてきた。ギルドを去っていくユキシロの背を目で追いながら言うフルートにゲルダは肩を竦める。

  「全く、ロワンさんが羨ましいね」

  「あのロワンさんがどうかは分かんないけれど」

  随分と深く愛されている、というゲルダに反して、最後に合流してきたレミリアは同じくユキシロを見送りながらそう呟いていた。

  

  ●

  「どうだった? 新人の指導だったんだろ」

  ベッドに腰掛けたアタシの隣でユキシロが横たわっている。食事の後、心地よい時間。私はとある道具を取り出す。ユキシロは半ばに顔を上げる。

  「なにそれ?」

  「睡眠魔法が込められたブラシなんだってさ」

  アタシが言うと。ユキシロは訝しげにそれを見つめる。

  「……どこで買ったの、それ?」

  「行商から買ったんだ。街で」

  ユキシロが眉を顰めたのは出歩くことに対してではないだろう。

  お腹の子は医者のいう所にはあと数週間で産まれてくるだろう。とのことだった。あんまり歩き回るのは良くないが、全く動かないのも問題があるとかで多少の散歩はむしろ推奨されている。

  まあ、走りたくなるのを抑えるのは、それはそれでストレスではあるかもしれない。

  故に彼の顰めっ面の向かう先は、出処不明の魔道具だ。街に持ち込めているのだから、明らかな危険物ではないはずだが、それでも妙な商品というものも存在する。

  「ふうん」

  ユキシロはじっとその魔法具を睨みつけた。その中に込められた魔法を読み取っているのだろう。アタシにはよく分からないが、ある程度秘匿性の低い魔法であれば可能らしいことは聞いている。

  細めた目で暫くそれを見つめていたユキシロは、ふうと息を吐き出した。

  「確かに、込められてる魔法は睡眠神経を刺激するだけの魔法みたいですけど」

  「最近、疲れてるのに寝れてない時あるだろ?」

  「……」

  ユキシロは思い当たる節があるのだろう、目を瞑り押し黙った。

  「まあ、そんな怪しい魔法具でどうこうされるような耐性じゃないですからね」

  「へえ? いつまでその余裕を保てるか見ものだな!」

  自信ありげに言うユキシロに肩を回し、アタシは意気揚々と飛びかかっていった。

  

  ●

  「ぐへへ、ここが良いんだろ? 可愛らしく鳴いてみろよぉ」

  「くっ……ぼ、僕は……こんな仕打ちには、屈……しない……っ!」

  みたいなやり取りをする間もなく、ユキシロはロワンの膝の上で穏やかな寝顔を晒していた。

  「夢中になると止まんないんだもんなあ……ユキシロは」

  ロワンはくすりと笑いながらその白い体毛をブラシで撫でる。背中の毛にブラシの歯を差し込む。柔らかな感触。力を入れずとも沈み込んだブラシをゆっくりと腰の方向へと流していけば、ユキシロは心地よさげに眦を揺らしてみせる。

  冒険者を辞めてから少し太ってきたように思う。梳きながら被毛の下に柔らかな肉質を感じてロワンは、その頬を軽く撫でた。最近は顔立ちもどこか柔和な雰囲気を醸し出していて、それがどうにも冒険者の間でなかなか好評なのだという話も聞いている。

  ――特に女性から。

  「っ、と」

  少し指に力が入り、ブラシが毛に引っかかる。呻くような寝息に慌てて力を緩めたロワンは、続く安らかな寝息に毛先一つ動かさないように強張っていた体の緊張を解いた。すう、と息を吐く。それから、少し肩を震わせるように笑う。

  「……お疲れ」

  さり、とブラシが白毛を梳く。

  夜が囁いている。

  暗い部屋に月明かりが飛び込んで、ユキシロの毛を白銀色に染める。そよぐ銀の穂原をかき分ける音が、静黙と混ざり合う不特定多数の揺音をかき消していく。ユキシロの匂いと土の匂い。使い古された修練用魔杖の革の匂い。汗。さわさわと耳を過ぎる解されていく毛擦れ。

  風がガラス窓を揺らした。

  微かに耳が跳ねる。ロワンの反応はそれだけだった。動じることなくユキシロの体を撫でる。下着以外を身に付けない後肢。細い外見と柔らかな被毛に反して、彼のそこは力強い。

  「ん、ぅ」

  不意にユキシロが身を捩る。

  弛緩した筋肉の感触が心地よく、半ば夢中に触れていたのがくすぐったかったのか。

  そう思った時、ロワンの目に映ったのはユキシロの腰。下着を天幕状に突き上げる彼の雄角。ロワンは暫くそれを見つめた後に、緩んだ下着を抜き去ってその漲りを外気へと触れさせた。

  リラックスによって齎されたのだろうその兆しは、まだ怒張の途中にある。

  ロワンの体力を以てすら、彼の満足を引き出すには困憊を要する。だが、その始めの一吹きは、呆れる程に早いのだ。このまま下着の中で遊ばせておけば、早ばやと下着を汚してしまう。

  そう考えて獣欲を露わにしたロワンだったが、まるで植物の枝が成長する様を早回しで見つめているように伸び上がる男根に見入ってしまった。ここ最近は出産も近いからとユキシロも遠慮していることが多い。だからか、夜の光に浮かび上がるそれはいつにも増して力強くその役割を果たす瞬間を待ちわびているように見えた。

  「こっちも、……毛づくろいしておかないとな」

  とロワンは、その手のブラシをその根本へとゆっくりと宛てがった。ロワンの胎に宿る命の半分。それと等しいものが詰まった袋がそこにある。男としての急所、故に力を込めすぎてしまわないようにと注意しながらその表皮をブラシで撫でていく。

  吐息が跳ねた。乾いた布を擦り付けるようにざらついた呼吸音が、ロワンにユキシロの感じている感覚を教えてくれていた。張り詰めるように子種を溜め込んだ膨らみは、確かな弾力を返す。

  そこに詰まる熱を知るロワンは、自らの胸にもそれに似た熱が灯るのを感じていた。

  細い挿入管。抵抗なく入り込んでくるそれから勢いよく放たれる迸りに、体内を埋め尽くされてしまうような熱量。内側から優しく食い尽くされているような。

  「……」

  深く体に刻みつけられたあの感覚を錯覚し、体がぶるりと震えた。

  ユキシロにどれだけ我慢させているだろうか。なんなら一夜の関係を作っていたとしてもロワンはユキシロを責めることはないだろう。彼女とて、ユキシロと恋仲になるまでは複数の男とそういった関係を結んでもいた。

  だから、ロワンが妊娠中にそういった関係を築いたとて――。

  「まあ、何も言わないけどさ。……それでも、嫌なもんは嫌だもんな」

  そう思ってしまいはする。ユキシロはそれを分かっているのだろう。申し訳ない、と思うよりも、大切にされている事が嬉しかった。

  少しずつブラシを通す膨らみが縮み上がっていく。

  感謝と慈しみが、命の宿る腹の中に溢れていく気がした。ロワンはブラシを休ませること無く、その茎へと手を伸ばし。

  

  ●

  固くそそり立つそれに舌を這わせた。

  苦味と塩気のある、舌触り。

  滴る粘った液体を舐め取りながら、アタシはユキシロの性器に吸い付いていた。ブラシをかけながら、ゆっくりと舐っていく。

  クチュ、クチュと口の中で粘液の絡み合う音がする。

  ユキシロは起きない。睡眠魔法がよく効いたのか、それとも、それほどに疲れていたのか。ともかく、まるでユキシロの寝込みを襲っているような心地が、欲熱から伝わる感覚をより鮮明に感じさせていた。

  鉄のような硬さのそれを舌で包むようにして擦リ上げれば、ユキシロの体は敏感に応えてビクビクと震える。泡立つ口の端からは白い気泡が垂れ落ちていた。

  青臭い匂い。精子とカウパー液と、それらが混ざりあった匂いが口の中に充満していた。

  既に一度、射精を果たしたユキシロの肉槍はすぐさま元気を取り戻す。アタシの口のぬくもりを求めるように、微かに腰を揺らして。

  「っ、はぁ……ッ」

  息を吐く。

  それと同時に、雄の滴りが牙を伝う。

  今、鏡を見たなら耽溺に蕩けた目をしているのだろう。部屋の温度が増したように思うのは、アタシの体から立ち上る見えない火のせいだろう。

  荒む息がユキシロの尖塔を揺らし、不意にそれがぶるりと震え上がる。と同時に、その細い体が仰け反り。

  噴出した。

  その先端から溢れ出した白濁液がアタシの顔を強かに打つ。漲りの先端を包もうとした口は間に合わず、迸りは首から胸にまでを強かに打ち据えてアタシの体を汚していく。脈動し、出し終えたかと思えば第二波が放たれて黒く陰った茶色の毛に白い斑模様を施していた。

  最近は張る痛みにも慣れてきた乳房。明確に雌を孕ませようとする白く濁った欲情そのものがその谷間の窪みに注がれては、ゆっくりと丸い腹を滴り落ちていくのをアタシはありありと感じさせられている。

  胸のそれを指で掬い、舌に乗せる。

  愛する人の迸りに痺れるような感覚。数秒、唾液と精液に濡れた指でロワンの命道をほぐすようにして蜜と絡める。

  マズルに満ちる匂い。

  まるで猛獣との戦いを制したような疲労感と達成感が体を包んでいた。

  疼く体を落ち着かせるようにユキシロの穏やかな寝顔を撫でて、ブラシを運んでいく。

  

  ●

  目を覚ませば、僕の目に入ってきたのは湯浴みを終えたのか、しっとりと濡れたロワンの姿だった。今日はなぜかいつもより艶めいて見える。まだ部屋は暗い。

  「おはよう」

  と、ロワンはにやりと笑ってデスクに置いたブラシを指差した。彼女が言いたい事は分かる。

  「負けちゃったかあ」

  「はは、ああ。アタシの勝ちだな」

  「ブラシの勝ちだけどね」

  そう笑いながらロワンは僕の隣に仰向けになった。さっぱりとした心地の良さに、澱が解けている気がする。妙にスッキリとした気分だ。

  「ロワンは……」

  彼女の名前を呼んでから、本当に聞こうかどうか迷いながらそれでも僕はその疑問を口にした。

  「この前の話だけど、僕たちの子がロワンに似てくれた方がいいって思うのはどうして?」

  一息に言い切った。

  その問いかけそのものよりも、問いかけることで僕があの何気ないやり取りを気にしていた事を悟られるのが憚られた。小さなプライドが、質問の内容を少し変える。

  本当は。

  僕に似ていて欲しい、とは思わないのか、と。

  「はは」

  とロワンは笑う。

  「ユキシロ、やっぱり今の指導員の方が合ってるな。自信がついたって感じ」

  「……?」

  返事の意味があまり分からず、しかし、その疑問を言葉にするよりも先に「うん」というロワンの声が続いた。

  「だってさ、アタシ甘やかしすぎちゃうだろ?」

  照れ笑いと共に返された彼女の考えを飲み込んで、数秒を置いてから僕は自分の顔が赤らんでいくのを感じた。

  子供のような体格をしているが故に、自分のことを大人だと思い込みすぎていたように思う。食事に誘ってくれた女性冒険者もただ気を遣ってくれていただけかもしれないのに。

  「多分、アタシの子どもでもあるからさ、結構やんちゃになる可能性も高いと思うんだ。だったら、ちゃんと怒れた方が良いなって」

  それに、と悪戯っけのある声が言う。

  「アタシに似てたらビシバシ鍛えられるからね!」

  バシン!! とその強靭な腕を力強く叩くロワン。なんというか、彼女は本当にビシバシと容赦なくストイックな教育を行うだろう。

  冒険途中であっても、彼女は己が限界の分水嶺を攻める場面というのは少なくなかった。鍛錬であるならばそれが通常になるのだろうし、なんなら、パーティを組んでいれば共にその苦境を駆け抜けるのだから僕自身よく知っている。

  確信があった。

  産まれてくる子が僕に似ていようと、ロワンに似ていようと、彼女は容赦なく限界を越えてみせろと言うはずだ。ならば、少しでもそれが優しくなるというのなら。

  (……どうか、僕に似てくれますように)

  迷いなく。

  苦笑を返しながら、僕はそう願うのだった。

  ●

  「もしイジメられるならアタシが鍛え上げてやるからな!」

  「ああ、いじめっ子の方じゃないんだ」

  「当たり前だろ。そいつより強くなればいいんだから」

  「まあ、あんまり気負わないでいいよ。僕の知り合いも多いしさ」

  「……そっちの方が怖いんだよな」

  「え、怖くないよね?」

  交互に話しかけてくる両親になんと答えればよく分からないまま、オレは清々しく晴れる空に舞う2羽ならぶ鳥の羽ばたきを見つめていた。