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道物語(ロードストーリー)第五幕 砂漠の街編サマーサ

  ドルセニア王国へ向けて出発するアルベルト一行

  砂漠の入り口──地平線まで続く黄金の荒野が、風に舞う砂とともに広がっていた。

  グランジャス(腕を組んで)

  「さて……これが砂と音の国への道か。見ただけで喉が渇いてきたな」

  アルベルト(肩を回しながら)

  「いよいよだな。覚悟決めて進むしかないか」

  シシオ(背負い袋から何かを取り出して)

  「おい、これを使え。砂嵐対策に作っておいた。防塵マスクとゴーグルだ」

  シーフェ(受け取りながら)

  「さすがね、斧だけじゃなく道具も用意できるなんて。医療班としても助かるわ」

  マリーナ(ゴーグルを装着しながら)

  「うわ、視界がちょっと狭いけど……これなら目に砂が入らないわね。声も通る?」

  ティミス(マスクの内側を確認して)

  「通るわ。口元に小さな通話穴がある。……シシオ、器用ね」

  グランジャス(マスクをくるっと手で回して)

  「じゃあ、いくか。メソングまでの道――何があっても進むだけだ」

  カラスト(上空を飛びながら)

  「前方は晴れてるけど、午後には砂嵐が来そう。気をつけて進もう!」

  砂漠の昼下がり──陽炎が揺れ、灼熱が空間を歪ませている。

  カラスト(空から降りてきて、地上の皆に告げる)

  「ねえ、さっきからずっと見えてた街……近づいてるはずなのに、全然近づかないよ。逆に遠ざかってる気がする……」

  シシオ(ゴーグル越しに前方を睨みながら)

  「ふっ、それは“蜃気楼”ってやつだ」

  グランジャス(額の汗をぬぐいながら)

  「……蜃気楼? 幻ってことか?」

  シシオ(コクリと頷いて)

  「ああ。熱で空気の層が歪んで、遠くの風景や、実際には存在しないものが見える。水場や街が浮かんで見えるのが有名だな」

  ティミス(うんざりした顔で)

  「つまり……あの街は“ない”ってことね。やっと休めると思ったのに……」

  マリーナ(汗を拭きながら)

  「でも、実際に存在する街が見えてるパターンもあるんでしょう?それはどうやって見分けるの?」

  シシオ

  「風の向き、影の落ち方、あとは地面の照り返し。経験が物を言う世界さ」

  カラスト(しょんぼりしつつ)

  「うう……魔法で水を出したいけど、使いすぎたらこの先が心配だし……」

  グランジャス(静かに歩き出して)

  「だからって立ち止まっても意味はない。蜃気楼でも、進めば本物に辿り着く。行こう」

  ──数時間後、果てしない砂漠を進み続けた一行の前に、それは現れた。

  カラスト「……あれ、本物……だよね?」

  遠くに見えた緑と水の光景は、まるで絵画のように美しく──しかし、今度は幻ではなかった。

  グランジャス(手をかざして)

  「空気の揺らぎがない……これは“本物”だ」

  ティミス(駆け出して)

  「やっと……本物のオアシスよ!」

  カリン、メルディス、マリーナも続けて駆け寄り、冷たい水に手を浸す。

  カリン「ひゃっ……冷たくて気持ちいい!」

  メルディス「身体が軽くなるようです……」

  マリーナ「喉が潤って、声が戻ってきた……ありがたいわ」

  シシオ(ごくごくと水を飲みながら)

  「これならまだ先に進めるな……」

  グランジャス(オアシスの木陰に腰を下ろして)

  「ちょっと休憩して、次に備えるか……この先は、“音楽の国”メソングだ」

  ー砂漠と戒律の街サマーサー

  シシオ「確かこの先にな、砂漠の街サマーサがあったはずだ」

  シシオ 「そこはな男尊女卑が酷く女性は肌を出しては行けないとか厳格なルールがある」

  シシオ「この街では女は目立つな、露出なんて論外だ。ティミス、お前らも“サハーラ衣”を着とけ」

  ティミス「えー、また体毛がムレるのに……」

  カリン「ご主人様以外に見せる気ないし、別にいいわ」

  ⸻

  グランジャス「この街は見た目は煌びやかだが、闇が深い。油断すんなよ」

  アルベルト「なんか……みんな、暑そうな服着てるな。」

  ティミス「ここ、女性は肌を見せちゃダメな文化なんでしょ?目立ちすぎるのはまずいかもね。」

  カラスト「暑いのに、あんなに覆ってるなんて……ボク倒れちゃいそうだよ〜。」

  ホルスター「私たちも早く布で身を包んだ方が良さそうね。ここの視線……少し怖いわ。」

  グランジャス「ここが“サマーサ”か……。噂には聞いてたが、これは想像以上だな。」

  シシオ「昔、ここに武器を届けたことがある。表向きは静かだが、裏では女たちが苦しんでいるとも聞いたぞ。」

  マリーナ(そっと声を潜めて)「歌うことさえ禁止されてる……なんて、信じられない。」

  門近くの見張りが、こちらを睨むように観察している。特に女性たちに対して、厳しい視線が突き刺さる。

  ⸻

  門番(男性)「そこの旅の者たち。女たちはその姿のままでは通せん。規定の衣装を借りるか、即刻立ち去るか、選べ。」

  カリン「何よそれ……!」

  グランジャス(腕を抑えつつ)「ここでは俺たちが郷に従うしかない。無駄な争いは避けるぞ。」

  グランジャス「仕方ない。服はマントで隠して、頭はフードで覆うしかあるまい。」

  そう言ってグランジャスは、女性陣に自前の旅用マントを渡し始める。フード付きで砂避けにもなる厚手の布だ。ティミス、カリン、マリーナ、ホルスターたちも黙ってそれを受け取り、顔を覆っていく。

  ティミス「これで目立たずに済むなら、仕方ないわね……」

  ホルスター「でも正直、動きづらいわ。戦闘になったら脱げるように工夫しておかないと。」

  マリーナ「喉が渇いたわ……歌も歌えないなんて……。」

  カリン「……ご主人様が一緒じゃなきゃ、私絶対こんなとこ来ない!」

  ⸻

  周囲の住人たちは、完全に無言のまま彼らをじろじろと見ている。異国からの旅人は珍しくないが、女性の“肌”に対しては異様なほど敏感な文化だとすぐにわかる。

  カラスト(ひそひそと)「なんか、空気が重いね。さっきから誰も笑ってないよ……」

  シシオ「男尊女卑の極地、ってやつだな。下手すりゃ何もしてなくても罪に問われるぞ。」

  ⸻

  一行はまず街の「広場」とされる場所に出るが、そこには露店が並び、男たちだけが談笑している。女性の姿はほとんど見えず、見えても物陰で静かに座っているだけだった。

  グランジャス「とにかく、情報収集だ。ここで何が起きているのか、どんな勢力があるのかを探らないと、俺たちは何もできん。」

  アルベルト「……教皇が生きてたら、こういう体制を真似しそうだな。」

  彼の言葉に、場の空気が一瞬ピリッと引き締まる。あの支配と洗脳の象徴だった教皇を想起させるような、息の詰まる街の空気――サマーサの男尊女卑の風土は、まさにその再来とも言える異様な静けさと抑圧感を持っていた。

  ⸻

  ティミス(フードの下で声をひそめて)

  「確かに、女は口を出すなって空気……教皇の元で働いてたときと少し似てる。違うのは、ここではそれが”常識”として根付いてるってことね。」

  ホルスター「こんな街で、子どもたちはどうやって育ってるのかしら……想像したくもない。」

  グランジャス(唸りながら)

  「王侯や宗教指導者が、“支配の都合”で作り上げた価値観……それに民が染まりきってるのが一番厄介なんだ。」

  ⸻

  サマーサの重苦しい雰囲気に、フェルドニアでの戦いの記憶が重なる。自由を手に入れるには、外からの力だけでなく、内側の“意志”が必要なのだと、アルベルトたちは痛いほど知っている。

  カラスト「でもさ、こういう場所だからこそ……変えられたらすごいよね。」

  シシオ「ああ。だからこそ、やる価値があるってこった。」

  グランジャス「一つだけ方法があるぞ。」

  そう言って、懐から小さな袋を取り出す。中には、銀の指輪がいくつも入っていた。

  ⸻

  グランジャス「この街じゃ、女が男の“所有物”みたいに扱われてる。だが逆に言えば――夫婦や家族という名目があれば、ある程度は自由が利く。」

  彼はそれぞれの女性陣に指輪を渡していく。

  ⸻

  グランジャス「お前らが俺たち男性陣の妻や妹ってことになれば、多少は干渉も緩くなるはずだ。もちろん……不本意だってのはわかってるが、敵地での偽装作戦と思ってくれ。」

  ⸻

  ティミス(少し頬を赤らめつつ、からかい気味に)

  「ふふ……“ご主人様”に仕えるだけじゃなく、今度は“妻”役ね。忙しいわ。」

  カリン(当然のように指輪をはめて)

  「本当にご主人様のお嫁さんになれるなら、偽装でも本望です♡」

  メルディス(小声で)

  「じゃあ私はグランジャス様の本命枠でお願いします♡」

  ⸻

  マリーナ「ステージ衣装より派手な展開ね。でも……いいわ、女ってだけで抑圧されてるなんて我慢ならないもの。」

  ホルスター(苦笑しながら)

  「しょうがないわね。子どもたちの未来を守るためなら、どんな役でも演じてみせるわ。」

  ⸻

  アルベルト(グランジャスに耳打ち)

  「……おっさん、こんな指輪よくこんな数持ってたな?」

  グランジャス(ニヤリと)

  「こういうのは“備えあれば憂いなし”ってやつだ。」

  アルベルト「ホルスターとシシオは……見た目の相性も悪くないし、夫婦役いけそうだな。」

  ⸻

  ホルスター(少し驚いた顔で)

  「えっ、シシオと……? ま、まあ……変な人じゃないし、信頼できるけど……」

  シシオ(ちょっと照れながら頭をかく)

  「そりゃあ俺は構わないぜ。むしろ本望ってやつだ。昔からパイランには世話になってたし、守る役なら任せてくれ。」

  ⸻

  カリン(からかい気味に)

  「ご主人様だけじゃなくて、ホルスターさんにも春が来るのかしら♡」

  ティミス「ふふ、なかなかお似合いじゃない」

  メルディス「じゃあ、私はグランジャス様の“第一夫人”ってことで♡」

  ⸻

  ホルスター(やれやれとため息をつきながら)

  「わかったわ。今回は“任務”だものね。シシオ、ちゃんと“夫”の役目を果たしてよ?」

  シシオ(軽く片手を上げて)

  「ああ、もちろん。全力で“奥さん”を守るぜ、ホルスター。」

  酔っ払いがフラフラと近づき、にやつきながらティミスに手を伸ばそうとする──

  ⸻

  酔っ払い「おい姉ちゃん、いいケツしてんなぁ……ちょっと触らせ──」

  アルベルト(間髪入れずに手を掴み、ねじり上げながら)

  「俺の女に手を出すな」

  ⸻

  酔っ払い「うぐっ……な、なんだよ、いてぇ……! ひ、ひいっ!」

  ティミス(頬を赤らめながらも小声で)

  「わ、私……アルベルトの……女って、今……」

  カラスト(後ろから顔を覗かせて)

  「おぉ〜アル兄かっこいい〜! ティミス姉、完全に惚れ直したでしょ〜!」

  ティミス「う、うるさいっ!」(顔真っ赤)

  ⸻

  シシオ(苦笑しながら)

  「ったく、こういう街じゃ油断できねぇな。女の子連れて歩くときは気を張ってなきゃな」

  グランジャス「……あの手の酔っ払いは“指一本動かしただけ”で地面に埋めても文句は言われない街だ、まぁまだ優しい方だよアルベルトは」

  ⸻

  酔っ払いは地元の衛兵に捕まって引きずられていく。

  衛兵「こいつ、またか……観光客に手ぇ出すなんて、いい加減にしろ!」

  ⸻

  その後、ティミスは照れ隠しにアルベルトを軽く拳で叩きながらも、ほんの少し腕を組む距離が近くなる──。

  ティミス(小声で)

  「……ありがとうね。アルベルト」

  街の片隅──焼けつくような日差しの下、サバクツノトカゲの夫が、コモリグモの奥さんに怒鳴り散らしていた。

  ⸻

  夫「まったくなんでお前は言われたこともできないんだ! 酒を買うぐらい、なんで出来ねぇんだよ!」

  奥さん(縮こまりながら)「……ご、ごめんなさい……でも、お財布……」

  夫「言い訳すんな!」

  ⸻

  その様子に、通りがかりの一行が足を止める。

  シシオ(低く、しかし通る声で)

  「……うるさいぞ。怒鳴ってばかりじゃ、奥さんは何も言えなくなる。言わせないのは、夫としてクズだ」

  ホルスター(隣で腕を組みながら)

  「そうよ。力で抑えるだけなら、誰にでもできるわ。パートナーってのは、支え合うものでしょう」

  夫「な、なんだお前ら……外から来た奴が偉そうに……!」

  シシオ(一歩前に出て)

  「なら力で話すか? 俺は斧の扱いに関しては“話が早い”方だぞ?」

  ⸻

  夫「ぐっ……ちっ……!」

  トカゲ男は顔をしかめながら舌打ちをし、奥さんを置いてその場を足早に去っていく。

  奥さん(ぼそっと)「……ありがとう、ございます……」

  ⸻

  ホルスター(優しく微笑んで)

  「大丈夫? 今は一人でも、周りに頼っていいのよ」

  シシオ(やや照れながら)

  「酒は自分で買えばいいってな。……腹減ってないか? 何か食ってけ」

  ⸻

  アルベルト(後ろから)

  「……こういうのを見ると、余計にこの街の“偏り”を感じるな。何かもっと根っこの問題がある気がする」

  アルベルトはトカゲ男の背に声をかける──

  ⸻

  アルベルト「おい、トカゲの旦那さんよ」

  夫(苛立ったように振り返って)「……なんだ、ガキ。文句でもあんのか?」

  アルベルト(ふっと笑みを浮かべながら)

  「いや、ちょっと聞きてぇだけさ。この街で一番偉いのは誰だ?」

  夫(やや誇らしげに)「そんなもん決まってる。『ムホンマド・ジャール様』だ。サマーサの実質的な支配者であり、“砂の律法”を編み、女共に規律を教え込んだ偉大なお方だ」

  ⸻

  後ろで聞いていたグランジャスが眉をしかめる。

  グランジャス「……偉そうに言ってるが、女を殴って支配するような奴が偉いってわけか。薄っぺらな威厳だな」

  ティミス(低く)「女を規律で縛って、それで街が成り立ってるつもりなのかしら。反吐が出る」

  カリン「ご主人様、ここを“お掃除”する必要がありそうですね」

  ⸻

  アルベルト(腕を組みながら)

  「ムホンマド・ジャール、か……お偉い様なら話くらい聞いてくれるだろ。街の風通しを良くするためにも、一度ご挨拶しに行こうぜ」

  シシオ「暴力に頼るリーダーに未来はねぇ。……なら、ぶっ壊してでも変えちまうのもアリだな」

  グランジャス「おい、リョーン、アルベルト、シシオ、カラスト。男どもで“ムホンマド”を遊んでやるぞ」

  アルベルト(にやりと笑い)

  「いいぜ。どうせ向こうは自分が“絶対”だと思ってる。ちょっと現実見せてやらないとな」

  シシオ「ああ、女を盾にして威張ってる奴は気に入らねぇ。斧でケリつけてやるさ」

  カラスト(魔導書を抱えながら)

  「それにしても楽しそうですね。たまには“悪党”相手に真面目に魔法をぶつけるのもいいかなって」

  ⸻

  グランジャス「女性陣は街に残って、女性たちのケアを頼む。あんな風に萎縮して生きるなんて、まっぴらだろ?」

  ティミス「任せて。私たちは“傷ついた心”を癒やすほうが得意だから」

  ホルスター「女だからって怯えて生きる必要はない。少しずつでも、自由を感じさせてあげたいわ」

  カリン「ご主人様♡ 無茶しないでね。もし傷でもつけられたら、お掃除じゃ済ませないから!」

  メルディス「大丈夫よカリン。グランジャス様はあんな小物に負ける器じゃないわ。私たちは私たちの戦場で頑張るだけ」

  グランジャス「よし、ここは俺らは“シシオの助手”ってことにしよう。俺たちは商人の護衛って建前でな」

  シシオ「なるほどな。武器屋として街に出入りしてれば怪しまれねぇし、情報も集めやすい。こっちで武器の売買をしてる連中とも話ができるだろう」

  カラスト(小声で)

  「実際、どこの街でも“武器屋”は重宝されるからね……」

  アルベルト「俺たちも護衛兼運び屋ってことで動けば自然だな。“ムホンマド”の耳に入ったとしても、戦力として逆に気に入られるかもしれねぇ」

  ⸻

  こうして男組は「武器商人とその護衛」という体で街中に溶け込み、ムホンマド・ジャールの屋敷周辺に接触していくこととなる。

  一方その頃──

  砂漠の街サマーサの外れにある、日陰の集会所。女性たちが身を寄せ合って過ごすその場所で、女性陣は現地の女性たちと打ち解けはじめていた。

  ⸻

  マリーナ「この布、とっても綺麗ね。刺繍が細かいわ」

  現地の女性A(コモリグモ族)「ありがとう。毎日これを縫ってないと、男たちの機嫌が悪くなるの」

  ホルスター(糸を通しながら)

  「それって、おかしいわよね。家の中のことを支えてるのはあなただちなのに」

  ティミス「料理、洗濯、育児──全部任せて文句まで言うなんて理不尽すぎるわ」

  メルディス(火の前で煮込み料理をかき混ぜながら)

  「でも、こうやって話せる場所があってよかった。少しずつでも変えていけたら…」

  カリン(床掃除をしながら)

  「グランジャス様だったら、絶対こんな社会は許さないと思うわ。ねえ、私たちにできることを少しずつやっていこう?」

  ⸻

  周囲の女性たちは驚いたような表情で異国の来訪者たちを見ていたが、次第にその言葉に心を打たれ、ポツリポツリと自分たちの悩みを語りはじめる。

  ⸻

  現地の女性B(アリ族)「…私、歌を歌うのが好きだったの。でも『女が歌うな』って怒られてからやめちゃった」

  マリーナ(微笑みながら)

  「じゃあ、今度一緒に歌わない? 私も昔、歌で心を救われたの」

  ティミス「家の中を変えるのは難しいけど、せめてこの場所では自分でいられるようにしない?」

  ⸻

  こうして、女性陣は家事を手伝いながらも、集会所を少しずつ“心の避難所”へと変えていく。

  集会所の片隅に、臨時診療所のような空間が設けられた。

  白衣の裾をひらめかせながら現れたのは、シーフェ。

  露出の高い黒衣のナース服に、冷たい眼差し。だが、その手つきはプロそのものだった。

  ⸻

  シーフェ「さて、どの子から診る? 病気があっても、ここじゃ隠されがちでしょう?」

  現地の女性A(サンドマウス族)「だ、旦那様に言ったら怒られるから……」

  シーフェ(鋭く切り返す)

  「いい? 自分の身体を大切にできない女は、誰かを守ることなんてできないわよ」

  彼女の迫力に気圧されながらも、徐々に女性たちが列をなす。

  • 打撲・擦り傷の隠れた跡

  → 家内暴力の可能性を推測。だが本人は「転んだだけ」と言い張る。

  ⸻

  シーフェ「このままじゃ、いずれ倒れるわよ。私は医者。私に嘘をついても無意味。…でも、無理に言わせたりしない。必要な薬だけは置いておくわ」

  現地の若い女性(14歳前後)「…あの…、赤ちゃんができたかもしれないんです」

  シーフェ(目を細める)

  「ちゃんと診てあげる。安心して。あなたは独りじゃないわ」

  ⸻

  一人ひとりの身体を見ていくシーフェの顔は、いつもの毒舌キャラではなく、医者としての誇りをまとっていた。

  現地の女性たちは、彼女の手のぬくもりに初めて「自分が人間として扱われた」感覚を覚え、涙をこぼす者もいた。

  ⸻

  診察の合間、シーフェはふと空を見上げる。

  シーフェ「…グランジャス。あんたが見た“救う価値のある世界”って、案外こういうとこかもね」

  集会所の一角。診察を終えた女性たちがそわそわと硬貨や食材の包みを差し出そうとする。

  女性A(ロコウ族)

  「これ…ほんの気持ちだけど…お薬代に…」

  女性B(ニアマーラ族)

  「診てもらっただけでもありがたいのに、何も渡さないのは…」

  シーフェは黙って差し出された手を押し戻し、冷静な声で言い放った。

  ⸻

  シーフェ

  「治療費はいらないわ。ここは資源も少ないし、生活もぎりぎりでしょ」

  ざわめく女性たちの声に耳も貸さず、彼女は薬袋を並べながら続ける。

  シーフェ

  「その代わり――“助かった自分”を大事にしなさい。それが一番の報酬よ」

  ⸻

  一瞬、静寂が流れ、やがて小さな拍手が起こる。

  それは遠慮がちに、だが確かな感謝の気持ちを込めた拍手だった。

  ある年配の女性が手を合わせ、目を潤ませながら言う。

  女性C(シーサーペントのハーフ)

  「…あなたのような人がこの街にいるだけで、救われる気がします」

  ⸻

  その言葉に、いつも冷たい態度のシーフェがわずかに口角を上げた。

  だがすぐにそっぽを向き、白衣をひるがえして次の患者に向かう。

  ⸻

  シーンの締め:

  シーフェ(心の声)

  「バカね…私は医者。ただ、それだけ。――だけど…少しは、意味があるかもね」

  集会所の静かな空気が、荒々しい足音と共にかき消される。

  扉が乱暴に開かれ、粗野な態度の傭兵たちが5人ほど押し入ってくる。武器を腰に下げたまま、威圧的に場を見回した。

  ⸻

  傭兵A(ムカデのインセトク族)

  「おい、女ども。何をしてやがる?」

  傭兵B(人間の男)

  「外でうろついてると思ったら、ここで集まってグダグダと…」

  ⸻

  その時、冷たい視線を傭兵たちに向けながら、白衣の女性がすっと立ち上がる。

  シーフェ

  「女性の健康診断をしてるだけよ。

  あんたたちみたいなのが働かせるなら、体調管理ぐらいさせなさいよ。

  それも出来ないで、でかい口叩かないでくれる?」

  一瞬、空気が凍りつく。

  ⸻

  ホルスター

  「まったくその通りだわ。あなたたち、身体の不調がどれだけ生活に響くか知らないの?」

  その言葉と共に、逞しい腕で洗い物を片づけていたホルスターが立ち上がる。その気迫に、傭兵たちのうち数人が一歩後ずさる。

  ⸻

  ティミス(ニヤリと笑いながら)

  「ねぇ…ちょっと肩、軽く揉んであげましょうか?

  きっとあなたたち、知らず知らず疲れが溜まってるんじゃない?」

  ⸻

  傭兵C(狼型ニアマーラ族)

  「お、おい…冗談だろ?」

  ティミス(爪を立てて手を構えながら)

  「冗談じゃないわよ。全力の癒しをお見舞いしてあげる♡」

  ⸻

  シーフェはため息をつきながらも、にやりと笑って一言。

  シーフェ

  「そのへんで引き下がるのが賢明よ。

  今ここで騒ぎを起こせば、**“医療ミス”**でうっかりどこか切っちゃうかも」

  ⸻

  傭兵たちは視線を交わし、舌打ちしながら引き下がっていく。

  傭兵A(小声で)

  「くっ…なんだよ、女ばっかりのくせに…」

  傭兵B

  「触らぬ神に祟りなしってやつだな…」

  ⸻

  扉がバタンと閉まり、再び静けさが戻る。

  女性たち(ヒソヒソ)

  「あんな人たちにも言い返せるなんて…」「すごいわ…!」

  ⸻

  ティミス(口元に笑みを浮かべて)

  「さてと、続き続き♪ 次の人、どうぞー!」

  メルディス あいつら掃除しますか?

  カリン ティミスちゃんどうする?

  ティミス

  「ふふ…掃除って言い方、物騒だけど間違ってないわね」

  ティミスは軽く首を回し、肩を鳴らす。鋭い視線が扉の向こうに向けられる。

  ⸻

  メルディス(目の色が一瞬光る)

  「あたしのダーリンを侮辱するような街、その構造ごと掃除しないとね」

  ⸻

  カリン(にっこり微笑んで)

  「私はご主人様のために“お掃除”します。

  …徹底的に、ね♡」

  彼女は袖口から短剣をすっと取り出す。

  ⸻

  ティミス(真剣な表情で)

  「でも…今は正面から衝突するのは避けたほうがいいわ。

  女性たちの安全が最優先。手を出すなら――“今”じゃなく、“正しく狙う”」

  ⸻

  シーフェ(後ろから声をかける)

  「フフ…ティミス、いい判断ね。

  奴らが本当にどういう構造で動いてるかを調べてから潰すべきよ」

  ⸻

  ホルスター

  「私たちは、この街の“裏”を知らなきゃいけないわ。

  あの傭兵たちが誰に雇われていて、どこから来たのかもね」

  ⸻

  メルディス(不満そうに腕を組みながら)

  「わかったわよ。今は…“仕込み”ってことね」

  ⸻

  カリン(微笑みながらナイフを隠し)

  「はいはい♪ でも次に手を出してきたら…**“お掃除タイム”**ですからね」

  場面:ムホンマドの邸宅の一室。

  絢爛だがどこか閉塞的な雰囲気の中、男たちは“商談”という名の仮面を被って向かい合っていた。

  ⸻

  シシオ(手にした剣を軽くしならせながら)

  「どうです? この“蛇牙(じゃが)”、見た目はただの剣ですが、刃の部分が分節構造になっていて、鞭のようにしなるんですよ。

  手加減すれば威圧だけにも使えますし、狭い場所でも有効です」

  ⸻

  ムホンマド(目を輝かせて)

  「ほぉ…これは使えるな!

  これなら街の反抗的な女共も黙らせられる!ヒャッハッハ!」

  ⸻

  アルベルト(顔をしかめて小声で)

  「…クソみてぇな発想だな」

  ⸻

  グランジャス(茶をすすりながら平静に)

  「ムホンマド様。力で押さえつければ、恨みを買う。

  …後になって“毒を盛られる”のは、得てしてそういう男ですぜ」

  ⸻

  ムホンマド(表情がぴくりと動き)

  「ふん、女に毒を盛られるようじゃ男失格だ」

  ⸻

  リョーン(腕を組みつつ)

  「まあ、俺の知り合いにもいたよ。威張ってたけど、寝てる間に逃げられてな」

  ⸻

  シシオ(にやりとしながら)

  「剣もそうですが、“信頼”の方が長く保ちますよ。

  …道具として使うより、“一緒に戦う”方がいい結果を生むもんです」

  ⸻

  ムホンマド(少し考えるそぶり)

  「…ふむ。まぁ、たしかにな。

  しかし“従順にさせる”ことがこの街のやり方でもある。

  その剣、10本ほど仕入れよう」

  ⸻

  グランジャス(目を細めて)

  「感謝します。それと…お時間ある時にでも街の女性たちの意見も聞いてみるといいですよ。

  “民”が心から敬う王が、本当の王ですから」

  グランジャス(まっすぐにムホンマドを見て)

  「私もあなたと同じ、“権力”を持つ者の端くれですがね。

  けど私は、老いも若きも、男も女も──皆に信頼されてますよ。

  それは私が“理解し合う”ことを大切にしてきたからです。

  恐怖じゃなく、共感と対話ですよ、ムホンマド様」

  ⸻

  アルベルト(肩をすくめて)

  「まぁ、実際は…けっこう尻に敷かれてるけどな、あのおっさん」

  ⸻

  グランジャス(わざと咳払いして)

  「おい、聞こえてるぞアルベルト」

  ⸻

  カラスト(にっこりと)

  「でも、それくらいがちょうどいいんだよ。

  家の中でも社会でも、バランスって大事だもん」

  ⸻

  リョーン(隣の父をちらりと見て)

  「ちなみに…ここにいるシシオは俺の父だけど、

  母さんにはめちゃくちゃ優しかったよ。

  家事も育児もできる範囲で手伝っててさ。

  “父親”ってより、“家族の一員”って感じだった」

  ⸻

  シシオ(赤面しながら)

  「…そうだったか? そんなこと、あたり前のことだと思ってたがな…」

  ⸻

  グランジャス(微笑しながら)

  「ムホンマド様。

  “男らしさ”は支配することじゃない。

  “守る”こと、“寄り添う”こと、それが真の強さです」

  ⸻

  ムホンマド(口をつぐみ、複雑な表情)

  「…………ふむ。そんな時代になったか……」

  ⸻

  この一言で、ムホンマドの心に初めて揺らぎが生まれる。

  時代の風が、砂の街にも少しずつ変化をもたらそうとしていた──。

  グランジャス(穏やかな口調で、しかし芯のある声で)

  「確かに、あなたのように**“ダメなことは叱る”。

  それは指導者として大事な資質ですよ。

  だがな──多少のことには目を瞑る度量**も、同じくらい大事なんです」

  ⸻

  ムホンマド(静かにグラスを置き、眉をひそめる)

  「目を…瞑る……だと?」

  ⸻

  グランジャス(うなずいて)

  「ええ。

  人間は誰しも完璧ではありません。

  若者も、女たちも、民衆も、我々指導者も。

  完璧を求めすぎると、心が離れていくものですよ」

  ⸻

  アルベルト(にやりと)

  「完璧に“叱られてた”ヤツが何言ってんだって話だけどな。

  おっさん、昔めっちゃ怒られてたって聞いたぞ」

  ⸻

  グランジャス(咳払いして)

  「うるさい。反抗期の話は禁句だ」

  ⸻

  カラスト(くすくす笑って)

  「でも、グランジャスさんの周りには誰も離れてない。

  …むしろ増えてるくらいだよね、家族が」

  ⸻

  リョーン(真面目な表情で)

  「叱るときは叱る。でも、見守るときは見守る。

  それをしてくれた親父がいたから…俺もここにいる」

  ⸻

  ムホンマド(しばし無言…やがてふっとため息をつく)

  「……まったく、口が達者なやつらだ。

  だが、お主らの言葉……響くものがあるぞ」

  ⸻

  グランジャスたちの言葉は、

  男尊女卑が支配する街に、

  **少しずつ“変化の風”**を吹き込み始めていた──。

  アルベルト(真剣な表情で)

  「肌を出すのがダメって…これには、何か理由があるんですか?

  ただの習慣? それとも他に、何か意味が?」

  ムホンマド「目を伏せ、プライベートな部分を守り、(魅惑させないよう)飾らず」にと伝えているのだ これは、女性たちが名誉と尊厳を維持し、謙虚さを保ち、性欲的な外的要因を取り除くことで、虐げられることを防ぐためだ。」

  アルベルト「まあ、女性達を砂嵐から守れるって言う利点はあるが 流石にあそこまで肌隠す必要はないだろ」

  ムホンマド「わしも、お前たちのおかげで目が覚めたが どう変えるべきか…悩み続けておる」

  ⸻

  グランジャス(穏やかに)

  「なら、俺たちと一緒に悩みながら進もう。

  恐れではなく、希望を信じる道だってあるんだから」

  シシオ「とりあえず男ども池に集めて今夜は飲みましょうぜ」

  

  ムホンマド「そうじゃな、飲んで語り合う方がいいかもしれん」

  夜、街の外れの池のほとり。男たちは水辺に腰を下ろし、素焼きの杯で地酒を飲み交わしている。

  アルベルト

  「ぷはーっ!やっぱこういう自然の中で飲むのが一番だな」

  シシオ

  「この酒、悪くないな。ちょっとスパイスが効いてて面白い味だ」

  リョーン

  「砂漠の実を漬けたやつらしいぜ。水が貴重だから、酒は大切にされてる」

  ムホンマド(杯を手に、少し俯いて)

  「……わしは、ずっと“正しい”と思っておったのだ。

  男が前に立ち、女を守るのが筋だと。

  だが、それは……“縛る”ことだったのだな」

  グランジャス(酔っ払いながらも真剣な目で)

  「うぇーい! そうそう、それでこそ男ですよムホンマドさん! ひっく……

  口で支配するのはガキ。信じて任せるのが本当の男ってもんよ!」

  ムホンマド(笑みを浮かべ、杯を掲げる)

  「……その通りじゃ。女たちは黙って従っていたのではなかった。

  我が言葉に従わなければ、生きていけなかったのだ。

  それを“忠実”だと思い込んでいた。わしは愚か者だった」

  アルベルト(肩を叩いて)

  「遅くなんかねぇよ。気づいたなら、次はどう生きるかだ」

  カラスト(にっこりと)

  「街の女の子たち、優しかったよ。

  本当は、ずっと話したかったんだと思う。

  怖くて口に出せなかっただけで」

  ムホンマド(杯を高く掲げ)

  「わしも生まれ変わるぞ! この街の“新しい父”となってみせる!」

  男たち

  「おおおぉーっ!!(杯を打ち鳴らして乾杯)」

  グランジャス「まずは明日の朝 女性達に今までの振る舞いを謝罪することからだぞ わかったな?」

  男たち

  「…(黙って頷く)」

  ⸻

  夜空に浮かぶ月が、酒に染まった水面を照らす。

  そこにはもう、旧き支配者の影はなかった。

  あるのは、新たな理解と連帯の夜。

  翌朝──サマーサの中央広場

  朝日が砂漠の街を赤金色に染めるなか、

  街の男たち――年若い者から年配者まで――が中央広場に整列していた。

  その後ろには、グランジャス、アルベルト、シシオ、リョーン、カラストらが立っている。

  そして彼らは一斉に、土の上に膝をつき、額を地につけた。

  グランジャス(朗々と声を上げる)

  「レディたち、どうか見てほしい」

  集会所から、ホルスター、ティミス、カリン、メルディス、マリーナ、シーフェらがゆっくりと姿を現す。

  その後ろから、昨夜語り合ったサマーサの女性たちも続く。

  グランジャス「昨日は夜に池の近くで飲んで語り合いながら

  言い聞かせたからこいつらの 謝罪を聞いてやってくれ」

  彼の言葉に、男たちは再び深く頭を下げる。

  ムホンマド(顔を上げ、涙を堪えながら)

  「わしは……お主たちを“守っている”つもりだった。

  だがそれは、殻の中に閉じ込めただけだった。

  どうか、許してくれ。生まれ変わりたいのだ、この街と共に」

  男たちの声が続く。

  「母さん、ごめんな」

  「姉ちゃん、怖い顔させてたのは俺だった……」

  「もう、黙って言うことを聞けなんて言わない」

  それを聞いた街の女性たちが、互いに顔を見合わせる。

  中には、ぽろぽろと涙を流す女性もいた。

  ティミス(ゆっくりと前へ出る)

  「……ならば、これからは“支配”じゃなくて“対等”でいてください。

  私たちは、家畜でも道具でもなく、一緒に生きる人間です」

  ホルスター(腕を組んでうなずき)

  「謝罪は受け取るわ。けど、大事なのはこれからよ」

  シーフェ(にやりと笑いながら)

  「ま、私としては病院と産院作ってくれたら許すわよ? ふふ」

  マリーナ(両手を広げ)

  「さぁ、街を変えるなら今がその“序曲”よ!」

  ──そして、静かに一人の女性が男たちに近づき、手を差し出した。

  それを皮切りに、次々と手を取り合う。

  かつては分断されていた心と心が、

  今、砂漠の風の中で、ようやくひとつに結ばれた。

  砂漠の風が静かに吹くなか、出発の支度を終えたグランジャス一行が街を後にしようとしていた。

  その時、リョーンが口を開く。

  リョーン(まっすぐ前を見据えながら)

  「父さん、みんな。俺は……この街に残るよ。

  昨夜、改心した男たちの顔、あれは本物だった。

  だけど、変わろうとしても昔の癖ってやつはすぐには抜けない」

  リョーン(拳を握りしめ)

  「だから俺はこの街で見届ける。

  こいつらが“本当に変われるか”どうかを。

  それができたら、また合流する」

  シシオ(しばらく沈黙ののち、ゆっくりとうなずいて)

  「……わかった。

  お前がそう決めたなら、俺は何も言わん。

  でも無茶すんなよ、何かあればすぐに連絡しろ。

  お前はもう、ひとりじゃないんだからな」

  リョーン(少し照れたように)

  「ああ、ありがとな。父さん」

  グランジャス(親指を立てながら)

  「監視が入れば、きっとうまくいく。

  期待してるぜ、リョーン。お前の“見張り”にはな」

  アルベルト(手を差し出して)

  「この街を頼む。俺たちが戻ってくる時、

  “もっといい街になってる”って信じてるから」

  リョーンはその手をしっかりと握り返す。

  リョーン

  「任せとけ。絶対、裏切らねぇよ」

  そして一行は、再び砂漠の旅路へと歩みを進めていく。

  リョーンは背中を見送りながら、胸の奥に燃えるような責任感を宿していた

  砂漠を進む隊列の中──歩きながらの会話

  風は熱く、砂はどこまでも続いていた。

  それでも、誰ひとり足を止めず、ゆっくりと次の目的地へと向かっていた。

  ホルスター(ふと隣を歩くシシオに視線を向けて)

  「……シシオさんがまさか、あの街で拳じゃなく“対話”で済ませるなんて、ちょっと意外でした」

  シシオ(照れたように鼻をかく)

  「はは、俺もそう思うよ。

  昔だったらああいうやつら、全員ぶっ飛ばしてたかもしれねぇ」

  ホルスター(微笑んで)

  「そうですね。昔のシシオさんなら間違いなく」

  シシオ(少し真剣な目をして、空を仰ぎながら)

  「けどな……お前とアルベルト、それにグランの背中見てたらさ……

  “力じゃ守れないもんもある”って、最近よく思うんだよな」

  ホルスター(その言葉に少し目を見張り)

  「……」

  シシオ(苦笑いしつつ)

  「俺、不器用だから言葉で伝えるのは苦手なんだけど……

  あの街の女たちの目を見て思ったよ。

  “ほんとに強いってのは、痛みを知ってる奴のことだ”ってな」

  ホルスター(穏やかに、でもどこか誇らしげに)

  「それ、子どもたちにとっても、きっと一番の“お手本”ですね」

  シシオ(顔を赤らめてぼりぼり頭を掻く)

  「やめてくれよ、柄じゃねぇっての……」

  そんな会話が交わされる中、風は少しだけ優しくなったようだった。

  新たな国へ、そして新たな出会いへと、一行は歩みを進めていく――。

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