獣人ヒーロー、悪に堕つ 第2話「爆誕!炎の戦士ファイアレッド」
「ティア・ガーディアンズのヒーロー…こいつらが」
地下闘技場のリング上で脂肪に包まれた異形…元はカバ獣人レスラーだった脂肪怪人ファットヒポポタスに対峙する青と黄色のヒーローを見上げる鷹野翔真はその腕につけたブレスレットが赤く輝いていることに気づいていなかった。
「よっしゃハヤテ!このまま一気に決めちまおうぜ!」
「だからコードネームで呼べと…待て、出口の様子がおかしいぞ」
虎獣人ヒーローであるブルーウインドは聴覚が非常に優れており、リング上からでは聞こえるべくもない地上への出口付近の異変を察知した。目の前のファットヒポポタスに注意を向けながらも耳を澄ます。
「なんだこいつらは!?」
「まさかタイラントの…きゃあぁぁ!」
「くそぉぉ!他の出口はないのか!?」
聞こえてくるのは叫び惑う地下闘技場の観客達の声、そしてーーー
「「ギイィィィィイイイイイイイ!!」」
何度も対峙したタイラントのラプトル型戦闘員の鳴き声だった。
それはイビルフロッグに命令されてファットヒポポタスを追いかけていた戦闘員で、出遅れたことで結果的に逃げる観客と鉢合わせることになったのはヒーロー達は知るべくもない話であったがー
「くそっ、こいつ。戦闘員まで連れてきてやがった」
ブルーウインドは逡巡した。出口まではかなりの距離があるが、自分の速さであれば30秒でたどり着くことができる。
聴覚で確認した限りでは戦闘員は10体、観客の人数は想定できないが最後まで残っていた人数からすると20人程度であろう。
戦闘員10体程度であれば訳もなく倒すことはできるが、観客を守りながらとなると骨が折れる。
そして何よりも危惧しているのは、自分が観客の救助している間、目の前のカバ怪人をランドイエロー1人に任せなければいけないのだ。それはリスクが過ぎる。
その逡巡した表情を横目で見たランドイエローは視線をファットヒポポタスに向けたまま
「おい、ハヤテ!おまえ、出口の方が気になるんだろ。ここはおいらに任せな」
「ふん、このデカブツをおまえ1人で相手にできる訳ないだろう」
自分の迷いを悟られたことに虚を突かれつつも、平静を装うブルーウインド。
「オレヲォォォ無視スルナァァ!!」
風と砂の攻撃を受けて傷だらけになりながらも、態勢を整えたファットヒポポタスがその茶色い巨躯を覆う脂肪を揺らしながら2人のヒーローに迫ってくる。
「んなこと言ってる暇ねえだろ!違法賭博するような野郎でも一般市民、おいら達ヒーローが守らなきゃいけねえ存在だろ!ふんがぁぁぁ!」
迫りくるファットヒポポタスの前に立ち塞がったランドイエローは自分の2倍近くもその巨躯と組手を取る形になる。
歯を食いしばり足で踏ん張りながらも、突進の勢いを抑え込み、背中を向けたままブルーウインドに語りかける。
「ぐぎぎぎぎっ……!早く行きやがれ!おまえが戻ってくるまでに、おいらが片付けといてやるからよ」
「……10分で戻る。それまで耐えろよ、武蔵」
ヒーローとして成長したランドイエローを信じたブルーウインドはリングに背を向け出口へと駆け出していった。
[newpage]
「はぁ…はぁ…やっと行きやがった、ハヤテの野郎」
ブルーウインドが観客の救助に向かったことに安堵しつつ、目の前は困難極まりない状況にあった。
『力だけだったら鮫島のおやっさんにも負けてねえ おいらですら押し負けてやがる。この怪人なんて馬鹿力だよ』
徐々にリングロープまで押されていくランドイエローのずんぐりとした体。ファットヒポポタスは未だ余力があるようであり、苦悶の表情を浮かべるランドイエローにさらに体重を乗せていく。
「グヘヘヘ…オマエチカラハ強いが…さっきのアオイのヨリ弱いナァ」
「なんだと…てめえごときにそんなこと言われる筋合いはねえな…あっ…ぐおぉ!」
怪人の挑発に思わず乗ってしまったランドイエローは、その隙を突かれてリングの床に背中から倒され、自分の2倍以上も巨体にのしかかれてしまった。
「ツカマエタ!捕まエタ!このママ潰してヤルヨォォォォォォ」
「ふぐっ…!ふぅーーーー!んぐぅぅぅ!」
じたばたと藻掻きながらなんとか体を返そうとするが、ランドイエローが柔道の有段者であっても圧倒的な体重差に手も足も出ない。
おまけに異常な程に纏われているファットヒポポタスの脂肪はランドイエローが装着しているヘルメットごと顔を覆い呼吸すらままならなくしていた。
『くそっ…息が…息ができねえぇ…このデカブツなんて重さだ。ハヤテの前でカッコつけたってぇのに、このザマかよ…畜生…』
床を足で蹴ったり、両手で巨体を押し上げようと力を入れるがファットヒポポタスはビクともしない。酸素を取り入れられず藻掻いていたランドイエローだったが、次第にその抵抗も弱まっていく。
『ダメだ…もう意識が…ハヤテ、すまねえ…』
「ぐへへっ…コイツをタオシタラ、アトハ青いホウを片付ケルだけぇぇ!……ンン?ハァァ!?グアァァァ!?」
自分の腹下で潰されるヒーローの抵抗が弱まっていくのを感じて勝利を確信していたファットヒポポタスであったが、突如その大きな顔面を熱い拳で殴りつけられ、反対側のリングロープで吹き飛ばされた。
「アツい!アツいィィィィ!ギイヤァアァァァァ!!」
顔面を襲った炎の拳の熱さにリング上で悶え苦しむファットヒポポタス。のしかかっていた巨体が吹き飛ばされ、呼吸の自由を取り戻したランドイエローは黄色い瞳に涙を浮かべながら酸素を取り込む。息を荒げながら顔を上げれば、リング中央に鷹獣人・鷹野翔真が立っていた。
「はぁはぁはぁ…!おまえ、ショーマ…?」
「なるほどな。腹ほど脂肪がねえ顔面なら俺の拳も多少は効くってことか」
先ほどの一戦よりも手応えがあったことを確認して拳を握り直す翔真。ランドイエローは慌てて立ち上がり、ファットヒポポタスに向かおうとする翔真を抑え込む。
「何しやがる!?」
「ショーマ、ヒーローでもないおめえを戦わせる訳にいかねえだろ」
「うるせえ!俺はリングの上で負ける訳にはいかねえんだよっ!」
「相手は怪人だぞ。おいら達ヒーローに任せろ…って、おまえ その腕につけてるのは!」
さすがにヒーローに変身したランドイエローに抑えられれば翔真も身動きが取りにくい様子で、腕をバタバタと振り回して拘束を振りほどこうとする。抑え込みながら説得を続けるランドイエローは、ふと翔真の左腕にブレスレットがつけられていることに気づいた。
「あん?これはさっきオマエらとやり合った控室前に落ちていたもんだが…ん、なんだこりゃ赤く光ってんじゃねえか?」
「それは『ガイアチェンジャー』…ヒーロー変身道具ってやつだ。ほら、おいらの腕にも着いてるだろ?」
そう言って、自らの左腕に装着された黄色い輝きを放つブレスレットを見せつける。
「土佐のおやっさんから、おまえがおいら達の仲間になってくれるなら渡すようにって言われてたんだがよ…さっきおまえと戦ってた時おいらが落としちまって…回収に戻ったら、この騒ぎってことだ」
バツが悪そうにヘルメットのこめかみ辺りをポリポリと描くランドイエロー。
「そういうことかよ。へっ、デザインが気に入って付けたのが間違いだったぜ」
「落とし物を勝手につけるんじゃねえよ…しかし、ブレスレットが光ってる…ってことは、ショーマおまえ…やっぱりガイアに選ばれたヒーローなんだな!」
「だから、俺はヒーローに興味なんてねえって言ってんだろ」
ニヤニヤと笑いながら嬉しそうに話すランドイエローに対して、どこまでも興味なさげな態度で話す翔真。
「そう言わずによぉ、1回ヒーローに返信してみろって!ガイアチェンジャーを天に掲げて『ガイアチェンジ!』って叫べば」
「ウオオォォォォ!タカノショウマァァァァ!!!!」
ランドイエローの声を遮るようにしてファットヒポポタスが雄叫ぶ。翔真の炎の拳を喰らって先ほどまでリング上で悶えていたファットヒポポタスが先ほどまでと比べ物にならない速さで翔真に向かってきていた。
怪人化により思考が単純化してしまった影響か、元々は翔真への復讐心で地下闘技場に舞戻ってきていたが、目の前に現れた2人のヒーローの登場により翔真の存在を忘れていた。
しかし、再びリング上に翔真が現れたことで復讐心が呼び覚まされ、怪人化により無理やり増幅された肉体スペックがフルに活用される。カバ特有の大きな口を広げながら翔真に向かって突撃をかけたのであった。
『速え!このままじゃショーマが巻き込まれちまう。こんにゃろ…!』
ファットヒポポタスの速さはヒーロースーツを着ていない翔真では対応できなかったが、ランドイエローには対応できた。自分の身の安全を考える前に、その体は動いており翔真を思いっきり突き飛ばした。
「なっ、てめえっ……!!」
突き飛ばされた翔真が顔を上げて目にしたのはファットヒポポタスの大きな口に飲み込まれていくランドイエローの足であった。
「お、おい…!」
「んぐ…ング…ゴクン…!ぷはっ…」
その太い足まで飲み込んでいけば、ファットヒポポタスは満足気な表情を浮かべた。
「てめえ、アイツを食っちまったのか…?」
「セイカクには違ウガナ。この腹の中でアイツはサイコウのカイラクを味わいながエネルギーをハキダスことにナル」
「なに?」
ファットヒポポタスの言っている意味がわからず困惑する翔真であったが、ただでさえ膨らんだ腹がさらにボッコリと膨らんだ様を見て、まだランドイエローが胃の中で溶かされていないことを理解した。
「アンシンしろ!カバ獣人ニハ胃が3つアル。オマエとアオイヒーローモ食ってオレノ養分にシテヤル」
「へっ、ほざいていやがれ。そのドでかい顔面にもう一発お見舞いしてやらぁ」
そう嘯くと翔真は拳に炎を宿した。
『俺を助けるためにアイツは…すまねえ、必ずそこから出してやるからな』
[newpage]
ファットヒポポタスの大口に飲み込まれたランドイエローはーーー
「ぐおっ…くせぇし、なんだこの口ん中…喉の奥から触手みたいのが…」
ファットヒポポタスの大きな口、その喉奥では無数の触手が蠢いており、口の中でランドイエローの体に巻き付いていくと、そのまま食道の奥へと誘われていった。
「くそっ…この触手…絡みついて…!どんどん奥に…」
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グニュグニュグニュグニュ
クチュクチュクチュクチュ
ジュルルジュルルジュルル
気づけばランドイエローは井戸の底のような暗くジメジメとした空間に落とされていた。暗闇で何も見えない中であるが、手に触れた感覚で自分の周りをヌルヌルとした粘液に塗れた触手が蠢いているのがわかった。
「ここは…あの怪人の胃の中か…生臭ぇ…それにこの触手なんだよ?おいらの体に巻き付いてきやがる」
胃壁中から生えている触手は意思を持つようにランドイエローの体に巻き付いてくる。手に、足に、首に…ランドイエローが身に纏っているヒーロースーツやヘルメットも粘液にまみれていく。おまけに強烈な腐敗臭が漂っているため、ランドイエローの嗅覚を刺激して脳にまでダメージが与えれていくようだった。
「くそっ……鼻も効かなくなってきやがった。畜生…このヌルヌル…きもちわりぃ…絡みついてきて…ひぎっ…やめろっ…」
手足を縛り付けて身動きが取れなくなったランドイエローの体の上を這うように動き始める数本の触手。1本の触手がヒーロースーツ越しにランドイエローの股間まわりをにゅるにゅると這い始める。股間の膨らんだ部分を探し当てた触手の先端は愛撫するかのようにランドイエローの股間まわりを刺激していく。
「はぁ…はぁ…あぁぁ♡なんだこれ?こいつら、おいらをどうするつもりで…んっ…んあぁぁ♡」
股間を刺激する触手の感覚に息を荒げ始めたランドイエローは別の刺激に気づく。
顔を上げると、2本の触手が胸元をまさぐり、その先端でヒーロースーツに浮かび上がる乳首をいじり始めていた。触手は舌で唾液を塗りつけるように、ペタペタと粘液を塗りたくっていく。
ランドイエローも成人男性ゆえに旺盛な性欲はある。残念ながら女性との縁がなく、基地の自室で自らを慰める日々であったがあくまでも一般的な性癖しか持たない彼にとって乳首への刺激は初めて覚えた快感であった。
「はぁ♡はぁ♡ちくしょうっ…なんでだっ…こんな気持ちいいのっ…味わったことねぇ…こんなことしてる暇じゃねぇのに…ふあっ…ああっ…♡」
苦悶の声は次第に嬌声へ変わり、荒い息遣いは喘ぎへと変わっていく。その間も触手はランドイエローを全身を撫で回していく。ランドイエローの思考が止まり、触手が与える快感を享受していく。そうなれば自ずと彼の股間は盛り上がり、自慢の黄色いヒーロースーツにテントを張らせていた。
「ああっ♡気持ちいぃぃ…ハヤテも、ショーマも戦ってくれてるのに…おいら、こんな…♡はぁはぁ…♡」
盛り上がった股間部分にも触手が集まりスーツ越しに巻きつけば、締めたり緩めたりを繰り返していく。その間も乳首を責める触手の動きはやまず、情けない声を漏らしながらランドイエローの忍耐も限界を迎えていった。
「んあぁぁっ…!はあっ…あっ…♡ああっ!あれ、ヒーロースーツーが解除されて…?なんでぇ…♡」
ランドイエローが身に纏っていたヘルメットとヒーロースーツが光になり左手に装着されたブレスレットに戻っていく。
ヒーローへの変身はガイアの力と変身者の精神力が合わさって初めて成立する。ランドイエローは快楽により思考を停止したことでヒーロースーツの維持ができず、光へと戻ってしまったのだ。
ヒーロースーツを着用する前の服装に戻ったが、触手が纏う粘液は容易く布地を溶かしていく。
次第に丸裸になり、茶色い毛皮に覆われたずんぐりとした体を露呈していくランドイエローもといツキノワグマ獣人の熊江武蔵。そして、無防備になり晒されたのは成人の熊獣人とは思えないほどに小ぶりなチンポであった。小ぶりと言えど快感にいきり立ったソレに触手は容赦なくしゅるしゅると巻き付いていく。
「あうぅ…?♡ああっ!♡あっ直接さわられたら♡ああっ♡だめっ!♡」
武蔵の毛皮に覆われた乳首も探し当てた触手はさらなる刺激を加えていく。
グニュグニュグニュグニュ
クチュクチュクチュクチュ
ジュルルジュルルジュルル
裸にされ、周りを触手に囲まれた武蔵の耳に、いや脳に響くのは触手が奏でる卑猥な水音だけだった。そしてーーー
「もうダメだッ!あっ…♡ああっ…♡あああっ!」
ビュルっ…!ビュルルビュルルル!
触手に巻き付かれ締め上げられた武蔵のチンポから白い獣精が放たれていく。その一滴まで絞り尽くすように触手がウネウネと動きながらチンポを扱いていく。
触手にまみれた胃壁に付着した獣精は吸収され、怪人エネルギーへと変換されていく。脂肪怪人ファットヒポポタスの真の能力、それは体内に取り込んだ相手を胃で捕らえ触手による快楽地獄に誘い、その精が枯れ果てるまでエネルギーを吸い取ることであった。
「はあっ…♡はあっ…♡ダメだ…おいらも…戦わなきゃ…お、おい…♡離せよっ…!ああっ…もうやめ、やめて…くれえぇ!♡」
獣精を吐き出し一瞬正気を取り戻した武蔵であったが触手の拘束は解かれないことに絶望の声を漏らす。そして淫猥な責めが再開していき、誰にも声が届かない胃の中で嬌声を響いていくのであった。
[newpage]
「ファイアナックル!」
拳に纏った炎で先ほど同様にファットヒポポタスの顔面を狙って殴りかかる翔真。しかし、腹の脂肪を自由に動かせるファットヒポポタスは瞬時に脂肪を動かして顔面をガードする。
ボスっと音ともに拳が脂肪に埋まるだけでファットヒポポタスにダメージを与えているようには見られなかった。
「ちっ、やっぱり顔面以外は効きそうにないか」
「カバババババ!コノ厚いシボウがアレバ、オマエの炎モ怖くナイ!ソレニドウヤラ腹のアイツも限界ミテェだな!」
そう言うと、先ほどまでのダメージが蓄積されていたファットヒポポタスの体から傷が見る見る内に消えていく。
「なんだ、てめぇ…!急に体力を回復させやがって」
「カバババ!腹ノ中ニ落トシタ熊がエネルギーヲ放出シテクレタようダァ。アイツガ干カラビナイカギリ、オレは無限ニ戦えるゾ」
鼻息粗く再び戦闘態勢を取るファットヒポポタスを前に、さすがに劣勢を覚えた翔真は逡巡した。
『コイツの言ってる意味はわからねえが、どうやら腹ん中のアイツからエネルギーを吸収してるらしい。このままだとジリ貧だ。一発で決めなきゃ行けねえが、俺の拳じゃ決め手にならねえ…どうすれば』
そこで翔真は自らの左手のブレスレット「ガイアチェンジャー」に目を遣る。
『こんなんに頼りたかないが背に腹は代えられねぇ。たしか、なんて言ったけな。アイツが言ってたのは…』
「サア、タカノショウマァァァ!今度はオマエがオレノ腹のナカにハイレェェェ!」
ファットヒポポタスが先ほどと同様に大口を開けながら叫び突進してくる。もはや猶予はなかった。
「南無三!!」
背中の翼を広げて宙に浮き、間一髪でファットヒポポタスの大口を避ける。そして、左腕を天に翳し…
「ガイアチェンジ!」
そう叫んだ瞬間、周囲に炎が燃え盛る。
燃え盛る炎は翔真を中心として広がっていき、やがて再び翔真を包んでいく。
翔真を包む炎はやがて赤いヒーロースーツへと変わり、その筋肉質な体に纏われていく。鷹獣人特有の鋭い瞳を覆うように小ぶりな頭にはバイザーが装着される。そして、何よりも特徴的であった大きな翼は炎で燃え上がり、さながら火の鳥ような姿のヒーローが爆誕した。
「ナンダそのスガタは…タカノショウマァァァ!!」
リング上に降り立った新たなヒーローの姿を見て警戒を強めるファットヒポポタス。
「これがヒーローの力…すげぇ、力が漲ってきやがる。あん?今の俺は鷹野翔真じゃねえ……アイツらに倣って名乗るであれば」
そう言いながらファットヒポポタスに向き直り、威嚇するように炎の翼を大きく広げていく。
「火炎の守護者・ファイアレッド様だ!いくぜ、おらあぁぁああぁ!」
名乗り、かけ声とともに炎の翼を羽ばたかせれば無数の赤い羽がファットヒポポタスに迫っていく。羽の1枚1枚が燃え盛っており、それがファットヒポポタスの全身へ矢となり突き刺さっていく。
「コンナものっ…おっ…オオォォォ!?」
ファットヒポポタスの厚い脂肪に覆われた体はそんな攻撃ものともしないことはファイアレッドもわかっていた。
炎の矢を放つや否や、床を蹴って拳に炎を宿す。その拳を振り上げながら飛びかかり、ファットヒポポタスの鳩尾へ殴りかかる。
「バカめ!そんなパンチは効かナインだよォォオオォォ」
「さあて、どうだろな!」
ズシン
拳を通じて確かな手応えを感じた。ヒーロースーツにより増強されたガイアの力と身体能力は、ファットヒポポタスの厚い脂肪の守りを貫きて内蔵まで響く一撃となった。
「ガホッ!」
腹底に響いた衝撃にうめき声を上げたファットヒポポタスは、そのまま項垂れリング上で膝をついてしまう。
「これがヒーローの力だっていうのか…すげぇじゃねえか…気に入ったぜ」
「ゲホッ…コポォ…ウオオォォォエエエエ!」
強烈な炎の拳を鳩尾に喰らったファットヒポポタスは咳き込み、嗚咽し、そのまま汚らしい嘔吐音と共に大きな口からナニかをリング外に吐き出した。
「んあぁっ♡はぁ♡はぁ♡……ん、あれ?ここは外?」
吐き出されたのは胃の中に閉じ込められていた武蔵であった。全裸で全身を粘液に濡らしており、どこか恍惚な表情を浮かべているが、その理由をファイアレッドが知る由はない。
「生きてたのか、ザコクマ。なんか…オマエ臭くねえか?」
「はぁ…はぁ…あんなきたねえ野郎の腹ん中にいたんだ。しゃあねえだろ…?それより、おまえ…その姿?」
「話は後だ。まずはアイツとのケリを付ける」
悶えるファットヒポポタスにとどめを刺そうと向き直るファイアレッド。
「ま、待てショーマ!怪人になったアイツに元々罪はねぇ。だから、あの頭の角を狙ってくれ」
「角を?」
「あれを壊せば怪人から獣人に戻れる。頼むぜ、ショーマ」
「タカノォォ…ショーマァァァ…」
そんな会話をしている間にも、際限ない体力を持つファットヒポポタスはふらふらと立ち上がり、再びファイアレッドに襲いかかろうと迫ってくる。
「気は進まねえがしょうがねえ。カバ野郎!この一撃でしまいにしてやるよ」
炎の翼を広げ、天井近くまで飛び立った翔真は拳を構えながら垂直落下しファットヒポポタスの脳天へと拳を落とした。
「メテオォォォインパクトォォォォォ!」
その一撃が怪人化の際に生えた角を砕くと、ファットヒポポタスの全身から湯気が立ち、脂肪が燃焼され巨躯が萎んでいく。
白い湯気が晴れたリング上にカバ獣人の河馬山が倒れ伏していた。
「本当に獣人に戻りやがった…」
「よくやった、鷹野翔真」
ファットヒポポタスが闇試合の対戦相手だった河馬山に戻ったのを確認していたファイアレッドであったが、リング外から声をかけられ振り向くと、そこにはブルーウインドが立っていた。リングに寄りかかった武蔵がブルーウインドに声をかける。
「ハヤテ…遅かったじゃねえか」
「銭ゲバ共の避難誘導が手間取ってな。それより武蔵、おまえなんてザマだ」
「いや、これは…」
全裸で粘液だらけチンポからは獣精の臭いを漂わせている自らのナリに赤面して弁解の余地もない武蔵を尻目に、ブルーウインドはリング上のファイアレッドに向き直る。
「鷹野翔真、怪人討伐への協力は感謝するが…そのガイアチェンジャーは我々ティア・ガーディアンズの物だ。一般人の君に渡すわけにはいかない」
「その話なんだが、俺は気が変わったぜ。このヒーローの力を振るえるんであれば、おまえらにこれからも協力してやる」
「それって…?」
「ああ、おまえらの仲間…ティア・ガーディアンズのヒーローになってやるってことだ」
画して、ティア・ガーディンズは新たなヒーロー、ファイアレッドを仲間に入れることになった。
[newpage]
「ゲロゲロゲロ…ファットヒポポタスは獣人に戻されてしまったゲコか」
誰もいなくなった地下闘技場に次元の裂け目が生じる。そこから巨躯を揺らしながらイビルフロッグが現れる。
タイラントが誇る先端技術により移動先の座標がわかれば、どこへでも次元ワープができるのである。今回は怪人ファットヒポポタスと戦闘員の残滓をマーキングすることで異次元ワープゲートを繋ぐことができたのであった。
「怪人化が安定する前に暴れさせたのは間違いだったゲコ…なかなか面白い怪人個体だったから残念ではあるが…ヒーロー達が持つ力、『ガイア』といったゲコか。その能力の一端を知り得たから良しとするゲコ。それに…」
研究者としての冷徹な表情を浮かべながら1人語るイビルフロッグの手には1枚の写真が握られていた。その写真にはファットヒポポタスと対峙するランドイエローが写っていた。
「もっと面白そうな『素体』を見つけたゲコ♪」
どこか楽しげに呟くと再び異次元ホールを開き、タイラントの戦艦へと帰還するのであった。
(第3話「鷹と虎と熊と」に続く)