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狼ケモヒーローが堕ちてく話。 その5-Aルート 

  狼のヒーローが姿を消してから数週間。

  マスクについている発信機から発せられる信号を頼りに二人にヒーローはその場所に向かっていた。

  居場所を特定するのに費やしてしまった時間。

  他のヒーローを励まし、先陣を切る彼のことだ、まだ無事であると彼らは信じている。

  いや、信じたい。今彼を失うのは大きな痛手となる。

  鬱蒼とした森の中を二人のヒーロー、猫と龍は走り抜けていた。

  「こっちで会ってるよな?!」

  「恐らく…な。ここに来てから機械の調子が悪いんだ。」

  龍の質問に猫は自信無さげに答えた。彼が手に持つレーダーの画面にはざざざ、とノイズが混じり非常に見づらい。

  それでも自分達の向かっている先に彼が居ると信じて、二人は走る。

  その時だ。

  鬱蒼とした森の視界が広がり、太陽の光が彼らを照らした。

  「これは…!」

  開けた場所にあったのは鬱蒼とした自然には似合わない、無機質な建物。

  工場、いや、城?そう言った方が正しいかもしれない。

  「ここが…もしかして…」

  「あいつらの、アジト…?」

  二人はその突然の出来事に絶句する。

  ノイズ交じりのレーダーは近くに反応があることを示すようにピコンピコンと音を立てている。

  つまり彼は、敵に捕らわれ本拠地に連れて来られてしまったという事だ。

  数週間。それは余りにも長すぎた。彼らの心が折れかける。

  その時だ。

  「…お前ら…」

  聞こえるのは微かな声。耳をピン、と立てると猫はその声のほうへ向かい始めた。

  龍には聞こえていなかったようで首を傾げる。

  「どうしたんだよ!」

  「今、こっちから声が聞こえた!あの声は…!」

  声は曲がり角のすぐ先。そこで猫の視界に入ったものは。

  全身を精液塗れにし、はぁはぁと荒く息をつく、狼の姿。

  マスクはつけているものの服は身につけておらず全裸で壁にもたれかかるように座っていたのだ。

  その姿に言葉を無くすものの…猫は安堵の息をついた。

  「よかった…生きててくれたんですね!ハウルさん!」

  「なんとか…な。もう駄目かと思ったぜ…お前らが来てくれてよかった…」

  少し遅れて曲がり角を曲がってきた龍も同じように狼の姿を見て猫と同じようなリアクションを取る。

  狼は歯を強く食い縛りフラフラと立ち上がった。

  「…ここが、恐らく、奴らのアジトだ。…逃げる、と言いてぇ所だが…妨害電波だけは壊さねぇと…」

  力なく歩く狼の腕を抱え猫は首を横に振った。

  「ハウルさん、無茶です、そんな体で!一度体勢を…」

  「…いや、ここで逃げたら奴らはまた姿をくらます…その為にも、必要なんだ。」

  正義感が強すぎる狼のことをよく知っている二人だ。

  何も出来なかった自分がきっと許せないのだろう。

  そして、ここで奴らを野放しにし、また市民が傷つくのを見過ごす事が出来ないのだ。

  龍と猫はアイコンタクトをとり…頷いた。

  「分かりました。俺達も一緒に行きます。」

  「連絡はとってみる。…妨害電波が出てるなら、多分意味は無いだろうが。」

  「二人とも…すまねぇな。」

  狼の謝罪に二人はにっこりと微笑み、つられる様に狼も笑った。

  

  「多分…こっちだ。」

  狼の案内で二人は無機質な薄暗い廊下を歩いていた。

  夜目がある程度利く狼と猫にはよく見えているが…龍にはあまり見えていないようだ。

  なんとか狼と猫の気配についていく。

  その間も無線を使い連絡をとろうと試みる。

  「おい、受信出来てるか!?俺達は今ハウルさんを見つけて敵のアジトの中にいる!救援を頼む!」

  そして受信のモードに切り替える。しかし無線機はノイズを発するだけだ。

  龍は首を振った。

  「駄目だ、全然繋がらねぇ…」

  「仕方ねぇな…お前らが来てくれたのだって奇跡に近いだろ」

  「すいません…俺達が不甲斐ないばっかりに…」

  謝る猫に狼は笑った。

  「ヘマしたのは俺だから、おめぇらは気にしないでいいんだよ。」

  無機質な廊下に響く狼の声。

  分岐点。真っ直ぐ進むか右に進むか。

  無線を弄っていたら少し遅れてしまった龍。

  「それに…」

  右に曲がった狼と猫。

  突然。

  びちゃり、と水の音が龍の耳に聞こえた。

  「…え?」

  次にしてくるのは鉄の臭い。戦いに明け暮れた龍は、それが何かすぐに分かる。

  血の臭いだ。

  薄暗くて良く見えない。龍は一歩一歩近づくと音のした壁に触れた。

  びちゃり、と手に液体がつく。…足元を見てはいけない気がした。

  それでも、龍は本能の命令に背き、足元を見てしまった。

  そこに転がっているのは。

  「…え?」

  状況が分からない。理解出来ない。したくない。

  だって。

  「なんで…首が…」

  猫の首が、そこに転がっているのだから。

  光を映していた瞳。何が起きたか理解した直後、猫の瞳は光を失った。

  狼と猫の通った道を見てみる。そこにいるのは。

  「こうやって、気持ちよくなれるようになったんだからなぁ…」

  どしゃり、と音がして猫の首から下が倒れた。

  噴出す鮮血が狼に降り注ぐ。狼は舌をはみ出させにぃぃ、と歪に微笑んだ。

  血液と精液に塗れた体。瞳に宿るのは紅い、狂気の光。

  状況が飲み込みきれない龍。狼が、裏切った?騙されたのか、俺達は?

  なんでだ?なんでこんなことに?俺達のせいなのか?

  沢山の疑問。頭が破裂しそうになる。

  狼は歪に笑ったまま龍の後ろに回りこみ太い腕で龍の首を絞めた。

  「ガッ…!」

  「大丈夫、お前は殺さねぇ。…ごしゅじんさまの元に、連れてってやるよ。」

  ぎりぎりぎりと首が絞まっていく。脳に血液が行き届かなくなって。

  視界に血がにじみ始めたころ、龍は意識を失った。

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