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【50】親友とヲタトークしちゃうぞ☆いや~満たされるわ~

  目をかっ開き、瞳孔をきゅっと縮めてテーブルの一点を見つめてぶつぶつと呟く頼子。

  「転売目的での商品買い占めマジ絶許。あと薄い本も転売するつもりでの大量購入とか下手したら盗むとか。本当、人として終わってる。他人に迷惑かけてまで金儲けすんなや「欲しがってる人に商品を届ける~」じゃねぇんだよ。物欲に付け込んで法外な値段設定しやがって。てめぇ以外が全員不幸になる商売してんじゃねぇぞ。マジ呪う。転売ヤーめ。出品する度に寿命縮んで〇ねばいいのに。あと海賊サイトも等しく滅べ」

  同人作家の敵である転売ヤーや、作品を作者の許可なく不正に公開して収益を得る海賊サイトに対して、息継ぎもせずに恨み言を言い募る。

  そんな発言に同意しつつ「殺意たっか!」と苦笑した親友は立ち上がり、頼子の隣に移動してその背中を優しくぽん、ぽん、と叩いた。

  「分かった分かった。転売ヤーの同類にはなりたくないって事ね」

  「うんそう。もう本当に、アイツらなんかと一緒くたにされるとか、絶対嫌」

  「分かったってば。ん~、でもさ。今回の件は「転売」っていうより「せどり」じゃないかな?」

  「・・・?それ、どう違うの?」

  親友はようやく顔を上げた頼子を片腕で抱きしめ、ヨシヨシと頭を撫でながら説明する。

  「「転売」は通常価格より高額で販売するのが目的で「せどり」は「安く仕入れて高く売る」のが目的。差額で儲けを出す物販ビジネスだね。違法でも何でもないし、寧ろ商売の基本、でしょ?」

  「・・それは・・うん。そうかも・・」

  「もし実際に取引するとなったらさ。向こう側は普通なら手に入る筈の無い貴重な品を入手出来てハッピー。製造会社は商品が売れてハッピー。アコは差額でお金が入ってハッピー。うちの叔父さんに換金頼むとなると、叔父さんにも手数料が入ってハッピー!取引関係者が全員幸せになる、商売の見本みたいな取引になるよ!」

  説明を聞きながら、闇落ち寸前だった頼子の表情が徐々に明るくなっていく。

  その様子にほっとして笑顔を浮かべ「ね?」と同意を求めて親友は首を傾げた。

  「・・うん。そうだね納得。超納得!「せどり」で儲けるのは悪い事じゃない!」

  「そうだよ!問題ないない!大丈夫!」

  すっくと立ちあがった頼子に続いて親友も立ち上がると仲良く肩を組む。

  反対側の手では拳を作り「はっはっは!」と二人揃って元気な笑い声を上げた。

  「ありがとアキ!金貨受け取ったら叔父さんに換金よろしくね!」

  「あいよー!まぁ、それなりに手数料取られると思うけど!」

  「そこは別に良いよ~。ちょっとでも収入になるだけで助かるし。あ、アキにも紹介手数料払うね!」

  「えっ?!いや、それは・・」

  「アキも取引に関わるんだから、貰えるモンは貰って問題無いと思うけど?」

  「関係者全員ハッピー。なんでしょ?」と先程親友がして見せたように首を傾げる頼子。

  ぱちりと瞬きした親友は驚きに目を丸くすると『敵わないなぁ』と苦笑して頷いた。

  「分かったよ。正直助かります。ありがとね?」

  「衣装って作るのに結構お金掛かるもんねぇ~」

  「本当そうなのよね~。生地や小物も質に拘ると、どうしてもね~」

  「質を下げたら一気に安っぽくなるし・・いや、あたしにもうちょっと手熟があれば安い素材でも活かせるようになるんだろうけど・・」

  「素人の私から見たら毎度凄いクオリティだと思うけど?」

  「え?マジ?もぉ~。そんな急に褒められたら照れるじゃ~ん」

  「あ、今回の衣装、途中だけど見る?」と、いそいそとカバンからスマホを取り出す親友に「え?!見せて見せて!」と喜び答える。

  そうして暫くの間、部屋にはオタク二人がキャッキャッと楽しくはしゃぐ声が響くのだった。

  〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇

  「そんな訳で沼ってさ。もう次は9〇カップル本を出そうかと・・」

  「え?マジ?何それ私得しかないんですけど~っ!!」

  興奮に顔を赤くして、満面の笑みで喜ぶ親友は「一体誰?!どのカプ描くの?!」と鼻息も荒く訊ねる。

  「今回は「拳〇ユ」メインの「シ〇〇ター」「サ〇〇リ」「タ〇〇ェン」・・ちょっと「ロ〇〇ラ」?」

  「主人公カプがオマケ扱いw」

  ケラケラと笑う親友に「だって・・」と頼子は口を尖らせた。

  「今回はノマカプ推しで行こうかと思ったんだもん」

  「主人公ノマカプなら「ド〇〇ナ」ちゃうんかい!」

  「いや。それはナシ。私の中でカプキャラは固定。リバはアリだけど・・あ、でも「ヨ〇〇テ」は有りありのアリ・・」

  「腕の人の扱いwや、解るけどっ!解るけどねっ!」

  「そう。ノマカプとBLカプは別腹なんだよ。それはそれ、これはこれ」

  「ド〇〇ナは原作で匂わせあるのにw。ま、解釈と好みは個人の自由だからね。無理強いはしないよ」

  「・・うぅ・・否定したい訳じゃないんだよ・・読むのは全然OKだし、どのカプも美味しくモグモグよ?でも描くとなると、多分筆が乗らないと思う・・」

  「そっか~。やっぱ何かを作り出すって自分の解釈合ってて好きじゃないと難しいんだね~」

  「そう。漫画を描くには萌えと情熱と根性と時間とお金と、後は努力と睡眠と健康と・・」

  つらつらと作画に必要な要素を上げていく頼子に「多い!多い!w」と笑う親友。

  と、その時。鏡の向こうからこちらを窺う青年が視界の端にチラついた。

  「あっ!お帰りアド君!風魔法どうだった?」

  「あ、あぁ。出来る範囲での訓練はしてきた・・それで、その人は?・・」

  戸惑いながら返事をした青年はちらり、と視線を親友に向けて問い掛ける。

  「この人はアキ!ほら、対価について相談するって言ってた、私の親友だよ!」

  「アキ、こちらアド君!異世界の美青年!」とそれぞれを紹介した。

  「どうもアキ殿。アディードという・・アヤの友だ」

  「ね?ね?盛ってなかったでしょ?アド君ってすんごい美形だよねっ!!」

  同意を求めて勢いよく振り向いた頼子だったが、親友は期待していた反応をしなかった。

  どころか、難しい表情で酷く言い辛そうにして口を開く。

  「アコ・・ごめん。あたしには見えないよ・・」

  「え?」

  「鏡、なんにも映ってないよ?普通の鏡にしか、見えない」

  そう申し訳なさそうに言う親友に、頼子は絶句して固まった。

  〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇

  昼時まで半時という頃合いで訓練を切り上げ、ジャスに軽く洗浄魔法を掛けて貰って鏡の前に戻った。

  小部屋に入った瞬間、ずいぶんと賑やかな声が耳に届く。

  楽し気な様子に水を差すのは申し訳なかったが、おそるおそる向こう側を覗いた。

  すると彼女はいつかの友人らしき人物と、何やら大いに盛り上がっている。

  どう声を掛けたものかと考えあぐねていると、こちらに気付いた彼女がぱっと嬉しそうに顔を輝かせた。

  か、可愛い・・

  「あっ!お帰りアド君!風魔法どうだった?」

  「あ、あぁ。出来る範囲での訓練はしてきた・・それで、その人は?・・」

  恐らく例の友人だろうと予想は出来ていたが、念の為に訊ねる。

  すると案の定、彼女の親しい友人だったらしく「この人はアキ!」と紹介を受けた。

  成程。あの時は後ろ姿だけだったのもあって男性と見誤ったが、こうして正面から見ればその体格は細いものの、女性特有の曲線を描いているのが解る。

  戸惑っている様子の彼女の友人・・「アキ」殿に対し、こちらも名乗りを上げた。

  「どうもアキ殿。アディードという・・アヤの友だ」

  「ね?ね?盛ってなかったでしょ?アド君ってすんごい美形だよねっ!!」

  大袈裟に褒めて来る彼女に「私はそんな大したものではない」と答えようとして、友人の様子がおかしい事に気が付く。

  「アコ・・ごめん。あたしには見えないよ・・」

  「え?」

  「鏡、なんにも映ってないよ?普通の鏡にしか、見えない」

  そう申し訳なさそうに言う友人の様子から、鏡の解析結果を彼女に伝えていなかったのを思い出した。

  しまった・・これは私の手落ちだ。

  「アヤ。すまない!失念していたが、この鏡の能力の一つに[所有者固定]という能力がある事が解っている。こちら側でも、私以外の者は鏡を通り抜ける事も、そちらの様子を窺い見ることも出来なかった」

  「・・マジか。じゃあ今の私って傍から見たら鏡に向かって独り言言ってるイタイ奴?」

  「実際その通りだよアコ。てか例の異世界人さんアド氏っていうの?今来てんの?」

  彼女の隣に立った友人殿は目の周りを手で覆い、如何にかしてこちら側を透かし見ようと目を細めている。

  本当に何も見えていないらしい友人の様子に、彼女は頭を抱えてしまった。

  「マジか・・どうしよぅ・・」

  困り果てている彼女を助けてやりたいが、こういった事態にどう対処するのが正しいのか・・

  前例も無く、大した知恵も無い私は思考を止めない事だけを意識して、無言で立ち尽くした。

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