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【58】イケメンって欠点とかないの?え?変態?そこは欠点じゃなくて美点さ☆
コーラもどきで喉を潤しながら取り付けた風鈴や、昨日顔を合わせた傍仕えさんの事なんかを話すうち、約束していた街中の写真の事を思い出した。
「色々あり過ぎて忘れてたけど、こっちの風景色々撮って来たよ」
「あぁ、そういえばそんな話をしたな」
「沢山写したんだー」とタブレットにデータを移して渡し、簡単に操作方法を説明する。
「その中から手元に置きたいヤツを2、30くらい選んでもらって良いかな?全部紙にして出すのはちょっとね・・」
「難しい事を言う・・出来れば全部の絵が欲しいところだが・・どうしても無理か?」
「あ~・・そんなら、ちょいと手間賃を頂いても良いっスかね?」
「わかった。なら昨日預けた金貨はそのまま代金として受け取ってくれ」
タブレットを眺めながらさらりと告げられた内容にギョッとして、頼子は慌てて口を開く。
「ちょ、それだと貰いすぎ!お釣りなんか無いし、どうやって差額を返せばいいのさ?!」
「なんだそんな事か。なら釣りは今までの食事代だとでも思っておけ」
「そ、んなつもりでご飯用意してたんじゃないよ?!」
「分かっている。だがこれで心置きなくアヤの食事を楽しめるというものだ」
「・・今までもちゃんと楽しんでた、よね?」
これまでは気を遣っていたのか?
いや、違うはずだと僅かな不安を滲ませて問うと、青年は「なんだ、分かっているではないか」と、ニヤリと笑った。
こちらを挑発するような笑みに、思わず「分かるよそれくらい!」と勢いで答えたが、内心とてもほっとしている。
友だち同士なのだ。変な遠慮や気遣いは無用だと思う。
「だが実のところ、少々心苦しく思っていたのも本当だ。金だと受け取りづらいというのなら、今後は口にする物を持参するが・・昨日預けた金貨はそのまま受け取ってくれると助かる」
「えーと。うん。そういう事なら、はい。ありがたくイタダキマス・・」
優しく微笑んでそんな事言われたら、素直に頷くしかないではないか。
・・イケメンは気配りの仕方もイケメンか。
『どう反応したら良いかわかんなくなるじゃん』
なんとなく両手で頬をむにむにと変形させていると「あぁそうだ」と青年は別の話題を持ち出した。
「預かった菓子だがな。昨夜、兄らに渡してその場で食して頂いたぞ?3人とも、とても気に入った様子だったな」
「そっかそっか!それは何より」
生菓子がウケたようで心底ほっとした。
喜んでもらえたのなら良かったよ。
少しは義理を果たせたかな?
『お礼の品を直ぐに用意できて良かったな』と思い返していると、ネットショッピングの便利さに思い至り、その流れで夜に取引する予定だったカレールーへと思考が流れ着いた。
「あ。カレールーだけど、もう届いてるよ!確認する?」
「そうか。なら「るー」の値を決めねばな。見本に一つずつ預かって中身を確認しても良いか?」
「良いけど、こっちでは3種類とも同じ値段で購入してるから統一してくれて良いよ?」
「そうなのか?ではそれを踏まえた上で検討するとしよう」
「はーい、よろしく」
間延びした感じで了解を伝えながら席を立ち、部屋の隅に置いてある箱から甘口、中辛、辛口を1箱ずつ取り出して青年に渡した。
と、丁度その時。玄関の呼び鈴が鳴る。
「なんだ?」
「ん、たぶん荷物が届いたかな?ちょっと見てくるね」
一言断り、玄関へと向かう。
ドアスコープを覗くと、そこには予想通り黒猫さんの姿が。
ドアを開け、荷物を受け取りつつ礼を言いうと、しっかり施錠して青年の元へ戻った。
「大丈夫か?」
「うん。やっぱり頼んでた荷物が届いただけだったよ」
「そうか。何が届いたのだ?」
「え?気になる?」
「・・少しな」
・・・・まぁ良いか。使う本人にも好みはあるだろうしね。
頼子は深く考えずに「じゃあちょい待ってね」と軽く了承して、作業机のペン立てからカッターを取り出し、段ボール箱の封に切り込みを入れた。
〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇
彼女の手から「るー」を受け取ったところで、何とも言い表し難い妙な音が鳴り響いた。
どうやら来客の合図のようだ。
「荷物が届いたのだろう」と席を外した彼女の背を視線で追いながら、咄嗟に手元の果実水を魔力で操作して向こう側へ送り込む。
細く長く伸ばし、魔力感知で彼女の様子をつぶさに観察した。
外の様子を確認するまではどこか緊張した様子だったが、危険が無いと確信したのかふっと警戒の気配が緩む。
なにやら金属をカチャと鳴らして扉を開けると、土色の箱を受け取って外の者に礼を言っていた。
良かった。問題はなさそうだ。
僅かな危険も見逃すまいと張りつめていた気を、こちらも緩める。
操っていた果実水は、彼女が振り向こうと動き出した瞬間に昇華させて消した。
これで良い。私が警戒している様子を見せれば、アヤも変に気疲れするだろうからな。
彼女は私の動きに気付く事なく箱を抱えて戻って来る。
「大丈夫か?」と確認がてら声をかけたが、本当に何事も無い様子に内心胸を撫で下ろした。
そのまま会話の流れで何が届いたのか尋ねたのだが、彼女の反応が予想とは違った。
てっきり、直ぐに中身を明かすだろうと思ったのだが・・
逆に「気になる?」と問われてしまう。
何だ?私が見てはいけないものだったのか?
いや、ならばもう少し慎重に行動するだろう。
・・気にならないというのは嘘になるからな。正直に「少し」と答えた。
すると彼女はほんの僅かの間だけ思案して、何やら小さな刃物を持って来て閉じていた箱の蓋を切り開け、中身が見える様にしてこちらに傾ける。
「はい。届いたのはこんな感じの物たちです」
見れば艶光りする透明な膜が、中の物を覆っている。
・・一番上にあるベルト状の物はどう見ても首輪だ。
他の品も色々あるが、筆以外の用途はさっぱりだ。
「その・・赤い物は首輪に見えるのだが・・」
「うん。前にあげたのは黒だったでしょ?赤も似合いそうだなと思って買っちゃった」
「なっ・・」
まさか、私の為・・に?
王族として、男として、間違っているとは思う。が・・
『嬉しい!』
彼女が、アヤが「私の」為に選んでくれた、従属の証!
こちらから強請ったものでは無い、純粋な贈り物だ!
これが喜ばずにいられようか?!
「それ、を・・私に?」
「うん。着けてみる?素材とか合う、合わないあるし」
特に含む物の無い様子でさらりと「試すか?」と問われ、一も二もなく頷いた。
素手で透明な膜を破り、取り出した赤い首輪をポンと渡される。
胸の高鳴りを覚られないように、冷静に観察する風を装い首輪を眺めた。
手の中のベルト状の首輪は、以前にもらった黒い物とそう形が違う訳では無い。
ただ、素材がどうと言う通り、明らかに黒い方とは質感が違う。
肌に触れる内側は皮のようで柔らかい素材だが、表面の赤い部分はテカテカと艶がある物だ。
指で触れると、恐ろしく滑らかでつるりとしている。
試しに輪にしようと金具を通して丸め、ベルトの端を止める部分に先端を差し込むと、ギチギチと摩擦が強くて少しコツがいる感じだった。
「どう?行けそう?」
「あぁ、実際に着けてみよう」
首元が隠れる詰襟の上着を脱ぎ、中のシャツのボタンを二つほど外した。
ベルト状に戻した首輪を首に巻き付け、手探りで金具に通す。
うん。悪くない。
と、言うか・・良い。
欲を言えば新しい物故、彼女の魔力が感じられないのが寂しく、物足りなくはあるが・・
「どう、だろうか?」
「うん。良い感じだね。やっぱり赤も似合うなぁ・・」
「可愛い」と、目を細めて笑う彼女の笑みを見た瞬間、ドッと心臓が跳ねる。
—あぁ。
優しく微笑む瞳の、その奥から滲み出る愉し気で嗜虐的な気配に・・・
堪らなく興奮する。
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