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【77】やっとこの4人で会話できましたわ~・・で、最初の話が「名」について、です?
「早速着けよ!でないと会話にならないし?」
「え、コレ本当にあたしが着けても良い物?マジで大丈夫?」
戸惑うアキに、青年が「問題ない、遠慮せず使ってくれ」と声を掛けるも、まだ言葉の内容が理解できない親友は「アド氏何て?」と首を傾げた。
「問題ないから遠慮せず使っていいって!ほら着けよ?はーい、失礼しますよ~」
「うひぃ・・着けます。着けますけれども・・緊張する~」
親友が持つ箱の中からネックレスを取って立ち上がり、その背後に回る。
背中越しに、金に輝く蔓草を模したチェーンを白いシャツの上から掛けると、首の後ろで留め金を嵌めた。
「スゴ・・あれ?でも思ったより重くない?」
「そちらの品は貴族のご婦人用ですので[言語変換]の他に[重量軽減]も施されてございます」
「あ、そうなんですね。これはご丁寧にどうも」
ぽろりと零れた親友の感想に、すかさず傍仕えさんがネックレスの説明をしてくれた。
それを聞いたアキも、流れる様にお礼を言ってぺこりと頭を軽く下げる。
「すみません、挨拶がまだでしたね。先日は大変失礼な姿を晒し、ご不快な思いをさせてしまい申し訳ありませんでした。あたしはアコの、この子の友人で「アキ」と言います。あ、今呼んだ「アコ」と、あたしの「アキ」は[[rb:渾名 > あだな]]みたいなもので、本名ではないのですが何か失礼にあたりますか?」
「こうして会話するのは初めてになるな。私はアディード。この前の事は気にしていないので、そちらも気に病まないでくれ。なので今までどおり「アド氏」と呼んでくれて構わない。そちらの名乗りだが、得に気にしないのでそのままで大丈夫だ。寧ろ本当の名は伏せていてくれると、こちらとしても安心できる」
「あ。やっぱ[[rb:理由 > ワケ]]ありな感じ?」
青年の雰囲気から察し、何となく避けていた名前の呼び方について知る機会だと、つい話に割って入った。
すると傍仕えさんがすっと軽く頭を下げ「ではわたくしからご説明させて頂きます」と説明役を買って出る。
「わたくしたちの所では「名」は魂に繋がるものとして認識され、その人その物をこの世に存在たらしめる力を持つと考えられています。なので「名」を他人に知られるのは、命を握られている事に他ならず、大変危険な状態となります」
「えぇと。具体的にどんな危険が?・・」
親友も「名」について知っておくべきだと判断したようで、言い淀みながらも質問する。
「「名」を知られれば「呪」を掛けられる可能性がございます。逆に「祝福」の可能性もございますが、普通は「呪」を警戒して「神殿」に篭ります。でないと、大抵すぐに死傷しますので」
「な、成程・・」
「え・・怖・・」
「死傷」の言葉の重みに、親友と二人手を取り合って寄り添う。
いや、普通にアカンでしょこんなん!
っぶねー!
人見知りとめんどくさがりのコンボでなんとなく本名を明かしてなかったけど、大正解だったんじゃんっ!
怖っ!異世界怖っっ!!
親友とビビり散らかしてガクブルしていると、青年が安心させるように言った。
「そう怖がらなくても大丈夫だ。私は貴女の・・アコの本名を誰にも漏らすつもりは無い。・・・あぁそうだ。不安なら私も「魂名」を明か「いや、そこは信用してるんで大丈夫です」・・」
まぁ、信用するも何も、名乗った「アヤ」は本名じゃないしね。
覚悟完了しそうな雰囲気の青年に、つい被せ気味で遮ってしまった。
てか、ぶっちゃけ「魂名」とか明かされても困ります。
だからそんな「分かった」って、残念そうに言わない!
なんか凄い大事な秘密みたいだし、洒落にならん程重そうな責任とか絶対負いたく無いっス!
面倒事案感知アンテナにビンビンきたので、脳内映像で腕を組み「プイス!」とそっぽを向いていると、親友が傍仕えさんに次の質問をしていた。
「話しの感じからして「神殿」ってのは、その「呪」が効かない場所になるんですか?」
「左様でございます。今お伝えしました「神殿」は正しくは名付の精霊様を祀る「命名神殿」と申しまして、「名」にまつわる様々な事を取り計らっておられます」
傍仕えさんの説明によると、通常名乗っている名前は「[[rb:普名 > ふめい]]」といって「魂名」とはちがう、仮の名前だそうな。
で、普通の生活の中では「普名」を使用するが、特別な条件の元で「魂名」を互いに明かす時があると・・
「え?それって・・」
「はい。婚姻です。夫婦となる者同士で伝え合います」
はいキタ~
何となく、そんな気はしてましたー
もうね。魂がどうのとかの時点で嫌な予感はしてましたよ。
異世界あるあるだよねー。
こっちには無い要素を絡めた風習的なさ~
しかも実際に何かしら作用したりとかさ~
―って、コラ!アド君!
何で私に命を握らせるような事をしようとしたのか!
「魂名」が何かを理解せずに命の名を聞いていたかと思うと、恐ろしくて寒気がするわ!
キッ!と批難の目を向けると、それに気付いた青年は悠然と微笑んで「信頼しているからな」と理由を伝えて来た。
違うんだよ!
教えても良いと思った理由が知りたかった訳じゃないんだよ!
てか教えようとすんな!
いくら信頼している友達だからって、線引きはしっかりとしましょう!
イエローカードですよ!レッドが出たら暫く口ききませんからね!
実際の口は閉じたまま、胸の中で言いたい事が氾濫してぐるぐると回る。
「ふ、ぐ、ぬ」と意味の無い音を出した唇をもにゅもにゅと動かして、青年に掛けるべき言葉を探していると見かねた親友が助け舟を出してくれた。
「アド氏・・流石にそれはアコも困ります。相手に無理やり命を差し出すようなものでしょう?寧ろそんな事をされて困らない人がいると思うのですか?」
非難の意味を込め、少しきつめに話す親友に心の中で声援を送る。
そうだ!そうだ!もっと言ってやれ!
「信頼の証を示したかっただけなのだが・・そうだな。確かに軽率だった」
「以後気を付ける」と青年が反省の姿勢を見せたので、親友が視線で『どうする?』と聞いてきた。
うん。もうしないってんなら、特に言う事は無いかな・・
「・・ちゃんと自分の命を大事にすると約束してくれるなら、私からは何も」
「だそうです」
「分かった。今後はもっと慎重に行動する」
「アコ。すまなかった」と目を伏せ、しっかりと頭を下げる青年に「分かってくれたならいいよ」と許しの言葉を返した。
ついでだ。こっちの名前の事も明かしてしまおう。
「・・実は、私がアド君に名乗った「アヤ」も、本当の名前じゃないんだよね」
「何?そうなのか?」
驚きに目を見開いて、思わずといった感じで問う青年に「うん」と頷いて肯定する。
隣から心配そうな視線を向けてくれる親友には『大丈夫』の意味を込めて微笑みを返した。
視線を青年へと戻し、真っ直ぐに告げる。
「つまり、さ。今の私たちは本名を知らない者同士、対等なワケ。だから私に気を遣って「魂名」を明かす必要は無し。いいですか?お互い命は大事にしましょう!」
そう最後元気よく告げると、青年は真剣な表情で頷いてくれた。
「分かった・・そしてすまない。明かす必要のない秘密を言わせてしまって・・」
「いんや?丁度良い機会だったから言っただけだし、気にしないで。私こそ、ウソついててごめんね?」
「いや、アヤは自分の身を守ろうとしただけだろう?当然の対策だ。気にしないでくれ」
「まぁそうだけど、ちょっと申し訳なくて・・」
「それを言うなら私こそ、責任を押し付けるような行動を執ってすまない・・」
「いや、それはもう謝ってくれたし・・」
「いやいや、そんな」「いいえ、いいえ」と交互に謝り合戦をして、最終的に小さく苦笑し合う。
そんな2人をあちら側とこちら側で微笑ましく見守っていた親友と傍仕えは、はたと視線を合わせ互いが似たような状況であるのに気付き、淡く微笑み合うのだった。
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