野望編 第七話 学長の試練

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  歓待を受けて校舎に招き入れられたダイン達は、階段を上がって通路を進むと、校舎の端に位置する大きな扉の部屋の前まで案内される。

  案内役が扉の呼び鈴を鳴らすと、中から凛とした声で「お入り下さい」との声が掛かり、案内役が扉を開いて一行を中へと通す。

  フェカト 「お久しぶりですポーカ学長、この度はこちらの無理を聞いて頂き有難うございます」

  室内には大きな机が有り、その窓側には学長という役職には不釣り合いなほど若い女性が立っている、ダインの見立てでは多分二十代後半ぐらいだろう。

  ポーカ 「ポロルグ家のお願いを無視する訳にはいけませんからね、そちらの男性はうちに生徒達には明らかに毒なんですけど」

  フェカト 「はは、そう思って、フェカトが自分のモノだってアピールしときました」

  ポーカ 「大胆ですね、まぁあの婚約者と結婚させられるぐらいならこちらの殿方選びますけど」

  フェカト 「御理解頂けて有難うございます」

  フェカトとの社交辞令を終えたポーカは、居並ぶダイン達を見回して呟くともう一度よく見て口を開く。

  ポーカ 「確かに噂通りですね、クガトの勇者以上の力が有る様です、そしてそれが男とは」

  フェカト 「ポーカ学長は勇者にも会った事有るんですよ、その学長の目で見てダインさんはどう思います?」

  ポーカ 「マギガントの乗り手のとして桁違いの素質です、ですがこのダインさんは乗り手という種類の人間ではないですよね、後に控えて策を練る参謀とかマギガントの技術者のタイプに見えますね」

  フェカト 「そうなんですか?」

  ダイン 「正直言って私は前で剣を振るうタイプじゃ有りませんね、全体の見える高台で指示を出す方だと思います」

  ポーカ 「性格的にはそうでしょうけど、その魔力は勿体無いですね、まさかあの勇者以上の魔力の人間に出会えるとは予想外です、ポロルグから禄を頂く者としては有難いですが」

  フェカト 「つまり勇者にも勝てるって事ですね」

  ポーカ 「魔力だけならという話です、本人も仰る通り戦闘には向いていないのかもしれませんし、ですが他の方も凄いですよね、誰もが上級騎士以上ですが・・・フェカトの魔力も凄いですね、私より上じゃ無いですか」

  ポーカは信じられないといった感じでフェカトを見つめている、だが、納得はなかなか出来ないみたいだ。

  フェカト 「そんな事有りませんよ、フェカトがポーカ学長に勝てた事なんて無いですよ」

  ポーカ 「今まではですよね、フェカトさんの魔力は八千ぐらいで強い騎士では有りませんでしたが、今は三万は有る様に思えます、私の見立てが信じられないのであればマギガントに乗ってみて下さい、表のゾッフォなら直ぐ動きますよ」

  フェカト 「そんな、いきなりは無理ですよ」

  ポーカ 「なら他の方に試して貰おうと思います、異世界人の力を示して貰わないと生徒達も貴方方に与えられる特権に納得出来ないでしょうから」

  ポーカはフェカトが断る事を前提にして無茶を言ったのだ、確かにフェカトの魔力も気になってはいるが、異世界人の実力の方が、学院を預かる者としては興味が有る。

  ダイン 「マギガントとはそんなに直ぐに動く物なんですか」

  ポーカ 「魔力さえ有れば、動かすぐらいは直ぐですね、アレは人の意思で動きますから」

  七実 「ならここは七実の出番ですよね、初めて見た時から乗ってみたくてワクワクしてたんですよ」

  ダイン 「七実は運動神経よく有りませんからね、転ぶと大惨事ですよ」

  真夏 「なら、七実の仇は真夏が討ちます、真夏なら大丈夫ですよね」

  ポーカ 「貴女で有れば問題有りません、今回は乗って動かすだけで結構です」

  ダイン 「なら決まりですね、真夏にお願いしましょう」

  それから約一時間後、ダイン達は学院内の円形決闘場に場所を移していた、高い魔力値の真夏が乗り込む事を考慮して、安全な決闘場が選ばれたのだ。

  騎士服に身を包んだ真夏は緊張気味でフェカトのレクチャーを受けているが、ダインと七実はマギガント自体に興味が有る様で、周辺をぐるぐる見回ったりあちこちを叩いたりしている。

  ダイン 「訓練用なので装甲では無くクッションになってますね、フレームはかなり分厚くて頑丈そうですね」

  七実 「確かに初めに見た奴よりも訓練用って感じですね、これなら転けても大丈夫そうです、でもまぁ真夏ちゃんなら上手くやりますよ」

  ダイン 「自信の有る言い方ですね」

  七実 「はい、フェカトさんからの知識で多分皆んな上手く動かせますよ、だから七実が乗ってみたかったんですけど、見ると乗るは違うかも知れません」

  七実は上を見上げて少し不安そうな顔をしている、普段は軽口を言い合っているがダインとの関係以上に真夏との間には深い絆が有るのだろう。

  ダイン 「最悪、真夏が怪我をしても七実なら直ぐに治せますよ、あのフェカトがピンピンしてますから」

  七実 「やったダイン様がそれ言っちゃいます」

  ダイン 「七実を宛にしてたからですよ、七実なら瀕死でも数時間で治してしまうでしょう」

  七実 「遊魔限定ですけどね」

  ダイン 「なら、真夏も大丈夫です、どうやら動きそうなので私達は離れますよ」

  ダインと七実が離れると、いよいよ真夏の乗ったマギガントゾッフォが動き出す、上体を前方に傾けて、腕を支えにすると片膝を下げて一気に立ち上がる。

  ダイン 「大きいと迫力有りますね」

  フェカト 「はい、でも真夏は凄いですよ、初めてでちゃんと立ち上がりました、普通立つだけで一ヶ月は掛かりますよ、それが解っててポーカ学長は無茶言ったんですけど、アテが外れましたね」

  ダイン 「そうなんですか」

  フェカト 「普通は魔力が上手く回らないモノなんですけど、真夏の魔力量なら一気に最大まで魔動力を満たした様です、まぁフェカトの予想通りなんですが」

  ダイン 「なるほど、それで魔力の高い者を召喚したわけですか」

  フェカト 「はい、真夏なら直ぐにゾッフォを使い熟すでしょう、ゾッフォはバランスの良い機体ですから」

  ダイン 「脚が重そうですからね、重心が低い方が安定するのは道理です」

  フェカト 「流石ダイン様、本質が解ってますね、でも普通の騎士の魔力では魔動力が低くて動きが鈍重になっちゃうので、協定戦にはジーカを使うんです、でも、遊魔ならゾッフォでもジーカに匹敵する機動力を発揮出来ますよ」

  ダイン 「エンジン馬力の様な物ですね、機体が重くても馬力で動かすんですか」

  フェカト 「車より複雑ですけどね、あ、もう、歩いちゃいますよ、ポーカ学長も驚いてポカンとしてますよ」

  ダイン 「多分これは遊魔チートなんでしょうね」

  フェカト 「はい、フェカトの魔力も凄い事になってますから、明日届くフェカトのポナリア・ジーカでポーカ学長と模擬戦するんですよ」

  フェカトは満面の笑顔で話している、どうやら明日の模擬戦がとても楽しみな様だ。

  ダイン 「余りやり過ぎない様にして下さい、私の能力がバレるのは得策では有りませんから」

  フェカト 「大丈夫ですよ、ポーカ学長ぐらいしかバレてませんし、それに学長はまだ処女なんですよ」

  意味深に微笑んだフェカトの意図をダインは直ぐに察する、確かにポーカの容姿はダインの牝に加えるのに十分なレベルに有る。

  ダイン 「フェカトは悪い女ですね」

  フェカト 「ダイン様もフェカトの利用価値に気付いて遊魔にしてくれたんですから、フェカトが使える牝を紹介するのは当然です、ポーカ学長を堕とせば学院でやりたい放題ですから」

  ダイン 「なるほど、フェカトは短期間で遊魔を学んで活かせる場所を用意してくれたんですね」

  フェカト 「フェカトを選んでくれたダイン様には後悔させたく無いですから、それにポーカ学長はポロルグでもっとも強い処女で容姿もダイン様好みですよね」

  ダイン 「フェカトには敵いませんね」

  フェカト 「フェカトはもうポロルグのフェカトではなく、遊魔のフェカトですから、遊魔の利益を第一に考えるとポーカ学長はダイン様の牝にすべきです、歳は食ってますけど見た目は合格ですよね」

  ダイン 「はい、魅力的ですね、こちらでは純潔はステータスの様なので、極上の牝が残っていて嬉しいですよ」

  フェカト 「飛行出来るマギガントは使い勝手がいいですから処女は重要なんですよ、大型馬車や船を使わずに長距離移動出来ますから、移動専門の乗り手も居るぐらいですからね、この学院でも育成してますよ」

  ダイン 「ここなら遊魔候補を探すのに困らない訳ですね、真夏が降りたら全員で中を見回ってみましょうか」

  フェカト 「はい、フェカトが案内しますね、フェカトもここは出身ですから、それにポロルグが手を貸している工房も在ります、ダイン様や七実さんはそちらにも興味有るでしょう」

  ダイン 「巨人を作る工房ですか、楽しみですね」

  フェカト 「真夏さんもそろそろ終わるみたいです、もう歩き回れるなんて凄いですね、この後は遅めの昼食を取ってから学院を案内しますね、でも、真夏さん大丈夫でしょうか」

  ダイン 「マギガントは乗ると酔う物なんですか?」

  フェカト 「人それぞれですね、フェカトは魔術で中寒くしてるので酔いませんよ」

  ダイン 「酔い覚ましに冷たい風とは言いますが、初めから冷たくしていると酔わないモノでしょうか?」

  フェカト 「フェカトも人から教わったやり方ですから、でも、そうしてる人も多いと思います」

  ダインとフェカトが雑談しながら真夏のゾッフォを眺めていると、そろそろ試乗は終わる様だ、ゾッフォが片膝を付いてしゃがむと、梯子が掛けられて整備員が取り付き、中から騎士服を纏った真夏が降りてくる、ダインは労いと感想を聞くために側に寄ると真夏はかなり元気そうだ。

  真夏 「思ったよりも余裕でしたね、本当に考えるだけで動きます、自分で運動するより楽ですよ」

  ダイン 「外から見るとかなり揺れていた様ですが、大丈夫なんですか?」

  真夏 「この子から感覚は伝わってますから、自分で動くイメージですから揺れは大丈夫でしたね」

  七実 「乗ってゲロ吐くロボットとか嫌ですからね、次は七実が乗ってもいいんですよね」

  ダイン 「いえ、今から昼食です、真夏は食べれますか、無理なら止めて寝ていてもいいですが」

  真夏 「全然大丈夫です、むしろ馬車の方が辛かったぐらいです」

  ダイン 「アレは私も遠慮したいですね」

  フェカト 「ですが、馬車が普通ですよ、馬に乗れれば馬も有りますけど」

  ダイン 「中世レベルでは移動に問題が有りますね、飛べるマギガントが如何に有効か理解出来ますね」

  ダインが飛行型マギガントの有効性を改めて認めていると、建屋の中から出て来たメイドがフェカトに声を掛ける、どうやら食事の時間が整った様だ。

  そしてフェカトが先導して一行を連れ出すのだが、途中ポーカ学長の所で止まって話始める。

  フェカト 「ポロルグの勇者様の力は存分にお分かりになったと思います、これから皆様と食事になるんですが、ポーカ学長もご一緒にいかがですか?」

  フェカトの誘いにポーカは少し考え込んでから応える。

  ポーカ 「お言葉に甘えましょう、私も異世界の勇者様方には興味が有りますので」

  七実 「あの、何故七実達が勇者になったんですか、先程まではそうは言われて無かったと思います」

  ポーカ 「真夏さんがマギガントを乗りこなしていましたから、それに初めてであそこまで動かせる者は正に勇者なんですよ、異世界の魔力でちゃんとマギガントが動かせるのかは私にも解りませんでしたから、ですがマギガントを動かせるとなると学院も拒む訳には行きません」

  その後、ポーカを加えた一行は賓客用の屋敷に入って食事を共にすると、各人に割り当てられた部屋に案内されて暫しくつろいだあと、再び集合して学院内の案内を受ける事になった。

  当初はフェカトが案内役を務める筈だったが、ポーカ学長がその任を引き受けてくれて、テガス魔道力学院の全容がダイン達に明かされる事になる。

  おまけ

  マギガント解説 01 ゾッフォ

  ククジア王国で製造されていたマギガント、現在では改良強化型のジノ・ゾッフォに生産が切り替わっているが、相当数生産された為にまだまだ各地で現役として活躍している。

  強靭なフレームを有するが、使用されている魔動力の調整がパワー先行型である為に魔力の低い者が操縦しても安定している為にマギガントの操縦を訓練する機体としてとても適している。

  骨太重戦士の様な見た目で足が太い為に安定性も高いが、その分無茶が出来る機体ではないので戦闘には向いていないと評価されている、価格は8三乗貴族貨幣(日本円換算で約8億円)で、マギガントとしては安い部類で費用対効果はとても良い。