野望編 第八話 予期せぬ訪問者

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  正門から学院校舎までは生徒達の寮などの居住施設になっており、ポーカは手早く説明して先を急いだ、生徒寮は基本相部屋で食事は食堂で集まって取る様だが、味は上質だが種類は無いらしい。

  これは単純に経費削減の為らしいが、学長のポーカでも基本同じ物を食べているらしく、卒業後に軍や騎士団といった軍事組織に属する事が多い学院生徒には日頃からこういった食事を体験させた方が有効な様だ、特にフェカトの様な貴族出身者は普段から食べたい物を食べているので、同じメニューを強要する事はいい経験になる様だ。

  フェカト 「ですが、学院の食事って一種類ですが味は良いのでまだ大丈夫なんですよ、問題は野外訓練ですね」

  ポーカ 「野外訓練は生徒自身で炊事を行うので、貴族ばかりで固まると悲惨な事になりますね、誰も調理を知らなくて芋を生で食べていた例も有った様です」

  フェカト 「ポーカ学長、知ってて言ってますよね、フェカトの班は皆んな貴族で誰も料理出来なかったんですよ、皮の剥いて無い芋を生で食べようとしてました、けど、身兼ねた他の班の子が焼いてくれたんですよ」

  ポーカ 「当時の教員がワザとやったと言ってました、貴族に平民の価値を認めさせるには一番だって、お陰でフェカトさんの学年は纏まり有ったらしいですね」

  フェカト 「あのお芋は美味しかったですから、貴族では絶対食べない料理でしたけど、料理する事の大切さを学べたと思います」

  愛耶 「焼き芋、異世界でも有るんですね、確かにサツマイモみたいな食材は有りましたけど」

  ダイン 「愛耶は料理上手ですから、食材が気になるんですね」

  愛耶 「はい、美味しい物をダイン様に食べて貰いたいですから」

  フェカト 「確かに招待頂いた時の料理は絶品でした、ピンクの魚を生で食べたんですよ」

  ポーカ 「何だか凄そうな料理ですね」

  ダイン 「今度、愛耶が料理を作る時はポーカ学長も招待しましょう、生の魚は無くとも愛耶の作る肉料理は絶品ですから」

  ポーカ 「そうなんですか、それは楽しみにしています、折角一緒の学院で暮らすんですから仲良くすべきですね」

  フェカト 「はい、ポーカ学長にはダインさん達を一流の騎士に仕上げて欲しいですから、ティアス姫殿下が王位に付けばポロルグの益は大きいですからね、テガス魔動力学院の予算も増やせますし、何よりダインさん達が向こうの勇者を倒せば学院の名声も上がります」

  ポーカ 「チャンスですね、ですがあの勇者を倒すですか、信じ難い事では有りますが、真夏さんを見れば不可能では無いと思えます」

  ダイン 「学長は勇者を知っているんですよね」

  ポーカ 「はい、実際戦って手も足も出ませんでした、私の剣撃は全て受けられた上に相手は無傷で、マギガントは疲弊して動けなくなりました」

  ダイン 「例の防御の魔力五万というのは学長の事だったんですか」

  ポーカ 「私以外にも居るんですよ、クガトは勇者リエルの有効性を示す為に、国内外の強者と闘技場で対戦させましたから、私も出汁にされました、ですからダインさんには勝って欲しいんですよね」

  フェカト 「ならお願いが有るんですけど、ポーカ学長のマギガント“ウウル・ジー”をダインさん達に預けてくれませんか?」

  ポーカ 「私としては協力したいんですが、私のウウル・ジーは修理中で直ぐには動かせません、勇者リエルとの戦いのダメージが深刻なんですよ、魔動力を全て貼り変えないと行けません」

  ダイン 「貼り替えですか?」

  ポーカ 「はい、ちょうど次に工房を案内しますので、作業をご覧になって下さい」

  七実 「いよいよですね、わくわくします」

  ポーカ 「そう言われると複雑な気分です、何せ私の敗北が公けになってますから」

  余り気乗りのしない様子のポーカでは有ったが、ダイン達を応援する気持ちに偽りは無い様だ、そして一行は学院の正面門よりも厳重な門を通って工房区画へとやって来る。

  巨大建屋の建ち並ぶそこは、中世レベルのこの世界には異質な空間で扱うシロモノを見れば未来にも思えてしまう、だが、作業する人間達は怪しげなツールなど使わずに、普通に大槌や大きなやっとこなどで手作業をしている。

  七実 「デカいモノを扱うから、道具もデカいですね、それに体力も使いそうです」

  ポーカ 「マギガントの仕事は重労働ですから、お陰で部品は凄く高価になってます」

  ダイン 「見たところ鎧を作っている様ですね」

  ポーカ 「はい、ここは工区外縁ですから、内部に行くほど重要な作業をしています、本来他所の人間にはここにも出入り禁止なんですよ」

  ダイン 「そうでしょうね、ですが私はどうやって巨人が動いているのか興味深々なんですよ」

  七実もその言葉に大きく頷いているが、他の遊魔達はそれ程興味は無いみたいだ、だが、ダインに付き従うのが遊魔で有り、ダインの行くところはダインが居るだけで価値がある、そして、幾つもの作業場を巡ってようやく核心部分に辿り着く。

  ポーカ 「ここが組み立て区画です、各工区で作られた部品をここで組み立ててます、私のウウル・ジーの手脚がアレで、今は駄目になった魔動力を剥がしているところですね、剥ぎ終わった後に骨格を調べて異常が無ければ魔動力を貼って行きます、ちょうどあの子が作業中ですね、ジーカの物みたいです」

  フェカト 「黒豹でよく使ってる機体です、ダインさん達を召喚した時に周りを囲んでいた機体と同じ種類です」

  ダイン 「ポーカさんの機体に比べて骨格が薄いですね」

  ポーカ 「ジーカは軽量が売りの機体なんですよ、でもその為に操縦が難しくてちゃんと扱える人間は卒業生でも半分以下です」

  フェカト 「フェカトもジーカは無理でした、上位機種のポナリア・ジーカの方が扱い易いし、天翔ける処女も装備出来るんですよ」

  ポーカ 「ジーカだと増えた重量で着地の負荷が多いんですよ、私はジーカ好きですけど」

  フェカト 「ダインさん召喚する前はポーカ学長にジーカで参戦して貰う予定でしたから、ポーカ学長はジーカの方が強いって言われてますし」

  ポーカ 「ですが、真夏さんを見て私は用済みだって感じました、一応天才って言われた私でもゾッフォ歩かせるのに一週間掛かりましたから」

  ダイン 「そこは悲観しなくていいと思いますよ、私達とは根本が違う様ですから、私の居た世界には地毛がピンクの人とか居ませんでしたし、この世界の人は美形ばっかりです」

  ポーカ 「見た目より、魔力高い方が重要なんですけど」

  ダイン 「私の居た世界と逆ですね、美形ならそれだけで優遇される世界でしたから、美形が当たり前になると、別の事の価値観が上がるという事ですか」

  フェカト 「そうですよね、ダインさんもさっきから熱い視線で見られてるの解ってますよね」

  ダイン 「男が珍しいだけですよ、ここに入ってから私以外見てませんし、でもあの様な力作業も女性がしてるんですね」

  ポーカ 「魔力打ち込めてますから、女の方が向いているんですよ、形作るだけなら男の腕力でもいいんですけど」

  ダイン 「なら私がやるといいというわけですね」

  ポーカ 「勇者様にさせる事じゃ無いですね、さて、工房はこれぐらいにして闘技場に行きましょうか、ちょうど模擬戦が始まる頃です」

  七実は名残惜しそうにしているが、他は皆んなはマギガントの模擬戦に興味がある様だ、当然この世界でそれなりの地位を維持するには召喚された目的に沿う事が重要で、今から見るマギガントによる模擬戦こそがダイン達が召喚された目的でもある。

  工房から闘技場までは広い道が整備されており、闘技場で破損したマギガントはその都度部品を剥ぎとって修理なり部品交換を行っているらしい、工房区画に有るマギガントは全体の二割ぐらいで、残りの八割は直ぐにでも使えるという事だ。

  ダイン 「稼働率八割は凄いですね、戦闘兵器なのに」

  ポーカ 「普段に訓練はそれ程無茶はしてませんから、でも工房に余裕がある時は全力sでやってます、今は私のウウル・ジーの作業が多いので控えめにやってますが」

  七実 「金属のぶつかる高い音がしますね、既に始まっているんですか」

  ポーカ 「その様です、普段通りにやれと言ってますので、見せる為の試合では迫力は出ませんから」

  フェカト 「確かにそうかも、ですから急いだ方が良さそうですね、鎧に二、三発食らうと勝負着いちゃいますから」

  その言葉に一行は足速に闘技場に向かうと、段々と金属音が大きくなっていく、ポーカ学長の説明では、二人ともかなりの遣り手の様でお互いに致命打の入った音はしていないらしい。

  通路の終着点には大きな扉が有り、その脇には上に登る階段がある、観客席には階段を登らないと行けない様で、ポーカを先頭に登りきった先には、金網越しに巨人同士の激しい戦いが繰り広げられている。

  ポーカ 「ゾッフォとジーカで対戦している様です、ジーカをあそこまで乗りこなせる生徒も大した者ですが、ゾッフォの乗り手が一枚上手ですね、重いゾッフォをあそこまで動かせるなんて」

  ダイン 「確かに手数はジーカが上回る様ですが、ゾッフォの乗り手は殆ど動かずに躱してますね」

  フェカト 「なまじジーカを動かせると、性能に頼っちゃうんですよ、確かに普通相手ならなんとかなりますけど」

  ポーカ 「流石、学院の卒業生ですね、フェカトさんの認識は正しいです、そしてそろそろジーカの方に無理が現れてますね、技に切れが無くなって大振りになってます、今のゾッフォの乗り手なら直ぐに反撃も可能でしょう」

  ポーカの読みが正しかった事は直ぐに証明される、大振りのジーカの一撃を躱すと、足を掛けて転倒させると得物を押し当てて勝利をアピールしている。

  ポーカ 「ハリキリ過ぎですね、ジーカの方が工房で点検しないと行けませんよ、まぁジーカには余裕ありますけど」

  フェカト 「私みたいにジーカに乗れない子も多いですからね」

  ポーカ 「フェカトさんはポナリア・ジーカ持ち込んでたから大丈夫だったでしょう」

  フェカト 「壊した時はゾッフォです、工房の人はポナリア・ジーカ弄れるって喜んでたみたいですけど」

  七実 「あ、ゾッフォの乗り手が降りて来ますよ、ジーカは他のマギガントに担がれて退場みたいですね、乗り手どうなったんでしょう?」

  ポーカ 「あの勢いなら伸びてますね、良い筋の乗り手でしたけど、相手が悪かった様ですって、あの娘は」

  フェカト 「学長ならば生徒知ってて当然ですよね、何驚いているんですか」

  ポーカ 「驚いて当然です、アレはクガトのアーキアです」

  フェカト 「まさか、なんでテガスに居るんですか」

  二人の会話の内容はダイン達には解らない、確かクガトは戦う相手だとは聞いていた筈だが。

  ダイン 「申し訳有りませんが誰だか説明をお願いします」

  フェカト 「リエルと一緒に召喚された勇者です、つまりダインさん達の対戦相手ですよ」

  ダイン 「アレが勇者ですか、こちらに手を振ってます、振り返してあげましょう」

  七実 「アレ、ポーカ学長に振ってるんじゃ無いですか、でも、降りてこっちに登って来ますね」

  話題のアーキアはゾッフォから飛び降りると、退場するジーカの為に開かれた扉を抜けて、脇の階段を駆け上がってこちらにやってくる、流石にその様子に警戒した愛耶とファービがダインの全面を固め、真夏とニアも臨戦体勢だ。

  アーキア 「そんな警戒しなくてもいいじゃん、アキは同じ異世界人に興味有って来たんだよ」

  かなりの激しい動きをして来たはずなのに、アーキアの息は全く乱れる事なくダイン達に話掛けて来る。

  燃える様な赤い髪の細身の少女で、七実の言うところのスポーツ少女の様だ、その意味ではファービやニアと通じるところもありそうだが、アーキアは遠慮を知らない様だ。

  ポーカ 「何故、貴女がテガスのゾッフォで訓練してるんですか?」

  アーキア 「決まってるじゃん、同じ異世界人に会いに来たんだよ、ゾッフォに乗ったのは誰も勇者って信じてくれなかったから、マギガントで戦ってみれば証明出来るでしょ」

  ポーカ 「確かにウチの生徒はよく理解した様です、貴女が倒したのはウチの主席でしたから」

  アーキア 「そうなの、確かにいい動きしてたよね、でも正直過ぎるよ、戦いはもっと意地悪にしないと」

  ダイン 「破天荒な方ですね、ですが見惚れてしまうぐらい凄い戦い方でした」

  アーキアとポーカの会話に護衛を下がらせたダインが割って入る。

  アーキア 「解ってるね、それに只者じゃ無い、アンタが異世界人か、凄い魔力を感じるよ」

  アーキアはダインを見つめて品定めをしている様だ、どうやら魔力の強さを感じ取っている様で、遊魔達に対して驚きの表情も見せている、ポーカは突然の来訪者に不機嫌な様で、辺りに微妙な空気が流れて居た。

  おまけ

  マギガント解説 02 ジーカ

  ポロルグがククジアと併合前に開発してマギガント、細身のフレームにスピード先行型の魔動力を纏って素早さに特に秀でているが、反面、扱いづらく脆いという欠陥が有る。

  ポロルグは比較的安価なジーカを多数揃えて、乗り換えを行い協定戦を有利に戦っていたが、周辺国家から元となる材料の供給を制限された為にジリ貧となりククジアとの併合の道を選んだ。

  現在、ククジアの貴族家お抱えの騎士団ではゾッフォとジーカの同時運用が一般的で、整備負担の大きいジーカの整備の仕事はポロルグの主な収入源の一つとなっている。

  併合によって材料調達が容易になった事から、強化改良機も開発され、それがポロルグ・ジーカという機体だ、だが、ポロルグ・ジーカは大幅にフレームを強化した為に別機体と言っていい程の安定感を持っており、ジーカの持つ素早さは高い魔力を持つ者が乗らない限り失われている。

  一見、機体特性が失われている様に思われるポロルグ・ジーカだが、高い安定性と高品質魔鋼の効果によって、天翔ける処女との相性が良く、飛行型マギガントとして高い需要が有る。

  価格はジーカが12三乗貴族貨(12億円)、ポロルグ・ジーカは25三乗貴族貨(25億円)。