002-024
久しぶりにアーキアに出会えたリエルはその身体を抱きしめて温もりを味わう、アーキアが去った後のクガトは何かがおかしい感じでリエルは大きく不安を感じていたのだ、その不安を消し去る為に行った行為では有ったが、リエルとしては更に不安が増してしまった。
今、腕に抱いているアーキアは何処かリエルの知るアーキアとは違う感じがして、二人の心が合わさっている様に感じられないのだ、以前のアーキアならリエルを思ってくれている事を何と無く感じられたモノなのだが、今のアーキアにはリエル以上に思っているモノが存在している様なのだ。
リエル 「アキは何かおかしいです、確かに安心した様ですが、それはリィに会えたからじゃ無いですよね」
アーキア 「そうだね、確かにリィはアキにとって安心出来る人だったけど、ここの環境はそもそもクガトみたいに張り詰めて無いんだよ、だから何と言うか、リィよりもアキはここで安らいでいて、その安らぎを乱すかも知れないリィを警戒してたのかも」
そのアーキアの言葉にリエルは衝撃を受けていた、リエルはアーキアが心配で仕方なかったのに、アーキアはこの場が乱される事を心配しているのだ。
リエル 「リィよりここが良いんですか?」
アーキア 「リィの問題というよりクガトが怖いんだよ、いや、ルーフィンが怖いって言った方が正しいかな、あの子、アキが出て行く数日前から何か変だよね、クガトの人間もだんだん変な感じがしたし」
アーキアの言葉にはリエルも理解出来るものがある、何故だか最近クガトの人間はルーフィンを崇める様に振る舞っており、相対的に勇者ともてはやしていたリエルに対しての関心が薄くなった様だ。
アーキアの脱走が原因だとも思ったが、アーキアの脱走後、あれだけ厳重だったリエルに対する監視の目が薄くなった事を考えると、やはり原因はルーフィンに有る様だ。
リエル 「確かにおかしなところは有りますよね、アキが帰らなかった翌日からリィには監視が付いていたんですが、今日はその子の監視が無かったんですよ、だからリィはここに来れたわけです」
アーキア 「やっぱり、クガトで何か起こってるんじゃ無いの、折角逃げられたんだから戻る事なんてないよ」
二人がクガトの違和感を話しているタイミングでフェカトがその場に到着して話掛けてくる。
フェカト 「勇者リエルですね、フェカト・ポロルグと申します、アーキアさんをお預かりしていましたが心配をお掛けしていた様で申し訳ありません」
リエル 「貴女がフェカトさんなんですか、レボトが女豹と言ってたのでどれ程恐ろしい人だろうと思ってたけど、綺麗な人です」
アーキア 「あー、今は他所向きなフェカトだよね、女豹なのはホントの事だし」
フェカト 「ふふ、女豹ですか悪く無いですね、黒豹はポロルグでは崇高な存在ですから、リエルさんも武勇が信じれない程可憐な方ですね、ダイン様がこの場に居れば眼福と喜んでいたでしょうね」
リエル 「フーティアが凄いんですよ、リィの魔力なんてフーティアが無ければ活かせませんし」
アーキア 「そうなんだよね、クガトはアキ達から魔術遠ざけてたみたいだから、でもアキはここに来て魔術も覚えたんだよ」
クガトとは違う勇者の扱いに、リエルもアーキアがここに居着いてしまった理由の一端が見えた様な気がした、口では勇者ともてはやしてくれるが、クガトにはリエル達に対して畏怖の感情が少なからず有ったと思えるのだ。
リエル 「フェカトさんは異世界人が恐ろしくないんですか、魔王は異世界人だったと聞いていますし、クガトの書庫にはリィの国の言葉で書かれた本が有りました」
フェカト 「ダイン様と話してみると全然そんな事は有りませんね、確かに凄い方なんですけど、ちゃんとした賢さが有れば話って通じるものなんですよ、問題は理解出来て無い人間に権力を与える事なんですよ」
アーキア 「フェカトの理想は解るけど、今はリエルの歓迎だよね、愛耶さんのご飯はもう良いの?」
フェカトの話が長くなりそうなのを察して、アーキアが先手を打つ、アーキアはややこしい話よりも食べる事が大好きなのだ、そして未知の愛耶の料理に興味深々だ。
フェカト 「大丈夫ですよ、美味しそうな匂いがしてましたから大丈夫かと、匂いが良くて不味い物は無いとも言いますし」
リエル 「リィは始めての聴く言葉ですけど、確かにそうかも知れないね、でも、冷めると味が変わっちゃいますよね」
フェカト 「二人は似てますよね、食べるのが好きそうです」
アーキア 「クガトでは料理も冷めてるから、ここの人達は魔術で温めて食べるけど、アキ達は温める魔術も知らないし」
リエル 「文化の違いだよね、リィ達の世界よりも魔術浸透してるし」
フェカト 「そうですよね、常識って国によって違うから難しいです、ましてや異世界なんて」
アーキア 「でもさ、美味しいは正義だよ、アキでも愛耶の料理は美味しいから、あれが毎日食べれるだけでもここに居る意味があるよ」
リエル 「アキがそこまで言う料理は楽しみですね」
フェカト 「はい、丁度ポーカとニアも来ましたから食事にしましょう」
工房でマギガントを降りて移動してきたポーカとニアに合流して、一行は国賓屋敷へと向かう、七実は真夏とファービと一緒に先に屋敷に戻った様で何か作戦を考えているのだろう。
途中見えて来た屋敷を見て、リエルはその豪華さに驚いていたが、王族などが滞在する施設だと聞いて納得した様だ。
リエル 「アキがこんなところに住んでいたなんて驚きです、クガトでも良い部屋は与えられていたと思いますけど、段違いですね」
フェカト 「他国の王族が学院に入学する事も有りますからね、権力者にも実力が有った方が有利ですから、テガスで学びたいという王族は多いんですよ、もっともフェカトの様に地位は有っても実力が有るとは限りませんが」
ポーカ 「ですが、それを考えてのポナリア・ジーカでも有るんですよね、普通は高級機の方が扱い辛いと考えますから」
フェカト 「まぁ、地位を維持する為には見栄も必要ですから、それにジーカを輸出する事は国の為でも有るんですよ、武器を買ってる国と戦おうとは思いませんよね」
ニア 「解る話にゃ、ニャアの世界は陣営ってのが有って、互いの陣営の武器を揃えてたにゃ」
フェカト 「そうなんですよ、ポロルグはククジアや他国にジーカを輸出して地位を向上させてます、ですからテガスってポロルグにとって重要なところなんですよ」
リエル 「ならそんな重要なところにリィやアキを迎えてもよかったの?」
フェカト 「リエルさんが見たところぐらいなら大丈夫です、それに秘密にし過ぎると余計に警戒もされますから、間者が居ても許容出来るところは見逃してます」
リエル 「何だかクガトとは全然違うよ、リィはフーティア整備してるところも見た事なかったし」
フェカト 「そうなんですよ、最近のクガトは特に厳重になっててポロルグの間者も数名が行方不明になってます、だから警戒してるんですよ」
リエル 「なるほど、フェカトさんの言っていた情報を流して安心させるって事だよね、リィもアキの秘密には興味有るし」
アーキア 「ええ、知りたいの、ならリィの秘密も教えて貰わないと」
ニア 「アーキアは戯れる相手が来て楽しそうにゃ、リエルもここで暮らすと良いにゃ」
アーキアがすっかり打ち解けているところを見て、リエルも警戒を緩めている様だ、この先、愛耶の料理を振る舞えばリエルを引き止める事も十分可能だろう。
そして、玄関を抜けて通された食堂の席に各々が座って行くと、鮮やかな料理が次々と運ばれて来て良い匂いを放っている。
七実 「遅かったですね、皆んな席に着いて下さい、リエルさんはアーキアの隣の席でいいですよね」
リエル 「皆んな一緒に食事してるんですか、クガトじゃ宴席以外は個別でしたけど」
フェカト 「食事は家族の結束を確認する時間ですから、それに皆んな揃って無いとダイン様が嫌がるんですよ」
七実 「結構気を使ってくれてるんですよ、不公平感を感じてしまうとどんどん不満が溜まって行きますから」
リエル 「フェカトさんは異世界の人を自由にさせているんですね、監視もしていない様ですし」
フェカト 「フェカトもここで暮らしてますからね、それにダイン様達を自由にさせている方が利益も大きいですから、美味しい料理も広がってますし、魔鋼の生産量も増えてます、ここ数日でポナリア・ジーカ一機分は生産出来ていますから」
アーキア 「マギガントはよく解らないけど、美味しいは皆んな共通だからアキも助かってるよ、正直、ここのお菓子はアキ達の世界の物より美味しいからね」
アーキアが料理を褒めているタイミングで、ワゴンに大量の料理を載せた愛耶が厨房よりやって来る。
愛耶 「アーキアはよく食べてくれますから作り甲斐有りますよ、今日のケーキは上手く出来ましたので楽しみにして下さいね」
ニア 「モンブランにゃ、モンブランが出来たのにゃ」
愛耶 「はい、栗の渋皮剥きに苦労しましたが、良い感じで仕上がったと思います、スポンジはパンケーキで代用しましたがその分大きいですよ」
七実 「愛耶さんのパンケーキはふっくらして美味しいですからね、アレで三食行けますよ」
愛耶 「そう言って貰えると有難いです、でも新しい料理も試して下さいね、運河で釣れた魚を料理してみたんですが美味しく出来たと思います」
ポーカ 「それは朗報ですね、あの魚グルキウは癖が強くて苦手な子が多いですから」
愛耶 「運河と言っても淀んだ水の魚ですからね、焼くや蒸すじゃ臭みは抜けませんよ、揚げる事が効果的です、でも、この世界って食用の油が流通してませんから、豚の脂で揚げてます、カロリーは高いですけど大丈夫でしょう」
真夏 「揚げ物久しぶりですよね、食用の油の流通とか食材にも問題が有ったんですか」
愛耶 「はい、愛耶は脂身使ってトンカツ作った事も有ったので、その時の経験を応用してみました」
フェカト 「脂身で調理ですか、思い付きもしなかった料理です、でも、良い匂いですね、それとこの薄い皮も美味しそうですね」
愛耶 「ポテトチップスですね、芋を薄切りにして油で揚げてます、動物性の油なんで冷めないうちに召し上がって下さい、まぁ冷めても魔術使えばいいですけど」
愛耶の言葉に各々が大皿から揚げ物を取り分ける、そしてリエル以外は合掌して「頂きます」と言葉を掛けると賑やかな昼食が始まった。
リエル 「とても美味しいよね、なるほどアキが帰って来ない訳だ、粥だけでもクガトの物より味に深みが有るよね」
愛耶 「そう言っていただけると嬉しいですね、ちゃんと出汁を使って料理してますから」
リエル 「ダシって何ですか」
アーキア 「スープらしいよ、この粥もスープを使って煮込んで有るから、美味しいみたい」
リエル 「粥をスープで煮込むのか、二つの料理を一つにしてるわけだね」
愛耶 「そうですね、ちょっとした手間を掛けると料理は格段に美味しくなりますよ、でも、味のイメージが出来て無いと大惨事になります」
フェカト 「味のイメージですか、難しいですね」
愛耶 「まぁ慣れの部分が大きいですから、例えばこの魚なんてかなり匂いが強かったので、揚げる事にしたんですよ、ダイン様は食材を無駄にするのがお嫌いなので、美味しい食べるには揚げるのが最善だと判断しました」
ポーカ 「凄いですね、こんなに美味しくグルキウを食べられるなんて、生徒達はグルキウが食卓に上がる日は懲罰とか言ってるぐらいですから、実際、学園側でも軍の粗食に慣れる訓練だと思ってますし」
愛耶 「何だか悲しい話ですよね、人の糧として殺められているのに喜んで食べて貰えないなんて、ダイン様は食材にも敬意を払ってますので、なるべく美味しく食べれる様に愛耶にこの仕事を与えてくれているんですよ」
リエル 「食べられる物の事を考えて調理してるんですか、偽善の様にも聞こえるけど、愛耶さんはちゃんと実践してるんだよね、そういう根底の考え方を聴くだけでもリィも尊敬しちゃうかな」
アーキア 「そうそう、だからダインさん達の邪魔はしたくない訳、ダインさんの考えが広まる方が皆んな幸せになるよね」
リエル 「正直アキは騙されてると思ってたけど、食事一つで凄さが解るもんなんだね」
フェカト 「本当に凄いのはこの後だと思いますけどね、食事は生きるのに必要な事ですけど、甘い物はそうじゃ無くて楽しみですから」
リエル 「それもダインさんの考えなんですか」
七実 「家族は特に大切にしてくれますからね、毎食後に甘味で幸せを感じるの事をダイン様は重んじているんですよ」
リエル 「解り易い幸福の提供ですね、でもこの世界じゃそれが無理だからね」
フェカト 「ダイン様が戻って来るまで滞在してみては如何ですか?」
リエル 「そこまで甘えるのも嫌ですよ、アキは今日連れて帰る気です」
アーキア 「それってフーティアで帰るって事だよね、でももう無理なんだよね飛べないから」
リエルはアーキアの言葉の意味を悟って驚いてしまう、あのアーキアが出会って直ぐの男に身体を許すとはとても思えなかったのだ、そう、もしアーキアが男に惚れたとしてもリエルに絶対相談が有るのだとリエルは思い込んでいたのだ。
おまけ
魔鋼ランク 魔鋼の重量軽減率が魔鋼ランクとなる、普及型魔甲兵のゾッフォなどはランク50程度の魔鋼、つまり素材から五割の重量の魔鋼が使われている。
ジーカで70、ポロルグ、ウウル・ジー、フーティアなどは80の高品質魔鋼が使われており、天翔ける処女に使われる物は最大値と言われるランク90魔鋼である。
ランク80以上の魔鋼を使ったマギガントが飛行可能になり上位機体と言える。
一般的な工員ではランク70魔鋼ぐらいまでしか製造する事が不可能で、80以上を製造出来るのは上級工員とも呼ばれている、だがこれは一般的なマギガントで使うレベルの話であり、ジーカの構造を模倣したウウル・ジーのフレームであれば上級とは言えない秀でた工員でも製造出来るレベルで制作されている、但し耐久性は劣る。
まだ、劇中では明かされていないが、一部の高魔力遊魔が扱ったマギガントはフレームの魔鋼ランクが上がる様で、ダインが主に搭乗していたゾッフォは魔鋼ランク90のフレームへと変化しているのだが、魔動力の能力は変わらずに普通のゾッフォのままなので誰にも気付かれていない。