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スリムだった黒豹少年、巨デブ相撲黒豹部員になって無様オナニーする話

  「ねえ、相撲やってみない?」

  そんな事を母さんから言われたのは、中学校の卒業を間近に迎えた冬のことだった。

  相談がある、と夕飯作りの手を止めた母さんは、向かいに座った俺に、唐突にそう提案してきたのだ。

  「……何いってんの?」

  と俺は、その言葉の意味が全く理解できず眉を顰めた。

  だってそうだろう。その時、俺は相撲になんて興味はこれっぽっちもなかったのだ。テレビで中継が流れていても、すぐにチャンネルを変えていたし、ましてや、殆ど裸で男同士組み合っているのなんて、見るだけならまだしも、自分もやりたいだなんて思ったことなかったのだ。

  いや。

  よしんば俺が相撲が好きだったとしても、俺は同じことを聞き返していただろう。

  黒豹の獣人である俺は、力士と言われて想像する体型からは、正反対そのものだった。筋肉がないわけじゃない、むしろ、細マッチョというようなスタイルの良さをしていた。

  別にナルシストだっていう訳じゃない。

  昔から、可愛いカッコいいと言われて育ってきて、美術の教師に「絵画のモデルに一度なってみて欲しい」と言われる程度には他人からの評価もあったのだ。

  こればかりは、種族柄で片付くような話じゃない。

  過大評価などではなかったはずだ。

  「えっとね」

  と母さんは、俺にそんな話を持ちかけた理由を話し始めた。

  俺が受験合格した高校は、有名な進学校だった。同じ中学どころか周囲の学区を含めても俺だけしか合格していない。

  だが、それだけではなく文武両道を掲げていて、活躍している部活も多い。しかも、活躍している部活には、学校活動だけでなく、私生活面にも補助が出ているという。

  俺が小学生の頃に離婚した父親からは養育費が送られてきているが、それでも経済は厳しい。だから、補助をもらえるのなら俺としても部活に入る事はやぶさかではない。

  まあ、運動は嫌いじゃない。ただ、今までやってきたスポーツはどれもこれもパッとせず、すぐに楽しくなくなっていたので、あまり好きだとも思ってはいなかった。

  「……で、なんで相撲? 正直、嫌なんだけど」

  引っかかっていたのは、そこだ。

  自分が脂肪で膨れ上がって尻を殆ど丸出しにして、男と抱き合う。そんな自分を想像しただけで毛が逆立ちそうだった。

  相撲取りがデブだって言いたいわけじゃない。そりゃ、力士の体が脂肪だけで出来ているわけじゃない事は俺だって知っていた。

  だが、それはそれ。

  俺は、その時の俺が一番カッコいいと思ってい。高校に行ったら彼女とか作って華やかな高校生活を。なんて考えていた俺からすれば、相撲部なんて暑苦しくて女子ウケも悪そうな部活なんてまっぴらごめんだったのだ。

  そんな俺に、母さんは「そうだよねえ」と苦笑いを見せた。

  「うーん、それがね……、その相撲部の顧問してるのがね、私の友達の友達っていうか……前に助けて貰ったことがあってね」

  そんな彼から、相撲部員が足りないから数合わせでもいいので入部してくれないかという打診があったらしい。

  特に入りたい部活がなさそうなら、という配慮はあったらしい。だが、残念ながら俺は部活というものそのものに興味が薄いことは母さんは知っていたし、事前にその事を友人にうっかり漏らしてしまっていたということを後から聞いた。

  「食費も結構出してくれるらしいから、お小遣い結構増やせるんだけど……どう、かな?」

  外堀を埋められる。という言葉は知っていたけれど、まさかその体験をこんな形でするなんて思わなかった俺は、そんな風に申し訳無さそうに尋ねてくる母さんに、深い溜め息をついた後。

  「分かった。けど、本気で無理だったら辞めるからね」

  と、渋々俺は頷いたのだった。

  ぱあっと表情を輝かせた母さんは、そのまま晩ごはんを作るためキッチンへと戻っていく。俺は、うんざりとした心地のまま、嫌な汗をかいた体をシャワーで流すため、バスルームに向かった。

  脱衣所で服を脱いで、姿見に自分の体を映した。

  すらりとした身体。

  黒く艶めいた毛並みには爽やかな柑橘の制汗剤で脂も抑えている。

  男らしい骨格に筋肉の凹凸がプラスされている肉体は、無駄な贅肉もない。

  腰はすっきりとくびれがあった。

  陰茎は半分程剥け上がって、鈴口が顕になっている。

  均整の取れた身体。

  俺は、俺がまわしを締めて、土俵の上で四股を踏んでいる姿を想像した。

  「どすこい、どすこい、って? はは、笑える……バカかよ、頭悪ぃ……」

  呆れ返るほど、バカバカしい光景だと思った。

  ◇◇◇

  そうして、卒業式を迎えた俺は、そのままその高校へと進学して、約束通り相撲部に入った。

  お小遣いはほぼ倍に増えた。

  相撲部は、体作りが最重要だ。そして、その負担が最重量とも言える。だから他の部活よりも私生活面――つまりは食費に関しての補助が手厚い。

  前より増えた食事量もその補助で賄えていたし、学食を利用すれば更に節約が叶う。

  稽古は辛い。

  だが、目に見えて生活が楽になったこともあって、暫くは続けようかと春先を過ごし。

  夏が過ぎ。

  秋が過ぎ。

  冬が過ぎ。

  そしてもう一度、春がやってきた。

  「あ、先輩、お疲れっした!!」

  「おー、お疲れ」

  ずん、と重く床を踏みしめながら部室へと入った俺に、後輩が勢いよく頭を下げる。

  揃いも揃って、図体のでかい男ばかりだ。

  まだまだ体が出来上がっていない豚獣人と、期待の新人として入部した虎獣人のどちらも細マッチョなどという言葉とは縁がないとでも言うようなデカさだ。

  そんな彼らの憧れの目を受けながら、俺は着替えている同級生の猫獣人と並んだ。

  「よ、颯斗。春大会の話か?」

  隣のロッカーを使っている猫獣人と並べば、腕が触れ合う程の近さになる。いや、少し腕を動かせばそのぶよぶよと垂れ下がる胸にすら肘が付くような距離。

  それでも、俺は気にせずまわしの結び目を解いた。

  タオルも巻かずに解かれていくまわしに、俺の裸体は隣の同級生どころか、こちらに視線を向ける後輩たちにすら簡単に見えるだろう。

  俺は、1年経っても相撲部を辞めていなかった。

  「おう、当たり前だろ? 俺が引っ張ってやるって豪田ちゃんに啖呵まで切ってきたぜ」

  いや、もう相撲部を辞めるなんてことを考えていた事すら、忘れていた。

  部室の壁に無造作に置かれている姿見を見た。

  すらりとした身体は、いまや全身が脂肪に包まれていてどっしりとした身体に。

  黒く艶めいた毛並みはそのままに、しかし、吹き出る汗をタオルで拭えば濃い雄の臭いが立ち上る。

  男らしい骨格の上に筋肉と脂肪が鎧のように纏わりついて、無駄な贅肉は一つもない。全てが必要不可欠な肉だ。

  腰はくびれがあったことなど信じられないだろう。

  陰茎は腰回りに着いた肉に押しやられて、先端まで皮を被って半ば肉に埋もれていた。

  均整の取れた、豊満な身体。

  それが今の俺だった。

  きっと1年前の俺が、今の俺を見れば「クソデブじゃん」というのだろう。そう言われるのなら、その頬を思いっきりぶっ叩いてやる。

  俺は、ぶくぶくと肥え太った俺の姿に惚れ惚れするような心地だった。

  「流石、俺らのエースだな」

  春の大会、その大将として選ばれた事を顧問コーチの豪田に言い渡された事を言うと、猫獣人は驚きもせず頷いていた。

  昨年、相撲部に入った俺は、始めこそ伸び悩んでいたものの体重が増えていくにつれ、どんどんとその頭角を表し始めた。

  相手のまわしを掴み、動きに合わせて体重を掛けて、転がす。間合いの取り方、駆け引き。教えられる知識と体験を吸収していった俺は、冬の頃にはこの部で一位二位を争うような実力を手に入れていた。

  そうなれば、見える世界は全く違うものに変わっていた。

  始めに考えていた「彼女を作って」という高校生活も今や二の次だ。半裸で男とぶつかりあって何が楽しいのか。そんな風に考えていた頃を思い出せば、何も知らないガキだったんだと呆れ返る程だ。

  「まあ、頼りになる新人も入ってきてくれたしな! お前らにも期待してるからなあ~?」

  と俺は裸のまま、こちらを見つめてくる後輩二人の肩に腕を回した。

  二人の顔が俺の胸に埋まる。汗ばんた被毛同士がぺったりとくっつくその感触に、気持ち悪さなどなく、むしろ安心するような心地で「後輩いじめ」と同級生に言われるまで彼らの肩を叩いていたのだった。

  ◇◇◇

  地方の春大会本選。

  先鋒、中堅、大将と3戦が行われ、その星数で勝敗を決する形式のトーナメント戦だ。その決勝戦へと俺たちは駒を進めていた。

  その最後の試合、一勝一敗の大将戦。

  「今日はお前の足がよく回ってる。活かせよ。よし、行って来いッ」

  まわしの結び目をきつく締め直した豪田の分厚い手が、俺の尻をぱしりと叩いた。その力強さが心地よかった。相撲を始めた頃なんて豪田の体が化け物のように感じていたというのに、今や、その豪田よりもデカくなっているのが俺だ。

  高校名と名前が読み上げられ、土俵の上へと上がる。

  土の感触を足裏で掴みながら周囲から掛けられる声援に、身を震わせる。屋外の土俵は風が緩やかに吹いていた。

  地方試合とはいえ、この規模となると流石に観客も多くなる。予選など保護者すら訪れない事もある規模だと言うのに、がやがやと降り注いでくる野次が雑音のようだ。

  『礼』

  スピーカーから指示が飛び、俺は土俵端で頭を下げる。そのまま、対戦相手へと視線を向けた。

  相手は、俺よりも大柄な巨漢、灰色の肌を張り詰めさせるサイ獣人。正しく筋肉だるまと言うべき体付きは、高校生というよりもダンプカーなどと言い換えたほうがしっくり来るような威圧感があった。

  土俵の中へと踏み入り、仕切り線に掛かった砂を足で払いながら、ゆっくりと呼吸を整える。圧迫感が相手方から漂ってくる。

  それが覇気というものなのだろう。逸る心を抑え込みながら、ゆっくりと蹲踞の姿勢へと腰を下ろしていく。

  

  『手をついて、待ったなし』

  行事の声がスピーカー越しに拡大されて響く。まわしの腰を平手で叩いて、睨みつけてくる相手の全身をねめ上げた。

  身長も体重も、俺より上だろう。重量級の相手。

  これが、自分よりも軽量なのであれば、重量差で押して強引な勝ちをもぎ取る事もできるだろうが、今回はそうは行かない。

  真正面から突き崩せるような体幹でないことは、蹲踞の安定性を見ても瞭然だ。

  「ふぅ……」

  膝に手を擦り、右手を突く。

  ただ、搦め手を狙おうとして攻め手を緩めれば、そこから一気に崩されて、挽回の好機もなく土俵外だ。

  どうするか。初手でまわしを取ろうとするのなら、引き落としで土を付ける。張り手でこちらを崩そうとするのなら懐へ潜り込んで掛け技へと持ち込む。

  まずは、相手の体幹をどう揺さぶるか。

  思考しながら、相手の呼気を見る。サイ獣人は、ゆっくりとした所作ながら、しかし迷いなく俺より先に両の手を突いた。

  ギラギラと戦意に燃える目は、確かな自信という刃に武装して俺を射抜いていた。

  「……」

  己が勝つという、確固たる意志。

  いつでも、立ち合おうという万端の構え。

  それを正面から見据えながら、俺の口は僅かに笑みを浮かべていた。乱されるなと叱咤しつつ、見合い、互いの息を合わせる。

  吸い、吐く。

  今か、今かと逸る心臓を押さえながら、相手と息を合わせていくこの瞬間、俺は誰よりも目の前の男のことを理解しようとする。微かな呼気の乱れ、緩やかな筋肉のしなり。俺のリズムと相手のリズム。それが重なり合った瞬間。

  俺は両拳を土に着け、大地を踏みしめた。

  同時に弾かれるようにふた塊の肉体が飛び出した。張り手はない、伸びる腕が俺のまわしを捉えようと迫る。

  「……ッ!」

  早い。

  既にサイの巨体は俺の懐に潜り込もうとしている。相手に下を取られれば一貫の終わりだ。

  そうなる前にその初動を掴んで落としたかったが、事此処に至ってはそれももう高望みだ。まわしを摑まれる。その瞬間、一気に体を持っていかれるよりも先に重心を低く落として、ぶつかる衝撃に目を眩ませながらサイ獣人のまわしを掴んでいた。

  巨大な獣の牙に食らいつかれたような強烈な揺さぶりを堪える。

  そこから、左右へと重心を崩されながらも、俺は両足に根を生やすような心地で大地を踏みしめていた。

  やられるばかりではない、揺らされる力を利用して相手の足を揺らす。

  足だ。足を動かせ。

  顧問の声が脳裏に響く。

  踏み込んだ。前へ、僅かに傾ければその動きが意外だったか、サイ獣人の腰が僅かに浮いた。重心が傾いたのだ。

  「……ッ、……!」

  ここだ……ッ。

  ここしかない。一瞬で俺はそう確信した。この局面を堪え切られてしまえば、単純なスタミナ勝負で俺はコイツに負ける。

  この一手が分水嶺だ。

  全身全霊を掛けるように、俺はその綻びを押し広げるように全体重をサイ獣人へと押し付けた。寄り倒し。体を密着させたまま、相手を押し崩すその一手はほんの一瞬だったはず。

  だが、その一瞬が俺には数秒にも、数十秒にも思えて。

  ◇◇◇

  鍋が有名な店での祝勝会を終えた後。

  俺は満腹になった腹を擦りながら家路に着いていた。

  「はあ……、これで暫くは試合もないな、疲れたぜ……」

  入学から、四、五回はサイズを新調した制服に身を包み、俺はすっかり暗くなった道を急ぎ足で帰っていく。

  母さんが夜勤の仕事に出ている事を確認した俺は、汗を吸った制服を洗濯かごに突っ込んだ。

  「はあ……っ、はあ……」

  花柄のプリントが横に伸び切ったボクサーパンツ一枚で二階の自室に入った俺は、ただでさえ伸び切って薄くなっているボクサーパンツの前部分を押し上げる剛直を見下ろしていた。

  ただ見下ろすだけでは、でっぷりと張った腹に完全に隠れている俺の勃起チンポ。おれはそれを鏡越しに見つめる。

  メッシュ生地のように先端まで皮を被った屹立が花柄の奥にうっすらと浮かび上がる。先端から溢れた先走りが下着を濡らしている。

  試合の後はいつもこうだ。いや、最近は試合の途中ですらまわしの中で勃起し始めてしまうことも少なくない。

  ゆっくりとその先端に手を伸ばして、その濡れた染みを押し拡げていくと、びりびりとした快感が背筋を走り抜ける。だが、それだけだ。

  「……ああ、くそ」

  俺はそのままチンコを握って擦り上げ、性欲を発散させたい欲求に苛まれる。だが、それは出来ない。

  1年前――いや、半年前まではそれも出来ていた。だが、どんどんと肥え太っていく体に、しまいには俺の腕は性器を触ることはできても、前までみたいに満足にシコる事もできなくなっていたのだ。

  やろうと思えば出来る。股割りも欠かしていない体は、大抵驚かれる程に柔軟だ。だから姿勢を工夫すれば腕の可動範囲を十分に確保することは出来るが、今度はあんまり安定しない姿勢になって射精に集中できないのだ。

  本当なら今すぐ気持ちよくなりたい。

  「準備しねえと……ん、ぁ……」

  俺は、ふっくらと女子のようだとからかわれる豊満な胸の先をくりくりと弄びながら、押し入れに隠している玩具袋を取り出す。

  満足にオナニーも出来なくなってから、それでも性欲は体が成長するのに比例するように高まっていく中で、ついにネットの情報に手を出してしまった。

  ――男でも乳首が気持ちよくなる、乳首でイケる。

  眉唾ものだった情報だが、届きにくいチンコを頑張ってシコシコと扱くよりも楽で、しかも片手をチンコに使いながらも弄れる利点で、暫く胸を虐めていたのだ。

  「く、ぅぁ……ッ、……はあ……ッ、んっ」

  始めは肉に埋もれて陥没していたそこは、日を追うごとに顔を出し始めてきたのが分かってきた。それだけじゃない。始めは「触ってるな」としか思えない程の感覚だった乳首が、次第にムズムズとした感覚を帯び始めていたのだ。

  気付けば、俺はチンコを握るのをやめて、両乳首を同時に弄り始めていた。

  指先で摘み上げ、腹で押し潰し、ぐりぐりと押し潰しては、二本で挟んで捏ねくり回す。相撲取りとしての体が出来上がっていくと同時に、乳首もまた結実していく。

  もし、成長後に乳首いじりに目覚めていたのなら、他の部員に乳首のことを突っつかれたかも知れない。チクニーにドはまりした俺の胸の先芯は、それほどまでに調教され、通常時でもツンと突起を見せつけるようになっていた。

  「乳首……っ、ぁ、やべ……っ」

  パンツに先走りが広がっていく。邪魔する腹を押し退けながら扱き上げるよりも数倍の先走りが溢れ出てくる。

  まさか決勝で対戦したあのサイ獣人も、俺がモロ感乳首で喘ぐような雄だとは思わないだろう。

  あの後、あの一瞬の隙で捲くられた事に、少年漫画のように感動していたあの熱い雄も、俺の姿を見れば幻滅するだろうか。

  「はあ……ッ、ふ、う……」

  いや、この姿を見て幻滅しなくとも、きっとその先を見れば幻滅するだろう。少なくとも、相撲を知る前の俺ならば、嫌悪の表情を浮かべるに違いない。

  汗臭い体のままで俺が玩具袋から取り出したのは、透明なトロッとした液体のディスペンサーに、黒い棒状のものだった。

  いや、誤魔化す意味もないか。それは、男性器の形をした性具、紛れもなくディルドだ。

  「は……ぅ」

  チクニーに嵌った俺は、乳首だけでイケるようになった頃に、このオナニーが孕む問題点が文字通り浮かび上がってきた。

  相撲はまわしでする物だ。練習も殆どはまわし姿でするのだから、当然、胸を隠すものはない。男の胸なんだから見えてもなんてことはないだろう。そう言われてしまえばその通りだ。

  だが、もともと陥没していたそれが、目に見えて膨らんできているとなれば、話しは変わってくる。

  それでは、まるで「俺は乳首イキできる変態です」と名乗っているようなもの。

  俺は代わりの何かを探した。

  いや、探したわけではない。始めにネットを検索しているなか、乳首と並んでいた体のある部位。

  言わなくとも分かるだろう、アナルだ。

  肛門、菊穴。

  なんとでも言えばいいが、重要なのは、そこが性感帯になり得る場所だということだった。

  俺は、あまり使い道がなく溜まっていた小遣いで、ネット記事にあった指南に従ってグッズを買い込んでいた。

  「ん、ぁ……ッぅ、きつ……」

  始めはコンドームを指につけて指を突っ込もうとした。だが、ペニスを満足に触れない俺が蹲踞をしながら尻穴に腕を伸ばすような無理をせず指を肛門に挿れるなんて土台無理な話だった。

  次は、エネマグラを試した。

  これが、ダメだった。

  快感を得られなかった訳じゃない。むしろその逆。痛みと違和感に苛まれながら挿入し、数十分後、俺は初めてドライオーガズムを味わうことになっていた。

  そこからはもう坂道を転がり落ちるようにアナニーに嵌まり込んでいった。

  今ではもう、これがなければイケないとすら思ってしまう程だ。

  「かあ、……ッ、う……、きた……っぁ、ケツ……ぅ」

  ローションを塗りたくったディルドを床に固定して、ボクサーパンツを脱ぎ捨てた俺はその上に跨った。

  つま先は90度に開き、つま先立ちになりながら、ゆっくりとしゃがむ。背を曲げないように顎を引き、膝を大きく開いて尻をかかとで支えるように腰を下ろしていく。

  その所作は、まさしく蹲踞そのものだ。

  あの対戦相手も、後輩も、顧問の豪田も、まさか仕切りの度に俺が尻穴に男のチンコ型の置物を突っ込んでいる自慰を思い返しているとは思わないだろう。

  だが、事実なのだ。

  「入ってる……っ、ぁ」

  俺の姿を映す鏡。

  そこにはぶくぶくと筋肉と脂肪で太った黒豹獣人が、包茎チンポの先から先走りを零しながら、ケツにディルドを突き刺していく姿が映っている。

  しかも、その黒豹は下手な女子よりも豊満な胸の先端を指で虐めながら、舌を垂らして淫乱な表情を浮かべている。

  なんて情けない姿だろうか。これが地区大会で己の高校を優勝に導いた立役者の姿などと誰が信じるだろう。蹲踞のポーズだけが様になっているド変態そのものだ。

  「ぉ、うぅ……、ぶ、ふぉ……ぁッ」

  惨めな雄叫びが俺の喉から溢れていく。性器と化した俺のアナルは、びくびくと喜びに震えながらディルドを咥えこんでいく。

  半ばまで挿入った、そこまで腰を下ろした後、俺は一気に最後まで腰を下ろし抜いていた。

  「お、ほォ゛……ッ!」

  ビギン、と脳がひび割れるような衝撃が全身を貫いて、散りばめられていく余韻にそれが快感だったのだと遅れて知覚する。

  奥まで咥え込んだ俺のケツは、びくびくと筋痙攣が起きているように震えが止まらない。だが、俺の性欲はそれを考慮してくれない。

  ぐちゅぷ……ッ、と粘っこい音を糸引いて、腰を上げた俺の腸壁がディルドの凹凸に擦り上げられる。

  「は……ッ、ぁ……、ッアタ、る……っ」

  そのまま、今度は一番下まで落ちきらないよう腰を途中で止めると低い空気椅子のような姿で、ぐりぐりと尻で円を描くようにディルドを肉壁に擦り着けていく。

  ぐちゅぐちゅと音を立てながら、俺は雁首が前立腺を引っ掻いていく感覚に嬌声を放り出す。気持ちいい。ビリビリと青い電流が流れて、鼻の奥をペンチで摘まれるような強烈な快感が鏡の中、屈強で豊満な黒豹を撃ち抜いている。

  「ぁあ……ッ、ケツ、堪んねえ……ッ」

  今の俺を、あの時の俺がみたらなんというのだろうか。

  見せてやりたい。

  これが本当のお前の求めている姿だと分からせてやりたい。そんな事を考えている俺の脳裏に、記憶が蘇る。

  「ど……どすこい、……どす、こい……ッ、は、ッ……バカかよ……頭悪ぃ……ッ」

  口から突いて出たそれは去年の俺が、想像した俺の姿を笑う言葉と同じ言葉だった。だが、想像したのはこんな姿じゃない。

  相撲に意欲は無かったが、もっと勇ましく、雄々しい姿だったはず。

  だが、鏡に写る姿は――どすこい、とうわ言のように呟いた姿は、正しく笑止の沙汰だった。不格好で、浅ましい、惨めな姿。

  なんだか、それが堪らなかった。

  「ど、すこい……どすこいっ、……どすこぉいッ、どす、こい……どすこぉッ、オ゛……っ!?」

  ぐぶちゅ、ぬぐちゅ、と肉肉しい尻肉に淫音が響いて震える。分厚い尻肉に挟まれたディルドから滴るローションが、肉の間に挟み込まれて空気と混ぜ合わされていく。

  蹲踞は尻を引き締める動きでもある。武術に取って腰は最重要である。鍛え上げられた腰周りの筋肉が収縮し、俺にディルドを強く締め上げさせていく。

  そうすれば、襞肉を無理やり押し進んでいくそのディルドがより強く俺の内壁を抉り取っていく。

  「どす、こい……ぃ、ッぁ、……ッどすこ、ぃ……ッ、どすこい、どすこい゛……っ!!」

  腰を下ろす度、ディルドで自ら狭くした尻肉を抉じ開けさせる度、『どすこい、どすこい』と噴飯もののセリフを吐き出していく。

  滑稽だ。

  だが、腰を振る度、ブルブルと震える俺の勃起チンポの先からは、ぴゅうぴゅうと先走りが跳ね跳んでいる。

  感じている。これだけ嘲笑されるのが似合うような姿を晒しながら、俺は得も言われない快感を得ていた。

  「は、あ……ッぁ、どすこい、ッぃ……いっ、イグ……ッ、どすこ……いッ、あ、……っ、ァ、ぅ……ッ、どす……っ」

  鏡に写る俺の姿。

  肉厚な黒豹がだらしなく舌を垂らしながら汗を振りまいている。脂肪が全身に乗った体は油でテカついた様にぬらぬらと光り、雄大な胸の先は真っ赤に腫れ上がってしまっていた。

  その胸に両手を当てれば、柔らかな胸が指の形に歪んでいくのが分かる。殆ど触っていないチンコの奥底から、射精感が高まっていく。俺はその乳首をぎゅっと掴んでは引っ張り上げた。胸の中に芯でも入ってしまっているかのように硬くしこった先端を摘み上げれば、電流が走るように快感が胸から全身に広がっていく。

  俺は、ディルドに尻を穿たれながら、近くに放り置いていたまわしの袋に手を伸ばす。汗臭い刺激臭を放つそれに、俺は鼻先を突っ込んだ。

  袋越しでも一年洗濯をしていないまわしの強烈な臭いは容赦なく俺の鼻の中を蹂躙していった。

  脳が焼けるような、隠臭。

  「あ、……ッ、ア……っァ、ケツぅう……ぉお゛っ、どす、こ……い、どすこいッ……どォ゛、ぁッ!」

  腰の動きは止まらない。止められない。

  根元から先端までをディルドにごりごりと擦られ続ける肉穴が蕩けて無くなってしまいそうなほどの快感に犯されながら、俺は床についていた膝を浮かせて腰を上げた。

  ぐぽん、ぐぽんッと雁首が抜けた尻口を再度貫いては抜け出ていく音。ディルドの上にバウンドするように巨体を揺らす俺は、激烈な快感に身を任せるまま、ディルドを最奥まで咥えこんで、その上体を弓なりに仰け反らせていた。

  「どすこい……ッ、どすこいッ! どすこい、どすこい……ッ!! どす……こぉ、ォオ゛ぉおお、あ゛あァアア゛ッ!!」

  仰け反った俺の腰、そこに聳えていた屹立の皮被りの先端から、ごびゅっ、どびゅ、びゅく……ッ!! と勢いのある白濁が天井に噴き上がり、俺の鼻筋、頬、胸や腹に付着していく。

  汚らしく撒き散らされていく自分の精液にすら興奮を煽られた俺は、自ら胸をキツく摘み上げながら、びゅくびゅくと熱い雄汁を噴き出し続けた。

  「どす、こぉ……ッお゛ぉお……ッ!」

  鏡の中で乱れ狂う黒豹はなんとも無様だった。汗だくになりながら、玩具を尻に突き刺して悦んでいる変態。

  そんな姿をみて自らの興奮を重ねていく俺もまた同様に無様極まりない。

  だが、それと同時に俺の心は、晴れ晴れとした心地でもあった。

  「……ッ、はあ……、気持ちい……」

  顔に着いた精液を舐め取って、舌の上で絡ませる。

  巨デブだろうと、ド変態だろうと、俺は相撲でテッペンを取った男だという揺るぎない自信が、おれの胸に息づいている。

  中学生の頃持っていた漫然とした悩みなんてものはない。よく分かっていない事に悩んでいる暇なんてないのだ。

  強いて悩みがあるとすれば。

  試合や練習が終わってこうして性欲を発散させる度、汗だくになって疲れ果てなければいけないことだろうか。

  眠気に襲われながら、後始末をしなければいけないというのは、なかなかに面倒だった。

  「ディルドが動いてくれれば、楽なんだけどなあ……ま、そんなハイテクな――」

  汗だくのまま、腹の上に飛び散った精液をティッシュで拭き取っていく俺は、途中まで言いかけた言葉を閃きに途切れさせる。

  当然動くディルドもある、ディルドに限らず、安いバイブなら使ったことがあるが、やはり挿れるならディルドが一番だったのだ。

  「……、なんだよ、そんなことか」

  理想のディルドを思い浮かべる。

  まず、自分で動きを出してくれる事。そして、体勢を好きに決められる事。あまりに高価過ぎない事。

  加えて言うのであれば、俺のチンコを扱いてくれるのなら文句の付け所がない。

  そんな完璧なディルドがこの世にあるものだろうか。そう考えて、俺は自分自身を笑っていた。

  「またバカなこと考えてるなあ……」

  俺は、俺自身の腸液とローションでドロドロに泡立った、黒いそのディルドを見つめた。それが一体何をを模して作られたのか、それを考えれば求めるディルドが何か自然と分かる。

  「ぁあ……ホモちんぽにケツ、掘られてぇなあ……」

  俺は、それを想像しただけで達したはずの尻穴が疼き上がるのを感じながら、思わずそう呟いたのだった。

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