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種馬品評会の種馬としての招待状が届いた。
僕が住んでいるアパートの、自分の家名がかかれている郵便受けに、それは投函されていた。
冬がもうすぐ終わりそうな中での日課のランニングから帰って来てから自分の部屋に帰るまでの郵便受けを確認するというルーチンワークに挟み込まれたそれは、僕の手の中で異様な存在感を放っていた。
「……ついに来たんだ……」
ごくりと、喉が鳴る。僕はこの招待状の先に何があるのかを、よく知っている。
僕たち馬族は、遥か昔からの戦争の時代から強力な戦士としてあらゆる戦場で猛威を振るっていた、いろんな種族が戦争に参加していたけど、馬族は雄も雌も武器を振るい他種族を、同族を、全てをなぎ倒す。大きな体に、強力な四肢、広い視野で戦場を駆け巡る、そんなご先祖様達、馬族のみんなが戦士としてのプライドを持ち、戦場こそ馬族の生きる場所という信念まであったようだ。「強い者が正義」という単純な方程式がよく当てはまる。当然だろう、弱いものは負けて死ぬ時代だ、そして、強い者が生き残り、たくさんの子供を作る。
強い馬族はそれだけ異性を惹き付ける、強い遺伝子を求め、強い者の子を産み出すために。
戦争は終わって、平和になったこの時代にも、馬族は「強者主義」の概念が色濃く残っている。同時に、強者の遺伝子を求める理屈も相まって、その最たる例が、この種馬品評会だ。
「ただいま。」
「おかえりなさい。朝食、テーブルね」
母親がキッチンで洗い物をしている後ろを通りながら、郵便受けに入っていたこれを報告しようか、一瞬悩むが、やはりするべきだろう。
「母さん、郵便受けにこれが…」
半ば押し付ける形で母親に招待状を押し付ける。
「なーに?……あら」
母親がタオルで拭った手でそれを受けとり、中身を見ると、目が光る。
「……うふふ、やっぱり来たのね。当然よね、カタウが選ばれるのは、あんなに注目されればね。」
「……」
自室の棚に飾ったトロフィーを回想する、それと連鎖的に、サラブレッド競技の表彰台に登った時の景色も思い出した。
パッと、馬族の長い顔をこっちに向け、ニッコリとした笑みをこちらに向けている。
「行きたいの?」
母さんも馬族である以上、この品評会を知っているのだろう。
その品評会が導く事も知っているはずだ。
目がどことなくいやらしい目をしている。
「迷ってる…」
僕がそう答えてる
「そう、うふふ、当然ね、行くなら、母さんは止めないわよ、カタウも雄だものね、好きにするといいわ、美人さん捕まえて楽しみなさい。」
そう言って、母さんは封筒を押し返した。
朝食を食べたあと、学校に行くまでの間でベッドに転がり、招待状を改めて眺めた。
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招待状
カタウ殿、
種馬品評会種馬参加のご案内。
この度、第十二回種馬品評会において、カタウ殿を種馬として招待いたします。
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「……」
僕たち馬族が平和になった世界でどうやって強者の欲求を満たすか、平和になった世界といえど、争いはおこる、だけど誰かとても賢いヒトが争うことを競う事へと昇華させた。馬族はそれを嬉々として受け入れた。
そして、強い遺伝子を求めるという伝統にも近い習慣は、種馬品評会で解消される。
種馬品評会は、簡単に言えば、強い遺伝子を残すためのイベントだ、勉強でも、スポーツでも、いろんな事で功績を挙げた馬族、すなわち強者の雄が集まり、遺伝子を残す気がある雌に選んでもらって、エッチして子供を残してもらう。
雄は単純にエッチできる、子供を残せる、雌は自分の子供に強者の血が混ざる。ともにウィンウィンの関係の元、繰り広げられるらしい。
僕はそのなかで、一般参加ではなく、種馬として参加できる。それはつまり、僕が強者として認められて、僕の遺伝子は後世に残す価値があるって見定められた訳だ。
僕だって雌に興味あるし、エッチしてみたいって思いながら自分の性欲を処理したことだって何度もある。
だけど、こういうイベント事は正直に言って…
「不安だ…」
彼女はいたことないし…
エッチだってしたことない童貞だ。
そんな僕がこんなイベントに出てもいいのだろうか?
そもそも、僕が種馬として振る舞えるほどの強者である事は理解できるし、種馬品評会の事もあのトロフィーを受け取った時に先輩にその知識を授かったから理屈も理念も理解できる。
けれど、どちらも、自分がそんなにすごいと自慢したいと思わないのだ。
僕自信は、懸命に頑張っただけだ。他の頑張らなくてもすごいヒトをたくさん知ってるから、
棚のトロフィーを見る。今年度の最優秀サラブレッド競技選手に選ばれた事を意味するその証。
サラブレッド競技とは、有り体に言えば馬族だけで競う陸上競技だ。
種族の中にはチーター族やダチョウ族のような走るのが得意な種族もいるけど、それでも僕達が並んで競い合うのは迫力があるらしい。
運動が得意な馬族は皆、このサラブレッド競技選手になることを夢見ているだろう。それくらい魅力がある競技だ。
その中で今年で最も成長し、功績を残したからあのトロフィーをもらえたわけだけど…
…もう少し様子を見よう。あの施設に行って、みんなの意見が聞きたい。
僕と競い合い、鍛え合う、同士と言える人たちの元へ。
休日、品評会まであと四週間まで迫ってきた日、僕はスポーツ施設まで向かった。
そこはあらゆる競技の選手が集まって、世界規定で認められた器具を使って存分に練習できる場所。
僕でも知っているような有名な選手が、自己研鑽の為にここに来ている事でも有名だ。
「あ、あの人カタウ選手?!」
「え?!本当?!」
「!」
後ろから聞こえる馴れない歓声で僕は足早にその施設に入る、やっぱり僕も陸上、サラブレッド競技界隈で有名になってしまったみたいだ。
中に入り受け付けに入場料を払い、僕は競技用グラウンドに出る。
そこでは、様々な種族の人が動きやすい格好で、走ったり跳ねたり、鍛えたりしている。中には部活で来ているのだろう同じくらいの年の集団や顔をよく知っている有名人も混ざっている。
僕はその中で、その有名人に用があった。すごい勢いでグラウンドのトラックを走っている青毛の雄馬を見つけた。何人かが同じように彼を目で追っている。
とても早く走っているが、彼の表情を見る限り、流し程度の運動なのだろう。
トラックのゴールでトットットと勢いを落として歩きに切り替わる。走っていたのに息ひとつ乱していない。
青毛の彼がグラウンドを離れ室内に入り休憩に入るのを見届け、
(今だ!)
彼との距離、回りの人たちの動きを計算に入れて、最速で彼に近づいた。
「ノアクロさん、こんにちは、お疲れ様です。」
「ん?」
一瞬怪訝な顔になった彼はこちらを見て、自分の名前を読んだのが自分が僕だと知ると、彼は一瞬だけ笑顔を作った。
「カタウ君だったな?今年の最優秀選手、覚えているよ。」
「あ、ありがとうございます、」
僕もサラブレッド競技者、高校を卒業したらこの人と同列に扱われる訳だけど、とても敵わないと思う。オーラが他の人と全然違う。
カタウ・ミナカミ、生けるレジェンドとも言える、今世代最速のサラブレッド、様々な大会を総ナメして、すべての馬族の憧れだ。
僕がこの人に話しかけたのは、彼なら間違いなく選ばれていると思ったから。ほとんど思い付きでここに来ちゃったけど、ノアクロさんがいてくれたのは本当にラッキーだ。
はち切れんばかりに膨れ上がった筋肉、それでいて、無駄がないプロポーション、このヒトを見ていると、馬族って、こんなに美しいんだとも思える。
「所で、何か用があったんじゃないのか?」
「あ、その」
側に置いてあったスポーツドリンクをひと口飲んだノアクロさんがこちらに話し掛けてくる。僕はひとつ頷き、ペタりとその場に座り込んだ。
「ちょっと相談したいことがありまして。」
彼の目を見る。とても強い意思のこもった目が、自分の言葉に思案してくれる。
数秒で察してくれたのか、また僕の目を見直してくれた。
「…あと四週間だったな、そうか、君なら選ばれて当然だろうな」
「はい、招待状を受けとりました。」
この人に話しかけて良かった。いろいろと相談したい。
きっと品評会を何度か経験して、雌馬の人に選ばれてエッチしているはずだ。恥ずかしいけど、とにかく情報が欲しい。
「よう、ノアクロ、待たせたか?」
「え?」
声の主を見ると、ノアクロさん同様屈強な体を持った雄馬が、競技用の馬蹄を指でいじりながらこちらを見ていた。
この人もよく知っている顔と毛並みだった。
名前はヴァルツさん、ノアクロさんと同じ有名な世界レベルのサラブレッド競技者だ。
そのヴァルツさんを見ていると、こちらを見て来る。
「えーと、君は…あ、そうだ今年の最優秀選手君!名前なんだっけ?」
「カタウ君だ、」
「はっ…じめまして!カタウです!」
「うんよろしく、で、何でノアクロはこの子と一緒に居るの?俺と走るのは?」
どうやらこのお二方は、ここで練習するつもりだったらしい、だとしたら悪いことをしてしまった。
というよりも、こんなに有名なサラブレッド競技者二人がここにいて、その中に僕がいる事がすごいことだ。分不相応に感じてしまう。
「ああ、四週間後の事で、カタウ君が相談してきてね、経験済みの雄馬として、話をしようとしていてね。」
「なるほど、そりゃ選ばれるか、強くて若い子の種が欲しいんだろうね。」
ヘラりと、ヴァルツさんが軽く話し掛けてくる。やはりこのヒトも選ばれてるんだ。
「なぁ、あれノアクロ選手じゃないか?練習に来てたんだな。」
「そっちのヒトもヴァルツ選手だ!すげえのが揃っているぞ!」
「スゲーな、二人で練習するのか?ここにいたらスゲーの見られそうだ。」
よく見ると、何人かが熱のこもった目こちらを見てくる、そりゃあ世界レベルで有名なサラブレッド競技者が二人も揃っているんだ。
「ってか側にいるあの子も見たことあるぞ。」
「あの子も有名なサラブレッド選手だよ、カタウ君だよ。」
「代表的な選手が三人も揃ってるのか。」
と思ったら注目を集めているのは僕もだったようだ。確かに僕が表彰台でトロフィーをもらったところは全国放映されてたけど、そんなに一気に有名になるのか。
「ヴァルツ選手、カッコいいわ、ちょっと携帯、写真とる!」
「かわいい顔して強い、カタウ君もステキじゃない?これからのサラブレッド競技会を引っ張るのよ。」
「私はノアクロさんがいいわぁ、イケメンで最強なのよ」
「…ふむ、ここじゃヒトの目があるな、向こうへ行こう。」
ノアクロさんは立ち上がり、向こうの扉を指差す。その先はちょっとしたミーティングを行うための会議個室がある。
ヴァルツさんが手を振って自分のファンに応えている。それで上がった歓声を尻目に、ノアクロさんは扉を開けて中に入っていった。
同じように僕も扉の中に入る。コンクリートを打ちっぱなしの壁に明るい電灯と扉が等間隔で並んでいる。
「ここだ。」
予定が何も入っていない扉を見つける。ノアクロさんは扉の横のタイムスケジュールにサラブレッド競技ミーティングと書き、30分ほど時間を取った。扉を開けてその中に入ると、僕もヴァルツさんもついていく。
その扉の中はちょっとした会議室の空間で、長い机と椅子がいくつか、ノアクロさんはその椅子に座らず、立ったまま扉に向かって右の壁に寄りかかる、その姿がとても様になっている。
「種馬品評会の話だったな。」
「はい、いったいどんな事をするのか、気になって…」
「そりゃまぁ、種付けだろう。」
ヴァルツが根本に触れた。
「ええ?!いや…でもそれだけじゃないでしょう?!」
「…悪いが、俺もヴァルツと同意見だ。それが主目的だ」
ノアクロさんがふぅと息を吐いた
「俺ら両方とも前回の品評会でも呼ばれてたし、今回も呼ばれてる。皆仲良く種馬って訳だ、俺ら種馬は雌馬とセックスして自分の精子で雌を孕ませるのが仕事なんだ。」
種付け、雌馬、セックス、精子、言葉の一つ一つが卑猥に聞こえてしまう。
僕は一方的に突きつけられた正答から少しでも情報を引き出したい、だからもっと、食い下がる。
「で、でも、仮にも雌のヒトと…え、えっちするんだから、いろんな段階を踏むんじゃ、」
「けっこうお硬いね、カタウ君。あーでも、以外と現代っ子っぽいね。最近の子は少食的だね。」
ヴァルツさんがそんなことを行って笑う。
けっこう重要な問題だと思うんだが…
「…そうだな。カタウ君は、種馬品評会の事をどんな風に思っている?」
ノアクロさんがこちらを見る。その目は少し感情を落としているように見えた。
「そ、それは…こう、お見合いみたいな。」
「あーそっかなるほどそう思っているのか」
ヴァルツさんは机に腰掛けながら、そう応えた。
「違うな、そんなに恋愛感情溢れる感じにはならない、何て言えばいいのかな?」
「そうだねぇ、あー、オークションのイメージが一番合ってんじゃない?」
「ああ、そうだな。」
ノアクロさんは頷いた。
「オー、クション?」
オークションってあれだ、商品に対して、お金を出し合って高い金額を出した人がその商品を買えるっていうイベントだ。
「品評会に選ばれて種馬になったやつは、オークションの商品って訳だ。あー正確には種馬の俺たちの精子が競売にかけられてるわけだ。」
僕はその事実になぜか納得してしまう。
「じゃあ、僕たちを、僕たちの精子を買うのが雌馬の人達で、そのヒトたちとえっちするって事ですか。」
「簡単な流れはそうだな。俺達を選んだのは俺達の子を産む気のある雌馬連中だ、そいつらを孕ませる。雄馬冥利に尽きるだろ?!」
「…あまりいいもんでもないがな、」
「とか言っちゃって、何人子供作ったんだ?」
「…お前はどうなんだ?」
「俺は3人子供作った。顔もちゃんと知ってるぜ。」
「…そっか、二人とも品評会に出たことあるから、子供がいるんですね?」
「ああ、それが大きな目的だからな。」
僕は、自分の子供というのがとてもイメージできなかった。
「…自信ないなぁ…」
「言っとくけど。種付けして子供できても、責任とかはとらなくていいんだぜ?」
「え?」
なんだかとても外道な言葉がヴァルツさんから聞こえた、自分の子供を作らせたのに、責任をとらなくていい??
「どうしてですか…?子供を作らせて父親になるなら、責任を取らないといけないんじゃあ…」
「一つ、解釈を正しておくと、俺達が雌に子供を作らせるんじゃない、子供を作りたい雌に精子を提供してるんだ、…あれ、それならオークションじゃなくて精子バンクって言った方が正しいか。」
「…強者主義の雌の我が儘だ。」
「…じゃあ、雌馬の人たちはシングルマザーになるって事ですか?」
「大体はそうだな、俺はよく知らねぇが。雌の方もそこそこ厳しい審査を受ける、旦那の了承とか、性病とか、あと子供を育てられるだけの財産を持っているか、とかな」
ヴァルツさんは楽しそうだ。
ノアクロさんは少し機嫌が悪そうにしている。
「大体が金持ちだからな、俺達はホントに、セックスするだけでいいんだよ。美人も多いし選り取りみどりだぜ」
「…そうですか。」
「せっかくチャンス貰ったんなら、使わなきゃ損だぜ。」
ヴァルツさんは机から降り立った、床と蹄がぶつかりカコンと鳴る。
「でも…僕まだそんな経験ないです。」
「あーそりゃあいい価値だ、童貞であるならより雌がよってくるぜ。」
気持ちがより揺らぐ。雄として、種馬として選ばれたからには行きたいと本能が言っている
「一つ、デメリットを言おう」
ノアクロさんの言葉に、僕とヴァルツさんは彼を見た。
「向こうは、雌達は精子だけを、俺達の遺伝子だけを求めている。俺達本人じゃない、そうじゃない雌は確かにいるし、実際に品評会で知り合って、婚約した奴もいるが、それは小数だ、用が済めば早々に離れてしまう事を忘れるな、子供を放置する後ろめたさから、金を送るやつもいるが、追いかければ大体痛い目を見る。」
「いや、そんなことわかってるけど、どうしたノアクロ、まさかそうやって痛い目を見たのか?」
壁から背を離して、ノアクロさんはヴァルツさんをため息混じりに一瞥する。
「昔の話だ。」
それだけ言うと今度は僕に向き直る。
「デメリットも言ったが、せっかく強者とて認められ、招待状を貰ったなら一回は参加してみるといい。いい経験になる、俺も今年は出るが、今年で最後にするつもりだ。」
「え?そうなの?」
ヴァルツさんは驚いていた。
ノアクロさんは少し笑った。
「あんなのに出て、一夜だけの雌を抱かなくても良くなったからな。俺はずっと一緒にいてくれて、子供を二人で育てると言ってくれる雌の方がいい。」
その台詞は僕でも理解できた。結婚してちゃんとした家庭を作るんだ。
その内結婚報道が流れるだろうから、絶対見よう。
僕も、ノアクロさんに倣ってちゃんとした結婚した方が…でもノアクロさんは出た方がいいと言っている、それに、結婚出来る相手もいない。
ノーリスクで、雌のヒトに中出し出来るエッチが出来るって言うのは、僕のアソコがうずくほど、魅力的な事だった。
「…出て見ようかな、経験として。」
「いいじゃん!子孫を残すのは雄の務めだぜ!」
そう言って、ヴァルツさんは僕の背中を叩いた
「…話が長くなったな、カタウ君、一緒に練習するか?」
「!!是非!!」
ノアクロさんの誘いに、僕は二つ返事で応えた。
出ると決めた後は少し心が軽くなって、練習がとても有意義になった気がする。
その次の週末、僕は種馬品評会と提携している病院に赴いた、招待されたからとはいえ、いくつかの審査を受けなければいけないからだ。
言わば試合前の身体検査、ドーピング検査だ。
僕は受付の犬族のおねえさんに招待状を渡した。
「すいません、これの身体検査で来たのですが。」
「はい、お預かりします。…確認しました、向こうの待合室でお待ちください。」
ほんのり顔が熱くなる、この招待状を渡すのに勇気がいった。
仮にも品評会の種馬の招待状だ。雌馬とエッチするためという下心で検査でここに来ているのは隠せない。
早くこの場から逃れたくて僕は足早に奥へ進んだ。
待合室で待っていると、先程の看護婦さんが書類を持ってくる。
「この問診票の赤枠の欄を埋めてください、終わったらそちらのカゴに提出してください。」
問診票を見ると、自分の名前、年齢など基本的な個人情報、これを渡されるのは雄だけのようで性別の欄は省かれていた。
そのあとに、自分の体の持病やアレルギー、そして、精通した年齢、自慰の回数や、性行為体験の有無、等のデリケートな事も問われていく。
(多分一番重要な事だ。)
ぱぱっと問診票を書いてカゴに提出して座って待っていると、また一人、雄の馬族がやって来る、一瞬だけ目が合うと、そのヒトはプイッと目をそらした。
(このヒトも種馬に選ばれたのかな?)
そう思っていると、自分の名前を呼ばれ、僕はさらに奥の診察室に向かった。
そこにいた雄の竜族の先生からは普通に身体検査をした、心臓や血圧、血液検査、普通の身体検査みたいだ。
「うん、基本健康体ね、ここまではok、あと問診票の、ここの質問、性経験はないのね?」
「はい、…ありません。」
「じゃあ、性病は無いと見てここから検査するね。ついてきて」
医者の先生はそう言って、かけていた眼鏡をかけ直しながら立ち上がりついてくるように言った、
僕もそれに従い、ついていくと、ある部屋にたどり着いた。
そこには体重計と身長計、視力検査のあれ等の基本的な身体測定の機具、そして奥につながる扉があった、先生はその扉の扉を開ける。
「入って。」
言われるままそこに入ると、見慣れないけどなんとなく使い方がわかるような器具、レントゲンを撮る時の器具みたいだ。
「ここでは、ぺニスの勃起した状態でのサイズとか、あと精液の精子の活動量も調べるからね。」
「え?!ぺニス?!」
いや、言われていることはわかる。おちんちんのサイズ、精液、3週間後の種馬品評会で実際に必要になるものだ。
だから、アソコを検査するのに何の違和感もない。ないけどいきなりそんなこと言われて出来るものではない。
「うん。必要な事だからね、一人じゃないと緊張してできないだろうからこの部屋使って、勃起したら、ここ、この机の板に乗せて、その上のカメラで自動的に撮影して診察するから。」
「写真撮るんですか?!」
「うん、おじさんに触診されるよりはいいでしょ。」
まぁ、そりゃそうか…
「あとこれ、雌馬がたくさん乗っている本、それとマスターベーションしてね、射精した精液はこのカップに入れて」
そう言って何冊かのエロ本と尿検査用のカップを渡されて閉じ込められる。
「…はぁ。」
僕は嫌々とズボンとパンツをずらして、おちんちんを露にした。
パラパラと、エロ本をめくる。そこには裸でおっぱいを露にして、こちらをみている雌馬の姿がいる。
ページをめくる度に、スタイルのいい全裸の雌馬が、艶やかな肢体をのせていた。
ドクンドクンとおちんちんが体積を増していく。
ページを進めると。これまたおっぱいの大きな雌馬が、筋骨粒々の雄馬にまたがり、その大きなおちんちんをアソコに埋めているシーンだ。モザイクで大事な所は見られないが、僕には十分なオカズだ。
「…」
これほどエロ本を凝視するのは初めてかもしれない、雄馬と雌馬がエッチしているシーンが目に飛び込んで来る度に、おちんちんは体積を増し、そして、僕の最大の大きさになった。
チラリと机の上の板を見る、言われた通り、僕はその板の上に、おちんちんを置いた、勢いを付けたわけではないが、おちんちんを置いたときに板がベンッと音を鳴らした。
しばらくすると、カシャンとカメラの撮影音が鳴り、おちんちんが撮影された。
おちんちんを机からはずして、また椅子に座る。
「…次は…」
オナニーをして、出した精液をカップに入れる。
家のベッドに座っているときみたいに、リラックスして、ゆっくりと勃起したままのおちんちんを右手でつかんで、オナニーをした。
「…ン…」
いつもの握った感覚だ。手から、暑い体温と硬い手触り、おちんちんから握られている感触と、なんとも言えない性感。
「はぁ…う。」
左の太ももにおいたエロ本を空いた手でめくり、雌馬がエッチしている絵をみて、僕は目を閉じる。
それは僕が写真の中に入った感覚だろうか、それとも写真の雌馬が実体化した感じか、一緒に写真に写ってセックスしている雄馬を差し置いて、そのヒトとエッチしている妄想。
触れた事がない体温、嗅いだことがない匂い、キスの味、すべてを捏造して、妄想の彼女とエッチをした。
「雌馬の人とのエッチって、どんなんだろう…」
妄想はどんどん加速して、僕の中を駆け巡り、おちんちんからどんどん我慢していたものが沸き上がる。
ソレを抑えることなく、左手でカップを掴み取り、おちんちんの先にカップを突っ込んだ。
「う!ぅ!」
全身が萎縮して、ドクドクと精液が注がれる。
こぼれないように抑えて、おちんちんから次々出る精液を受け止めさせるが、カップが小さすぎた。
(ああ!どうしよう?!)
思ったよりもたくさんの精液が出て、カップに収まりきらずに、射精のドクドクが来る度に、カップからこぼれ落ちて、レントゲン室の床に落ちてしまう。
「はぁ…はぁ…」
ようやく射精が終わり、カップは満タン超過して、側面にもペッタリと精液が零れ落ちてしまう。
辺りを見渡すと、先程の机の板の横にティッシュがおいてある、急いでそれを数枚抜き取って、汚してしまった床を行き取り、また数枚抜き取ってカップの側面を拭き取った。
レントゲン室からエロ本と精液入りのカップを持って、精液を渡す。
「はい、お疲れ様、診察はこれで終わりね。また受付で待ってて、診察書を受け取って帰ってね。これだけの量が出て、濃度も充分、ぺニスサイズも適性、問題無いよ。」
「あ、ありがとうございます…」
受付で診察書を受け取り帰路に着いた。ちょっと寄り道して何か食べたいとも思ったけど、オナニー直後で何か別の事をしたいとはいまいち思えなかった。
それから二週間、三月になってめでたく僕は高校の規定を満たし、卒業を認定された、来月からこの国でも有名な体育系の大学に入ることが決まっている。
そして、ついに種馬品評会当日、それを待ちに待っていたのか、来ないように祈っていたのかは僕にもわからない。
僕は最優秀選手のトロフィーとメダルを鞄に詰め込んで、家を出た。
サラブレッドの部は午後の一番遅い時間、夜6時からだ。品評会のプログラム的に、サラブレッドの部が終わるのは夜だ。…エッチするにはいい時間なんだろう。
会場は都心から少し離れた場所にあった。一見するとミュージカル会場みたいに見える。実際に普段は種馬品評会とは別のイベントが行われているようだ。
中に入ると、キレイなロビーにふわふわの絨毯、まるで高級ホテルみたいだった。
受付のヒトを見つけ、僕は招待状を提出した。
「はい、品評会の種馬参加のカタウ様ですね、こちらの係員について行ってください」
「こちらです。」
僕は狐族のヒトについていく。
心臓が高鳴る、エッチにたいする期待と不安、それが折り重なるようになりながら、僕は進んでいく。
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