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ヒグマ獣人高校生柔道部男子が慰み者にされながら淡い恋をする話

  ◇◇◇

  すっかり暗くなった道を駆け足で抜けていく。

  そのヒグマ獣人は、並の大人であっても敵わないだろう見事な体格をしていた。

  柔道着に包んだ身体。その胸は隆々と盛り上がり、袖から伸びる腕は太くがっしりと肉づいている。胴長の身体を支える下半身も重厚感があり、一歩踏みしめる度に布の下で躍動する臀部からの脚力は、重く響くようだった。

  だが、そんな恵体に対し、その顔立ちはまだまだ幼さを残している。まだまだ若い彼ではあるが、最近は童顔である事をコンプレックスに思うことも少なくない。

  クラスの女子に可愛いと言われた時、対戦相手に軽んじられた時、そして……憎悪する程嫌いな相手に愛でられる時。

  久間里 椿は、高校2年の柔道部員だ。

  正義感の強い彼は、人を守る為、困っている人を助ける為に柔道を続けている。

  そんな青い若さを持つ彼を家族は応援してくれている。

  優しいけれど少し抜けている母。

  厳しいけれど一緒に考えてくれる父。

  時折鬱陶しいけど無邪気に懐いてくれる弟。

  「ただいま」

  家に着き、美味しそうな晩御飯の香りがするダイニングの扉を開けた椿は、そんな親愛する家族に笑顔を向けた。

  「おー、おかえり、『椿くん』」

  食卓についている母、父、弟。そして、俺がいつも座っている椅子に、ふんぞり返って座っていたのは――あの男だった。

  一番会いたくない相手だ。今まで生きてきた中で、最も嫌いで、憎む男。

  椿が何度も犯された男が、椿の座っているいつもの席にその重い尻を遠慮なくドカリと乗っけていた。

  まるで、この場にいて当然だとでも言うように、ニヤついた笑みを貼り付けている。理解が出来なかった、椿は目の前の光景が一切理解できないまま、それでも、この男がここにいる事が許されざる冒涜だと、怒りが湧き出した。

  歯をむき出しに、腹の底から声を張り上げた。

  「お前、何してんだよ……! 俺ん家だぞ、お前が……お前なんかがッ!!」

  「コラ! 椿、なんて事を言うの!」

  そんな混乱したまま激高する椿に帰ってきたのは、椿の味方であるはずの母の叱責だった。

  「かあ、さん……?」

  「あなたのご主人様にそんな口利いちゃ駄目でしょ!」

  「は……? いや、何いってんだよ母さん、コイツは……ッ……? 今、母さん、なんて……ご主人様……?」

  この変態を擁護する母にすら噛みつこうとした椿は、その中にある無視できない単語に全身の毛が逆立つような忌避感を覚えた。コイツがご主人様だなんてそんな事はありえない。だが、そもそも、そんな事を母さんが知っているはずない。

  この男が、あの部屋であったことをバラしていない限り。

  まさか、まさか。

  「そうだ、椿」

  最悪の想像に顔を強張らせる椿に、男はニヤニヤと椿の狼狽を楽しむばかり。椿がそんな男の首根っこを掴もうとしたその時、更に理解できない言葉が椿の耳に飛び込んできた。

  席に座る父が、眼鏡の奥でいつもの冷静な目をしながら椿を見つめる。

  「ご主人様のチンポは気持ちがいいんだ。分かるな」

  「と、とうさん……?」

  「そうだよ。お兄ちゃんもいっぱい気持ちよくなってたでしょ?」

  「な、お前まで、何言って……」

  困惑する。父が訳の分からない事を言い出し、それを肯定するように弟がリビングのテレビを指差した。

  そこには、先程まで家族が見ていたのだろうテレビ番組が映し出されていた。パン、パンと激しい音を響かせるテレビの中では。

  「……ッ」

  『ヤダ……ッ、おれ゛っ、ぁあア゛ぁあっ! いぐ、イ……ッ、ぁああ、やだ、やだぁ……ッ!! いぐ、出……ッぐ、ぁああ゛ぁあ!!』

  他の誰でもない、椿が男に犯されて触られてもいないペニスから、どぴゅどぴゅと射精している映像が流されていた。

  男のペニスを尻に挿入されて、まるで3歳児のようにいやいやと首を振りながら情けなくその剥き上がった若茎の先から白濁液を大量に撒き散らす椿の姿。

  「なん……で……」

  「なんでって、椿くんがそうして欲しいって言ったんじゃん。『チンポ欲しいです、ご主人さま』って」

  「俺は、そんな事……!」

  ない。と言い返そうとしたその時、椿はいつの間にか自分が全裸になっていることに気付いた。いや、自分だけではない。俺に肩を組んだあの男。そいつの前に跪かされた時、男も裸になっているということに気づく。

  顔を上げた俺の目の前に、勃起しきった男の屹立。鼻を突く、雄と汗の混じった酸い匂い。嫌悪を感じているはずだというのに、椿の熊鼻はその匂いにヒクヒクと疼いていた。

  「やだ……っ、俺、そんな、こと……ッ」

  そう言いながらも、椿の体は勝手に男の熱り立った剛直に口を近づけていく。残尿のような匂い、汗の濃い香り。そんなモノが口の中に広がっていく。舌がその熱茎に触れる。

  「見ないで、……やめて、いやだ……ッ、や……!」

  家族が椿の姿を見ていた。

  まるで、椿が男の奴隷になっていくことを見下しているような蔑みの目。見ないでと叫びながら、それでも、椿の体は、口は、鼻は、尻は、ペニスは、男の味に疼いていて――。

  「……いやだッ!!」

  椿は、叫びながらベッドから跳ね起きていた。

  「……はあ……はあッ……! 俺の部屋、……夢……?」

  汗だくになりながら、跳ね除けた布団が床に転がっているのを呆然と見つめた。荒い息を吐いて、バクバクと鳴る心臓を押さえながら、時計を見上げる。

  時計の針は、23時を過ぎた辺りを差している。外は晴れていて、明るい月明かりが下りていた。

  最悪な夢だ。

  考えるだけで吐き気を催すような夢。

  だが、椿はそんな夢を見てしまったことよりも、それが現実じゃなかったことに安堵を感じていた。

  「……っ、くそ、……最悪だ……なんなんだよ……ッ」

  ベッドから上半身を起こして、自分の股ぐらを見下ろした。

  パジャマに包まれたそこは、立派なテントが立っている。あんな夢を見た後だというのに、若い椿の体は性的欲求を漲らせているのだ。

  自分が、あの男に嬲られて悦んでいるような体の反応。それが、何より気に食わない。

  さっさとオナニーでもして鎮めればいいんだとも思うが、それも出来ないでいる。別にあの男からそう命令されている訳では無い。

  あの貞操帯も、この前呼び出された時から外されたままだ。

  「……っ、は……ぅ」

  だが、椿はオナニーが出来ないでいた。

  発散しようとすれば、あれから何度か男に呼び出され、体を弄ばれ、犯された記憶が蘇る。

  パジャマのテント。その天辺にもう既にシミを作っているその屋台骨を撫でれば、切ない声が椿の喉を鳴らす。ペニスを擦り上げようとすれば、あの男の姿が、匂いが脳裏に浮かんでくるのだ。

  風呂場でそのまま擦り上げて、ザーメンを吐き出したこともあった。だが、一瞬の快楽の後、シャワーでその白濁を流しながら襲い来たのは、その満足感を軽々と凌駕する後悔だ。

  男に弄ばれる事を、犯される事を考えながら快楽を得たという事実が、椿の正義心に深い傷跡を残す。今までは触れたこともなかった胸や尻穴をクリクリと指の腹で刺激しながらの自慰は、得も言われぬ悦楽だった。その全てが男に教え込まれた快感だという事以外は、椿も素直に受け入れただろう。

  だが、その一点。無視するには大きすぎる汚れは、椿自身を嫌悪させるには十分過ぎた。

  ペニスを布越しに慰めていた手を止めて、椿は顔を手で覆った。喉が乾いている。明日も学校だ、このまま寝てないと部活まで体力が持つか分からない。じっとしているのがつらい。男の夢を見たからか、じっとりと全身が汗に濡れて寒気すらする。それでも、熱り立ったペニスは収まりもしない。

  「兄ちゃん、大丈夫?」

  「……っ」

  そんな時、椿の部屋のドアがカチャリと開かれ、控えめに開いた隙間から弟が顔の半分だけを覗かせる。寝ていた所を起こしてしまったのだろう、いつもの半分も開いていない目の弟に「勝手に開けるな」と怒りそうになるのを、兄としての矜持でどうにか押さえた。

  弟には――家族には、自分の事を気づかれたくない。だから、感情のままに叫びそうになるのをどうにか抑え込んで、笑顔を作る事に全神経を集中させた。

  「大丈夫、嫌な夢見たから……ちょっと走ってくる」

  「……ん、分かった。おやすみ」

  「うん、おやすみ。ごめんな、起こして」

  嘘は言っていない。ただ、心配ないということだけを伝えた椿は、閉められたドアを少しの間見つめた後、ゆっくりとベッドから起き上がった。

  走りに行こう。そうすれば少しスッキリするかもしれない。

  パジャマを脱いで、ジャージに着替える。その最中。

  「……勃起してんの見られたかな」

  笑顔を作ることに必死になって、今もぎんぎんと存在を主張する劣情の証明のことを忘れていた椿は、羞恥を誤魔化しがてら月明かりに文句を言うのだった。

  ◇◇◇

  すっかり遅くなってしまった。

  俺は車を運転しながら、欠伸をした。学生時代から柔道で鍛えた体は、ここ数年の教師生活で少しだらしなさが目立ってきている。先月、車の座椅子を1段階後ろにずらす原因になった腹は、その最たる所だろう。

  高校教師をしながら、柔道部顧問もするというのは、正直多忙の一言に尽きる。

  学校側がそこそこ力を入れている柔道部の顧問ということもあって、獣人相手に平人が武術指導をする事の大変さを理解してくれている校長のはからいで、受け持つ授業が世界史一つなのはまだ救いではある。だが、それでも部活持ちじゃない教師と比べると、やはり時間という面ではこうやって帰宅時間が遅くなることも多かった。

  柔道の指導の後、職員室に戻って残った仕事を片付ける。そういう生活で、帰った時には汗臭くなっているだろうに、妻は俺の心配をしながらも応援してくれている事に正直、感謝が絶えない。

  「あ、ッ……俺、遅くなること……言ってないか!」

  と、妻に帰宅が遅れることを伝えていない事を思い出して、慌てて車を横道に入れて止めると、助手席に置いていたカバンの中からスマホを取り出した。そして、メッセージアプリを起動させた所で、ふとその指を止めた。

  「って……連絡する必要はないんだったな」

  もう、そんな事を数回繰り返している。

  妻は数日、実家に戻っているのだ。妻の妹がもうすぐ出産予定日ということで実家に戻ってきており、その手伝いに行っている。帰るのが遅れた所で、困る者はいないのだ。

  「癖になってんだなあ……」

  昔は同僚と飲んで帰って、妻が鬼の形相を見せることも数回あったが、今はもう考えられない。妻が帰ってきたときの笑い話にでもしよう、とスマホを仕舞った俺が車を発進させようとハンドルを握ったその時。

  俺の視界に、道の脇を歩いている人影が見えた。

  悲しげに肩を落としたジャージ姿の男だ。

  夜中にジョギングをする奴も、まあいるだろう。事故にならないように気をつけて運転しようと思った俺は、なんとなくその人影に見覚えがあるような気がして、警戒がてら目を凝らしてみる。すると、そのジャージの尻尾穴から、短い熊の尾が見えた。

  「……なんか椿に似てるな……っていうか、あのジャージも見たことあるし、椿か……?」

  俺は、その背格好に生徒の顔を思い出した。

  ヒグマ獣人の生徒。歴史の選択は日本史で授業を受け持ってはいないが、我が柔道部のエースでよく知っている。責任感が強く、3年が完全に引退したら、次期主将にと目論んでいる生徒。

  最近、なにか思い悩んでいるようで気にかけていた相手だった。

  俺は車のエンジンを止めて、その人影に話しかけることにした。一歩近づいていく度にそれが椿だということに確信しながら、それと同時に、その肩が細かく震えている事に気づく。静かな夜道に、抑えこんだ掠れたしゃくり声。

  泣いている。

  「……椿っ?」

  そう気付いた瞬間、俺は彼に駆け寄ってその人影の肩を叩いて、顔を覗き込んだ。

  それはやはり椿で、そして、思ったとおりにその目は涙に濡れていた。

  「せん……っ」

  「どうしたんだ、こんな時間に……」

  泣いて充血した目で、椿は俺を驚いた目で見つめてくる。いつもは俺よりもでかい体をしているというのに、今日ばかりは妙に小さく縮んで見える。

  椿は、普段では見ないようなオドオドとした様子で、視線を左右に振った。まるで誰も見ていない事を確認するような仕草に、俺は両肩に手を置いて、顔を見合わせる。

  すう、と鼻で息を吸う音がして、椿の視線が俺とかちあった。

  「……っ」

  「すまんかった。お前が何かに悩んでいるのは分かっていたが、お前の問題だろうと放っておいた」

  何だかんだ、生徒も自分のコミュニティを学校外でも構築している事が多い。いじめが起きているような様子はなかった。大人の介入なんてものは一長一短だ。深入りをして、こじれてしまえば大事になることもあると学んでいた俺は、後悔と共に使命を感じていた。

  こうして、独り泣きながら出歩くほど思い詰めていた椿を、どうにか助けてやりたいという熱だ。もしかしたら、椿の正義感に触発されたのかも知れない。

  「悩んでるんだろ、聞かせてくれないか? 先生が力になってやりたいんだよ」

  「せんせい……に……?」

  「そうだ。……駄目か?」

  「……ッ」

  喉を引き詰めたような音を出して、椿は俺に抱きついてきた。筋肉と脂肪の弾力。雄の匂いの中に若い清涼感を感じ、図体はでかいくせにまだまだ子供なんだと思い知らされる。

  椿は俺の肩に顔を埋めるように泣きついていた。しゃくりあげる声が耳元で聞こえる。俺はその背中をトントンと叩きながらなんと声を掛けてあげるべきかを悩んで、少し空気を明るく出来ないかと自嘲気味に笑ってみせた。

  「すまんな、汗臭いだろ」

  「……ん、ッ」

  冗談交じりに言うと、椿は体を少し震わせた。

  嫌だったのか、と思っていると、下腹部の辺りに何かが触れているのに気付いた。触れている椿の体の一部、そこは、椿の股ぐら。ポケットにスマホでも入れているのかと思ったが、それにしては位置が真ん中すぎる。

  「先生……」

  「つ、椿……?」

  「俺……変なんだ……」

  勃起してるのか? と気付いたその瞬間、椿が俺を呼んだ。涙声の椿は震えた声で俺にその硬くなった下腹部を俺の腹に擦りつけてくる。

  正直、勘弁してほしいと思い腰を引いてしまった。

  (まさか、悩みってのは……そういうことか?)

  「俺、どうしたらいいんだろ……?」

  だが、不安げに聞いてくる椿の言葉に、使命感でぐっと己の嫌悪感を抑え込んだ。

  そうだ、俺はこいつを助けてやろうと思ったんだじゃないか、と気を改める。だが、そういうことなら、教えてやれる事はあるものの、どう教えてやればいいのか分からない。

  椿は。

  椿は今――自分の性欲の処理をどうすればいいのか分からなくなっているのだろう。

  「ど、どうしたら……ってなあ……、小学校で習ったりしなかったのか?」

  「してねえよ、するわけ無いじゃん」

  「む……」

  まさか、オナニーも知らないのか。

  性教育がされていないことなんてないだろう。第一、今の時代、ネットでそういう知識に触れないことの方が難しいだろう。なんなら、小学校に入る前ですら「セックス」という単語を知っていてもおかしくはない。まあ、うんこ、ちんちんと同じような分類にはなっているだろうが。

  だが、椿は、昔のアニメのキャラクターに憧れて柔道を続けている、という無邪気なところのある生徒だ。もしかしたら本当に知らないのかもしれない。

  そう考えると、突如、夜中の道の真ん中で、生徒と抱き合っている光景を俯瞰的に捉えて、明らかに見られてはいけない光景だと気付いた。だが、このまま椿を放っておくわけにもいかない。

  「ま……まあ、こんな所でする話でもないだろ……、そうだな。俺の車に乗るか」

  「いいの……?」

  「まあ、此処でお前を置いて帰るってのも教師として駄目だろ」

  「……ん、分かった」

  俺は助手席に椿を乗せて、スマホを取り出していた。

  高校生相手で、初歩も初歩の性教育なんてする羽目になるとは思わなかった。セオリーなんて知らないし、考えたこともない。ともかく、動画で見せて、家で真似をさせればいいかとアダルト動画のサイトを開く。

  だが、ブックマークに入っているのは、女がメインで男なんてものは添え物扱いだ。ペニスがアップになっていても、女優の口や手にフォーカスされている。それを真似しろと言われても困るだろう。

  だが、男ものの動画なんて見たこともない。

  「……先生?」

  「む……ん、……いいか、そういう時はマスターベーションをすればいいんだ」

  俺は、椿のズボンがまだ盛り上がっているのを見ながら、一息に言った。

  「自慰だな、オナニーっていう方が馴染みがいいか」

  「え、っと……先生、何を……?」

  「ま、まあ、口で言っても知らないなら訳が分からんか……まあなんだ、男なら誰でもチンコは勃起はするし、チンコを扱いて射精すればスッキリするんだよ」

  いい動画がないか。と気もそぞろになりながら、何を言っているんだと気まずさに混乱しながら、俺はスマホの画面を見つめる内に、どうにもおかしな気分になってきていた。

  自分がオナニーに使っている動画達だ。

  言わば、好みの動画のサムネイルがダイジェスト式に動いていくのを見て、俺はスラックスの中で愚息が膨らんでいくのを感じていた。

  そう言えば、最近は妻ともご無沙汰で、オナニーもしておらず、性欲が溜まっている。そんな事を考えながら、俺はどんどんと射精したいというどうしようもない雄としての欲が首をもたげていく。

  扱きたい。射精したい。挿入して、マンコを掘り返して盛大にぶちまけたい。そんな欲がどんどんと俺の頭を侵食していく。そして、悪魔の囁きが聞こえた。

  ついでに、見せてやればいいじゃないかと。

  「……、じ、実物を見れば分かるだろ……」

  もしかすると、このまま椿が警察に駆け込んで行くかも知れない。椿がそんな事をするとは思えないが、それでも言い逃れが出来ない状況に、緊張で喉を震わせながらそれでも、仕事終わりの開放感と疲れも相まって俺はその悪魔の囁きにとらわれてしまっていた。

  俺は、スラックスのチャックを開けて、中からペニスを取り出した。

  「……ぁ」

  椿が小さく声を上げる。

  俺のペニスは、もうガチガチに勃起していた。モザイクもかからない生の勃起チンコ。俺も大学時代のおふざけでしか見たことはないし、そもそも見たいとも思わない。

  もしかしたら、割と貴重な瞬間なのかも知れないと思いながら、椿の視線を感じながら俺は、操縦桿を握るようにその熱い棍棒を握りしめた。

  じわりと久々の快感が氷を溶かすようにじくじくとチンコから上ってくる。

  「良いか、こうやって……扱くんだ……ぅ……っ」

  手癖のままに、俺はチンコを扱き始めた。溜まっていたせいか、我慢汁が溢れるのも早い。数回扱いただけで、亀頭が濡れきり、ぐちゅぐちゅと音を立て始める。

  気持ちいい。生徒の手前、余り声を出したくはないが、それでもひり出てしまう声は抑えられないでいた。

  「ふん……、んッ……」

  狭い車の中で、俺の我慢汁が粘着く音が響く。俺は俺はそれを耳にしながら、椿が見ているのを横目で確認した。

  視線が俺の股間に釘付けになっている。物珍しげな視線だ。確かに、自分のもの以外を見る機会なんてそうそうない。俺は生徒の視線を感じながらも、その扱く手を止めなかった。早く終わらせてしまわなければという思いがあったのだ。

  「先生……」

  「ぁ……っ、んぐ、つ……椿……ッ?」

  ふと、椿の手が伸びてきた。そして、その手がそっと俺の亀頭に触れる。ぬめりを帯びた鈴口を熊獣人の手が擦れ、声が跳ねてしまう。

  冗談かと思うが、その手はゆっくりと俺のチンコを包むように動き出し、そして、慣れた様子で上下に動かし始めた。

  「ま、待て……まて、椿……!」

  慌てて制止した俺は、初めてではなさそうな手の動きに、もしかしたら考えていたような状況じゃないのかもしれないと、椿に問いかける。

  「もしかして、男に……チンコに興味あるのか……?」

  「……ッ、お、俺……、うん……」

  数秒悩んだ後に、椿は頷いた。

  そこで俺は、とんだ勘違いをしていた事を確信した。

  別に椿は、オナニーを知らなかったわけじゃないのだ。ただ興奮する相手が男だという事に悩みを抱いていたのだと。それに気付いた瞬間、俺は恥ずかしさの余り、声を張り上げそうになっていた。

  何が「まさか、オナニーも知らないのか」だ。知らないはずがないに決まっている。椿だって健全な男子だ。そりゃあ、多少幼い顔立ちをしていても、高校生男子ならオナニーを知らない筈がない。

  バカみたいな勘違い。羞恥に顔が燃えているのではないかと思いながら、俺は何か言わなければと言葉を探し、手当たり次第に浮かんだ最初の言葉を、深く考えず口にした。

  「……み……見たいのか?」

  何を言っているんだ。俺は自分の言葉に呆れ返る。だが、俺の言葉以上に、椿の返事は呆れてしまいそうになるものだった。

  「うん、……俺、先生の……もっと見たい」

  「は……」

  一瞬笑い飛ばそうとした。

  だが、仕事の疲れもあるのだろう。単純な体の疲労もありはしたが、それ以上に多忙な教師という仕事への疲れ。そこに振って現れた『生徒を第一に考えるドラマの教師のような展開』。それに少し酔っていた俺は、自分でも止めたほうが良いと分かりながら、潤んだ目で見上げてくる椿の期待の瞳に逆らう事はできなかった。

  少し熱い椿の体温。

  普段とは違う椿の表情に、俺はちくりと胸に疼く欲が湧くのを感じていた。

  「いいか、見せるだけだぞ」

  生徒の前でズボンを脱ぎトランクスの前開きを寛げて、萎れた肉茎を晒しだす。

  俺は、普段妻と二人で住む家のリビングに椿を上げていた。そして、そこでソファに座った椿の前で、俺は一物を晒している。何をしているんだと思いながらも、もう此処まで来たら仕方がないと、自分を納得させる。

  もしかしたら勃たないかもしれないからな。そうすれば、悪いが、椿には見せられないとして忘れてもらおう。

  「……ああ、男ってのはどうしようもねえな」

  そんな風に思っていた俺は、軽く上下に動かしただけで芯を持ち始めたチンコに思わず呟いた。椿と出会った道は、車で数分もかからない場所にある。さっきまで見ていた動画はまだ記憶に新しく、興奮はまだ冷めきってはいなかった。

  ぐんぐんと鎌首をもたげていくペニスを、椿は食い入るように見つめている。

  童顔ということもあって、丸顔の椿が、潤んだ目で俺のペニスを凝視している。前かがみになった椿のジャージの胸元には、鍛えた胸の谷間が覗いていて、一瞬、椿が女のようにすら見えた。

  いや、こいつは男だ。と分かりきった事を改めて考えながらも、手を動かして肉茎を慰めながら椿を見ていると、男だと分かっていても妙な気分に陥っていくのが分かる。

  「……っ、ふ……くッ」

  蕩けた目をした椿が、俺のペニスを熱く見つめている。動画よりも目の前の新鮮な記憶が優先されるのは、当然だろう。それに、興奮状態が男から見境を無くす事も珍しくない。

  発情したネズミは、丸太にすら射精するのだ。

  「く、は……っ、ぁ……」

  ぐちゅ、ぐちゅ、と俺の手に先走りが纏わりついて、淫らな音を立てる。その音を聞きながら、椿は自分のジャージのズボンの膨らみを撫でていた。

  本当に、俺のチンコを見て興奮しているんだ。

  男に性的に見られている、という事に嫌悪感はあった。だが、椿の為、椿が願ったことだという言い訳が成立する状況において、その嫌悪感は、性的欲求に抗うほどの効力は持っていなかった。

  ここで止めて、欲を持て余すくらいなら。

  俺は、チンコを伝う快感に足を震わせながら椿に聞かせるように、わざとらしく音を激しく鳴らす。先走りと空気を茎の表面で混ぜ合わせるように扱き上げる。

  「先生の、ちんこ……、匂い……っ」

  「お前、……チンコの匂い、嗅いでんのか……?」

  ヒクヒクと椿の熊鼻が動いている。

  少し荒く息をしているそこは、紛れもなく俺の先走りを溢れさせるチンコの匂いを吸い込んでいた。俺の手から先走りが飛んで、椿のマズルの上に着地する。

  椿の口がそれを受けて、くぱ、と半開きになった。てらてらと唾液で糸をひく口が艶めかしく見えた。チンコを上下に擦る動きが止まらない。

  前かがみになっていた椿が、次第に更に前傾していくのを俺は気付いていた。ジャージの膨らみを隠そうとしているのではないことは一目瞭然だ。

  椿が男を好きなら、ペニスに興味があるのなら。俺がオナニーするマンコを見てどうしたいと思うのと同様に、椿もそうしたいと望むのだろうか。椿の鼻息が亀頭に触れる。

  俺は、チンコを扱いていない手でその頭を押し留めた。

  「だ、駄目だ、椿……っ、ぁ……くッ」

  火照っている椿の額は、しかし、俺の抵抗を少しずつ押し退けていく。

  熊鼻が、俺の亀頭に触れた。ぬちちゅ、と音を立てて、熊鼻が亀頭に先走りを馴染ませるように円を描く。僅かな鼻のひくつきと荒い息の微弱な快感が、もどかしさで感覚を更に鋭敏にさせるようだった。

  「臭い、けど……先生の、匂い……好き……っ」

  「つ、椿……、ふ……」

  椿が俺の屹立の先から根本までの空気を吸い上げていく。椿の頭を抑えていた手はもはや宛てがっているだけ――いや、むしろ椿が頭を後ろに下げないように調整すらしていたのかもしれない。

  下生えの茂みに鼻を突っ込みながら、椿は睾丸に軽くキスをする。扱く手は止めて、椿のしたいようにさせる。鼻息を吹きかけながら、舌をちろちろと出して玉袋を舐めたかと思えば、今度は根本から先端までを舌先で舐めながら、その大きな舌で先走りをこそぎ取っていく。

  濡れた布で擦り上げられているような快感に、俺は思わず今すぐに射精してしまいたかった。このままだとマズイと。早く射精して欲を発奮させないといけない。

  そんな事を考え、椿の鼻先が再び亀頭を撫で、その舌が鈴口を舐めて糸を引きながら離れた、その時を狙って俺はもう一度、屹立の根本を握りしめた。

  そのまま扱き上げて、俺の手の中にでも吐き出してしまおうと。そう思ったはずだったのだが、舌を離した椿が次に取った行動に俺の意志は激しく揺らいでしまった。

  「……椿。先生、は……見せるだけだって……」

  椿が、俺のペニスに口を開けていた。

  それは、俺のモノを含んでしまいたいという衝動に突き動かされた劣欲が透けて見えている。俺は、椿の頭をためらうように撫でる。骨と肉、滑らかな毛が指から頭を痺れさせてくるようだ。

  「ん……ふッ」

  濡れた舌が鈴口を一瞬舐める。それだけで、俺は暴発しそうだった。だが、それでは椿の思うつぼだと俺は堪える。

  口淫は刺激としては弱いが、その行為自体が強い性欲を呼び起こすのだ。そしてそれは、俺が昔妻に求め、数回だけしてもらった事のある行為。それを生徒からされるという事が俺を――教師として失格の烙印を押さざるを得ないことになることを承知の上で、情けない程正直に話してしまえば――興奮させていた。

  ゆっくりとその口が亀頭を包み込んでいく。

  吐息が肉茎を這い回るが、まだその肉は触れていない。拒むなら今だと言わんばかりの猶予に、俺はしかし動けないでいる。そのまま口に包まれてしまえば、平人ではないマズルの肉で吸われてしまえば、どれほど心地いいのか。

  そんな快楽への興味が、俺を受動的にさせた。

  「ん、ぁ……ぐく、……ッぅぁ」

  まるでイライラ棒のように、俺のチンコに触れることなく半ば程まで呑み込まれたその時、椿の口がついに閉じた。刹那、弾けるような快感が、腰を震わせる。絞った口内は予想に反して締め付けが強く、燃えるように熱かった。

  舌に焼かれて溶かされるのではないかというような中、椿の舌が俺のチンコの裏筋をぞりぞりと擦り上げれば、脊椎を直接ブラシで擦られているかのような快感が走り回るのだ。

  「すげ……ぁ、うぐ……ッ」

  その快感は、手で扱く時の比ではない。その感触をもっと深くまで味わいたくて、俺は椿の頭に置いていただけだった手をゆっくりと下げると、頭の後ろに回して口淫を促すようにする。もはや止めようもなかった。

  更に深く、椿が俺のチンコを呑み込んでいく。熱く、湿った粘液の海で、俺の雄茎は太い淫猥な肉に刺激されていく。時折、漏れ出した先走りを椿が飲み込むたび、熊のマズルが引き絞られてそれだけで達してしまいそうになる。

  「椿、動くぞ……」

  俺は、もう我慢も出来ないままゆっくりと腰を動かし始めた。ぐちゅち、ぬちゅぷ、と淫靡な音を立てて、もはや性器と化した椿の口に抽挿を繰り返す。

  椿の鼻先が俺の陰毛に埋もれる。顎の周りの短い毛に足の付根に触れてくすぐったく感じるそれすら、快感を高めるエッセンスになっているようだ。

  そのまま押しつぶさないようにしながら、腰を動かす。その度に漏れる喘ぎは苦しげだったが、それでも口淫自体が弱まることはなかった。むしろ俺の腰に合わせて口をすぼめていく動きに愛おしさすら覚える程だ。

  「くぁ……おあッ、はぁ……、ああ……」

  俺はゆっくりと腰を振りながら、椿がソファから下りて床に膝を突くのを見つめていた。前傾姿勢が辛かったのか。俺は、椿のジャージにシミを作る膨らみに、椿が男の一物に奉仕しながら興奮しているのだという事に、驚きと感心を覚えていた。

  椿のそれを咥えても、俺は瞬く間に萎えてしまうだろう。

  そんな事を考えていた俺は、ふと、さっきまでその屹立を慰めていた椿の手がそこにはない事に気付いた。腰を動かし、椿の口を犯しながら、肩から伸びた太い腕の行く先を追った俺は、思いもよらない光景を目にしていた。

  椿の手は、ジャージの前からその膨らみを通り過ぎている。

  最初は睾丸を弄っているのだと思ったが、そうではない。膝をついて浮かした腰、椿の指はその下へと潜り込み、肛門に触れているようだったのだ。

  「椿、まさか……?」

  「……ん、……っ」

  その自慰に気付かれたと悟ったのだろう。椿はペニスを咥えたまま、俺の腰に腕を回してきた。椿の口が俺のチンコを開放して、先走りと唾液が飛び散った瞬間、俺の体はぐるりと回っていた。

  迫る床。勢いこそ緩やかだったが、思いもよらないタイミングでの変則的な浮腰技に体が咄嗟に受け身を取る。だが、それは失策だった。俺は椿から手を離してしまったのだ。

  「ごめん、先生……俺、もう……ッ」

  泣き出しそうな顔で、椿は俺の腰の上に跨った。ジャージと下着を諸共に膝まで下ろして、両脇に膝をついた椿。その椿の性器は、半ば程剥け上がった亀頭の鈴口から雫を零している。まだ幼さを少し残しながらも、確かに大人の顔を見せているチンコ。もはや、それに嫌悪感を抱くというような段階は通り過ぎている。

  俺が目を見張ったのはその下。ビクビクと震える俺の肉欲。散々煽られ、愛撫され、もはや射精しなければ後にも先にも引けないとばかりに涎を垂らすその肉棒へと、椿の腰がゆっくりと下りていく。

  「つば、き……、やめ……るんだ……それはっ……!」

  「先生……ッ、ごめん、……ッ、う、ぁ……ッ」

  俺の屹立。その先端が何か柔らかくも硬いものに触れた。そう思った時、その硬さは瞬く間に和らいでいき、生まれた隙間に俺の雄茎が呑み込まれていく。

  「う、あぁ……ッ、く、ぁ……ッ」

  ずぷ、と。

  突き刺される椿のマズルから声が漏れる。その硬く閉じた目蓋と、眉間の皺が俺にも伝わるように深くなる。俺の性器を半ばまで咥え込んだだけで、椿は動きを止めていた。

  ヒグマは、苦しげに息を整えながら更にゆっくりと俺の肉を沈み込ませていく。その瞼には涙が浮かんでいる。息を吸い、体を押し下げていく椿が、薄く目を開く。

  涙を滲ませるその目は、まるで救いを求めるように俺を見つめていた。なぜか、彼がただ快楽だけを求めているのではないのだと感じた。

  そんなに切なげに俺を見つめている理由が分からない。そんなに苦しげに俺を見つめている理由が分からない。だが、こうする事で椿が報われるというのなら。

  「ん、ッ……ぁ……っ!?」

  俺は腰を上げて椿の中に、熱した鉄杭を押し付けていく。

  椿は逃げなかった。むしろ、俺をもっと奥へと誘うように、俺の腰を、椿のでかい尻と床の間でプレスするように体重を圧し掛けてくる。

  椿の体の中は驚くほどに熱を持っていた。蠢く腸壁が俺のチンポを撫でる。

  「ん、ッ……ぁあ゛ッ……うッ!」

  ぐり、と肉を挟んで何か硬いものを押した感覚。

  それと同時に、椿は体を弓なりに仰け反らせて、嬌声を発した。妻相手にもそういう事はあった。男にも挿入されて感じる点があるのか、と感心しながら、もう一度腰を浮かせてその一点を狙ってみた。

  すると、椿はもう一度体を痙攣させるように震わせて、俺の両脇に手を突いて、半ば俺に噛みつこうとしているかのような体勢に変わる。深く繋がったままのチンコが、角度が変わった椿の蜜肉に締め付けられて、今度は俺が喘ぎ声を上げさせられる側になっていた。

  「ぐ、ぅ……ッぁ、ッ」

  「ぅ……ん゛ぁ……ッ、せん、せ……ッぇ……っ」

  「す、すまん……っ、つい……」

  「ん、ん……ちが……っ」

  目の前に、椿の赤く色欲に濡れた顔がある。淫蕩に開いた口からは、舌がだらりと垂れ、その奥で喉がグギュリと大きく蠢くのがはっきりと見えた。

  この中に、先程まで俺はペニスを突き込んでいたのだ。そして、今、俺はその更に不可侵である場所を犯している。

  椿は、それを悦んでいる。

  「もっと……っ、して……。俺、先生の、ちんこ……もっと欲しい……ッ」

  「良い、んだな……?」

  「う、ん……ッ」

  コクコクと椿が頷く。

  いつもの椿と同一人物とは思えない姿だ。いや、普段から素直な生徒ではあるが、自信に満ちて明るく能動的な椿が、まるで今ばかりは親に物を教えてもらう事が嬉しくて仕方のない子供のような受け身の素直さがあるのだ。

  俺は椿が腰を浮かせて、下ろすその動きに合わせて、腰を浮かせては引いていく。俺にしがみ付くような体勢で腰を上下させる椿の姿は、もはや理性も何もなく本能のままに動いているかのようだった。

  「んぁ……っ、く、ぁあ゛ぁ……ッ、俺、ごりって……ッ、ナカ……っやばぃ……ッ」

  椿は、俺の首筋に鼻を埋めながらシャツの匂いを鼻息荒く吸い込んでいる。

  俺も我慢出来なかった。椿の腰の動きに合わせて腰を振る速度を上げていく。いつしか椿に合わせて上下させる動きから、ピストンへと変わっていく。バチュン、バチュン、とリビングに音が響く。椿の腸壁が俺を締め付けて、先走りを潤滑剤にして淫猥な水音をリズムよく響かせる。

  萎えもしない若茎と揺れる睾丸がバツバツと俺の腹を叩いている。

  

  「せんせ……ッ、おれの、胸……乳首、いじめて……ッ」

  そんな椿が、涙を溜めて俺に懇願する。

  童顔に似合わない淫猥な表情。部活では快活なその口から溢れる淫らな要求に、俺は怒りにも似た歓びを掻き立てられる。

  「……っ、胸も、感じるのか……っ?」

  「うん……ッ、ごめん、俺……ッ、お尻も、乳首も、気持ちよくなっちゃう、変態……ッに、なっちゃッ……っぁ、ぅう、……っ!」

  泣いているのか、喘いでいるのか。

  それも分からない程乱れた声で嘆く椿に、俺はそのふっくらと筋肉と脂肪で膨らんだ胸の中心を摘みあげてやった。妻はただ痛がるか、くすぐったがるだけだったが、椿は軽く抓ればビクビクと体を震わせて悦びを上げる。

  ただ映像を見るだけならば演技じゃないかと、邪推が過る反応も、腸壁が声よりも先に痙攣して俺のチンコに、この声が本心だと教えてくる。

  相手は男だ、というのに、俺はもうそんな事を気にもならなくなっていた。この雌を孕ませたい、そんな雄の本能がこのまま椿を犯せと叫んでいる。

  「大丈夫だ、そんな事で、……っ、お前をバカにしたり、っ……しない、ッ」

  「うん……っ、うん……! ぁあ゛っぅッ……、先生……俺……もぅ、……ッぅ……!」

  「イク、のか……っ? 俺も、もう限界……だッ……!」

  椿の中を抉るように腰を打ち付ける。その度に、椿は体中を痙攣させて、もはや俺を悦ばせるためではなく自分の快楽に耽る。

  やがて、限界が近づく。俺もまた、射精感がこみ上げてきた。

  「椿……ッ」

  「んぁぅう゛ぅ……ッ……、先、生……っ」

  淫らな表情を浮かべる椿が、ゆっくりと俺に近づいてくる。

  ギュウと俺の屹立を椿の尻肉が締め付ける。もはや一秒とも堪えきれないとでも言うような肉体言語に、俺は椿を受け入れた。唇に椿の熱い息が吹きかかる瞬間。俺は目を閉じ、椿とキスをしていた。

  舌で椿の口をなぞってやれば、恐る恐るといった様子で隙間が開き、俺はその隙間から椿の舌に絡ませていた。

  「……っ、ん、んん゛ッ、……ッンンんッ!!」

  ズパンッ! と、一際深く突き込んだ瞬間、俺は椿の中に熱を放っていた。ドクンドクンと脈打つ度に、熱い奔流が椿の腹の中に注がれていくのが分かる。

  それは、今まで感じた事のない程の快楽で、俺は少しでも長く椿の中に流し込むように腰を揺すっていた。その勢いと熱さを感じたのか、椿も一際体を痙攣させるのと共に俺の体にしがみついてくる。腰を押し付けてその熱を奥へ奥へと感じようとする椿は、その瞬間自らのペニスからも大量の白濁を俺の体と顔に飛び散らせていた。

  「ぁぅ……ッ、ごめ、んなさ……ぁ゛ッ!?」

  盛大に射精した椿が、俺の頬に飛んだ精液を舐め取る。そんな光景に、まだ足りないとばかりに萎えきらない俺の肉欲が再び硬さを取り戻し、俺は腰を突き上げていた。

  椿が腰を震わせ、快感に堪えるように体を強張らせる。収縮する肉壺に腰を叩きつける俺は、二度目ともなればそう長くは堪えきれない。いや、それどころか、四、五回、椿の蜜肉に擦り上げられただけで、情けなく限界を迎えてしまっていた。

  「……ッ、ぐ、ぁ……ぁあッ……ぅっ」

  俺の精液で泡立つ菊座の奥で溢れたザーメンを椿が受け止めた後。

  最後の一滴まで絞り出した俺は、そのまま俺の体にしなだれかかってくる椿の体を抱きとめ、頭を撫でていた。

  「その、なんだ……満足したか?」

  「うん……、でも、二回目、漏れちゃいそうだった……」

  「それは……危なかったな」

  俺は、もう少しで椿の小便を浴びせかけられる所だったと聴き、ぞっとしない気持ちになりかけた。だが、それも俺が勝手に二回戦を始めたせいだと思えば、むしろ申し訳無さが勝る。

  男とセックスしてしまった。それも生徒……未成年とだ。言い訳のしようがないほどのやらかしではあるが、その穏やかな返事に後悔が和らぐ。

  椿もこの事を喧伝するようなやつじゃないことは分かっている。この体験が少しでも椿が自分を肯定できるようになってくれれば、罪悪感を背負う甲斐もあるというものだ。

  熱い。

  抱きしめた椿の体は、激しい運動のせいもあってか熱を持っていた。なるほど、ならば、体の中もそれほど熱いに決まっている。そんな妙な納得を覚えながら、ふとある可能性が脳をよぎる。

  「……椿、お前……熱あるんじゃないか?」

  「ん、……分かんない。でもちょっと、寒い」

  「分かんないって……ね、熱測るぞ……!」

  そう思えば、いつもよりも子供らしい態度にも納得がいく。普段と様子が違いすぎて、悩みからくる変化だと思っていたがよくよく思い返せば、それらしい兆候は幾つもあった。

  急いで救急箱から、体温計を取り出して椿の熱を測る。

  38.1度。

  微熱を通り越して、完全に発熱している。そんな状態の生徒に無理をさせた。という我ながらズレた焦りを覚えながら、椿のスマホでご家族と連絡を取った。

  「えっと、……あ、夜分遅く申し訳ございません。私、柔道部顧問の金剛なんですが――」

  そのまま椿を家まで送り届け、夜中に起こしてしまったことを謝ると、むしろこちらが感謝されてしまった。

  途中で椿の意志を確認し、相談した結果。寝付けなくてジョギングに出た椿が帰宅途中の俺に拾われて、連れてきてもらったのだと椿と俺で説明することになったのだ。正直騙している事に感謝をされて、ただただ胸が痛くなるばかりだったが、最後に椿が「ありがとう、先生」と言ってくれたおかげで幾らか心が楽になったのは、むしろ椿に礼を言うべきだったのだろう。

  その場で「こちらこそ」なんてお礼を言えば、どういうことだと思われそうなのでぐっと堪えたが、椿が少し笑っていたので、俺は相当微妙な表情をしていたのだろうとは思う。

  そして、翌日、椿は学校を休み、翌々日は登校はしていたらしいが部活は休み、その次の日。

  久々に部活に顔を見せた椿は、悩んでいるような様子はなくなっていた。

  ただ――、椿は俺だけに聞こえるようにこっそりと。

  「俺……俺、先生の事、ちゃんと守るから……!」

  それだけを言って椿は俺に背を向けて、練習に戻っていった。最近身が入っていなかった椿だったが、ともすれば今まで以上に練習に打ち込んでいる。

  なんだか良い変化になったようで嬉しくもありながら、俺は複雑な感情を抱いてしまっていた。

  男同士で事故が起こる事でもないにせよ、生徒とセックスをしてしまった。というのもあるが、それ以上に今の椿のセリフは。

  「……プロポーズでもあるまいに」

  好かれているのは良い。だが、俺は妻帯者で、教師で、性対象は女性だ。当然、椿もその事を知っているはずだ。叶わない思いであることを知りながらも、そうやって告白めいた事を伝えてくる椿に、なんとも言えない『若さ』を感じて微笑ましくなっていた。

  それに、久々の性交の感触。男相手ではあったが、それが教師として、同じ柔道者として、気にかけていた生徒相手という事もあってか。数日たった今、あの記憶は決して嫌悪感のあるものではなくなっていた。

  願わくば、もう一度……。

  「っておいおい……、何考えてるんだ、俺は」

  思わず、教師として、そして大人としての倫理を外れた事を考えてしまった自分を叱咤しながら、俺は取り組みを行う生徒たちの指導に戻っていく。

  ただ、何となく自分も若返ったような甘酸っぱい心地は、胸が温かくなるような思いなのは、疑いようもないことだった。

  ◇◇◇

  椿のスマホが震える。

  風邪を引いて学校を休んだ椿は、その通知音で目が覚めて、画面を開く。

  「……っ」

  そこには『ご主人様』という文字が浮かび、椿は嫌な予感と共にメッセージを開いた。そこには。

  「あれ、学校サボり? じゃねえか、風邪引いたの、椿くん。冷ゲルシート、おでこに貼ったままだぜ」

  椿は、ジャージに着替えるだけ着替えて、男の家の前に来ていた。

  体は大事にするんだぞ。椿くん一人の体じゃないんだから。とニタニタと笑う男は、玄関の扉を開けたまま無造作に手を差し出してきた。

  「ジュースと菓子、買ってきてくれた?」

  「……」

  「ほいほい。ほら、お駄賃」

  椿は無言のまま、コンビニの袋を手渡した。男はその中身を見ようともせず、玄関に置くと、椿の手に無造作に千円札を握らせてきた。

  コンビニで使ったのは、五百円足らずだ。だが、それ以上にそもそも代金を払われるなんて事は期待すらしていなかったのだ。

  「やだなあ、俺が椿くんみたいな可愛い子からカツアゲでもすると思った? しねえよ、そんな金に困ってもねえし」

  「……どの口が」

  「お、いいねえ。最近椿くん張り合いなくなってきちゃってたからさ。なに、先生とエッチして男らしさが出てきちゃった?」

  「ッ、お前……!」

  椿は噛み付くように男を睨みつけた。

  メッセージで届いてたのは、コンビニへのお使い指示だけではなかった。椿と先生が車に乗り込み、先生の勃起を椿に見せている姿。そして、先生の家に入っていく二人を捉えた画像。

  誰がどう見ても、ただ家に招き入れただけだとは思わない画像だ。

  「夜中に、椿くんのスマホが移動し始めたからさあ。心配して見に行って見ればこれが、凄い所に出くわしちゃってさ」

  男は悪びれもせず、GPSの共有機能をオンにしていたと口にする。

  「いやあ、俺はなぁ。平人のオッサンには興味ねえけど、いい写真が手に入っちゃったなあ……。お使いご苦労、帰っていいぜ」

  椿はこのまま男の家に上げられるものだと身構えたが、しかし、男はにやにやと椿に別れを告げる。

  ついでのように「まあ、性奴隷の椿くんは、俺とセックスがしたかったのかも知れないけどさ」と男は椿の股間を無造作に掴んできた。

  椿の股間は、男の匂いに反応して半勃ち状態になっていた。それを握られ、硬さがどんどんと増していくのを、男は玩具を面白がる子供のようにケラケラと愉しんでいる。

  だが、椿の若茎が最大に立ち上がるよりも先に、男の手が離れていく。

  「じゃあな、椿くん。風邪は寝て治すもんだぜ」

  そして、椿の目の前で、扉が閉められる。その寸前。

  「あ、先生にもよろしく言っておいてくれや。俺の性奴隷がお世話になりましたってな」

  厭らしい笑い声に椿は叩きつけるように扉を殴り、家に向かって走り出していた。

  あの男の部屋の匂いと、先生の部屋の匂いを比べてしまう。

  あの男の態度と、先生の態度を比べてしまう。

  あの男のセックスと、先生のセックスを比べてしまう。

  「先生……先生……ッ」

  家に帰り、自室に駆け込んだ椿は、男の匂いが付着してしまったような気がするジャージとボクサーパンツを脱ぎ捨てて、今にもはち切れんばかりに怒張したペニスを擦り上げた。

  男の部屋に向かう。それだけで反応してしまうこの愚かしい欲肉を躾けるように、激しく扱きあげる。思い返すのは男との行為じゃない。先生との交尾だ。

  「……ッ、ぁ、いく……イク……ッぅ!」

  先生のペニスに貫かれる感触を思い出しながら尻を疼かせる。先生の指を思い出しながら胸をこねる。先生の温もりを思い出しながら、頭を撫でられた感触を思い出しながら、椿はドビュゥッ!! と自室のフローリングへと白濁液を撒き散らした。

  「はあ、はあ……」

  床に飛び散った白濁。手に掛かった子種を見つめながら、椿はまるで少し救われたような心地になっていた。

  男との記憶で絶頂に至った時のような後悔はなかった。

  先生の優しい抱擁で果てた椿は、胸に温かな思いが残ったままだった。先生が、椿を救ってくれたのだと、その温かい思いが愛おしくなる。

  だからこそ、手に残る白濁を先生のそれだと考えながら舐め取った椿は、決意を燃やす目をしていた。

  先生を巻き込んでしまったのは、椿のせいだ。

  男の言いなりになったふりをして、どうにかして男の持つデータを消去させる。あの男は、反骨心を抱いていたほうが喜ぶというのは、なんとなく分かった。ならば、無理に媚びへつらう必要もない。

  「先生は、俺が守るんだ……!」

  先生には言えない。先生に気付いてもらいたいとも思わない。きっと先生は、椿を守ろうとしてしまうから。

  風邪を引いて、情緒がぐちゃぐちゃのまま半ば逆強姦した椿を受け止めてくれた先生には、知られたくない。

  その感情をなんというのか、椿は知らないまま――いや、気づけば、己の性的な嗜好が捻じ曲げられている事にも気付いてしまうからこそ、気づかない振りをしたまま。

  そんな暗い決意を胸に、椿はまずは体調を万全にすることを考え、パジャマに着替えて床に飛び散った精液をティッシュで拭うのだった。

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