「ひぎゃあああああああ!!!」
絶叫。目の前には、見覚えのある自室の天井。窓にかかっているカーテンの隙間から漏れる日差しは、僕が上に伸ばした手の、幾分薄い色素を明るく照らす。
「……鱗じゃない。……緑色じゃない。あれは……夢?」
はぁ~と長い溜息をつく。夢だ、そうに決まっている。僕があんな蜥蜴……怪人になって世界を征服するために戦うなんて。
口の中がカラカラに乾いていた。僕一人だけの家の中、キッチンで冷たい水道水を、自分の意識を夢から覚まさせるために、一気にあおった。
「ニャ~、今日は寝坊かニャ~、アキ。どうしたニャ~。」
間の抜けた声、マスコットのミークがピョンピョンと跳ねてくる。僕が悪夢の中で、君に見捨てられたからだよ、ミーク君。と思わず言ってしまいそうになるのを抑え、
「なんでもないよ。」
とだけ答えて、僕は顔を洗うために洗面所へ。
……今、この一軒家には僕一人しか住んでいない。なぜなら両親は僕が高校3年に昇級したときに、二人で海外出張に行ってしまったからだ。
『アキも、もう18歳。大人なんだから大丈夫よね?』
『ちゃんと勉強もするんだぞ。父さんたちも1年間むこうで頑張るから。それじゃあ、行ってくる。』
なぁんて、受験生を放っておいて行ってしまったのだ、両親は。だから、今はこんな風に一人暮らしをしている。
ジャブジャブと水音を立て、顔を洗うと意識がしっかりしてきた。そう、あれは夢だ。最近ずっと戦い漬けで、休みがなかったからに違いない。とはいえ今日は平日、学校に行かないと。0限はもう遅刻だから、1限からでいいや、と僕はのんびりと朝食の準備を始めた。
ベーコンエッグにチーズトースト。あとはカット野菜を適当に皿に載せてドレッシングをかけて。飲み物は牛乳を。ああ、なんて優雅な朝食、と自画自賛しながら僕は食べ進めた。
いつもの習慣でテレビをつける。朝、父さんが起きた時、ニュースが流れてないとしっくりこない、なんていうから、僕はいつも朝起きるとテレビの電源を入れるのだ。
「朝のニュースです。昨日、ショッピングモールを着ぐるみを着たテロリストが占拠した事件ですが……。」
テレビの映像に映し出されるのは、悪の組織ダークビーストの幹部、トカゲ怪人リゼルグと戦闘員の獣兵たち。そう、一般の人間は彼らを正確に認識することができない。彼らには、奴らが着ぐるみを着たテロリストに見えているのだ。
「原因は不明ですが、犯人たちは消失。おそらく逃亡したものと思われます。では次のニュース……。」
昨日、彼らをショッピングモールで撃退したところまではどうやら、現実だったみたいだ。つまり、あれから先は全部夢。きっとそう。リゼルグの僕を優しく見る目が、彼が愛の言葉を紡ぐのが、脳裏に浮かび、思わず首を横に振った。
あんなの、現実であってたまるものか。だって僕が人を……食べるなんて。嫌な想像で思わずさっきまで食べていたものがこみ上げそうになる。
「大丈夫、あれは夢……。大丈夫……。大丈夫……。」
言い聞かせるように言葉を口に出す。その様子をミークはただ、黙って見守っていた。
[newpage]
「それでさぁ。」「ははっ。」
クラスメートたちの他愛のない話が聞こえる。どうやら学校に来たはいいが、居眠りしてそのまま眠ってしまっていたようだ。時計を見ると12時過ぎ、お昼休みだ。
ふと手元を見ると、机の上にはメモ書きが一枚。あとで生徒指導室に来るように、と書かれた小さな紙きれ。これで何度目だったっけ、ああ憂鬱だ。そう思いつつ教室を出て生徒指導室を目指す。
ジリリリリリリ!
突然の非常ベル。火事を知らせるのが主な用途、のはずだ。パニックを起こすか、いたずらか何かだとのんびりしている、対応が二極化している周囲の生徒たち。
「ガッハッハッハ! アキィッ! いるんだろッ! でてきやがれぇッ!」
……げ。またダークビーストだ。この声は、奴らの幹部、虎男のティーガ。校庭の方の窓を覗くと、虎男と周囲の戦闘員、獣兵たちがグラウンドで生徒と教師を片っ端から捕まえてはズタ袋に詰めて運んでいこうとしている。きっと非常ベルは、それを見た誰かが鳴らしたのだろう。
しょうがない。僕はひとまず男子トイレの個室に駆け込み変身のポーズをとった。身を包むフリフリのコスチューム、正直言って誰かに見られたら最悪だ。とはいえ認識阻害のおかげで、変身中の僕は、直で見てもピントが外れたようにぼやけて見えるらしい、それだけが幸い。
グラウンドに走っていくと、ズタ袋に袋詰めにされ並べられている人達と、胸当てとパンツ姿の虎男、そして獣兵たちが待ち構えていた。
「待ちくたびれたぜぇ! アキッ! 今日こそお前を喰ってやるからなぁッ! やるぜ!お前ら!」
筋骨隆々。リゼルグに勝るとも劣らない太くて逞しい、それでいてフサフサな両腕を広げ、彼はファイティングポーズを取る。彼の裂帛の気合と共に、獣兵が一般人を捕まえる手を止め、こちらにとびかかってくる。
構えを取り、足に力を込める。片足を軸に、思いっきり回転しての回し蹴り。足が風を切る音と共に激しい打撃音。屈強な肉体を持っている戦闘員の三人が、弧を描いて吹き飛ぶ。これだけの攻撃ができるのは肉体強化の魔法のおかげだ。
「次!」
自己を奮い立たせるために、声を上げて応戦する。次に来たのは両サイドからの二体。どちらか一方を相手すれば、自然ともう一人には背を向けてしまう。さすがに背中に目はついていない。
僕はさっと屈んで地面に魔力を流す。相手の足元の砂が吹き上がり、その目をかく乱する。目つぶしの後、とっさに後ろに飛ぶと、その二体はぶつかり合い、互いに吹き飛んでいった。
気が付くと次は四方八方からの同時攻撃。次々にとびかかってくるケダモノたち。しつこいなぁ、と思いつつ先ほどよりも大量の魔力を地面に流していく。
細長い草が、突然奴らの足元から伸び、その足に絡まっていった。とびかかった獣兵が、草によって思いっきり地面にたたきつけられ、地面に伸びる。
その様子を見て、ティーガは嬉しそうに笑った。不敵な笑み。
「やっぱり、こいつらじゃあ、相手にならねえか! アキッ! お前をッ! 今日こそ俺のモノにしてやるぜぇッ!」
猛獣の声が響く。大きな音をその喉から轟かせ、巨体がこちらに迫る。速い、とっさに躱そうとしたけれど、爪が掠ったマントの端切れが、草刈り機に触れた草のように千切れ飛んだ。
「そっちがその気なら!」
今朝見た夢のせいか、本能的に氷の魔法を使いたくない。あれで負けて、夢の中の僕はひどい目にあったのだ。だから今回の選択は……。
土壁が周囲の地面からせり上がる。二重三重に、僕の身体を隠すように。しかしその分厚い土壁が、まるでケーキを切り分けるかのように爪で切り裂かれた。ただ、そこにはもう、僕はいない。
「あ!? どこに行きやがった!?」
すでに距離を取っていた僕は、大気中の水分を増加させ空気中に滞留させている。そこに流れるのは強力な電気。激しく発光したかと思うと一瞬で黒焦げの塊が出来上がる。焦げ臭いにおいが周囲に立ち込めた。
「やった……かな……?」
「お……おぼえてやがれぇッ!」
空中に開かれる大きな穴。焦げ焦げの真っ黒になった毛皮のまま彼は異空間に消えた。そこに潜り込めば、奴らの本拠地たどり着けるだろうか。いや、危険性を考えると足がすくむ。
もう少し、情報が出そろってからにしよう。そう思って僕は改めてトイレの個室に籠り、変身を解除した。これに懲りて、もう来ないといいけど……。
[newpage]
結局、あの後、一週間ほどしてわかったことだが、生徒や教師が何人かは連れ去られてしまったようだ。きっとひどい目に遭っているのだろう。おそらく夢の中の僕のように……。
助けたいのはやまやまだけれど、どこに捕まっているのかはわからない。だから、僕にできることはほとんどないだろう。これ以上被害が出ないように頑張るしかない。とぼとぼと学校からの帰り道、夜の街中を歩く。
街頭テレビが高校にテロリスト、生徒と教師が誘拐されたというニュースを流しているのが耳に入り、僕の顔が曇る。
「ど~したニャ? アキ、顔が暗いニャ~。 ……大丈夫! アキならきっと奴らにも負けないニャ! みんなを助けられるニャ~!」
「……ミーク。」
傷ついた心に励ましが嬉しい。とはいえ、彼の励ましは気休めのようなもの。解決策、助け出す手段、奴らの居場所。どれも未だにわからないのだから。
「誰か~っ!!!! 助けて~ッ!!!」
突如響き渡る悲鳴。人通りの無い裏路地から聞こえた。即座に変身して、声の元に向かう。ビルの裏、裏通り。その少し広まった場所。そこに縛られたまま転がって居たのは、捕まったと思っていた生徒たち。そして。
「ティーガッ……!」
「待ってたぜぇ! アキッ! リベンジマッチだぁッ!」
そんなに時間が経ってないっていうのに、すっかり元通りになっている虎柄の毛皮。牙を剥き、鋭い爪を地面に突き刺し、虎が吠える。しかし、彼らを人質に取られては、僕は戦えない……。
そんな、こちらの表情を見て、虎男が口を開いた。
「安心しな、人質にはとらねぇ。俺の力で、俺の力だけで、お前を屈服させてやらあッ!」
叫びながらティーガが僕にとびかかる。黄色と黒、警戒色のまるで砲弾。とっさに横に飛びのき振り下ろされた爪を躱す。
人質にとる気がない。奴の言葉を信じられるわけではないが、そう言うのなら、と僕は魔法を詠唱する。前回倒したのと同じ方法では、ティーガを倒せないかもしれない。だから、僕にできる最大限の攻撃を。
大気中の電子、それを移動させることで強力な雷を作り出す。ティーガに向けた手の平から数多の雷光が、まるでレーザーのように降り注ぐ。一撃一撃が、前回彼を黒焦げにした電撃と同等、いやそれ以上のエネルギー。負けるはずない、そう思っていた。
「効かねぇッ! そいつはもう学習済みだッ!」
虎の気合と咆哮。ビリビリと僕まで届く衝撃波。一瞬で僕が放った電撃が消し飛んだ。きっとその時の僕の表情は、凍り付いたかのように固まっていただろう。
「あの時もその前も、不意を打たれてやられただけだッ!」
彼の爪が思いっきり僕に振り下ろされる。肩のあたりが裂かれ、血が噴き出す。食いしばって痛みを耐えるが、その一瞬の隙が命取り。虎の大きな手が僕の首を掴む。ガサガサした肉球の感触を首に感じて、そのまま力が込められる。息が……できない。
「眠ってな……アキ。」
その言葉を最後に、僕の意識は遠のいていった。
[newpage]
目を覚ますと、夢の中で何度も見た部屋だった。真っ白な壁と天井。僕の手足には金属製の枷、それでどこか冷たい壁に貼り付けにされている。
「おっ、ようやくお目覚めかぁ?」
部屋の扉から入ってきたのはティーガ、嬉しそうに舌なめずりをしてこちらにノッシノッシと歩いてくる。ガシャガシャと手足を動かしてみるけれど、枷が金属音を鳴らすだけ。
突然、んべっと彼が舌を出す。その上にあったのは黄色と黒の色をしたカプセル。それを無理やり口移しで飲まされた。必死で抵抗したけれど、無理にやすりのような舌をねじ込まれ、僕の喉がコクンと小さく鳴った。
「何を……飲ませたの……?」
「ゲッヘッヘ……それはなぁ、お前を俺たちの仲間にするための薬だぜぇ……。」
やっぱりか。そんな風に思ってしまうのは、前に見た夢のせいだろうか。
僕の意志に関係なく、体が燃えるように熱くなる。でも汗は出ない。全身の筋肉が少し膨張し服が千切れ飛ぶ。全身から噴き出すように生えてくる毛は黄色と白黒。まるで、ティーガとおそろいと言わんかのような柄の毛皮へと全身が変貌していく。全身がくすぐったくて身をよじるけれど、両手足にはめられた鉄枷はびくともしなかった。
手のひら、足裏に現れるのは肉球、そして指先に生えた出し入れ可能な爪。そんな動き、知らないのに、本能がその爪の使い方を教えてくれる。自分の意志に応じて爪が出入りする。頭部の骨格が変わり、マズルが軽く伸び、耳の位置が頭頂部に移動する。歯がすべて抜け落ち、生えてくるのは鋭い猛獣の牙。尾てい骨のあたりの違和感が大きくなっていき、ゆらりと尻尾が自分の意志に応じて動く感覚があった。おびえている自分の心を写しているかのように、尻尾がくるんとお腹の方に巻いた。
実験室の端に立てかけられている姿見を、ティーガがスライドさせ持ってくる。そこに映るのは、ティーガに比べると幾分華奢だが、それでも筋肉の塊と言わんばかりの二足歩行の虎の怪物。それに変貌した僕の姿が見えた。
「あ……ああ……。」
恐怖。自分が自分でなくなってしまったのが恐ろしい。アイデンティティーの喪失。きっと今の自分の姿を見ても、両親でさえ僕だと気づくことはないだろう。
「随分と俺好みの姿になってくれたじゃねぇか。うれしいねぇ。」
ティーガによって枷を外される。……今なら逃げられるかも。そう思って、彼に抵抗しようと思って腕を振り上げた瞬間。ふと鼻腔をくすぐる、不思議な甘い香り。胸がドキドキして、一瞬で力が抜けていく。
「お? どうした? 抵抗しないのか? 俺のフェロモンが効くようになるほど変化するとはねぇ……。」
嬉しそうな声。よだれを啜る音。抵抗しなくては。あの夢のようになるのは嫌だ……。
「まぁ、これからもっと俺好みにしてやるからな。覚悟しろよ……おれのかわいい子猫ちゃん♡」
[newpage]
力が入らないのをいいことに、僕は彼に太いロープのような物で縛られて、床の上に転がされていた。亀甲縛りという奴だろうか、胸やら股間やらくびれが強調されているように食い込みを感じる。腕も足も縛られて身動きは取れない。
頭部にはVRヘッドセットのようなものをかぶせられ、目の前は真っ暗だ。これからどんなことをされるのか、考えるだけでも恐ろしい。
「それじゃあ、まずは俺の事はご主人様って呼べ、いいな?」
「……?」
突然何を言っているのか、理解できない。そう思って黙っていると、突然パシッと叩かれた。尾てい骨のあたり、尻尾の付け根。軽い痛み、そしてなぜか……気持ちいい?
「あぅっ……♡」
自然と声が漏れてしまう。どこか上ずった、媚びるような声。僕の口からそんな声が出るなんて……。
「ケツ叩かれて感じてんのかぁ? アキ?」
「ち、ちがっ……!」
必死に否定するけれど、僕の言葉を遮るように再び叩かれる。痛い。気持ちいい。どうして。血液が局部へとたまっていく。
「嘘つくなよ、そんなに気持ちよさそうにチンポぴくぴくさせて。ほら、ちゃあんと呼べたら叩くのをやめてやる。ほら、言ってみな?」
「誰が言うか……!」
強がっては見るものの、彼に何度も叩かれていくうちに、頭が茹るような快感が全身を襲う。痛い。気持ちいい。痛い。気持ちいい。痛みと快感が混ざり合い、頭が壊れちゃいそう。
「やめっ……♡んぅっ……♡おねがっ……♡」
「ほら、やめてほしければ言えよ。口にしたら楽になれるぜぇ?」
じんわりと体内でうごめく快感が、解放されるのを待っている。それが辛い、苦しい、楽になりたい。言うだけなら……と心の中に浮かぶ。
「ご……ご主人様……♡」
言ってしまった。でも、心までは許していない……はずだ。下卑た笑い声をあげ、虎が僕に覆いかぶさった。見えないけれど背中に縄以外の感触。少し硬い毛質の毛皮の感触が加わった。
「それじゃあ次はぁ……下の穴だな。俺の形をしっかりと覚えて、俺を気持ち良くできるように躾けねぇとなぁ?」
「や、やめてくれるって……。」
「そりゃあ、お前、ケツ叩くのをやめてやっただろ? これからはお前の身体が俺のチンポで、ちゃんと気持ちよくなれるようにしてやるってんだ。うれしいだろ?」
絶望した。そう、結局、言っても言わなくても、こうするつもりだったのだろう。下半身に熱くて硬いものが当たっている感触があった。
「薬のおかげか、もう下の穴もぐちょぐちょだぜ、お前。さっすが、俺の雌猫……。我慢させるのもかわいそうだからな、さっそく……いただきまぁす……へへッ。」
巨大化する違和感。メリメリと音を立て、中を擦る棘の存在。何度も何度も行われる抽送は痛みと快感を引き起こす。そして、カチリと後ろからスイッチのような音が聞こえたかと思うと、ヘッドセットが動き出した。頭の中にあふれ出す情報の洪水。消える意識。消えていく記憶。失われていく自分という存在。快感と合わさって頭の中がもう真っ白。
「そうだなぁ、お前の名前は今日から……ティアにしようか?なぁ……?」
その日、僕は死んで生まれ変わった。僕でない、ボクとして。
[newpage]
「気分はどうだい? 俺のティアちゃ~ん♡」
ボクからいったんペニスを引き抜いて、離れた彼が言った。
「……とても、いい気分……。こんな気分初めて……♡」
少し体に力を入れるだけで、ブチブチと音を立てて拘束が千切れ飛ぶ。こんなに力があるなんて、今までとは違う身体だと思い知らされる。でもそれが心地いい。圧倒的な力。思わず口が裂ける。
「それじゃあ、改めて、ティアちゃん♡ ご主人様にご奉仕、してもらおうか?」
ご主人様、ティーガの声がする。言う事を聞かないと、って体が反応するけれど、頭の中の誰かが何か違うって叫んでる。うるさいなぁ、黙ってよ。頭の中で吠えると、頭の中の誰かさんの声は鳴りを潜めた。
今、ご主人様は地べたに座って、こちらを誘うような視線をボクに向けている。その股座には、ボクの大好きなペニスが屹立している。しゃなりしゃなりと体を近づけ、ソレにボクはゆっくりと腰を落とした。
ぬるりと、簡単に彼の剛直を、あっさりと咥えこむ僕の下の穴。密着する体。気持ちよくて体が震える。ボクの目の前で、ご主人様、ティーガが笑みを浮かべた。
ご主人様を気持ちよくしてあげないと。そう思って思いっきり腰を動かす。ボクの身体の中で、ご主人様が暴れると、嬉しそうな唸り声が聞こえてくる。快感で震える体で、必死に身体でご奉仕すると、頭の中に幸福感が高まっていく。
頭の中が幸せでいっぱい。ご主人様に対する愛情でいっぱい。そして体の奥底から湧き出る気持ちよさでもいっぱい。舌を出し、快感にあふれた、涙と、よだれまみれの顔は、きっと見られたものではないのだろうけれど、それをご主人様に見られるのも、また、しあわせ。
「ククッ……、もうすっかり淫乱になっちまってうれしいぜぇ♡ じゃあ最後の仕上げに、自己紹介してもらおうかぁ!」
ご主人様の命令。自分の事を言えって言ってる。先ほどまでは僕任せで動かなかったご主人様が、僕を思いっきり押し倒し、激しいストロークで腰を振る。快感で茹る頭でちゃんと言えるだろうか。僕は、ボクは。
「ボクはっ……♡ にゃっ♡ ご主人様にっ……♡ んうぅ♡ 改造してっ……♡ もらってっ……♡」
荒い息をしながら、ご主人様が喜びそうな、頭の中に浮かぶ言葉を紡ぐ。ボクの媚びた声、甘い、猫のような鳴き声。
「虎の怪人にっ……♡ んにゃっ♡ してもらったっ……♡ 元魔法の戦士ですぅっ……♡」
「ほらっ、お前はなんだ? 言ってみろッ!」
ご主人様が叫んでる。ボクの名前。ボクの……。
「ボクはぁっ……♡ ティーガさまのっ♡ 雌奴隷っ♡ 虎怪人のっ♡ ティアですぅっ……♡」
声高に叫ぶその言葉で、ボクのアイデンティティーが固まる。ボクは虎怪人のティア。ご主人様の奴隷。ご主人様の所有物。もう頭の中の誰かの声はまったく聞こえない。それが心地いい。
「よく言った! それじゃあ褒美だ、受け取りなッ! ウガアアアアアアッ!」
大きな体の虎が吠えた。その瞬間、彼のペニスが大きく膨らみ、その棘が中を擦る。大量の白濁が中にあふれ、ボクも彼に呼応するように吠えて絶頂した。二頭の虎の雄たけびが部屋に満ちる。それは新しい怪人の誕生を祝福しているかのようだった。
[newpage]
「魔法の戦士ってのも、骨が無いやつばっかだねぇ、なぁ、ティアちゃん。」
街の中、その裏路地。ボディアーマーに身を包んだ大柄な虎怪人の手には、一本の綱。いわゆるリード、犬の散歩に使うようなやつ。その先には首輪をした、彼と比べると幾分小柄なビキニアーマーのような衣装の虎の怪人。それがボク、虎怪人のティア。ペロリペロリと手に付いた血をなめとると、ほんのりと甘くておいしい。
「はい! ご主人様! ボクでも簡単に殺せました!」
褒めて褒めてと、胸を張って答える。そうするとご主人様は愛おしそうな眼をして頭をなでてくれる。それが、ボクはとても大好き。頭の中がポカポカして、体が火照ってきてしまう。
ボクたちの足元には、首の無い死体がたくさん。フリフリのコスチュームに身を包んだ魔法の戦士達。ご主人様は一切手出しをしていないからちょっと退屈そう。彼らを倒すのは本当にカンタンだった。
ちょっと本気を出すだけで、素早く移動できるこの体。彼らの動体視力じゃ全然追いつけなかったみたい。だから一撃で頭を吹き飛ばしてあげた。ボクがちょっと力をこめるだけで消し飛ぶ脆弱な身体。一人死んだら、そこからあっという間に総崩れ。怯えて背中を見せたら襲われちゃうってこともわからなかったみたい。
だから、ボクは、一人ずつ、一人ずつ命を刈り取ってあげた。狩猟本能が満たされたからか、胸がドキドキしちゃう。耳に残る彼らの悲鳴は、まるでオーケストラのように心地よかった。
ただあの風船みたいなヤツだけは逃げられちゃった。アイツら魔法戦士たちで遊んでいる内にいつの間にか消えてて、結局見つからず仕舞い。
ボクたち以外動くものが居なくなった裏路地で、ボクはゴロゴロと喉を鳴らしてご主人様の動きを待つ。ボクはティーガの奴隷、だから次の命令が欲しくて彼の方に視線を向けた。
「よし、じゃあ基地に帰ったらたっぷり可愛がってやる。 なぁ俺のティア……。」
こう呼ばれているときは、ちゃんとご主人様の名前を呼ばないといけない。何回も間違えて怒られているから気を付けないと。
「うん、ティーガ♡ ボクのこと、たくさんかわいがってね……♡ これからも、ずっと……永遠に♡」
その後、ティーガとティアという二人の虎怪人によって、魔法の戦士たちは全滅し、この世界はダークビーストの手に落ちてしまったのだった。
第三話 に 続く。