「慟哭」
マリは、膝を抱えうずくまっていた。
右に視線を移すと、先程狂わんばかりに叫んでいた人狼がグッタリした様子で壁にもたれかかっていた。
村人であろう女性の断末魔が聞こえなくなってから数時間は経っただろうか。壁や床に飛び散った血は黒く固まり、彼の頭の傷もいくらか再生していた。
自分もいずれ喰われるのだろうか?
極限状態のなか、マリはぼんやりとそんなことを考えていた。
以前は首の肉だけで済んだが、今回は形も残らないほど喰いつくされるのだろう。
そうなったら、もう二度と生き返ることは叶わない。
もっとも、人間から魔物になった者が死んで再び生き返ったなどという話自体聞いたことないのだが。
「私は、何のために生き返ったのだろうな…」
マリはポツリとつぶやいた。
何不自由ない生活から一変、ウールヴヘジンに魔物を狩る猟犬として使われ、人間からは卑しいモノと蔑まれ、揚句仲間だと思っていた者に唯一の大切な家族を奪われた。
その後、復讐のみにすがり生きてきたが、その結果がこうして囚われ、あの名も顔も知らぬ少女と同じように惨たらしく凝らされるのか。
「私は何なんだ?」
答えのない問いが口から漏れ出た。それを追いかけるように喉から嗚咽が込み上げてきた。