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【26】得られぬ解放。【R18】

  小部屋から出て、とりあえずはと自室に備え付け慣れた洗面所へ向かう。

  便器に座り、臨戦態勢の分身に少し苦労しながら用を足した。

  このまま落ち着いてくれたら良かったのだが、一向にその気配がない。

  『仕方ない。やはり抜くしかないか・・』

  手を洗った後、服を着たまま再度便器に座った。

  一度収めたモノを服と下着を寛げて取り出す。

  解ってはいた事だが、分身は自分でもどうかと思うほどに硬いままだ。

  『・・一度で済むだろうか?』

  ガチガチの分身に不安を覚えながら、そっと手の平を押し当てる様にして握った。

  水に触れた事で冷やされた手が燃えるような熱を感じると同時に、ヒヤッとした感覚が分身を通して背筋を駆け上がる。

  握った手を、ゆるゆると動かす。

  そう時を置かずして、先端から雫が溢れて来た。

  それを指に絡め、今までしてきた通りに自身を慰める。

  ぬるりとした体液に助けられ、刺激は快感を引き出し更に雫を追加した。

  自然と息が上がり、ぞくぞくとした感覚が腰から背骨をなぞるようにして上がってくる・・

  そろそろ出る。そう感じた瞬間、脳裏にアヤの声が響いた。

  『まだダ~メ。我慢だよ?』

  ぴたりと、上下していた手が止まる。

  ・・いや、何故止めるのだ。さっさと出して、アヤの元に戻らねば・・

  鈍い思考のまま、擦るのを再開する。

  一度落ち着きかけた昂りを、また徐々に上げていく。

  分身を擦る速度が上がり、個室ににゅちにゅちとした粘着音と、自身の荒い息づかいが満ちる。

  限界を超えそうな感覚を捉えて、胸元からハンカチを取り出した。

  出る。

  そう思った瞬間を狙い、ハンカチを先端に被せた。が・・

  「な、何故・・」

  出ない。

  出したいのに、出ない・・

  手の中で分身は跳ねて震えるのに、肝心の精は放たれない。

  また、快感も堰き止められたように唐突に途切れ、中途半端も甚だしい。

  すっきりはしない。しないが・・それでも、治まりさえすれば問題は解決だ。

  だというのに、分身はたらたらと粘液を垂らし続け未だ天井を指すように起立している。

  偶々。偶々出なかった。上手く行かなかっただけだ。

  そう思う事にして、また分身を握り自慰を再開する・・

  だが、やはり吐精は叶わない。

  時折脳裏にアヤの声が響いて『まだダメ』と囁くのだ。

  それを無視して刺激を続けても、昂りの頂点に辿り着いた途端、快感はするりと逃げていく。

  『何故、出ない!』

  洗面所に入って既に30分は経っただろう。

  その間、何度か絶頂に手が届くも射精は出来ず仕舞い。

  無論、快感も得られていない。

  いきり立つ分身は虚しく、透明な雫を零すだけ・・

  ギリギリの所で解放が得られぬ辛さに、頭がおかしくなりそうだ。

  それでも、のぼせた思考で何とか解決を模索する。

  「兎に角、解放を・・この状況から、脱する方法を・・」

  荒い呼吸の合間にそう独り言ちた所で、またアヤの幻聴が聞こえた。

  『いい感じだねぇ・・でも、まだ。だよ?』

  「くっ!」

  何処までこの苦痛に耐えれば良いというのか。

  耐え抜けば、解放は得られるのか?

  それは何時?

  くすくすと笑うアヤの姿が脳裏に浮かぶ。

  ・・そうだ。

  救いはある。彼女ならば・・

  彼女から「良し」と許しが得られれば、この苦痛からきっと解放される。

  ふらりと立ち上がり、剛直を無理やり服に収めて桶に張られた水で手を洗った。

  ハンカチは自分の体液で使い物にならない。

  仕方なく、水操魔法で水気を払い洗面所を後にした。

  〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇

  青年が席を外して、そろそろ40分が経とうという頃。

  戻った青年にすぐ気づけるようにと、鏡台の前でタンブラー片手にスマホを見ながら待っていた頼子は『流石に遅くね?』と心配を募らせていた。

  具合が悪化したのかな?

  誰か、ちゃんと見てくれる人居る、よね?

  まさか倒れて動けないとか・・無い、よね?

  だんだんと不安が増して行く。

  スマホからチラチラと顔を上げる頻度が上がり始めた所で、ふらりと青年が戻って来た。

  「あ!お帰りアド君!心配したよ?!」

  まだ距離のある青年にそう声を掛けた所で、頼子は異変に気付いた。

  「・・アド君?大丈夫?」

  問い掛けを無視する形で、青年は無言のままドサリと椅子に座る。

  俯き、その顔色は良く見えない。

  だが息は荒いし、只ならぬ様子なのは理解できた。

  「ちょ。本当に大丈夫?今お水を—」

  「アヤ」

  椅子から立ち上がりかけた頼子を、青年が呼び止める。

  つられて、視線を青年へと戻した。

  「何?どした?」

  「・・助けて、くれ」

  「え?」

  ぽつりと囁かれた言葉に疑問を抱いた所で、青年がゆるり顔を上げた。

  その表情を目にした瞬間、ドキリと心臓が跳ねる。

  赤く、火照った肌。

  苦しそうに寄せられた眉根。

  艶やかな唇は荒い呼吸に戦慄いている。

  それより何より、今にも涙が零れそうなくらいに潤んだ瞳は、狂おしい程の情欲に濡れていた。

  明らかに発情した様子の青年に、頼子は言葉を無くす。

  『え?何で?!』

  アルコールが入っているものの、どうにか冷静になろうと頭を働かす。

  こうなる要素が何処にあった?

  自分が用意した食事の所為か?それとも酒?

  こっちの食品が青年の身体に何か、変な影響を与えたのだろうか?

  いや、もしかしたら離れた後で何か盛られたとか・・

  思考は取り留めなく巡るが、これと言った答えは一向に出てこない。

  動揺からぐるぐると思考の海を泳ぐ頼子に、青年は再度請うた。

  「アヤ、助けて・・」

  「っ!?」

  息を詰まらせた頼子の目の前で、青年は鏡に縋りつくようにして身を乗り出す。

  「出したいのに・・出ないんだ・・」

  「・・・」

  何が?とは聞かない。

  雰囲気から察して、ただ青年の言葉に耳を傾ける。

  「自分で、したけど・・どうしても・・だから」

  握った両手の拳を開いて、ぺたりと鏡に手の平が添えられた。

  その真ん中で、こつりと鏡に額が当たる。

  助けて欲しい。

  言葉ではなく、伏せられた睫毛の下から零れた涙が、そう訴えていた。

  ぐぅ。と、頼子の喉奥で音が鳴る。

  つい先日、こういったやましい事は控えて行こうと決意したばかりだというのに・・

  どうする?・・やっちゃう?

  いや、やっちゃうって何だよ。そんな考えだからダメなんだよ。

  でもなぁ・・アド君、凄い辛そうだし・・

  そうだ。

  「えっと・・この前のオ〇ホ・・性具、貸してあげようか?」

  「・・・アヤがしてくれるなら・・」

  「うっ!・・や、でも。こういった事はさ・・」

  しどろもどろになりながら、どうにか説得を試みる。

  が、青年は上目遣いで「アヤが良い」と繰り返す。

  それでも、なんとか縋る視線に耐えて言葉を続けようとした所で、青年は涙を零しながら言った。

  「駄目、か?」

  「やりましょう」

  青年からの懇願を聞いた瞬間、頼子は反射的に承諾の返事をしていた。

  イケメンの涙ずるいぃ・・

  そう思ったところで、胸にチリッと痛みが走る。

  『何だろう?』と、首を傾げながらブラウスのボタンを二つほど外して確認してみると、魔法で契約を交わした時に現れた契約紋の一部から血が滲んでいるではないか。

  「え?何で?」

  血が出るような怪我をいつの間にしたのか・・

  全く覚えがない頼子が首を傾げていると、青年が「しまった・・」と声を上げた。

  青年も自分の契約紋を確認していたようで、首元まできっちり閉まっていた服のボタンを外して胸元をはだけさせている。

  青年の契約紋からも血が滲んでいるようで、真っ白な服に赤い点が付いていた。

  「・・・すまない「対価」のバランスが崩れた事への警告だ」

  「何で?どゆこと?」

  「昨日からアヤに付き合った分の対価を得ない内に、またアヤの「望む行為」に付き合おうとしたから・・警告されたんだ」

  「え?誰に?」

  「魔術契約を司る精霊に」

  ・・マジか。居るの精霊・・

  「・・異世界パネェ・・」

  驚きから目を丸くした頼子に、青年は申し訳なさそうに言った。

  「私から頼んだ事だというのに、まさかアヤの「望む行為」として判断されるとは・・・すまない。無用な怪我をさせた。・・この詫びはまたいずれ・・」

  ぎこちない動きで立ち上がった青年は背を向けて立ち去ろうとする。

  その気配を察した頼子は、慌てて青年に声をかけた。

  「待って!そんな辛そうな状態で何処行くの?!」

  「・・・寝れば治まるから・・」

  「本当に?」

  「・・・多分」

  いや、それ絶対嘘やん。

  しかし、ではどうする?

  一度引き受けた手前、このまま青年を帰すのは申し訳ない。

  何より、凄く辛そうな彼を放置するのは忍びないし・・

  かと言って、異世界の知識を披露しないまま致すと痛い警告が飛んでくる・・

  『んなら、先にこっちの知識をささっと教えて・・あ』

  頼子は素早く考えを巡らせ、思いついたアイディアに思わずポン!と拳の底を反対の手の平に打ち付けた。

  「よし!安心してアド君!この状況にぴったりの知識を披露してあげる!」

  赤い顔のまま小首を傾げた青年に、楽し気に口元を歪めた頼子はニコリ、と笑って見せた。

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