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【78】傍仕えハーフエルフの朝食と、主を起こすまでの行動。【閑話】
半精霊たちが集めて来た情報の報告を聞く。
その報告を元に諸々の判断を下して、また半精霊たちに指示を飛ばしたらすぐに朝食の時間だ。
扉の前で「C」に自分の姿を映しとってもらい、見張りとして立たせたら厨房へと移動。
そこで使用人の為に用意された食事を受け取り、王城で働く者たちの食堂で他の使用人達と共に朝食を摂る。
「おはようジャスパー。隣いいか?」
「おはようございます。もちろんどうぞパドムさん」
そう了承して、隣の椅子を引き勧めた。
王城に勤めている御者の一人である人種のパドムは、笑顔でジャスパーの隣に座る。
「おぅ、助かるぜ・・・それでよ。この前もらった薬、かなり効いたぜありがとな」
「それはようございました。妹さんの不調は改善したのですか?」
「それがびっくりでよ、お前さんが融通してくれた薬を飲んでから大分マシになったんだぜ!・・で、だ。あれ本当に銀貨1枚で良かったのか?何か貴重な代物で、お前さんに無理させたんじゃないかと気になっちまってよ」
グズグズに煮込まれたスープを口に運びながら、ガヤガヤと騒がしい中でも周りに聞こえないよう小声で言う御者に、ジャスパーもパンを千切りながら答える。
「もちろん無理などしていません。アレは高価な品などではなく、エルフの知恵を活かして自作したものです。ですので、お気になさらず」
「そうか・・だが、世話になって銀貨1枚だけってのは後味が悪い。俺に何か出来る事があったら、何時でも言ってくれ。悪い事でなけりゃ手は貸すからよ」
「ありがとうございます、ではお願いしたい事が出来ましたら声をかけさせてもらいますね」
「おう。そうしてくれや・・薬、本当に助かったぜ。じゃ、またな」
「はい、ではまた」
手早く食事を終えて去っていくパドムと入れ替わりに、今度は侍女服に身を包んだ猫目の若い女性が、落ち着きなく尻尾を振りながらジャスパーに話し掛けて来た。
「あの、あの・・今お隣大丈夫ですか?」
「はい、もちろんどうぞエラルダさん」
「失礼します」と隣に座り、食事を始めた侍女は手元に視線を落としたままジャスパーに話し掛ける。
「えっと、この前の刺繡。完成したので、見てもらいたいのですが・・良いですか?」
「おや、もう出来たのですか?早いですね」
「そう、でしょうか。でもちょっと自信なくて・・こことか」
「どれどれ・・」
差し出されたハンカチを、洗浄魔法を掛けてきれいにした手で受け取り、エラルダが指差す場所を確認したジャスパーは「成程」と頷いて言った。
「確かに少し刺し方は甘いですが、配色は素晴らしいですよ。このまま練習すれば良い作品に仕上がるのでは?意中の方もきっと喜んで受け取ってくれますよ」
「そう、思いますか?」
「ええ、もちろんです。エラルダさんの想いと努力は、お渡しする方にもきっと通じますよ」
ハンカチを返しながらそう微笑むジャスパーに、侍女は嬉しそうに答えた。
「あ、ありがとうございます!あたし、頑張ります!」
「はい。でも頑張るのは「程々に」ですよ?」
「えへへ。はい、気を付けます。ジャスパーさんも、また困った事があったら言ってくださいね?」
「はい。またその内頼み事が出来ると思いますので、その時はよろしくお願いします」
「こんなに助けて貰ってるんですから当然です!何でも言ってください!」
「こら、いけません。うら若い女性が簡単に「何でも」と口にするものではありませんよ?」
「う・・はーい。気を付けます」
「よろしい。では、わたくしはそろそろ失礼致します」
「あ、はい!聞いてくれてくれて、ありがとうございました。また今度、時間がある時にお話ししましょう!」
「ええ、またそのうち」
「では」と席を立ち、ジャスパーは食器の乗ったトレイを返却口へ戻すと、奥の料理人に声を掛ける。
「すみません。お食事お願いします」
「はいよ!出来てるぜ!」
元気に返事をした料理人が一人、主の朝食が乗った盆を持ってやってきた。
その肩には見張りを頼んでいた半精霊の「A」が乗っている。
「ご苦労様です。問題ないですか?」とそれぞれ料理人と「A」に訊ねると、「いいって事よ!」という返事と『大丈夫!』という意味の頷きが返って来た。
「ありがとうございます。預かります」と盆を受け取ると「保存」の効果のある蓋を覆い被せる。
「朝食も美味しかったです。ありがとうございました」
「おう!夜も期待してくんな!またなチビ助!」
手を振られた半精霊がニコニコと手を振り返すのを見て「あなた、また何か貰ったんですか?」と呆れつつ「A」を引き連れて、カート置き場へ移動する。
主の朝食を乗せたカートを押し、部屋の前に到着。
見張りをしていた「C」の『問題無し』の報告に頷いて、そのまま引き続きの見張りを頼む。
ここで「A」には地下鍛錬場の様子を確認に行かせ、ジャスパーは一人部屋へと入った。
偽装魔術と防護魔法が施されている扉には目もくれず、窓を覆う天井付近から垂れ下がるカーテンを、カートと共に[[rb:捲 > ・]][[rb:ら > ・]][[rb:ず > ・]][[rb:に > ・]][[rb:そ > ・]][[rb:の > ・]][[rb:ま > ・]][[rb:ま > ・]][[rb:通 > ・]][[rb:過 > ・]]する。
通過した先は部屋の外と同じような廊下が真っ直ぐに伸びており、幾つもの扉が並んでいた。
その内の一つ、何の変哲もない扉の前にカートを止めると、鍵を懐から取り出しその鍵先でドアノブをキンっと一度だけ叩く。
するとカチリと開錠される音がして、ドアは内側に勝手に開いた。
カートを押してドアを潜ると、そこが主の本当の私室だ。
前日に退出した時となんら変わらない部屋をくるりと見回して異常が無い事を確認すると、使用人控えの部屋である使用人室のドアを開け、カートを押して入る。
その部屋には焼き菓子等の簡単な軽食を始め、お茶をする為の茶器類、水を出す魔道具、湯を沸かす魔道具等が整然と棚に収められていた。
休憩用に小さな椅子とテーブルも置いてあり、狭いながらも居心地良さそうな空間になっている。
カートを定位置に置くと、棚の下の引き出しから魔術陣を刻まれた革袋を取り出し、懐に仕舞った。
この「[[rb:魔法袋 > マジックポーチ]]」は「[[rb:魔法鞄 > マジックバック]]」より容量の少ない魔法の入れ物になる。
[[rb:迷宮 > ダンジョン]]で発見される事の多い古い時代の魔道具である「[[rb:魔法箱 > マジックボックス]]」を再現した「魔法鞄」の劣化版だ。
服の上から「魔法袋」の感触を確かめて、よしと一つ頷き主の為に寝起きのお茶の支度を開始する。
銀の盆にお茶の入ったポットや他の茶器類をセットし、それを持って応接部屋を横切り寝室の扉の前に立って中の気配を探った。
・・中の主はまだ寝ている様だ。
そのまま静かにドアを開けて寝室に入ると、サイドテーブルに盆を置き、窓のカーテンを大きく開いて主へと声を掛ける。
「おはようございます。アディード様。本日は良い天気ですよ」
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