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【104】話の種探し散策と、冒険者からの誘い。

  真っ白な皿に、3種類のチョコレートが並ぶ。

  定番のミルクと、ホワイト、そしてカカオ70パーセントのハイカカオだ。

  「それでは、こちら21枚入りで1箱・・|茶色《ミルク》が200箱、|白《ホワイト》が100箱、|黒《ハイカカオ》が300箱のご注文、という事でよろしいですか?」

  「はい、ひとまずその量でお願いしますわ。実際の消費具合を見て、次回の注文時にどれだけ増やすか検討したいと存じます」

  「・・結構な量ですけど・・注文数が増えるのは確定なんですか?」

  部屋に|堆《うずたか》く積み上げられたチョコの山を想像して、ちょっと心配になって訊いてみる。

  「まぁ!勿論ですわっ!本当ならもっと増やしたいところですが・・幾らなんでも多すぎると魔女さんのご負担になりますでしょう?」

  「・・まぁ、はい。それなりに」

  マジか・・確かに、さっきの勢いで食べてたらすぐに無くなっちゃうと思うけど・・

  ま、食べ過ぎには注意するように言ったし、美女さんが周りに広める規模次第かな?

  ぶっちゃけ買うのは百個でも千個でも労力はそう変わらないんだよね。

  元手はあるんだし。こっちで大量注文しといて、都度小出しにする感じにしますかな。

  「それでは、今回のご注文分を用意しますので3日頂いて良いですか?」

  「まぁ!3日でよろしいんですの?!」

  「そうですね。それだけあればご用意できると思います」

  「そんなに早く・・ありがとう存じます!では、3日後の今日と同じ時間に、またお会いするのを楽しみにしていますわ!」

  「はい。私も楽しみです。では、クリスさんの方での価格の検討、大変かとは思いますがよろしくお願いします」

  その言葉を聞いた美女さんは扇を広げ、口元を隠すと仕方なさ気に息を吐いて言った。

  「魔女さんの言い値でよろしいですのに・・こちらで値段を決めろとは、商売上手ですわね」

  「いえ、何分こちらと価値観が違い過ぎますので・・そちらで決めて頂く方が安心できるんですよ」

  「分かりましたわ。これを機に信頼を得られるよう、高値を付けてみせますわ!」

  いやいや、無茶すんなや。

  こっちの胃にダメージがキちゃうような事は勘弁ですよっ?!

  「いえ、そこはそちらの良識の範囲内でお願いします」

  「心配いりませんわ!万事あたくしにお任せくださいませ!」

  あまりの意気込みに、ちょっと腰が引けつつ答える。

  「え~・・はい。程々、程々でお願いします・・それでは、3日後」

  そう微妙な別れを告げて、スピーカーと食器を回収。

  一方美女さんは綺麗な礼を披露すると、青い目をギラリと光らせ足早に去って行った・・

  うーん。えらい勢いだこと。これは全く安心出来そうにないわぁ・・

  高値を提示されるであろうチョコの値段に恐恐としつつ、現実逃避気味に原稿作業へと戻る頼子だった。

  〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇

  褐色肌の冒険者と手合わせの約束をした翌日。

  この日も旅の行程は特に問題無く進み、隣国との国境にある関所に近い所まできた。

  順調なら、明日にでも隣国入りになるだろう。

  ・・国外に出るのは初めてだ・・いや、それを言うなら、王都を出て遠出すること自体が初めてになるのだが・・

  常に傍に付いてくれる傍仕えと、彼女が用意してくれた快適に過ごせる品々のお陰で、何不自由ない旅になっている。

  今もまた今晩の宿泊場所で野営の設営と夕食の支度中だが、半精霊たちが動いてくれる事もあって魔法で水を出すくらいしかすることが無い。

  ・・野営とはこのように暇を持て余すものなのだろうか?

  いや、自分が色々と恵まれている所為だとは理解している・・恐らく、多分・・

  実際、騎士たちと他の冒険者らはそれぞれ忙しそうに動き回っている。

  ゆっくり過ごしているのは宿泊箱の中の高位貴族と、自分たちくらいだろう。

  通常の旅ならば町や村に立ち寄って宿を取るところだが、この旅の者らは国の研究員なのだ。

  自前で開発した魔術陣を惜しみなく使い、外見より数倍拡張された移動式の宿泊箱の室内は貴族が過ごすのに十分な広さと部屋数、設備が整っていると聞く。

  お陰で、街道に点々と存在する休憩所での野営により通常の旅より早く移動出来ているらしいのだが、付き合わされる護衛の騎士と冒険者たちは少々大変な思いをしているというわけだ。

  『・・本来なら私もそれなりにやる事がある筈、なのだがな・・』

  元々過保護な家族から|魔法鞄《マジックバック》を幾つも持たされている上、その中には|異世界《あちら》からの便利な物資がこれでもかと詰め込まれている。

  そして、初めての遠出で少しばかり張り切っている様子の傍仕えにより、見事手持無沙汰に陥っている、と。

  「・・少しその辺を歩いてみるか」

  長時間の騎乗により凝り固まった体を一通り解した後、簡易椅子に座り水の入ったカップを片手に独り言ちると、それを聞いていた傍仕えが「それは良いですね」と同意した。

  「打ち合わせにはわたくしが参りますので、半精霊をお連れください。それでしたら野営の見える範囲で自由に過ごして頂いて大丈夫です」

  「そうか、分かった。なら「でじかめ」でその辺りを切り取って来るとしよう」

  「あぁ、それは大変よい考えかと。お帰りになった際には良い話の種になりますよ」

  そう傍仕えが頷くので、僅かに気分を高揚させながら魔法鞄より「でじかめ」を取り出して括り付けられている紐を首にかける。

  「では行ってくる」

  「はい。行ってらっしゃいませ」

  天の光が陰り始めた空から、周囲を警戒していた半精霊の一体が降りてきて傍に付く。

  その「C」と書かれた面布に一つ頷いて、彼女への土産になりそうな物を探しに足を踏み出した。

  〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇

  「色々と、たくさんとれたな・・」

  踏み固められた休憩場所の脇に生えていた小さな草花や、虫、|劣竜種《レッサードラゴン》などの生き物を始め、護衛で佇む騎士、野営の準備をする冒険者らの姿など、それぞれ上手い具合に切り取れたと思う。

  彼女が何に興味を持つか全く想像つかない為、最早目にする物見境なく「でじかめ」に収めた。

  野営から少し離れた岩場に座り、切り取った風景を手元で確認していると、遠くから呼ぶ声がして顔を上げる。

  「おーい、アド!そこで何してんだー?」

  見れば、今日も狩りを成功させたらしい褐色肌の冒険者、キーラが肩に獲物を担いでこちらに走って来るところだった。

  「別に何とも。手が空いたので、ここらを歩いていただけだ」

  「そっか。なら丁度いいや!暇してんなら少し手伝えよ!」

  「何を?」

  「獲物の下処理!それが終わったら自由にしていいって、リーダーから許可貰ってんだ!だから終わったら手合わせしないか?!」

  そう言って獲物を吊るした紐を肩から降ろし、ずいとこちらに差し出して見せる。

  どうやら今日の獲物は昨日も狩っていた|旨鳥《うまどり》と|飛兎《とびうさぎ》のようだ。

  獲物の処理か・・|迷宮《ダンジョン》の魔物は魔石を残して消えるからな・・迷宮の外だと死骸が残り素材にするとは聞くが、私は外での戦闘は経験がない。

  自分に出来るだろうか?

  正直、興味はある・・

  「・・私は獲物の処理は未経験なのだが・・それでも良いか?」

  「え?その|外見《ナリ》でか?!アンタ冒険者だろ?!まさか成人してないとか言わないよな?!」

  「勿論とっくに成人はしているが、今まで必要の無い生活だったからな」

  驚き、声を上げる褐色肌に淡々と事実を告げると、急に何かを察した顔になり「あ~。はいはい了解、了解」と頷かれた。

  敢えて誤解するような言い方をしたが、どうやらこちらに都合良い形に解釈してくれたらしい。

  「ま、生きてりゃ色々あるよな・・・よーしっ!そんならアタイが処理のやり方を教えてやるよ!先ずは水場だ!行くぞアド!!」

  こちらが反応を返す前に、褐色肌は「着いて来な!」と「不屈の砦」の面々が作業している場所へ向かい駆け出した。

  「本当に押しが強いな・・」

  だが不快ではない。

  それに、わざわざ教えてくれるというのだ。

  普通の冒険者がどういった生活をしているのか興味も湧いた事であるし、丁度良い暇つぶしにもなる。

  「でじかめ」を腰のバックに仕舞い、背後で膝ほどの高さに浮いて護衛を務めている半精霊に「行こうか」と一声掛けると、だいぶ小さくなった褐色肌の冒険者に追いつくべく岩場から飛び降りて走り出した。

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