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※注意※
生き物の解体シーンがあります。
そこまでグロテスクではないと思いますが、苦手な方はご注意ください。
褐色肌の冒険者に追いつき、共に「不屈の砦」の天幕裏に回る。
するとそこで夕食の支度をしていたメンバーの内、長身赤髪の女がこちらを見るなり怖い顔になった。
「キーラ・・あんたって子は・・」
「ちょっ!デラ?!」
赤髪は瞬く間に褐色肌に近づくと、流れるような動きで手首を掴みそのまま捻り上げて関節を決める。
「痛い痛いっ!デラ、勘違いしてる!アタイ悪くなっ・・いっだだだだ!」
褐色肌が痛みで手放した獲物を地面に落ちる前にとっさに掴み取ったものの、状況が把握出来ずに身動きが取れない。
困惑したまま佇んでいると、細長い四枚翅を背に持つ[[rb:虫人 > むしびと]]が近づいてきて「貰いマス」と声を掛けられた。
4本ある腕の内、上2本を伸ばしてきたのでそのまま獲物を預ける。
「あんた昨日やらかしたばっかりでしょう?!なのにまた他人様にちょっかい出してっ!」
「や、だから違っ!こいつがアド!手合わせの約束したアドだよ!」
「嘘おっしゃい!こんな若くて細いのをあんたが相手する理由なんて無いじゃないっ!」
「本当だよっ!アドっ!アドからも何か言ってっででででっ!」
どうやら褐色肌は普段、見た目が厳つく強そうな者にしか手合わせを申し込まないらしい。
「面布のカルセ」は王都の冒険者の中でそれなりに名が知られているから例外なのだろう。
・・このままでは話が出来そうにないな・・
それに、赤髪に悪気は無いのだろうが言外に「弱そう」と言われてしまい、少々自尊心が傷ついた。
このまま黙っている訳にはいかない。
早々に褐色肌と手合わせをして、実力を示さなければ―・・・
いや、この思考自体が未熟の証か・・心身共に、もっと精進が必要だな。
ざらついた心情に引きずられるようにして行動しようとした己の状況に気付き、『先は遠いな』と反省する。
そうして、落ち着いた声音を意識しながら未だじゃれている2人に声を掛けた。
「すまない。手合わせの約束をしたのは本当だ・・私から申し込んだ」
「あら、そうなの?」
ぱっと手を離された褐色肌はずべしゃっ!と地面に崩れ落ちる。
「キーラは「強くなりたいからカルセと手合わせしたい」と言っていた。私も、今よりもっと強くなりたいのだ。だから、手合わせを申し込んだ」
「ふぅん・・向上心があるのは良い事だわ。でも、あなたにキーラの相手が務まるの?」
「それは実際にやってみなければ分らんだろう?」
「それはそうね・・」
赤髪の視線が値踏みするように頭から足へと動いたが、唐突に起き上がった褐色肌によって途中で断ち切られた。
「ほら!アタイ悪くないっ!痛がり損!謝れよデラ!」
「そうね。誤解して悪かったわキーラ」
「う゛~・・次からは気を付けろよな~!」
「ええ、分かったわ。ごめんなさいね?」
先程までの態度とは打って変わり、褐色肌の頭を優しく撫でる赤髪。
それにより褐色肌の怒りも解けたらしく、顎を反らし「許す!」と満足そうに鼻を鳴らした。
「あ、モウロ!獲物こっちにくれ!アドと一緒に処理するから!」
「モウロ、やるヨ?」
褐色肌に呼びかけられた虫人は、鼻から下を垂れ布で隠した顔をこてんと傾げて言う。
「手伝ってくれるのか?でもアドに処理を教えながら捌きたいから、今日はいいよ!ありがとな!」
「わかっタ」
虫人から獲物を受け取った褐色肌は簡易調理場で大鍋の近くに陣取り、腰の後ろからナイフを抜いて平らな木の板に突き立てた。
「よしっ。アド!まずは飛兎から始めるぞ!近くで見てろよ!」
「分かった」
呼ばれ、褐色肌の背後からその手元が見える位置に立つ。
「まず、飛兎は耳の羽が何かの材料になるとかで買い取ってもらえるから、最初に切り落とす」
そう言って、褐色肌はナイフの刃先を羽の形をした耳の根本に差し込み、くるりと一周させる。
そのまま耳の根本を持って手首を捻ると、頭からぽろっと外れた。
ふわふわとした柔らかそうな毛に覆われた、胴体と同じくらいの大きさの耳・・外れると完全に羽にしか見えないそれを、置いてあった袋にぽいと入れる。
「だけど、ここいらじゃ買い取ってもらおうにも組合がないからな。内臓なんかと一緒に後で処分だ」
「そうか・・なんだか勿体ないな」
「仕方ねーよ。基本、こういった生き物の素材は仕留めてから直ぐ・・二日以内?まぁ、素材によって違いはあるけど、新鮮じゃないのは買い取り拒否されちまうんだ」
「成程」
「だから今みたいな護衛依頼中でついでに稼ぐなら、腐ったりしない素材を集めるのが基本だな。魔石とか・・よし。アド、そっち持ってろ」
「分かった」
飛兎の後ろ足の皮に一周した切込みを入れると、股をなぞるような形でナイフを走らせて足首の線に繋ぐ。
そうして飛兎の後ろ足をこちらに差し出されたので、両手で左右それぞれを握った。
「引っ張るから、しっかり支えてろよ」
頷くと、褐色肌は足首の切れ込みから指を入れて皮を掴み、頭の方へ向かって一気に引っ張った。
ぐんっ!と腕に力が掛かり、持って行かれないように腰だめに支える。
すると、飛兎の皮は服を脱ぐようにズルンときれいに剥けた。
成程・・飛兎の皮はこのようにして剥ぐのか。
自分の手元には赤い肉となった飛兎。
それを目の高さに持ち上げると、皮に隠れていた筋肉や血管といった生物を形作るものがよく見えた。
成程、興味深い・・
褐色肌は裏返った皮を持ったまま、近くの者に「なぁ!今日は「掃除屋」来てる?」と訊ねる。
「ああ。歩いてるの見たよ~」
「お、やりぃ!じゃあ毛皮は残せるな!」
教えてくれた髪を太い三つ編みに束ねた女に「ありがとな!」と礼を言った褐色肌は、うきうきと耳を入れたのとは別の袋に皮を放り込んだ。
「よし!次は内臓を外すから、そのまま足持ってろよ」
「分かった」
ナイフを構えた褐色肌は耳を入れた袋を飛兎の下に置くと、股間から真っすぐ肋骨の間まで切れ込みを入れる。
股間辺りで内臓の一部を摘まみ、端をナイフで切断。
そのまま素手で内臓を全て取り出し、袋に落とした。
「ほい。これで飛兎の処理は終わり!後は調理担当に任せるから、そこの木の板に置いてくれ」
内臓を入れた袋の端で手を拭きつつそう言われ、持っていた肉となった飛兎を板に置く。
「次は旨鳥だな。こいつは一度熱めの湯に潜らせて羽を毟るんだけど・・まだ湯が沸いてねぇな」
簡易的な竈の上に置かれた大鍋に触れ、熱いかどうかを確認した褐色肌は「湯が沸くまでどうすっかなー」と、まだぬるい水を横に置いてあったコップで汲む。
その動きから手を洗いたいのだと察して「手伝おう」と声をかけた。
「おっ。助かるぜ」
水の入ったコップを手に取り、差し出された手に流しかけるとゴシゴシと擦り洗い。
ある程度汚れが落ちると、褐色肌は「ありがとよ」と礼を言って濡れた両手を振り水気を払った。
「湯が沸くまでちょい暇だな。先に「掃除屋」に声掛けに行くか?」
そう訊ねてくる褐色肌に「熱い湯があれば進められるのか?」と訊ね返す。
「ん?そりゃな」
「なら私が用意しよう。鍋の水を使っても?」
「構わねぇけど、どうすんだ?」
「すぐに解る」
鍋の水に手をかざし、自分の魔力を流し込む。
そうして水操魔法で人の頭ほどの量を持ち上げ、温度を上げた。
鍋の上に浮かび上がった大きな水玉は直ぐにぶくぶくと泡立ち、湯気を上げ始める。
それを見た褐色肌はぱかりと口を開けて驚愕の表情だ。
「熱い湯だ。これをどうすればいい?」
「な、おま、それ水魔法か?!すげぇな?!水魔法ってそんな事も出来んのか?!」
「すげぇ!すげぇ!」と手放しで褒められれば、悪い気はしない。
少しばかり面映ゆくなりつつ「それで、湯をどうすれば?」と訊ねる。
「お、すまん!湯だな!そのままだとちょいと熱すぎるから、少し冷まして触ってもギリギリ火傷しないくらいの熱さになったら旨鳥をぶち込もう!」
「湯の熱さなら調節できるが・・」
「そうなのか?!おまえ、すげぇ便利なヤツだな・・」
そう半ば呆れたように言われ、内心で首を傾げるのだった。
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