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【106】解体の続きと「掃除屋」の話。

  ※注意※

  前回に引き続き、生き物の解体シーンがあります。

  苦手な方はご注意ください。

  褐色肌の冒険者の女。「不屈の砦」のキーラに自身の水操魔法を「凄い」と手放しで褒められたかと思えば一転、今度は呆れられた・・

  その意味が理解出来ずに内心首を傾げていると、目を座らせた褐色肌が腰に手を当て説明を始める。

  「『ワケ解らん』って顔してんじゃねーよ。おいアド。普通、水魔法っつったら操った水を空中に浮かべて遊ぶ魔法だろ?上手い奴なら相手の口と鼻塞いだりして攻撃に使うけど。熱さを操れるなんざ、今まで見たことも聞いた事もねーわ」

  「そう、なのか?」

  「おまっ・・はぁ。・・んだよアド。おまえさん、[[rb:水魔法の常識 > この話]]といい解体の経験が無いといい、かなり世間知らずなんだな・・」

  「む・・それは、否定しない・・」

  「出来ねぇの間違いだろ?ったく。仕方ねぇなぁ・・いーよ。これも精霊の思し召しってやつだ。アタイが冒険者の常識を教えてやるよ!」

  褐色肌にばんばんと背中を叩かれ「しっかり学べよ!」と笑顔で言われたが、こちらが何か答える前に、いつの間にか集まっていた他のメンバーが次々に話しかけて来た。

  「あらあらキーラったら・・弟分が出来て、お姉さんぶりたいのね?そんなところも可愛いわよ?」

  「良かったねぇ~。後輩が出来て~。嬉しいね~キーラぁ」

  「モウロ、も!学ブ!キーラ教えル!一番!モウロがキーラの一番!」

  褐色肌は嫉妬したらしい[[rb:虫人 > むしびと]]の4本腕に羽交い絞めにされ、赤髪に頭を撫でられ、間延びした話し方の三つ編みに頬を突かれる。

  どうやら「不屈の砦」のパーティーメンバーは大変仲が良いらしい。

  見ている分には微笑ましいが、本人はそれどころでは無いようだ。

  「うがーっ!止めろよ!アタイ成人してんだぞ?!事ある毎にチビ扱いすんな!モウロもっ!ガキじゃあるめぇし何時までも引っ付いてんじゃねーぞ?!」

  そう言って手足を振り回し抗議するが、その[[rb:尽 > ことごと]]くを避けた赤髪と三つ編みは褐色肌の怒りを意に介さずさらりと流し答える。

  「あーら。この程度で怒るなんて、まだまだおチビちゃんな証拠よ?」

  「そうね~。砦の皆のチビちゃんね~」

  「キーラ、モウロ嫌いなっタ?悲しイ、モウロ悲しイ・・」

  「・・・ちきしょう。もう放っとけよ・・」

  「あら。今度は拗ねたわ。やっぱりおチビちゃんね」

  「キーラ、キーラ。モウロの事、好キ?好キ?」

  褐色肌は虫人にガクガクと揺らされ訊ねられているが、何も反応せずにされるがままになっている。

  そんな彼女を見ていると、少々不憫になってきた。

  だが、それはそれとして。

  私はいつまでこの湯を保持していれば良いのだろうか?

  手元で湯気を上げている水玉に困り顔でいると、褐色肌を[[rb:揶揄 > からか]]い終えたらしい三つ編みが話しかけて来る。

  「ごめんなさいね~。こっちで鳥さんの処理、進めちゃいましょうか~」

  「あぁ、解った。だが・・良いのか?」

  虫人から解放され、地面に蹲る褐色肌にちらと視線を向けて訊ねると「大丈夫よ~。すぐに復活してくるから~」と呑気に返される。

  『これもある種の信頼か』と納得して、三つ編みに指示されるままその手にぶら下がる旨鳥に湯を纏わせた。

  そうして三つ編みから羽の毟り方を教わり、手を羽まみれにしながら[[rb:旨鳥 > うまどり]]を丸裸にしていく。

  湯に潜らせた旨鳥の羽は面白いようにするすると抜け、鳥の殆どがこのようにして羽を毟るのだと説明を受けた。

  毟る順序や、鋭い爪や羽先(嘴は頭ごと落とされていた)などで怪我をしないよう注意すべき点などを教えてもらっていると、三つ編みが言っていた通り気持ちを切り替えた褐色肌が戻って来る。

  一言「ほったらかして悪かった」と謝り、三つ編みに礼を言うと交代して作業に加わった。

  「大体は毟れてるな。細かい羽や薄皮なんかまでキレイにすると、食べやすいって喜ばれるぞ?」

  「分かった」

  言われるまま、手の平で旨鳥の表面を撫で擦りながら羽と薄皮を丁寧に取り除き、時折大鍋から水を浮かべてかけ流しきれいにする。

  「どうだ?」

  「おぅ。初めてにしてはキレイに出来たんじゃね?後は穴を切り落として腹を裂いて内臓を取る。これはちと難しいからアタイがやるな」

  「失敗すると肉が汚れて食えなくなるんだよ」と言って、ナイフで旨鳥の尻の穴を抉るとそこから少し切れ込みを入れ、片手で支えながら中に手を入れて中身を取り出した。

  「丁寧に処理すりゃこの[[rb:内臓 > これ]]も食えるらしいけど・・そんな暇ねぇし面倒だから今は捨てる」

  そう説明して、取り出された中身はどこも途切れる事無く、尻から首の部分まで全て繋がっている。

  成程。こうして見ると、生き物というのは一つの長い管が体に収まっているようなモノなのだな。

  実体験と共に得た新しい知識にやや興奮気味でいると、飛兎の内臓を入れた袋に旨鳥の中身も入れ、僅かに流れた血を洗い流せば全ての処理は完了となった。

  「後は片付け・・」と辺りを見回した褐色肌は、目当ての者を見つけたらしく大声で呼びかける。

  「おーい!「掃除屋」!こっち頼む!」

  「はいよー!」

  声がした方に視線を向けると、近くの村からやって来たと思しき少年が駆けて来た。

  が、その手元を見てギョッと目を剥く。

  「なっ?スライム?!」

  薄汚れた少年が抱えていたのは半透明の体を持つ、不定形魔生物・・スライムだった。

  その存在を視認した瞬間、咄嗟に腰の剣へ手が伸び―・・不思議そうな褐色肌の声で、鞘から抜きかけた手を止める。

  「なに驚いてんだアド?「掃除屋」なんだから、スライム連れてんのは当たり前だろ?」

  「・・どういう意味だ?」

  「おい、まさか・・はぁ。そうかよ。「掃除屋」も知らねぇんだな?」

  「・・・知らない」

  どうやら危険は無いらしいと判断して警戒を解いたところで、呆れた様子の褐色肌につい[[rb:睨 > ね]]めつけるような視線を向けた。

  「分かった分かった。馬鹿にしてるワケじゃねぇから、そう睨むなって。今説明してやるから」

  こちらの態度を気にした様子もなく、剣呑な空気に足を止めていた少年を手招きした褐色肌は「掃除屋」について話し出す。

  「街道にはここみたいに休憩できる場所が幾つかあるだろ?そこには定期的に人が立ち寄る訳だが、そうするとどうしたって不要なモノが溜まってく」

  「ゴミや排泄物、という事か?」

  「そ。人だけじゃなく、移動に使う生き物なんかも結構なモノを落とすしな。そういったゴミなんかを片付けて小銭を稼ぐのが、飼い馴らしたスライムを連れてる「掃除屋」ってわけだ」

  そう言って「これとこれ、頼むな」と先程処理した飛兎と旨鳥の内臓が入った袋と、毛皮が入った袋を少年に差し出し硬貨を渡した。

  頷き、硬貨を首から下げた小袋に仕舞った少年は内臓入りの袋の口を開いて中を確認すると、そこにスライムを滑り込ませる。

  暫く袋はぐにょぐにょと動いていたが、すぐに動かなくなった。

  少年が袋をひっくり返すと、でろんとスライムだけが落ちてきて、後は何も出て来る気配が無い。

  どうやらスライムはしっかりと仕事をこなしたようだ。

  空になった袋を褐色肌に返し、少年はもう一つの袋の中を覗き込む。

  中身が毛皮だと知ると、袋をひっくり返して毛皮をスライムの上に落とし、袋ごと両手で中に押し込んだ。

  その行動に驚き声を上げそうになるも、褐色肌が動じていない事から静かに状況を見守る。

  少年は毛皮と袋をスライムの中で揉み、少ししてずるっと引っ張り出した。

  そうして見せられたのは、耳と後ろ足の無い飛兎の形をしたきれいな毛皮と袋。

  どうやら血や肉片といった汚れは全てスライムに吸収されたらしい。

  少年は「まいど!」と元気に毛皮と袋を褐色肌に返すと、また別の所から呼ばれスライムを抱えて走って行った。

  「な?こんな感じで、街道の休憩場所は片付けをしっかりやって、キレイに使うのが決まりなんだ」

  褐色肌の言葉に、衝撃的な光景の余韻を引きずったまま頷きで答えた。

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