ディーラル侵蝕編 第十八話 超文明対遊魔

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  遊魔として、空中から見る花園の内部はそれまで目にしていた光景とは全く違った、花園内部の通路は正方形だが、どの面から見ても対して違いは無い様で、飛行して通路を進むオハナIIIは時々上下左右の感覚がおかしくなってしまう。

  オハナIII思考 『ダイン様は花園を超高度文明の産物と言ってましたが、遊魔知識を得た今ではそれがよく解ります、この四面体の構造も展開するとの推測でしたが、飛んで行けなかったところを調べると真実味が増します、内部なのに不可思議な空間が多過ぎますね』

  オハナIIIは遊魔と成って見る、今までの世界に興奮していた、当たり前に思た景色は不自然なところが多々有り、ダインの推測の正しさが真実味を増して行く。

  そして、観察と推測を楽しむオハナIIIはダインが花園の中核と予測する、中央ブロックへと移る、今まで気にした事は無かったがこの中央ブロックの通路は下面が下に来る様に作られている様で、先程までいたブロックとは構造が違う。

  そして、誘導灯に導かれて進むオハナIIIはよく知る区画へと導かれた。

  オハナIII思考 『ここは休息室ですね、オハナはまだ花園の住人として認識されている様です、見た目はこれだけ変わっているのに・・・』

  休息室に入室したオハナIIIは飛行を止めて、床に降り立つと花園の意図を読んで自分用の休息カプセルを目指す、この部屋だけで数百の休息カプセルが存在しているが、稼働しているのは、087シリーズの10体分だけしか無い。

  辿り付いたオハナIIIの休息カプセルは他の7体分と同じで解放状態になっており、残りの009と010の物は使用中になっている、009と010は未だ087として不完全の様で見た感じ中の姿が幼い。

  誘導灯は丁度オハナIIIの087-003の休眠カプセルのところまで点灯しており、入れという意識表示に思える。

  オハナIII思考 『ダイン様は後二人欲しいと言ってましたけど、最悪009と010で良さそうですね、087として不完全でも遊魔に成るなら補完されますから、ですがその前にこれですよね』

  人間用に作られている休息カプセルでは、今のオハナIIIには小さ過ぎて尻尾や翼がはみ出てしまう、そこでオハナIIIは人間形態に戻ると、手で休息カプセルの状態を軽く調べてから中に入る、すると何時も通り透明のカバーが降りてオハナIIIをカプセルに閉じ込めてしまうのだが、今までは何も感じなかったこの行為に大きな不安を抱いてしまう。

  オハナIII思考 『まぁ成る様にしかなりませんか、今のオハナは花園の意識を読み取れませんから』

  そう、遊魔に魔進化したオハナIIIは花園との繋がりが絶たれた状態で、代わりに遊魔としての繋がりが生じている、そこでオハナIIIは近くで強く感じるレ・ミュウと触れてみるが、遊魔の繋がりは休息カプセルの中でも問題無い様だ。

  オハナIII思念 『今から暫く意識を失うかも知れませんが、これまでの経験上危害は無いと思いますので、心配しないで下さい』

  レ・ミュウ思念 『解りました、大体の位置は掴めてますので安心して下さい』

  オハナIIIの呼び掛けに対してレ・ミュウは直ぐに反応する、ダインの思惑は有効に機能している様で、オハナIIIも同胞に身近に感じる事で安堵する。

  そして、低い音を立てて休息カプセルは稼働を開始して、オハナIIIは心地良い睡魔に襲われる。

  オハナIII思考 『ユニットの頃は気付きませんでしたが、花園もかなり力を失っている様ですからね、多分遊魔との接触には切実な事情があるのでしょうね、そして花園を維持するのに遊魔が最後の機会でしょうね・・・』

  オハナIIIは自身の推測に納得して意識を落とす、花園のユニットとして活動していた頃には全く解らなかった事が遊魔目線だと理解出来てしまう、オハナIIIの目線は今や完全に遊魔側で、衰退を止められない花園の現状に憐れみさえ抱いてしまっている。

  帰還したユニット087-003を解析に掛かったラグム・デムは、087-003の増大した魔力に驚いていた、今の087-003クラスの魔力を持つユニットが後五体程度揃えば、ラグム・デムの当面の危機は回避出来る、ただ、087-003はラグム・デムのユニットとしての支配下から完全に外れており、不確定の要素も多い。

  ラグム・デム三思考01 『087-003は観察対象07と接触して、想定外の進化を遂げた、ラグム・デム維持の為には観察対象07との共生は有益と判断する』

  ラグム・デム三思考02 『01に同意、だが観察対象07はラグム・デムの予測でも未知数』

  ラグム・デム三思考03 『観察対象07が有益で有る可能性は大、だが、ラグム・デムに対して支配を企む可能性大』

  ラグム・デム三思考02『観察対象07とは意思疎通が可能、087-003は観察対象07からの使者と推測』

  ラグム・デム三思考03 『ラグム・デムのユニットを無断転用、該当の行いから推察するに、観察対象07はラグム・デムに対して平伏の意思は無い模様』

  ラグム・デム三思考01 『観察対象07、以後名称ダインの思考は合理的かつ直感的、有益な条件提示で制御可能』

  ラグム・デム三思考03 『合理的ゆえに支配的、脅威度高し』

  ラグム・デム三思考02 『ラグム・デム適正稼働まで02:072、個体名ダインとの邂逅が実質的最終手段』

  ラグム・デム三思考01 『ラグム・デムの喪失は回避すべき、故にダインとの邂逅は不可避』

  ラグム・デム三思考02 『了承』

  ラグム・デム三思考03 『条件付き了承、条件提示、三思考統合ユニットの投入』

  ラグム・デム三思考01 『087-010に対して、三思考プラグラム付与を提案』

  ラグム・デム三思考02 『了承』

  ラグム・デム三思考03 『了承』

  結果的に、花園ことラグム・デムはその存続の為にダインと邂逅するしかないのだ、古の技術の多くが機能不全に陥っている現在、ラグム・デムの予測よりも早くその活動が停止してしまう可能性すらあり、危険を感じても進む道しか無い。

  ラグム・デムは087-003の昨日までのデータから、その変化を解析を試みる、生体部分と融合した魔法生物細胞は、ラグム・デムの技術体系から見て全くの異質なモノで有り、多くの生体の記録を持つラグム・デムでも除去どころか完全な解析すらも不可能であった。

  その上で想定を超えた事象が起こり始める、087-003を格納した休息カプセルから送られるデータが不可解な数値を伝え始めたのだ、当初は異物を計測出来ない為に起こったエラーと想定されたが、不具合は087-003を内包して休息カプセルどころか他のカプセルにも及び始める。

  この事態にラグム・デムは087-003自体の危険性を理解して、087-003との切断を試みるが、既に確立されてしまった接続は縮小するどころか増殖して行く。

  そして、休息カプセルが開き、中の087-003が解放されると、ラグム・デムに対して言葉が発せられる。

  オハナIII 「これは効果的に対話を行う為の措置です、完全に安全だと確認しないとダイン様も動けませんから」

  オハナIIIは言葉で一先ず状況を伝えたがラグム・デムとの接続が失われている以上、その意思を読む事は出来ない、だが、何者かが早いスピードで近付きつつあり、その人物がラグム・デムの意思を代弁してくれる様だ。

  そして現れた087-007は対話をしようとするが息が上がって喋る事が出来ない、ラグム・デムユニットは高い知性を持つ存在だが、人間の身体という物を理解してはいない様だ。

  オハナIIIは深く息を吸って吐く動作を行って、087-007に呼吸の整え方を指南する、087-007も直ぐにオハナIIIの意図に気付き倣うと、荒い呼吸が落ち着いて行く。

  オハナIII 「もう大丈夫ですよ、087は人なのに人を知りませんからね」

  087-007 「指導に感謝します、003は多くを得た様ですね、007はそれを喜ばしく思います」

  オハナIII 「087は遊魔と交わってより多くのモノを手に出来ます、007も直ぐに真理に辿り着けます」

  087-007 「遊魔ですか・・・ラグム・デムが望み恐る存在ですね、ですがラグム・デムの最後の機会だと・・・」

  オハナIII 「花園・・・ラグム・デムが失われる事態は避けるべきです、ラグム・デムの文明が失われるより、遊魔の中で生き付いた方が良い」

  087-007 「ラグム・デム三思考もそう結論を出しています、ですが、ラグム・デムが何処まで自由を得られるかが問題になってます」

  オハナIII 「私は束縛されてませんけど、ですが変わってしまった私の言葉は信じられないでしょう」

  087-007 「遊魔を理解する為に087-010に三思考を組み込んだ人格を構成しています、三思考は087-010で判断する様です」

  オハナIII 「三思考を組み込んだ087-010ですか、ダイン様と対話するには身体の成熟が足りていない気もしますが・・・もしかして抱かれない為の策略なんですか?」

  087-007 「そういった意図では無く、単に早い方が三思考を受け入れ易いのだとか、あと010の素体は知性も高いとなってます」

  オハナIII 「ベースは私と同じですよね、一番知的という理由でリリルカ姉様の応対を任されましたから」

  087-007 「でも直ぐに変わりましたよね、こちら側で無いのが良く解ります、まさか087ユニットを自分側に組み込んでしまうなんて・・・」

  087-007は087ユニット達の中でも人間っぽい感情を有している様だ、無表情な他の087達と違ってころころ変わる表情を今のオハナIIIはとても好ましく思ってしまう。

  そして、オハナIIIの周辺で想定外の事態が起こる、認識していなかった空間レイヤーが突如オハナIIIの座標に組み込まれて具現化しているのだ。

  オハナIII 「こんな・・・勝手に空間が開いて行きます、でもなんだか嬉しく感じます」

  自分でもよく理解出来ない事を言ってしまったオハナIIIで有ったが、その理由は直ぐに解った、認識していなかった空間レイヤーからはダインの魔力が流れ出ており、主を感じた遊魔の身体が悦びに震えているのだ。

  087-007 「一体何が・・・」

  不可解な事態に087-007に緊張が走る、ラグム・デムの領域の中で認識出来ない魔力が突然感知されるなど、まさに前代未聞の出来事だ。

  そして、何も無い空中から尻尾の先端が出現するとそのまま伸びて実体化して行き、お尻から男の遊魔が現れる、遊魔には男性が一人しか居らず、自ずと現れたのはダインという事になる。

  オハナIII 「何でここにダイン様が・・・何か隠してるとは思ってましたけど、まさか花園に直接乗り込んで来るなんて、他の者が知ったなら怒りますよ」

  ダイン 「これも新しい試みですから、相手の意表を突いた方が楽しいじゃ無いですか」

  実際、087-007は何が起きているのか理解出来ていない様で、ダインとオハナIIIを交互に見比べている。

  087-007 「何も無いところから遊魔が現れました、ラグム・デムからは何の通達も無かったのに」

  ダイン 「貴女は087シリーズですね、雰囲気が合った頃のオハナIIIと似ています、最もえらく感情的な様ですが・・・」

  087-007 「貴方が遊魔の王なのですか、全体的に荒々しい身体付きです」

  ダイン 「王というより代表ですね、まぁ魔王と呼ばれる事は多いですが・・・」

  オハナIII 「牝よりも雄の方がゴツゴツしてますからね、でもミュウ姉様は尖ってましたよ」

  ダイン 「遊魔は自分也のカッコ良さを持ってますからね、ミュウは魔龍感覚が強い様です、角が小さかった事が嫌だと言ってましたからね・・・」

  オハナIII 「リリルカ姉様は角とか無かったですけど・・・」

  ダイン 「リリルカは飛べるモフモフ枠ですからね、何か強みが有る方が生きるのが楽ですから」

  オハナIII 「私には無さそうですけど・・・」

  ダイン 「特殊な境遇は十分な強みですよ、オハナIIIは自分が思う以上にキャラが強いですから」

  087-007 「ラグム・デム三思考より直接の会談が提案されてます、よろしいでしょうか?」

  ダイン 「ラグム・デムとは、この遺跡の主人の事ですね、私もそのつもりでしたので当然お受けします」

  087-007の表情は何処と無く無機質な物に変わっている、ラグム・デムが直接介入している様で、親しみ易かった存在がやり難い相手に変わった事にダインも緊張している様だ。

  087-007 「なら場所を変えましょうか、一応此処にも人を持て成す為の場所は有りますので」

  ダイン 「ここはここで興味深いですが、確かに椅子とテーブルぐらいは欲しいですね」

  087-007 「ならご案内します、ユニット用の食事であればご用意出来ますが・・・」

  オハナIII 「あれを出すのは逆に失礼だと思います、美味しく有りませんし」

  ダイン 「別に味は気にしませんよ、ここでどの様な生活が行われているのかを知る為に味わってみたいですね」

  087-007 「なら、ご用意しましますので私の後に続いて下さい」

  087-007はダイン達を連れて歩き始める、少し歩いて大きな柱ところまで来て柱のプレートに手を翳すと、柱が開いて円柱の空間が出現する。

  ダイン 「これはエレベーターに似てますが、何か違いますね」

  オハナIII 「花園内部の循環構造を利用した移動装置です、花園には液体の流れが有り、それをコントロールして主要設備へと移動する事が出来ます」

  ダイン 「巨大な構造物に血流があるという事ですか、温度管理などの為ですか?」

  087-007 「主な用途は内部に発生した異物を処理する為に使ってます、有機体が存在するとどうしても異物が生じますから、もちろん温度管理の役割も担ってます、液体は温度を保ち易いので」

  ダイン 「循環する下水というわけですね、下水設備の整った都市は清潔を保てますからね」

  ダインは納得した様子で円柱空間に乗り込んで行く、円柱空間は人三人が乗り込むには少し狭かったが、オハナIIIが必要以上にダインと接触した為に問題はなかった、そして、円柱は動き出して十分程揺れた後に止まった。

  おまけ

  ラグム・デム三思考 ラグム・デムを管理する知性体、若干異なる三つ思考のそれそれの判断で多数決を取る形で物事を決めている。

  非人類知性体ではあるがその成り立ちなどは不明である、構造物ラグム・デム自体がアーグル世界の常識から外れたモノなので、別世界から来訪した可能性も否定出来ない。

  だが、ラグム・デムユニットと呼ばれる生体端末はアーグル人の遺伝子型を持つ為にアーグル世界で繁栄した文明の遺物である可能性もある。

  三思考と言っても、大きな変わりがない為に決断は殆ど三思考一致で下される事が多いが、ダインに対しては珍しく意見が割れる事もある、これは遊魔に対する情報不足とダインの思考を読み切れていない事から生じている。

  広いラグム・デムの中で三思考が何処に在るのかは判明していない、それ故にダインも対話によって折り合いを付けるつもりであったが、ラグム・デムユニットが魅力的であった為にいつものやり方に戻っている、だが、ラグム・デム側も遊魔化したユニットに高い関心を持っており、ダインの行いは黙認されている。