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親戚の熊おっちゃんにお世話になるお話

  ガタン……ゴトン……ガタン……ゴトン……

  列車に乗ってから、もう3時間は経っただろうか。

  窓から見える景色は、東京の都会の景色とは違って、田んぼや畑、紅葉して赤や茶に染まった山が見える風景へと姿を変えていた。

  僕ー山中 太一(やまなか たいち)ーはいま、亡くなったお父さんのお兄さんである武蔵(たけぞう)おじさんの家に向かっている。

  おじさんといっても、僕は武蔵おじさんの事を全然知らない。

  というより、おじさんだけでなく親戚というもの自体に、幼い頃から全く縁がなかった。

  熊獣人のお父さんと人間のお母さんが結婚をしたいと、お互いの親族に報告した時、どちらからも大反対されたそうだ。

  人間と獣人の結婚は、今でも眉を顰められる話だけど、当時は今の比ではないくらい風当たりが強かった。

  両親はなんとか説得しようとしたのだけど、結局わかってもらえなくて、どちらの親族からも絶縁される事になってしまった。

  だから、僕は小さい頃から、親戚の人に会ったこともなかった。

  友達が『おじさんからお小遣いを貰った』『おじいちゃんからお年玉を貰えた』と嬉しそうに話すのを、羨ましいなとは思いつつも、それはまるでどこか遠い国の話のように感じていた。

  話が逸れてしまったけれど……そんな大反対にも負けずにお母さんと結婚したお父さんは、僕が3歳の時に病気で死んでしまった。

  あまりにも幼かったせいか、僕にはお父さんの記憶が全然ない。

  だから、お母さんが聞かせてくれる思い出話や、家族で撮った写真から、お父さんの事を知っていった。

  写真の中のお父さんは、人間として生まれた僕と違って、まるで山のように体が大きくて、顔も男らしくて、とても格好いい。

  眉毛がとても太くて、大きな口から太い牙を覗かせる厳つい顔は、小さい子が見たら泣いてしまいそうだけれど、赤ん坊の僕を抱いて笑っている顔は、とても優しそうだった。

  お母さん似の僕は、小さい頃から女の子に間違われてしまうぐらい、中性的な顔立ちをしていた。

  それは16歳になった今もあまり変わらなくて、体がヒョロヒョロと痩せっぽっちなせいもあってか、学校の同級生から『女みたいにナヨナヨしている』って揶揄われる事も少なくなかった。

  だから、僕もお父さんみたいな熊獣人だったら……それか大きくて男らしい所を、少しでも分けてもらえていたら……なんて写真を見ながら思う事も多かった。

  お父さんが死んでしまった後、お母さんが必死になって働いてくれたおかげで、ひもじい思いをした事はなかった。

  だけど、そんなお母さんが仕事中に倒れて、すぐに救急車で運ばれたけど、そのまま入院する事になってしまった。

  大したことはないって教えてもらったけれど、一週間ぐらい安静のために入院しなくちゃいけないらしい。

  その間に僕の面倒を見てくれる人を探したら、親戚の中で唯一お父さんとお母さんの結婚に理解を示してくれていた武蔵おじさんが、快く引き受けてくれたんだそうだ。

  面倒を見てくれる人が見つかったのは、本当に良かった。

  だけど、親戚の人に会うのも初めてなのに、少しの間とはいえ一緒に過ごさなくちゃいけないなんて、正直、凄く恐い。

  それに、僕に心配をかけまいとして黙っているだけで、お母さんの体も本当は大丈夫じゃないのかもしれない。

  考えれば考えるほど、恐い事、不安な事がいっぱいで……ちょっとでも気を緩めてしまったら、涙が零れてしまいそうだった。

  僕……これからどうなっちゃうんだろう。

  ***

  ようやく目的地の『山奥駅』に着いて列車を降りると、目の前に広がってきたのは、見渡す限りの大自然だった。

  舗装がボロボロの道路や、ちらほらと民家も見えるけれど、名前の通りに山奥って感じの場所だ。

  線路沿いの小さなホームには、僕の他には誰もいなくて、まるで時代劇にでも出てきそうな古い木造の駅舎の中も、ひと気がなくてガランとしている。

  プゥッーー!!!!

  「わっ!?」

  まるで別世界に来てしまったようで戸惑っていると、大きな汽笛の音が後ろから鳴り響いて、思わず声を出して驚いてしまった。

  プシュゥ……ガゴッ……ガタンゴトン……ガタンゴトン……

  列車はゆっくりと動き出すと、徐々に速度を上げていき、やがて走り去って見えなくなってしまった。

  列車がいなくなると、誰もいない世界にひとりぼっちで取り残されてしまったような気持ちになって、恐くて堪らなくなってしまった。

  慌ててキョロキョロと辺りを見回すと、少し離れた所に、駅員さんの立っている改札口を見つけることが出来た。

  自分以外にも人がいた事にホッとして、すぐにそこへ向かうと、駅員さんに切符を渡して、そのまま駅を出て行った。

  「おっ、来た来た!」

  「えっ?」

  突然、近くから野太い声が聞こえてきたので、反射的に声のする方を振り向いてみると、駅前のボロボロのベンチに、とても大きな熊獣人の人が座っていた。

  その人の姿を見た瞬間、驚きのあまり心臓が止まってしまいそうになった。

  「お、お父さん……?」

  声にもならない声でそう呟きながらも、自分の目に映っている光景が信じられなくて、もっとよく目を凝らして、その人の事を見てみた。

  山のように大きな体、小さな子が見たら泣かれてしまいそうなほどの厳つい顔、藍染の甚平からはみ出ている赤茶色の毛。

  そこにいた人の姿は、何度も何度も写真で見たお父さんと瓜二つだった。

  口をパクパクさせながら固まってしまっていると、その人はベンチからのっそりと立ち上がって、ノシノシと僕の方へ向かって歩いてきた。

  そうして目の前まで来たその人は、縦にも横にも本当に大きくて、その大きな体で向こうの景色が隠れて見えなくなってしまうほどだった。

  ドキドキしながら顔を上げてみると、その人は僕の目を見つめながら、ニッコリと顔を綻ばせた。

  「お前さん、ター坊やろう?大きくなったなぁ。武蔵おっちゃんやで!」

  「あっ……た、武蔵おじさんですか?……こ、こんにちは!」

  ぼんやりとしてしまっていたけど、武蔵という名前を聞くとハッとして、慌ててお辞儀をしながら挨拶をした。

  びっくりした……あまりにも似てるから、本当にお父さんかと思っちゃった。

  でも、こうして近くで改めてよく見てみると、武蔵おじさんは全体的にとてもふっくらしていて、写真の中のお父さんよりもずっと太っている気がした。

  お父さんと同じ赤茶色の体毛も、歳のせいかは分からないけど、枯葉みたいにくすんで見える。

  「なんや、他人行儀にしよって……まぁ、仕方あらへんか。最後にター坊と会うたのは、お前さんがまだ3歳の時やったからなぁ」

  「えっ?武蔵おじさんと僕は、会った事があるのですか?」

  「そや。武雄が……お前の父ちゃんが入院した時に、奥さん一人では大変やと思うて、しばらく手伝いに行っとったんよ」

  「ぜ、全然知りませんでした……」

  「……そうか。奥さん、やっぱしワシの事を……」

  「えっ?」

  「……いや、なんでもあらへん。それよりター坊、そないな堅苦しい喋り方せんでええ。あと武蔵おじさんなんて呼ばんで、気安くおっちゃんって呼びぃ!」

  「えっ!?その……おじさんでは、ダメなのですか?」

  「ダメっちゅう訳やないんやけど……お前さんの面倒を見とった時は、ワシの事を『おっちゃん、おっちゃん』呼んでくれとったさかい、仰々しくおじさんなんて呼ばれてまうと、なんか調子が狂ってしまうんよ」

  「そ、そうですか……じゃあ……お、おっちゃん」

  「おっ!ええなぁ。やっぱしター坊には、おっちゃん言うて貰えると嬉しいわぁ!」

  そう言うと、武蔵おじさん……もといおっちゃんは、ニッコリと満面の笑みを浮かべた。

  それから腰を屈めて、僕の頭にポンと手を置いたと思ったら、なんとワシワシと撫で始めた。

  「わっ!?ぼ、僕は、もう子供じゃないですっ!」

  「ガッハッハ!ワシから見たら、ター坊はまだまだ子供やで!」

  抗議する僕をよそに、おっちゃんは大きな口を開けて豪快に笑いながら、大きな手のひらで頭を撫で続けた。

  小さな子供みたいに頭を撫でられるなんて、本当ならとても嫌な筈なのに、どうしてか全然嫌じゃなかった。

  それでもやっぱり凄く恥ずかしくて、顔がカァッと熱くなって赤くなっていくのがわかった。

  「ふふっ、おぼこいなぁ」

  「えっ?おぼこい??」

  「あっ、わからんか。そうやなぁ……おぼこいっちゅうのは簡単に言うと、かわええって事や」

  「えっ!?」

  その言葉に、ただでさえ赤かった顔がますます赤くなってしまった。

  それと一緒に心臓も大きく高鳴り出して、言われた言葉が何度も頭の中で繰り返されていく。

  「おっと、そろそろ出発せんと日が暮れてまうな。おっちゃんの家は山ん中にあるさかい、はぐれんようにしっかりとついてくるんやで!」

  おっちゃんはそう言うと、僕の荷物をヒョイっと取り上げて、軽々と持ち上げた。

  それから僕の背中をポンポンと叩くと、そのまま大股でノシノシと歩き始めてしまった。

  惚けたようにポーッとしてしまっていたけれど、少しずつ遠ざかっていくおっちゃんの後ろ姿に気付くと、ハッと我に返った。

  「お、おっちゃん、待って!」

  ドキドキとうるさいくらいに心臓の音が鳴り響く中、慌てておっちゃんの大きな背中を追いかけた。

  ***

  「ほらっ、おっちゃんの家が見えてきたで!」

  「ふぅ……ふぅ……ほ、本当だ」

  険しい山道を何十分と歩いて、ヘトヘトになりながらも、ようやくおっちゃんの家に着いた。

  駅から出発した時には、夕日がまだ輝いていたけれど、今ではもうすっかり沈みかけて、薄暗くなってしまっていた。

  おっちゃんの家は、さっきの言葉通りに山の中に建っていたのだけれど、何だか不思議な造りをしていた。

  トタン屋根の古めかしい石壁の建物が、二つ並んで建っているのだけど、片方の建物からは物凄く高い煙突が伸びていて、たくさんの丸太も積んである。

  「おっちゃんの家、凄く高い煙突があるけど……もしかしてお風呂屋さんなの?」

  「へっ?……あっ、そういや言うとらんかったな。実はおっちゃんな、こう見えて陶芸家なんよ!」

  「えぇっ!?と、陶芸家の人って初めて会ったかも……」

  「ガッハッハ!まぁ、陶芸家なんて言うても、そないに大したもんやないんやけどな。焼いてもあんまし売れへんさかい、食ってくだけで精一杯や!」

  おっちゃんはそう言って謙遜していたけれど、豪快に笑うその顔は、とても自慢げで嬉しそうだった。

  「ワシはちょっと窯の方を見て来なあかんさかい。鍵は開いとるから、すまんけど先に家ん中でくつろいどいてや」

  「う、うん。わかった」

  僕の肩をポンポンと叩くと、おっちゃんは高い煙突のある建物の方へ歩いていった。

  そんなおっちゃんの背中を見送った後、僕はもう一つの建物に歩いていって、扉の前まで来ると、取っ手に手を掛けた。

  そのままギシギシと滑りが悪い引き戸を頑張って開けると、途端に中に籠っていた畳や木、土っぽさの入り混じった匂いがフワァッと鼻に届いてきた。

  「お、お邪魔します……」

  誰に言うでもなくそう呟くと、おっちゃんの家の中に遠慮がちに足を踏み入れてみる。

  石造りの玄関には、おっちゃんが使っているであろう雪駄などの履き物がいくつか並んでいた。

  端っこの方に自分の靴を揃えて脱ぐと、そろそろと板の間に上がる。

  板の間から伸びる廊下の右手には障子戸がされていて、左手にはガラス戸がされている所と、奥には台所っぽい所が見えた。

  なんだか、時代劇に出てくるみたいな家だなぁ。

  そんな事を思いながらも、あんまり人の家をジロジロ見ちゃダメだと思って、居間だと思わしき障子戸のされている部屋に入ってみた。

  その部屋には畳が敷かれていて、座布団とちゃぶ台や棚、あとは細々としたものが少し置かれているだけの、とても小ぢんまりとした部屋だった。

  おっちゃんの印象から、なんとなく散らかっている部屋を想像していたので意外だった。

  ……と思ったら、部屋の奥の半開きの襖の先に、敷かれっぱなしの布団と脱ぎっぱなしの寝巻きが落ちているのが見えた。

  おっちゃんの印象通りの寝室の様子に、つい「ふふっ」と笑ってしまった。

  「なんや?ひとりでニヤニヤしよって」

  「わぁっ!?」

  突然、すぐ後ろから聞こえてきたおっちゃんの声に、飛び上ってしまいそうな程驚いてしまった。

  慌てて振り返ると、おっちゃんが目を丸くして、僕のことを見下ろしていた。

  「な、なんや……そないに驚かんでもええやろうに」

  「ご、ごめんなさい!ちょっと緊張しちゃって……」

  「ガッハッハ!そかそか。緊張なんかせんでええ。自分のウチやと思うて、遠慮なくくつろいでな!」

  「う、うん」

  おっちゃんは部屋の中に入っていくと、天井からぶら下がっている照明の紐を引っ張った。

  パチンっと軽い音がして、丸い蛍光灯が何度かチカチカと点滅した後にようやく電気が点くと、薄暗かった部屋に灯りが満ちていった。

  「どら、長旅で腹減ったやろう?今日はター坊が来てくれたさかい、村一番の寿司屋から美味い寿司買うといたで!」

  「えっ!?そ、そんな……お寿司なんて高いもの……」

  グゥー……

  お寿司なんて聞いてとてもびっくりしてしまったのだけど、空腹感が込み上げてきて、思わずお腹が鳴ってしまった。

  それがとても恥ずかしくて、慌ててお腹を抑えると、豪快な笑い声が聞こえてきた。

  「ガッハッハ!お腹さんは正直やなぁ。子供がそないな気を使わんでええ。すぐ用意するさかい、ちょっと待っとってな!」

  恥ずかしくて顔を赤らめている僕の頭をポンポンと叩くと、おっちゃんはノシノシと足早に部屋を出て行った。

  お寿司なんて、何年ぶりだろう。

  これからお寿司を食べられるんだと思うと、昔食べたお寿司の味を思い出して、ついつい涎が出てきてしまった。

  慌てて口元をゴシゴシと袖で拭うと、ちゃぶ台の前に正座をして座って、おっちゃんがお寿司やお茶をちゃぶ台に並べてくれているのを、ワクワクしながら見ていた。

  おっちゃんが用意してくれたお寿司は、大好きなイクラやマグロも沢山あって、凄く美味しかった。

  僕の好きな寿司ネタを聞いたおっちゃんは、自分の分のイクラやマグロも寄越してくれた。

  さすがに悪いと思って遠慮したのだけど、するとおっちゃんは「子供が遠慮するんやないっ!」と怒ったような顔で僕の額にデコピンをすると、ズイッと寿司皿を押して、食べるように促してくれた。

  どうしようか迷ったけど、やっぱり食べたくて仕方なくて、貰ったマグロをオドオドしながらも口に運んだ。

  僕が食べるのを見たおっちゃんは、ニコニコしながらウンウンと頷いていて、なんだか嬉しそうだった。

  ………

  ………………

  ………………………

  「ふぅ……食った食った。ご馳走さん!」

  「ご、ご馳走様でした!その……お寿司、凄く美味しかった!」

  「そかそか!そら良かったわ。また食わせたる……って、言うてやりたい所なんやけど……今日みたいなんは特別やさかい。明日からはおっちゃんの手料理になってまうから、ター坊の口に合わんかもしれんけど、堪忍してな!」

  「うん!」

  「あっ、そろそろ風呂が沸いた頃やな。ター坊、一緒に入るで!」

  「えっ!?で、でも……」

  「なんや、おっちゃんと風呂に入るの嫌か?」

  「う、ううん。そうじゃなくて、その……誰かとお風呂に入るのなんて、ちっちゃい頃以来だから……その……は、恥ずかしい……」

  「ガッハッハ!なんや、そないな事か。ター坊、もう下の毛は生えとるんやろう?」

  「そ、それは……は、生えてるけど」

  「それやったら、もう一丁前や!なんも恥ずかしい事なんかないさかい。ほらっ、モタモタしとると湯が冷めてまう。ちゃちゃっと支度しぃ!」

  「う、うんっ……」

  心臓の音が聞こえてしまうぐらいドキドキしてしまっている中、持ってきた鞄を漁って、着替えの下着やタオルを取り出すと、おっちゃんと一緒にお風呂場へと向かった。

  ***

  脱衣所に着くと、おっちゃんはすぐに甚平をスルスルと脱ぎ始めた。

  ドキドキしながら、気付かれないように目線を向けると、なんとおっちゃんは褌を穿いていた。

  褌なんてテレビでしか見た事がなくて、自分の目で見るのは初めてだった。

  おっちゃんの大きな体に、白い褌はとても似合っていて凄く格好いい。

  すると、おっちゃんが褌の前垂れの部分を持ち上げたかと思ったら、その下に隠れていた結び目を、太い指で器用に解き始めた。

  「んっ?なんや、ター坊全然脱いどらんやないか」

  「えっ!?」

  褌を脱ぐ姿に見入っていた所を、急に話しかけられて、心臓が飛び出そうになった。

  おっちゃんを見るのに夢中になっていた僕は、その言葉の通り、上着すら脱いでいなかった。

  「そ、その……あの……えっと」

  なんて答えたらいいか分からなくて、しどろもどろになってしまっていると、不思議そうにこちらを見ていたおっちゃんは、急に何かに気付いた様に顔をハッとさせた。

  「そうか……年頃の子やもんなぁ。誰かと一緒やと、服を脱ぐのも恥ずかしいんやな」

  「えっ?」

  「すまんすまん。おっちゃん、でりかしー……やったか?それが足りんかったわ」

  なんだか勘違いしている風なおっちゃんは、慣れた手つきで褌を素早く脱ぐと、ガラス戸を開けてお風呂場に入って行った。

  それから戸が閉められると、すぐにガラス戸越しにおっちゃんの声が聞こえてきた。

  「これでだんないやろ?ター坊も、はよ脱いでおいでな!」

  「う、うん」

  返事をすると、少ししてお風呂場から、ザバァっとお湯の音が聞こえてきた。

  なんだかよく分からないけど、体を見ていた事がバレなかったみたいだから、ひとまずホッとした。

  けれど、それも束の間で、モタモタしていてはいけないと大急ぎで服を脱ぐと、今度は違う事で物凄く困ってしまった。

  裸になった僕の股間では、ちんちんが上を向いて起き上がって、カチカチに固くなってしまっていたのだ。

  なんとか元に戻そうと『小さくなれ……小さくなれ……』と念じてみたりするけど、一向に収まる気配がない。

  それどころか、お風呂場からザパザパとお湯の音が聞こえてくるたびに、さっき見たおっちゃんの裸がありありと頭に浮かんでしまって、尚更固くなってしまう。

  「おーい!ター坊、だんないか?」

  「う、うんっ……大丈夫!」

  四苦八苦していると、お風呂場からおっちゃんに声を掛けられてしまった。

  これ以上モタモタしていると、怪しまれてしまうかもしれない。

  あれこれ考えを巡らせた末に、見えないように両手でしっかりとちんちんを覆い隠す事にすると、覚悟を決めて、お風呂場へと入って行った。

  ガラァッ……

  「おっ!来た来た」

  「お、おまたせ……」

  湯気が立ちこめるお風呂場で、おっちゃんは床の上に胡座をかいて、石鹸で体を洗っていた。

  泡だらけのおっちゃんの体は、体毛がお湯に濡れたせいか、体のラインがくっきりと見えるようになっていた。

  大きな体は肩も胸も分厚くて、腕なんかは丸太みたいに太い。

  大きなお腹の下に見えるちんちんも、僕のものなんかとは比べ物にならないぐらい大きかった。

  どこもかしこも太くて、大きくて……凄く男らしい。

  そんなおっちゃんの体に、つい惚れ惚れとしながら見入ってしまう。

  「ター坊?そないなトコでぼーっと突っ立って、どないした?」

  「あっ!な、なんでもないよ」

  「そうか?それやったらええけど……どらっ、おっちゃんが体を洗ってやるさかい。こっち来て座りい」

  「えっ!?……う、うん」

  おっちゃんの言葉に戸惑ってしまったけれど、さっきみたいに変な気を遣わせてしまったら申し訳ないと思って、言われた通りにする事にした。

  おずおずとおっちゃんの前まで行き、向かい合うように腰を下ろすと、おっちゃんの真似をして胡座をかいて座ってみた。

  すると、なぜかおっちゃんは頬を緩ませて「ふふっ」と笑った。

  そんなおっちゃんの様子に、なにか無作法とか恥ずかしい真似をしてしまったのではないかと、少し心配になってしまう。

  「よっしゃ、ゴシゴシするで!もし痛かったら、すぐに言うんやぞ?」

  「わ、わかった」

  おっちゃんは石鹸を擦って手を泡だらけにすると、僕の体に手のひらを当てて、ゴシゴシと洗い始めてくれた。

  グローブのような大きな手のひらは、ゴツゴツとしているけど柔らかくて、洗ってもらっていると凄く気持ちいい。

  でも、脇腹とか敏感な部分を洗われると、とてもくすぐったくて、思わず体を捩ってしまいそうだった。

  「ター坊、気持ちええか?」

  「うん。気持ちいいよ」

  「そかそか!」

  僕の返事を聞いたおっちゃんは、ニッコリと顔を綻ばせて、なんだかとても嬉しそうだった。

  その顔はとても優しくて、写真の中のお父さんの笑顔にそっくりだった。

  もしお父さんが生きていたら、こんな風に体を洗ってくれたのかな……

  ふとそんな事を考えてしまって、少し寂しい気持ちになった。

  だけど、こうしておっちゃんに体を洗ってもらえてる事が、それ以上に嬉しかった。

  「よし、あらかた洗い終わったさかい。あと細かいとこは自分で洗ぃ」

  「う、うん。ありがとう」

  上半身や足、恥ずかしい部分以外を全部洗ってくれると、おっちゃんがポンと石鹸を手渡してくれた。

  そうすると、おっちゃんは自分の体に残っている泡を、手で撫でるように擦って、手のひらに泡を纏わせると、自分の洗い残している部分を洗い始めた。

  僕もそれに倣って、渡してもらった石鹸をひとまず傍に置くと、片手でしっかりとアソコを隠したまま、洗ってもらっていないお尻の部分を、体に残っている泡を伸ばしながら洗った。

  そうしながらも、やっぱりおっちゃんの事が気になって、どうしても横目で見てしまう。

  おっちゃんは大木みたいな太い足を洗い終わると、手のひら同士を擦り合わせて泡立てて、今度はちんちんを洗い始めた。

  そこは他の部分よりも黒ずんでいて、毛も薄っすらとしか生えていないように見えた。

  狸の置物みたいなでっかい玉袋をワシャワシャと揉み洗いすると、次はフランクルトみたいに太い竿を指で摘んで、先っぽまで被っている皮をグイッと剥いた。

  すると、それまで黒ずんだ厚い皮に隠れていた薄桃色の亀頭が、ついに露わになった。

  凄い……!!

  目の前の光景に、興奮のあまり体がブルブルと震え出す。

  口の中に溢れてくる唾をゴクンッと飲み込んで、瞬きする間も惜しんで、おっちゃんのちんちんを見つめた。

  「そ、そないに熱心に見られてまうと……おっちゃん、流石に恥ずかしいなぁ」

  「えっ?」

  ふいに聞こえてきた声に顔を上げると、とても照れくさそうなおっちゃんの顔が見えてきた。

  顔を赤らめて、バツが悪そうにしている様子に、自分がちんちんをジロジロ見ていた事がバレバレだったんだと、すぐに気付いた。

  「ご、ごめんなさいっ……そ、そのっ……えっと……」

  「だ、だんないっ!謝ったりなんかせんでええ。ター坊の年頃やったら、大人のもんがどんなか気になって、しゃあないもんやさかい」

  恥ずかしさと情けない気持ちでいっぱいで、震えながら俯いてしまっていると、おっちゃんがそう言いながら、頭を優しく撫でてくれた。

  「う、うん……ごめんなさい」

  「こらっ!謝らんでええって言うたやろうが!」

  「痛っ!!」

  ついまた謝ってしまってしまうと、おっちゃんがおでこにバシンッとデコピンをしてきた。

  そんなに痛い訳では無いのだけど、つい反射的におでこを両手で庇ってしまう。

  「んっ?……おっ、ター坊元気やなぁ!」

  「えっ?」

  おっちゃんの視線の先を追うと、なんと僕のちんちんが丸見えになってしまっていた。

  すぐに大慌てで隠したけど、もう後の祭りで……大きくなっている所を、ばっちり見られてしまった。

  「こ、これは……その……」

  「ガッハッハ!そないに慌てんでええ。若いとすぐに大きくなってしまうもんや!」

  「う、うん」

  「そのまんまやと苦しいやろ?もしセンズリしたかったら、ワシは先に上がっとくさかい。ここでしときぃ」

  「えっ?センズリって……なに?」

  「へっ?……なにって、そらぁ……あっ、そうか……武雄がおらんさかい、教えるもんがおらんのか……」

  センズリという初めて聞く言葉に、不思議に思って聞き返すと、おっちゃんはハッとした顔をしたかと思ったら、今度は神妙な顔になって、ブツブツと独り言を言い始めた。

  なんだか考え込む様にしていたけど、少しして、真面目な顔をして僕の事を見たかと思ったら、自分の太腿をパシーンと勢いよく叩いた。

  「よしっ!武雄に代わって、おっちゃんが責任を持ってセンズリをきっちりと教えたる。しっかりと見て覚えるんやで!」

  「わ、わかった!」

  「なんも難しい事はあらへん。今みたいにちんぽこが大きくなったら、手で摘むなり握るなりして、痛ない様に擦ればええだけや。そうやな……こないな風に……」

  そう言いながら、おっちゃんは足を大きく開いて見えやすくしてくれると、ちんちんの竿を握って、上下に擦り始めた。

  手を動かすたびに、皮が剥けて、亀頭が見えたり、また被ったりする。

  やっぱり……これ、オナニーだ……!!

  センズリと聞いた時はわからなかったけど、今して見せてくれている事から、センズリとはオナニーの事なんだと、すぐにわかった。

  僕ももう16歳だから、オナニーの事はもちろん知っているし、した事だって数え切れないぐらいある。

  だから本当はおっちゃんに、今からでもちゃんとそう伝えるべきだったのだけど……言えなかった。

  何も言わずに、おっちゃんがちんちんを擦る姿を食い入って見つめた。

  「ふぅ……ふぅ……」

  石鹸の泡に塗れたちんちんの皮が、下りたり戻ったりする度に、クチュクチュと粘っこい音がして、それは段々と荒くなっていくおっちゃんの呼吸と合わさりながら、お風呂場に響き渡った。

  すると、それまでだらりと垂れていた先っぽが、ムックリと頭をもたげたかと思ったら、あっという間に膨れ上がって、カチカチに立ち上がった。

  凄いっ……!!

  大きくなったおっちゃんのちんちんは、柔らかかった時の倍くらい太くて、まるで棍棒みたいだった。

  それを目の当たりにした僕はもう我慢できなくなって、股間を隠していた手を離すと、ちんちんの竿を摘んで、一心不乱に擦り始めた。

  「うっ……んぅっ……あっ……」

  「ふぅっ……ふぅっ……おっ……そうそう、その調子や。ター坊、上手やで!」

  夢中になってちんちんを擦る僕に、おっちゃんは頬を緩ませて、ニッコリと笑みを浮かべながら褒めてくれた。

  その顔は、やっぱりお父さんの笑顔にそっくりで……初めてオナニーをした日の事を……お父さんの写真を見ながら、出してしまった時の事を思い出した。

  とてもイケナイ事なのに……気持ち良くて、心地よくて……嬉しい。

  「おとうっ……おっちゃんっ!ぼ、僕……出ちゃうっ!!」

  「そかそかっ!おしっこやないさかい。心配せんで、そのまま出しぃ……ぐぅっ……しばらくやっとらんかったさかい……おっちゃんも出そうや……」

  「んっ……うっ……んぅっ!!」

  「ふぅっ……ぐっ……んぐぅっ!!!!」

  ドピュッ!!ピュッ……

  ドビュッッ!!!!ドビュッ!!ドプッ……ドプッ……

  僕が射精するのと同時に、おっちゃんも大きなちんちんから、まるで噴水みたいに精子を凄い勢いで噴き出した。

  僕はピュッピュと出したら止まっちゃったけど、おっちゃんは何回も先っぽの割れ目から、凄い量の精子を出した。

  僕はもう射精が止まっていたのに、手の動きを止めることが出来なくて、おっちゃんの事を見ながら、何回も何回もちんちんを擦った。

  少しして、おっちゃんのちんちんから精子が出なくなると、段々と縮んでいって、柔らかくなるとダランと垂れ下がっていった。

  そんなおっちゃんの姿に、僕も少しずつ落ち着きを取り戻していって、それまで激しく動かしていた手の動きが、自然に止まっていった。

  おっちゃんの荒い息遣いが聞こえてきて、見上げてみると、おっちゃんは両目を瞑って疲れ切った様な顔で、ゼェゼェと呼吸を整えていた。

  そんなおっちゃんの様子をうかがっていると、ふいにおっちゃんの目がパチっと開いて、お互いの視線が交わった。

  途端にドキッと心臓が跳ね上がって、とても悪い事をしてしまった様な気持ちがいっぱいに込み上がってきた。

  すぐに慌てて目線を逸らすと、顔を深く俯かせた。

  すると、そんな僕の頭にポンっと大きな手のひらが乗せられたかと思ったら、ワシワシと撫でられた。

  「ようやった!今のがセンズリやさかい。これでター坊も男として一人前や!」

  とても嬉しそうなおっちゃんの声が、頭の上から聞こえてくる。

  だけど、とても恥ずかしくて、照れくさくて……おっちゃんの顔を見る事も出来ずに、コクコクと頷くことしかできなかった。

  「ぎょうさん出したなぁ……えらいで、ター坊!」

  ***

  あれからお湯に浸かって、しっかりと温まった後、お風呂から上がった僕とおっちゃんは、少し早いけど寝る事にした。

  今日は慣れない列車に何時間も乗ったりした事もあってか、もうクタクタに疲れていたから良かった。

  布団が敷きっぱなしだった部屋に足を踏み入れると、今まで人が居なかったせいもあってか、居間よりもずっとひんやりと冷えた空気が漂っていた。

  おっちゃんは敷きっぱなしだった布団を、横に引っ張ってスペースをつくると、すぐそばにもう一つ布団を敷いてくれた。

  「ター坊、布団敷けたで!」

  「う、うん。ありがとう」

  敷いてもらった布団に潜り込むと、ふかふかとした柔らかさと、ひんやりとした冷たさに体が包まれた。

  「それじゃあ電気消すで。こだまつけとくさかいな」

  「うん」

  おっちゃんが天井からぶら下がる照明の紐を1回、2回と引くと、白色の蛍光灯が段階的に消えて、代わりに橙色の仄かな灯りが、部屋をぼんやりと照らした。

  薄暗い灯りの中、おっちゃんは「よっこらせっ」と自分の布団に潜り込むと、ゴロンと横になった。

  そんなおっちゃんの様子を見ていると、ふいに目が合った。

  「寝心地はどうや?枕、高かったりせぇへんか?」

  「ううん。大丈夫、ちょうどいいよ」

  「そかそか!それやったら良かった」

  こだまの心許ない灯りの下だけど、おっちゃんがニッコリと笑みを浮かべているのが、ぼんやりと見える。

  そんなおっちゃんの顔を見ていると、嬉しい気持ちと恥ずかしい気持ちが、綯い交ぜになって湧き上がってきた。

  なんだかとても照れくさくて、そんな心持ちを隠す様に、布団を深く被って鼻から下を覆った。

  「そないに布団を被って……もしかして寒いんか?」

  「う、ううん。そんな事ないよ」

  「ほんまか?もし寒かったり、心細かったりしたら、いつでもおっちゃんの布団に入ってきてええからな!」

  「そ、そんなことしないよ!僕、もうそんな歳じゃないもの……」

  「ガッハッハ!そかそか……今日は長旅で疲れたやろう?そろそろ寝よか」

  「う、うん……おっちゃん、おやすみなさい」

  「おう。おやすみ、ター坊」

  おやすみなさいの挨拶をすると、横向きにしていた体を、仰向けの姿勢に戻した。

  さっきまでひんやりとしていた布団は、ちょっとだけど温かくなってきている。

  だけど、少し体を動かすと、新たに触れる部分はやっぱり冷たくて、ブルっと軽く身震いをしてしまった。

  そんな寒気を紛らわそうと、こだまの灯りに照らされた天井を目を凝らして見つめてみた。

  とても古めかしい感じの木造りの天井は、色んな形の木目が走っていて、ジッと見ているうちに、なんだか動物や人の顔のように見えてくる。

  すると、一度そう見えてしまったせいか、たくさんのいびつで不気味な顔が、一斉にこっちを睨んでいる様な気がして……なんだかとても怖くなってしまった。

  怖い天井を見たくなくて、慌てて体を横向きにすると、仰向けのまま目を瞑っているおっちゃんの顔が見えた。

  もう眠っちゃったのかな……

  『いつでもおっちゃんの布団に入ってきてええからな!』

  おっちゃんの事を見ていると、さっき言ってくれた言葉が、頭の中に思い起こされていった。

  おっちゃんの布団に入ったら、どんな感じなんだろう。

  おっちゃんと一緒に寝たら……お父さんと一緒に寝たら、どんな感じなんだろう。

  温かいのかな?

  嬉しいのかな?

  ホッとするのかな?

  抱きしめてくれるのかな?

  どんな感じなのか……知りたい。

  「おっちゃん……起きてる?」

  「……んっ?おう、起きとるよ。ター坊、どないした?」

  「その……本当に、そっちに行っても……いいの?」

  「ふふっ……もちろんや。男に二言はないで!」

  そう言うと、おっちゃんは布団の端を摘んでめくり上げると、ポンポンと自分の隣を叩いて、促してくれた。

  「ほらっ、遠慮なんかせんでええ!」

  「う、うん」

  自分の枕を手に取ると、ドキドキしながら膝立ちで、おっちゃんの布団にまで移動した。

  そうしておっちゃんの枕の隣に自分の枕を置くと、めくってくれていた布団の中に、恐る恐る体を潜り込ませた。

  そうして体を横たえると、おっちゃんがすぐに布団を掛けてくれた。

  枕をピッタリくっつけたからか、すぐ目の前におっちゃんの顔がある。

  暗さに目が慣れてきたからか、さっきよりもはっきりと、ニッコリと頬を緩ませているおっちゃんの優しそうな顔が見えた。

  「どや?一緒に寝ると、温いし心細くもないやろう?」

  「う、うんっ……」

  とても優しい声でそう語りかけてくれると、太い腕を伸ばして、頭をそっと撫でてくれた。

  大きな手のひらは、とてもあったかい。

  心地よさに目を細めていると、その手がゆっくりと離れていってしまった。

  途端に寂しさを感じたけど、すぐに脇腹がポンポンと叩かれて、また安心感に包まれた。

  「ゆっくりと休みぃ。おっちゃんがすぐ傍におるさかい、なんも恐い事ないでな」

  「……うん」

  おっちゃんにお腹をポンポンと叩かれていると、急に眠気が込み上げてきて、瞼が重くて堪らなくなった。

  もっと側に寄りたい。

  体温を感じたい。

  ギュッと抱きしめて欲しい。

  色んな想いが心に渦巻いていたけど、それらは徐々に微睡みの海に沈んでいき、ゆっくりと意識そのものが深い眠りへと落ちていった。

  ***

  次の日から、僕はおっちゃんと色んな事をして過ごした。

  おっちゃんの陶芸をする姿を見せてもらって、僕自身もお茶碗を作るのに挑戦させてもらった。

  釣りをした事がないと話したら、近くの川に釣りに連れて行ってもらえた。

  みんな初めての事ばかりで、全然上手に出来なかった。

  だけど、おっちゃんが熱心に教えてくれたから、お茶碗も不恰好だけど完成したし、お魚も何匹か釣る事が出来た。

  自分にそんな事が出来るなんて、全然思っていなかったから、ちゃんと出来た時は凄く嬉しかった。

  そんな風に夕方まで過ごして、夜になるとおっちゃんの作ってくれたご飯を食べてから、一緒にお風呂に入った。

  裸のおっちゃんを前にすると、やっぱりドキドキして、いつも大きくなってしまった。

  だけど、おっちゃんはそれを見ても「若いなぁ」なんて笑うだけで、あの時みたいなエッチな事はもう起きなかった。

  寝る時は布団を隣り合わせて2組敷いていたけれど、やっぱり一緒の布団で寝たくて、なんやかんや理由をつけて、おっちゃんの布団に潜り込んでいた。

  おっちゃんは「しゃあないなぁ」なんてちょっと呆れた様にしていたけど、こだまの灯りにぼんやりと照らされた顔は、いつも嬉しそうだった。

  おっちゃんと一緒にいると嬉しくて、心がお日様に当たっているみたいに温かくなる。

  心臓がドキドキして、顔も体も風邪をひいちゃったみたいに、カッカと熱くなる。

  でも、それだけじゃない。

  なんだか切なくて、胸が締め付けられそうになって、泣いてしまいそうになったりもする。

  お父さんとそっくりだからなのかな。

  それとも、おっちゃんだから、こんな気持ちになるのかな。

  僕はおっちゃんの事が、好き……なのかな。

  ***

  おっちゃんの家にお世話になってから、今日でもう六日目だ。

  明日、僕は自分の家に帰る。

  自分の家に帰ったら、またこれまでと同じ日々が始まる。

  親戚の人なんて『存在しない』お母さんと二人きりの生活。

  『……そうか。奥さん、やっぱしワシの事を……』

  初めて会った時に、おっちゃんがポツリと漏らした言葉。

  あの時は何の事かよく分からなかったけど、今は何となくわかる。

  たぶんお母さんは、おっちゃんの事をよく思っていない。

  おっちゃんだからなのか、親戚の人だからなのかはわからないけど、そう思う。

  だからおっちゃんとは、もしかしたらもう会えないかもしれない。

  そんなのは凄く嫌だけど……仕方ない。

  頑張って僕を育ててくれているお母さんを悲しませたくないから、仕方ない。

  とても悲しいし寂しいけど、仕方ない。

  仕方ない事を考えても仕方ないから、何か別の事を考えよう。

  そう思って、気持ちを切り替える為に、何かする事がないか探してみる事にした。

  ちゃぶ台の上のお茶を一口飲んで、気持ちを落ち着かせてから、キョロキョロと周りを見回してみる。

  すると、開いた襖の向こうの寝室に、敷きっぱなしの布団の他に、おっちゃんの着物があちこちに脱ぎ捨てられていたり、細々としたものが散らかっているのが見えてきた。

  そうだ!お世話になったお返しに、きれいに片付けてあげよう。

  そう思いつくと、心の中にあるモヤモヤを振り払う様に、勢いよく立ち上がって寝室に向かった。

  おっちゃんは、隣の建物で陶芸の仕事をしている。

  戻ってきた時に部屋がきれいになっていたら、きっと凄く喜んで『ようやった!』って頭を撫でて、褒めてくれるはずだ。

  そう思うと、ワクワクして気持ちが浮き立っていった。

  ひとまず畳の上に落ちてる着物を拾い上げて、洗濯籠に入れてあげよう。

  おっちゃんの着物は凄く大きくて、一つ二つと抱えると、ずっしりとした重みが腕に伝わってくる。

  よいしょ、よいしょと、あちこちに落ちてる着物や肌着を頑張って拾い集める。

  そうしてとりあえず目についた着物を拾い集めると、今度は部屋の片隅に、いつ脱いだのか分からないような着物が、こんもりと積まれているのを見つけた。

  「おっちゃんたら、こんなにたくさん置きっぱなしにして、しょうがないなぁ」

  おっちゃんのあまりの不精ぶりにちょっと呆れてしまいながらも、積まれた着物を少しずつ片付けていった。

  そうして、ようやく最後の一枚になった着物をよいしょっと持ち上げる。

  「あれ?これ、何だろう?」

  するとそこには、なんだか古めかしい感じの箱が、着物の下敷きになって置かれていた。

  その箱は枕ぐらいの大きさで、教科書の写真で見た葛籠のような見た目をしている。

  これって……もしかして宝箱みたいなものかな?

  おっちゃんの自信作の陶器とか……それか、もしかしたら家宝が入っているのかも……!!

  そう思うと好奇心が込み上げてきて、勝手に開けてはいけないとわかっていたけど、我慢出来ずに蓋を持ち上げて、箱の中を覗いてしまった。

  だけど、そんな期待に満ちた僕の目に入ってきたのは、ただの古びた雑誌だった。

  なんだ……宝箱じゃなかったんだ。

  なんてことのない中身に、拍子抜けしてがっかりしてしまった。

  でも、こんな古そうな雑誌なら、読んだことのない昔の漫画とか、なにか面白いものが載ってるかもしれない。

  また好奇心に駆られた僕は、すぐに雑誌を手に取ると、ワクワクしながら開いてみた。

  「えっ!?……な、なにこれ?」

  そうして目に入ってきた雑誌の中身に、驚きのあまり声を上げてしまった。

  そこには若い男の人が、裸で写っている写真がデカデカと載っていた。

  しかも裸なだけじゃなくて、勃起していると思われるちんちんまでもが、モザイク越しに写っていた。

  これって……もしかしてエッチな本?

  エッチな本だなんて、今まで見た事がなかったし、ましてや読んだ事もなかった。

  ドキドキしながら、パラパラとページをめくっていくと、他のページも同じ様に、モデルみたいにスタイルのいい男の人の裸の写真や絵が載っていた。

  そうして次々にページをめくり続けていたけれど、あるページに差し掛かった瞬間、そこに載っているものに目を奪われて、手が止まってしまった。

  それは山のように体の大きい猪獣人のおじさんが、若くて小柄な人間の男の人を組み伏せている写真だった。

  エッチしてるんだ……!!

  そう思い至ると、全身の血が燃え滾らんばかりにカァッと熱くなって、ブルブルと体が震え出した。

  雑誌を持っている手だけじゃなく、膝までもがガクガクと震えてしまって、立っているのもやっとだった。

  ちんちんを触りたい……擦りたい……!!

  頭の中には、もうそれしかなかった。

  窮屈なズボンの中で、僕のちんちんは、これ以上ないってくらいに膨らんで、張り詰めて固くなっていた。

  口の中がカラカラに乾く中、ブルブルと震える右手を動かして、パンツの中に差し込もうとした。

  「……ター坊?」

  「っ!?」

  その時、後ろからおっちゃんの声が聞こえてきて、心臓が止まりそうになった。

  「大きな声が聞こえたもんやさかい、様子を見に来たんやけど……だんないか?」

  「だ、大丈夫っ……なんでもないよ!」

  頭が混乱している中、なんとか誤魔化そうと雑誌を後ろ手に持って、背中に隠しながら振り返ろうとした。

  けれど、焦っていたせいか、手を滑らせてしまい、雑誌は手のひらをすり抜けていってしまった。

  バサッ……

  「あっ!!」

  慌てて足元を見ると、男の人の裸が大写しになっているページが中途半端に開かれている状態で、雑誌は畳の上に落ちていた。

  エッチな本を見た事が、おっちゃんにバレてしまった……

  途端に、猛烈な恥ずかしさと後ろめたさが込み上げてくる。

  まるでオネショをしたのを見つかったみたいで……今にも泣き出してしまいそうだった。

  顔を俯かせて泣くのを堪えていると、おっちゃんの声が聞こえてきた。

  「すまん……見つからん様に、しっかりと隠したつもりやったのに……せやのに、ワシ……ほんまにすまん」

  それは確かにおっちゃんの声だったのだけど、あの男らしいおっちゃんが喋っているとは思えないぐらい、とてもオドオドした弱々しい声だった。

  それが信じられなくて、急いで顔を上げた僕の目に入って来たのは、まるでこの世の終わりみたいな顔をして、大きな体をブルブルと震わせている……怯え切ったおっちゃんの姿だった。

  「お、おっちゃん……」

  そこからなんて声を掛けたらいいのか、全然分からなかった。

  でも、そんなおっちゃんの事をなんとか励ましたくて……口を開かずにはいられなかった。

  「……だんない。ワシは……すぐに工房の方に行くさかい。明日、ター坊が発つまで、絶対に顔を見せたりせぇへん……今日、明日食う分の食べもんも、冷蔵庫にちゃんと入っとる。せやから……ター坊は、なんも心配したりせんでええ」

  「な、なんで……そんなこと、言うの?」

  「なんでって……こないな気色悪い男と一緒におるのなんて……嫌やろう?」

  「そっ、そんな事ないよっ!」

  「……ター坊は、ほんまに優しい子や。……おおきになぁ」

  おっちゃんはとても悲しそうな顔のまま、小さく笑った。

  でも、すぐにクルリと背中を向けてしまったかと思うと……そのまま歩き出してしまった。

  おっちゃんが行っちゃう。

  このままじゃあ……もう二度と会えなくなっちゃう。

  そんなの……そんなのは絶対にいやだ!!

  「おっちゃん行かないでっ!!」

  大声で呼び止めながら、無我夢中で駆け出した。

  そのままおっちゃんを追い越すと、大きな体に正面から力一杯に抱きついて、絶対に行かせまいとした。

  「タ、ター坊っ……!?」

  「僕も……僕もおっちゃんと一緒!だから、気持ち悪くなんかない!絶対に嫌いになったりしない!僕、おっちゃんの事が……大好き!だから、行かないで……僕を置いて、居なくならないでっ!!」

  「ター坊……」

  大声でひとしきり気持ちを伝えると、おっちゃんに抱きついたまま、声をあげて泣いてしまった。

  わんわん泣いていると、ふいに体が何かに包み込まれた。

  気付くと、おっちゃんが僕の事を抱きしめてくれていた。

  あったかくて、柔くて、とてもいい匂いがする。

  抱きしめられるって……こんなにホッとするものなんだ。

  おっちゃんはポンポンと背中を叩きながら、僕の事を優しく抱きしめ続けてくれた。

  ***

  「ター坊、だんないか?」

  「うん……もう大丈夫。泣いちゃってごめんなさい……」

  「ええんよ。ター坊が謝る事なんか、なんもあらへんさかい」

  ようやく泣き止んだ僕に、おっちゃんはそう語りかけながら、優しく頭を撫でてくれた。

  大きな手のひらで撫でられるたびに、嬉しい気持ちがとめどなく湧き上がってくる。

  嬉しくて嬉しくて、もっとおっちゃんに強く抱き付く。

  厚い胸元に顔を強くうずめて、スリスリと頬擦りして甘えると、ポカポカと温かい干したてのお布団みたいなおっちゃんの匂いをより強く感じた。

  もっともっとおっちゃんを感じたくて、精一杯、体を寄せながら、スリスリと身を捩らせる。

  すると、そうしているうちに、嬉しさとも喜びとも違う、燃え滾る様な気持ちが心の奥底から沸々と込み上がってきた。

  その気持ちは瞬く間に広がっていって、堪えようのない火照りとなって、体を侵していった。

  「おっちゃん……おっちゃんっ……!!」

  体中が熱くて、ちんちんが疼いて……我慢出来ない。

  うわごとのようにおっちゃんの名前を呼びながら、何度も腰を振って、ズボンの中でカチカチになっているちんちんを、おっちゃんの太ももに擦り付けた。

  「タ、ター坊っ……そないな事したらあかんっ!」

  おっちゃんは戸惑いに満ちた声を上げると、すぐに僕の肩に両手をおいて、やんわりと体を引き剥がそうとしてきた。

  だけど、僕はそれに抵抗する様に甚平を両手でしっかりと掴むと、絶対に離れまいとした。

  「おっちゃん……僕、おっちゃんと……エッチしたいっ!!」

  「なっ!?あ、あかんっ!お前さんは、武雄の大切な忘れ形見なんや……それだけはあかん」

  「で、でも、おっちゃんも、ちんちん大きくなってる!」

  なんとか僕を引き剥がそうとするおっちゃんのちんちんを、下穿きの上からギュッと握った。

  「うひゃっ!!」

  たちまちにおっちゃんが、上擦った声を上げたかと思ったら、体がビクンと大きく跳ね上がった。

  物凄く大きな反応が返ってきて、とてもびっくりしたけれど、おっちゃんが気持ち良くなってくれた事だけは、なんとなくわかった。

  それがとても嬉しくて、手のひらいっぱいを使っても指が回り切らないぐらい大きなちんちんを、ギュッと揉んだり、ゴシゴシ擦ったりして、夢中になって弄り続けた。

  すると、おっちゃんの両手からは段々と力が抜けていって、ついには肩から滑り落ちると、ダラリと宙に垂れ下がった。

  「うっ……ぐぅっ……あっ……んあっ……」

  おっちゃんは野太い声を上擦らせて善がり声を上げながら、膝をガクガクと震わせた。

  山のように体が大きくて、強くて男らしいあのおっちゃんが……こんな弱っちい僕なんかに、ちんちんを弄られただけで、こんな風になっちゃっている。

  そんなおっちゃんの姿に、まるで自分がとても強い男になったみたいな気がして、カッカっと体中が燃えるように熱くなっていった。

  着物の上から触るのが焦れったくて、我慢出来ずに下履きの中に手を入れると、褌の中からおっちゃんのちんちんを引っ張り出して、直接握りしめた。

  初めて触ったおっちゃんのちんちんは、手が滑ってしまいそうなほどヌメヌメしていて、それでいて火傷しちゃいそうなほど熱い。

  カチンコチンに固くて、手の中でドクンドクンと脈打ちながら、ビクンビクンと魚みたいに跳ねた。

  そんなおっちゃんのちんちんを、すっぽ抜けないようにしっかりと握って、何度も上下に擦り上げていくと、おっちゃんの体の震えは、また一段と大きなものになっていった。

  「あ、あかんっ……このまんまやと……で、出てまうっ……ひうっ……ター坊、手を離しっ……」

  「や、やだ!おっちゃんとエッチするんだもんっ!!」

  ここで止めちゃうのなんて、絶対に嫌だった。

  せめておっちゃんにだけでも出して欲しくて、さらに手を動かす速度を上げると、一心不乱にちんちんを擦り上げた。

  「うひゃあっ……ほ、ほんまに出るっ……ぐぅっ……わ、わかったっ!エッチするさかい、せやからっ……!!」

  その言葉を聞いた瞬間、僕はすぐに手を動かすのを止めて、おっちゃんの顔を見上げた。

  「ほ、本当?」

  「ふぅ……ふぅ……も、もちろんや。男に二言はあらへん!」

  おっちゃんはゼェゼェと荒い呼吸をしながらも、僕の目をしっかりと見つめて、そう答えてくれた。

  それが凄く嬉しくて、たまらずにおっちゃんの体にギュッと抱きついた。

  「嬉しい……おっちゃん、ありがとう!」

  「まったく、この助平坊主は……ほんまにしゃあないなぁ」

  おっちゃんは、少し呆れたような口振りでそう言っていた。

  でも、その声はいつもみたいに優しくて、どこか嬉しそうだった。

  ***

  寝室にやってきた僕達は、敷かれっぱなしの布団の上に腰を下ろした。

  おっちゃんは、バツが悪そうに目をキョロキョロと泳がせていて、まだ迷っているみたいだった。

  だけど、これからおっちゃんとエッチ出来るんだと思うと、僕はもう少しもじっとしていられなかった。

  すぐに膝立ちになると、胡座をかいて座っているおっちゃんに、正面から抱きついた。

  「おっちゃん、好き……大好き……!!」

  「そうか……おおきになぁ。ワシも、ター坊のことが大好きや!」

  おっちゃんは僕の背中に腕をまわして、力強く抱き返してくれた。

  おっちゃんに抱きしめてもらえると、凄く嬉しい。

  でも、少しすると、おっちゃんの両手が背中を離れて肩に置かれたかと思うと、やんわりと体を軽く引き離されてしまった。

  おっちゃんの温もりを失ってしまって、途端に寂しさと不安に包まれる。

  何が悪い事をしてしまったのではないかと、慌てておっちゃんの顔を見上げてみた。

  そうして見えてきたおっちゃんの顔は、ほんのりと赤くなっていて、なんだか緊張しているようだった。

  でも、そこに怒りや嫌悪の色は見えなかったから、ひとまずホッとした。

  すると、そんな僕の頬に、おっちゃんの大きな手のひらが、そっと添えられた。

  大きくてあったかい手が、優しく頬を撫でてくれて、とても気持ちいい。

  気持ち良さに目を細めていると、ふいにおっちゃんの顔がゆっくりと近付いてきた。

  なんだろう?と不思議に思っていると、瞬く間に、僕の視界はおっちゃんの顔でいっぱいになっていった。

  そして、温かくて柔らかい何かが唇に触れて……おっちゃんがキスしてくれたんだとわかった。

  それは凄く気持ち良くて、まるで空を飛んでいるみたいだった。

  チュプッ……

  そんな夢見心地でキスを受け入れていた僕の唇から、音を立てて、おっちゃんの唇が離れていった。

  そうして次第に見えてきたおっちゃんの顔は、さっきとは比べ物にならないくらい赤くなっていた。

  「す、すまん……我慢出来んかった。こないなおっちゃんにされて、嫌やなかったか?」

  「う、ううん。全然嫌なんかじゃないよ。凄く嬉しかった!」

  「そ、そか。それやったら良かった」

  僕の言葉を聞いたおっちゃんは、なんだかホッとした様子だった。

  「えっと……エッチするんやったら、裸にならなあかんでな。ター坊、おっちゃんが服を脱がしたるさかい、バンザイしぃ」

  「う、うん!」

  『エッチ』『裸』とおっちゃんの口から出た言葉に、心臓の鼓動が一気に高鳴っていった。

  大急ぎで両腕を上げると、おっちゃんが小さな子供にするみたいに、スルスルと上を脱がしていってくれた。

  その調子で、下も全部脱がされると、ズボンの中で痛いくらいに張り詰めていたちんちんが、ピンピンに上を向いて露わになった。

  すると、さっきまでは早く脱がして欲しくて堪らなかったのに、丸裸になった途端に、猛烈な恥ずかしさが込み上げてきてしまって、慌てて両手で股間を隠した。

  それでもまだ恥ずかしくて、少しでも裸を隠せるようにと、体も丸く縮こまらせる。

  「そないに恥ずかしがらんでええ。おっちゃんも、すぐに脱ぐさかいな!」

  おっちゃんはそう言うと、すぐに自分の甚平の紐に指を掛けて解くと、スルスルと脱ぎ始めた。

  そうして褌一枚になると、前垂れを持ち上げて、太い指で結び目を解いていく。

  ドキドキしながら見守る僕の前で、おっちゃんもあっという間に丸裸になった。

  「ほら、おっちゃんも裸になったで。これで恥ずかしくないやろう?」

  「う、うん……」

  そう言われたものの、やっぱり凄く恥ずかしくて、アソコを隠したまま動けなくなってしまった。

  裸なんてお風呂で何度も見られているのに、どうしてこんなに恥ずかしいんだろう。

  そうして固まってしまっていると、そんな僕を見かねたのか、おっちゃんは太い腕を伸ばして、僕の体をヒョイっと持ち上げると、向かい合わせにして抱きかかえてくれた。

  「ふふっ……おぼこいなぁ」

  おっちゃんはそう言うと、頭をワシワシと撫でてくれた。

  それがとても嬉しくて、堪らずにおっちゃんの体に精一杯に腕をまわすと、恥ずかしさも忘れて抱きついた。

  ゴワゴワした体毛と柔らかくて弾力のある体は、汗ばんでしっとりとしていて、クンクンと鼻を鳴らすと、いつもよりもずっと強くて濃い匂いがする。

  でも、それがおっちゃんの匂いだと思うと、全然嫌じゃなかった。

  ピッタリと抱き合っているせいか、体の下のほうでは、おっちゃんの大きなお腹に挟まれて、ちんちん同士がくっつき合ってた。

  重なり合っているおっちゃんのちんちんからは、ブニブニとした感触が伝わってきて、こうしてくっつけているだけでも気持ちいいのに、何かの拍子に体が動いてちんちん同士が擦れると、ブルッと身震いしてしまうほどの甘い快感が込み上がってくる。

  もっともっと気持ち良くなりたくて、我慢出来ずに、自分から体を動かしてちんちんを擦り付けてみた。

  最初は気づかれない様に、静かに動いていたのだけど、もっともっと気持ち良くなりたくて、いつしかその動きは、体を大きく揺さぶるものへとなっていた。

  「ター坊、気持ちええか?」

  「あっ……ご、ごめんなさい」

  「なんで謝るんや?おっちゃんとエッチしたかったんやろう?」

  「えっ?今、僕がしているのって……エッチなの?」

  「そや。これは兜合わせっちゅう、れっきとしたエッチやで!」

  「ぼ、僕……おっちゃんとエッチ出来てるんだ……!!」

  そう思い至った瞬間、体中の血が沸騰してしまいそうなほど熱くなって、考える間もなくまた体が動き出していた。

  激しく体を揺すりながら腰を振り始めると、おっちゃんが股を開いて、ちんちんを擦り付けやすくしてくれた。

  お互いの汗と先走りでグッショリと濡れたお腹とちんちんは、まるで油を垂らしたみたいにヌルヌルと滑って、擦れ合う度に、粘ついた水音を立てた。

  「んっ……うっ……あぁっ……んうっ……」

  「ふぅっ……こりゃ、えらい気持ちええわぁ……」

  夢中になって腰を振っていると、頭の上からおっちゃんの声が聞こえてきた。

  ふぅーっと大きく吐き出された息が、頭を撫でていく。

  僕とのエッチで、おっちゃんが気持ち良くなってくれているのが嬉しくて、もっともっと気持ち良くなって欲しかった。

  だけど、僕はもう限界を迎えてしまっていて……今すぐにでも出してしまいそうだった。

  「おっちゃんっ……僕、出ちゃいそうっ!!」

  「そ、そか……おっちゃんも出すさかい、一緒に出すで!」

  そう言うと、おっちゃんは僕の体を抱きかかえながら、自分からも腰を振り始めた。

  「うんっ……んっ……あっ……あぁっ!!!!」

  「っう……ふぅ……んんっ……んぐぅっ!!!!」

  頭が真っ白になるほどの気持ち良さに包まれながら、ピュッピュッと射精すると、すぐにおっちゃんのちんちんからも凄い勢いで精子が出て来て、お腹の間が熱くなっていった。

  僕の射精が終わってしまった後も、おっちゃんは激しく腰を振り続けたままで、ちんちん同士をズリュズリュと擦り合わせながら、何度も熱いものを噴き上げていった。

  そんなおっちゃんの荒々しい姿に、僕はなんだかとても恐くなってしまって、おっちゃんの体に必死にしがみつきながら、目をギュッと瞑った。

  ……

  …………

  ………………

  「ター坊……だんないか?」

  目を瞑って身を縮こまらせていた僕の耳に、おっちゃんの声が聞こえてきた。

  ハッとして顔を上げてみると、とても心配そうに僕を見つめるおっちゃんの顔が見えてきた。

  「う、うん。大丈夫だよ!」

  「そ、そか……それやったら良かった」

  おっちゃんは安心したのか、頬を緩ませて、いつもみたいにニコッと笑った。

  それはお父さんにそっくりだけど、お父さんのとは違う。

  僕の大好きなおっちゃんの、とても優しい笑顔だった。

  ***

  翌日……

  帰りの列車に乗る僕を見送りに、おっちゃんが一緒についてきてくれた。

  午前中の山奥駅のホームは、来た時と同じように誰もいなくてガランとしている。

  ボロボロのベンチに、僕とおっちゃんは並んで座って、もうすぐ到着する列車を待っていた。

  「おっちゃん?」

  「んっ?なんや?」

  「僕……おっちゃんと、また会える?」

  「なんや……こないなくたびれたおっちゃんに、また会いたいんか?」

  「う、うん。会いたい!」

  「ガッハッハ!嬉しい事言いよって……そうやなぁ……それじゃあ、ター坊が酒を飲めるぐらい大人になったら、また会おうか」

  「えっ?そ、そんなに先の話なの?」

  「そうや。それまでは絶対におっちゃんに会い来たらあかん……約束できるか?」

  「う、うん……約束する」

  プゥッーー!!!!

  その時、大きな汽笛の音が聞こえてきた。

  こちらに向かって走ってくる列車が、遠目に見えてくる。

  ガタンゴトン……ガタンゴトン……プシュゥ……ガゴンッ

  列車は、大きな音を立てて止まると、扉が滑るように開いていった。

  列車が到着したのに、それでもベンチから立ち上がれずにいると、そんな僕を勇気づけるように、おっちゃんがポンポンと肩を叩いてくれた。

  背中を支えられながら歩いて、扉をくぐって列車に乗り込むと、おっちゃんはすぐ目と鼻の先にいるのに、もう会えないぐらい遠い所に来てしまったような気がした。

  「風邪ひかんように、ちゃんと暖かくするんやで……元気でな」

  おっちゃんは、いつもみたいに優しく笑っている。

  でもその目は、凄く悲しそうで、寂しそうだ。

  おっちゃん……

  おっちゃんに言いたい事を、僕はまだ言えていない。

  「えっと……」

  伝えたい。

  今、ここで伝えないと絶対に後悔する。

  「お、おっちゃん!」

  「うん?」

  「僕……おっちゃんが大好き。だから絶対に会いに来るから、待ってて!」

  「……わかった!おっちゃんは、いつでもここに居るさかい。焦らんで、ゆっくり会いにおいで!」

  「うんっ!」

  僕とおっちゃんの間を隔てる様に、ドアがゆっくりと閉まっていく。

  そして重い音を響かせながら、列車がゆっくりと動き出していった。

  どんどん遠ざかっていく駅のホームで、おっちゃんは見えなくなるまで、ずっと手を振ってくれていた。

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