ポケモン乱闘にさらなる参戦者

  ポケモンと呼ばれる生き物達と人間達が暮らす世界。

  その世界に暮らすリティと言う女性がいた。

  普段はごく普通に日々を送る彼女だが彼女にはもう一つ、それこそポケモンが存在するこの世界ならではとさえ言いにくいようなある秘密の日常があった。

  それはいつも夜、とある森の中で行われていた。

  その夜もリティは森の中を歩いていた。

  パートナーポケモンも連れずに一人で歩くにはやや物騒な感じだが彼女は意に介さない。

  むしろうきうきと、いそいそと森の中を歩いている。

  不意に雲間から満月が現れ、森の中を照らす。

  その月明かりに導かれながらリティはさらに進んでいった。

  しばらく歩いていると、にぎやかな声が響いてくる。

  人の声と言うよりポケモンの声……たくさんの野生ポケモン達が集まっているようだ。

  その賑わいに紛れる様にリティは入り込み、賑わいの向こうに目を向ける。

  そこで行われていたのはポケモン達がぶつかり合っている光景だった。

  トレーナーの指示を受けてのポケモンバトルとも、いわゆる生存戦争的な争いとも違うポケモン達がその持てる力を使いぶつかりあう戦い。

  それはポケモン達がそれぞれの力と技、そして生命と誇りをぶつけ合い、高め合い、認め合う為の儀式の様でもあった。

  その戦いを見守る野生のポケモン達も高らかに歓声を上げる。

  リティも同じ様に高らかに声を上げるうちに自分の中に熱くたぎるものが満ちていくのを感じていた。

  「はぁ……うう……たぎってきた……」

  ぎゅっと着ている服越しに胸をつかむと強くなっている鼓動を感じる。

  何より身体が思い切り熱くなっている。

  「うふふっ、今夜ものってきた……」

  そう言いながら顔を赤く染めつつリティはなぜかその場をあとにする。

  ポケモン達の戦いはまだ続いており、まして彼女自身の気持ちが高まっている状況のままその場を去ると言うのは奇妙な話である。

  そう、彼女はただこの戦いに観客としてのみ来たわけではないのだ……。

  [newpage]

  戦いと賑わいの場から少し離れた木陰まで離れたリティは持っていたバッグをそこに下ろす。

  「ふぅ……はぁ……」

  月に照らされながら大きく息をする。

  そして、おもむろに着ていた服をつかむとそのまま着ていた服を、身に着けていた下着を一気に脱ぎだした。

  またたくまに一糸まとわぬ姿となったリティ。

  それなりの体形を持つ裸身が月光に浮かび上がる。

  その顔が赤く染まっているのは裸になった恥ずかしさのみではなかった。

  「ふふっ、どんどん高まっている感じがする……早く準備しないと」

  なぜか軽く準備運動の様な事をしながらリティはそうつぶやいた。

  一通り体をほぐした後、置いてあったバッグからあるものを取り出す。

  それはベルト—さながら格闘試合のチャンピオンベルトのような形をしていた。

  そしてそれはあるポケモンの身体の一部によく似ている……。

  「さあ、今夜も思い切り暴れるわよ!」

  そう言ってリティは裸の腰にベルトを巻き、裸のままで仁王立ちする。

  その瞬間、ベルトがむにむにと動き出した—様な気がした。

  「うっ……あ……」

  腹部を軽くくすぐられる様な感覚に声を上げる。

  しかし、それだけでは終わらない。

  突然ベルトから灰色の帯がいくつも噴き出すと、そのままリティの裸身—腕を、足を、腰を、胸を、そして顔に巻きついていく。

  「うっ……くっ……むむっ……ううっ……」

  ぴっちりと締め付けられる帯の感触に軽い苦痛とちょっとした心地よさを感じるリティ。

  そしてダメ押しとばかりに腰の周り—それこそ臀部から股間の辺りをそこだけ黒い帯がまとわりつき……きゅっと締め上げる。

  「ひゃんっ!」

  軽くのけ反りながら声を上げてしまう。

  そうこうしているうちにリティの姿は黒いレスラーパンツを身に着けた灰色の全身タイツ人間と言えるものとなっていた。

  「ふぅ……はぁ……はぁ……ふぅ……」

  全身を締め付けられる感覚、そしてさらに高まる熱気と興奮がその姿に覆われたリティの中にますます満ちていく。

  だが、変化はこれだけに終わらない。

  「ひゃあっ!」

  ベルトの辺りから激しい衝撃が走り、リティの身体がさらに大きくのけ反った。

  それと同時に全身タイツがリティの素肌とぴったり張り付くとムニムニと動き出していく。

  「ひゃっ、あっ、うぁぁぁ……」

  全身タイツとすり合う素肌がムニムニと密着しながら一体化していく感覚。

  「うぁぁ……あああ……わぁぁぁぁ……」

  ムニムニと動く身体が少しずつ太く、大きく満ちていく感覚。

  細身の腰や柔らかい腹部、それなりの形を持つ胸元ががっちりした骨盤と分厚い腹筋、そして胸板に圧縮されながら逞しく作り直されていく感覚。

  地面を踏みしめる両足、腰に置いた両手や両腕が太く、逞しく伸びていく感覚。

  「あああ……ううう……ぐぐぐぐ……」

  細身の女性の体つきから逞しい格闘家然としたそれへと変わっていく感覚に歯を食いしばる。

  しかし、変化はさらに進む。

  「うぐぁっ!」

  腰から背中、肩まで一気に衝撃が突き抜けると、両肩から一対の太い腕が天を突く様に飛び出した。

  高々と伸びた腕の先にある両手は天を掴まんとばかりに広がり、がっちりと握られる。

  「ぐぅぅぅ……ぐぅぅぅぅぅ……うぅぅぅぅ……」

  灰色のマスクと一体化した顔の中でリティはうめく。

  しかし、その中でも変化は進んでいる。

  「うぅぅぅぅ……ううぅぅぅゥゥ……ウゥゥゥゥゥ……」

  目元や口元に激しい力がそそがれる中で人間の女性の声から荒ぶる獣の声へと変わっていく。

  その流れがマスクいっぱいに満ち、ついにはじける。

  「—ッ!」

  太くたくましい両足を踏みしめ、四本の両腕を宙に掲げ、分厚い胴体を大きく反らす。

  その口元から熱いくちばしの様な唇が開き、激しい雄たけびを上げる。

  かっと開いた瞳は燃えるような闘志を感じさせるように赤い。

  頭頂からは三つのとさかの様な物体がグンっと伸びる。

  「カイリキィィィィィッ!」

  リティ—いや、リティだったものは腹の底からそう叫んだ。

  それは自身の鳴き声か、それとも今の自分の存在そのものか。

  一般的に「かいりきポケモン」と呼ばれ、見ての通り逞しい肉体と四本の腕を持つポケモン、カイリキー。

  それが今の彼女の姿だった。

  「カイ……リキィ……(ふぅ……はぁ……ふぅ……)」

  変身を終えた余韻、そして変身によってさらに高まった熱量と興奮に浸りつつも地面にどしりと踏み込みを入れ、その勢いで拳を突き出す。

  さらには左右交互に蹴りを入れたりとちょっとした演武を見せる。

  「カイリキィ……(よしっ、今夜もいい感じだわ)」

  逞しくも引き締まった筋肉質の身体の感覚を確かめながらリティは闘志を高める。

  奇妙な偶然か導きかこの森に、この戦いに入り込み魅せられた彼女が渡された力、そして姿。

  この姿になった以上、とにかくひと暴れする位では治まらない。

  カイリキーとしての身体を翻すとリティは再びポケモン達の戦いの場に飛び込んでいった。

  [newpage]

  「カイリキィッ!」

  喝さいが上がり、カイリキーが何度目かの勝利の雄たけびを上げる。

  戦いに参加してからのカイリキー—リティは破竹とはいかないまでも熱い攻防を繰り返しつつ勝利を手にしていた。

  幾度とないぶつかり合いの中でその肉体にはいくつもの擦り傷がついているが、これもまた全力を出してぶつかり合った証であり言うならば「勲章」と言える。

  もっとも人間としてのリティの柔肌にはそれらの傷は痣さえついていないのだが、彼女の心には今まで刻みあったぶつかり合いの記憶はしっかりとつづられている。

  その戦いの記憶を軽く反芻しながらカイリキーはようやく起き上がろうとしていた対戦相手のポケモンに手をかけ、そっと起き上がる手伝いをする。

  そして二体のポケモンは健闘をたたえ合うように並び立ち、さらなる歓声が二体を包む。

  「カイリキィ……(うう……この熱気、この興奮、この感動……最高っ!)」

  全身が震えるほどの感動と興奮の中でカイリキーは胸を震わせている。

  しかし、戦いはまだ終わらない。

  勝った以上はさらなる挑戦を受けなければならない。

  退場していくポケモンを見送りながらカイリキーは改めて胸を張る。

  「カイリキィッ!(さあ、次は誰!?)」

  その顔を赤い風が一瞬掠める。

  紙一重でかわしたカイリキーはその方向を見やる。

  「カイリキィ……(なるほど、あなたね……)」

  その先にいた相手を見やり、カイリキーはニヤリと笑みを浮かべる。

  赤を基調とした猛禽を思わせる姿にカイリキーとはまた異なる格闘家としての雰囲気を持つポケモン—ルチャブル。

  「ルチャァ……」

  荒っぽい突貫の直後を感じさせる事無く舞台にすっとたたずむその姿。

  隙のない動きで振り向き、バッとその両腕を、そして翼を広げる。

  さらに高まる歓声に軽く浸っている様に見えるルチャブルだが、その姿はカイリキーの闘志を燃やす。

  「カイリキー?(さて、今夜はどっちが勝つかしら?)」

  がっつりと四本の拳を合わせながら闘志に満ちた目でルチャブルを見つめるカイリキー。

  このルチャブルとカイリキーは好敵手な関係らしく初顔合わせから幾度となくぶつかり合っては互いに勝ち星を取り合っている。

  単純な相性ならひこう属性も持つルチャブルが圧倒的に優勢ではあるが相性だけで決まりにくいのがポケモンの戦いなのはこの場所での戦いも変わりはない。

  「ルチャァ……」

  「カイリキー……(さあ……いくわよ……)」

  ルチャブルに張り合う様に四本の腕を広げ、両足を広げて威嚇のポーズをとる。

  そして、勝負が始まる。

  宙を舞い、流れに乗る様な動きでカイリキーの拳や蹴りを華麗にしのいでは翼や蹴りを仕掛けるルチャブル。

  その強靭な体格からは意外に思える程の体さばきでそれをかわし、がっちり受け止めたりしながら剛腕を叩き込むカイリキー。

  今回も両者はぶつかり合いながら均衡を保ちつつもそれを崩すタイミングを計り合っていた。

  きっかけを作ったのはルチャブル。

  弾丸の様に突進するとその勢いでとび蹴りを放つ。

  カイリキーはそれを四本の腕でブロックするが、ルチャブルは飛び蹴りの勢いでより高く飛び上がると、そのまま技の姿勢に入る。

  このまま黙って技を受けるしかないかに見えたカイリキーだったが、その身を一瞬かがめるとルチャブルめがけて飛び上がる。

  予想外の出来事にルチャブルはそのままカイリキーに組まれてしまった。

  そこからカイリキーはルチャブルを逆さに掲げると四本の腕で固定し一気に地面にたたきつけようとする。

  ルチャブルの飛行技以上の速度で地面に迫るカイリキー。

  しかし、すんでの所でルチャブルは身をかがめてカイリキーをすり抜け、そこから翼をたたきつける。

  それをがっつりと受け止めながらカイリキーとルチャブルはそのまま地面に激突する。

  激しい衝撃と轟音が響き、噴煙が吹きあがる中一瞬辺りが静まり返る。

  噴煙が消え去った時、そこには軽く揺らめきながら立ち上がる両者の姿があった。

  「ルチャァ!」

  激しいぶつかり合いをものともせず翼を広げてポーズをとるルチャブル。

  それに対してカイリキーも四本の腕を広げて尽きぬ闘志をアピールする。

  「カイリキィ……(ううっ、まだまだぁ……高まってる、昂ってる……本当にたまらないわ……)」

  観客の熱気とぶつかって来るかの様なルチャブルの闘気。

  そして自身の内側から満ちてくる熱気と興奮の渦巻く中でカイリキー—リティは軽い恍惚と快感を感じていた。

  この戦いもいずれはひとまずの決着がつき、リティも人知れずその場を離れたのちにカイリキーから全裸の人間の姿に戻って何事もなく人里に戻っていくのだろう。

  だがそれはまだ先の話、両者の勝負はまだ終わらない。

  そしてこの森の中で行われる野生ポケモン達の戦いの宴も終わらない。

  熱狂と歓声はまだまだ森を包んでいた……。

  了