おとなしめな子が狸怪獣に!?

  「ん〜!やっぱ唐揚げうめ〜‼︎」

  とある中学校の給食の時間。

  大きな唐揚げに齧り付き、怪獣好きで元気な男の子『大崎 竜牙』は感激の声を上げた。

  「うわ、すごい勢いでガッついてるな。」

  「あはは、相変わらず良い食べっぷりだね〜。」

  それを見ながら親友の『長谷川 羽流』と『手塚 彪斗』も彼と席をくっつけながら給食を食べていた。

  「あ〜…もうなくなっちまった…。もっと唐揚げ食べたいけど、おかわりしようにも今日は休んでる奴いないからなぁ…。」

  「あっ…だったらぼくのぶん、分けてあげるよ…。」

  「えっ!?」

  ボソッとそう呟いて、近くの席だったため机をくっつけていた1人の男子生徒が話しかけてきた。

  目元を髪で隠して存在感を消している小柄な彼は、『葉隠 貫太(はがくれ ぬきた)』。

  竜牙達のクラスメイトだが、彼等も名前がすぐにパッと出てこないほど目立たない生徒だった。

  「いいのか!?唐揚げってかなり貴重なもんなのに!?」

  「うん。ぼく、一個食べたらお腹いっぱいっていうかさ。ちょっと油がお腹にこたえちゃって…。」

  「男子中学生らしからぬ少食さだな。」

  「一周回ってオッサンみたいなお腹だね〜…。おれの父さんもそんな感じであんま食えないし〜。」

  「あはは…。そのせいか体調崩しがちだし、運動も下手っぴなんだけどさ。」

  「へー。ま、貫太はそのぶん頭良いしいいんじゃねぇの?俺なんか運動得意だけど、この前のテスト6点だぜ?」

  「それは流石にひどすぎ…って竜牙、もう全部食ったのか!?」

  そんな感じで4人は仲良く話しながら、楽しい給食の時間を終えるのだった。

  [newpage]

  「はぁ…。本当はぼくも、みんなと同じように美味しいものいっぱい食べたいんだけどなぁ…。どうしてもすぐにお腹いっぱいになっちゃうんだよなぁ…。」

  その日の放課後。いつもの通学路を、貫太は1人でぼやきながら歩いていた。

  その時だった。

  「ん?なんだこれ…鉄器?」

  道端に何やら奇妙な鉄器が落ちていた。

  手に取ってみると見た目に反して思いの外かなり軽い。昔話とかにも出てきた茶釜というやつだろうか…。

  そうやってまじまじと眺めていると、突然茶釜の口がパカッ!と開いて光りだした。

  「うわっ!?なんだこれ!?ぼく、どんどん吸われてっ!?」

  そんな茶釜はまるで掃除機のように貫太を吸い込んでいき…

  きゅぽんっ♪

  間抜けな音を立てて、貫太を完全に飲み込んでしまったのだった。

  [newpage]

  「ねえ、貫太くんってあんなに運動できたっけ?」

  翌日、体育の時間。

  真面目で正義感の強い男子生徒である『秋守 昇太』が親友である竜牙にヒソヒソと話しかけてきた。

  その日は飛び箱の授業だったのだが、貫太は現在6段目をクリアしたところだったのだ。

  「え?6段だろ?それくらいなら俺だって余裕だぜ?」

  「うーん…。でもさ、貫太君って正直あまり運動が得意じゃないでしょ?それにしては今日の彼は6段でもなんなく行けてるというか、華麗に飛んでるというか…。」

  「飛び箱が特別得意なだけじゃねえの?運動苦手だけどこれだけは得意!ってのあるだろ。」

  「まあそうなんだけどさ。でも今日の彼、ちょっとおかしくない?さっきだって普段は成績優秀なのに、簡単な問題で頭抱えてたし…。」

  「言われてみれば確かに変だな…。」

  そうこうしているうちに貫太は7段目も軽々と超え、多くの生徒が脱落していく中8段目、9段目…と難なくクリアしていく。

  そして10段目…

  「よっ…と。」

  バッ!!!

  クルクルッ…スタッ!!!

  自身の背丈よりも遥かに高いそれを彼は軽々と飛び越え、それどころか空中で一回転し華麗に着地した。

  「「「…………は?」」」

  その光景に、その場にいた生徒達やいかつい体育教師が目を丸くして絶句し、しん…と辺りが静まりかえる。

  しかし次の瞬間、場はザワッと騒然とし始めた。

  「すげぇ!貫太君、そんな才能あったのかよ!」

  「まるでTVの凄いスポーツマンみたいだ…!」

  「ねー…もっと高いのないの?」

  「えっ!?う、ウチにある飛び箱はアレが1番デカいやつだが…。まだ飛べるのか!?凄いな葉隠‼︎」

  まだまだ物足りないといった具合に呟く貫太に賞賛の言葉を浴びせる一同。

  しかし、竜牙と昇太など一部の『心当たり』がある生徒は、互いに目配せしあい『その可能性』が脳内によぎった。

  「なぁ、アレってやっぱり…」

  「『憑依』されてる可能性はありそうだね。放課後動向を探ってみようか。」

  そう竜牙達は頷き、放課後を待つのだった。

  [newpage]

  「こちらコンビニ前。ターゲットが大量のパンやおにぎりを買いこんで店を出ました。」

  『りょーかい。こちらも引き続き尾行を続けるね〜。』

  「えっと…何、やってるの?」

  「あ?トランシーバーで連絡取ってんだよ!なんか探偵っぽくていいだろ!?」

  「いや、これオモチャのトランシーバーだからそんなに距離離れた所で連絡取り合えないから。現に今昇太君達このコンビニの反対側にいるだけだし。」

  そう呆れた口調で竜牙達のクラス委員長『亀宮 渚』が話しかけた。

  彼女はしっかり者で真面目な性格の女子生徒。竜牙達の『仲間』だ。

  「ほう。コイツを追いかけ回すとは、貴様等の勘もなかなか鋭くなったな。コイツは『憑依』されている。」

  「やっぱり…!」

  そう上から目線で言いながら、竜牙の鞄の中から小さな怪獣のぬいぐるみのようなものが話しかけてくる。

  

  彼は『バグラ』。宇宙から飛来してきた怪獣で、竜牙と融合することで本来の力と大きさを取り戻すことができるのだ。

  竜牙だけでなく羽流や彪斗、渚も同じようにぬいぐるみ怪獣と融合して巨大怪獣に変身することができるのだ。

  昇太だけは少々特別で、怪獣にも変身可能な巨大ヒーローとして日々戦っているのだが。

  「う〜ん…でも今のところ無害そうなんだよな〜。暫くは様子見しようと思う、どうぞ。」

  『僕もそれには賛成だな。説得でどうにか済むなら戦わないのが得策だしね。どうぞ。』

  『しょ、昇太、お前意外とノリノリだな…。』

  トランシーバー…もといコンビニの向こう側から、楽しげな昇太の声と呆れたような羽流の声が聞こえてくる。

  そんな一同は貫太を見失わないよう、あくまで互いに距離を取り連絡を取り合いながら彼を追いかけると、近所の公園までたどり着いた。

  [newpage]

  「嘘だろ…。アイツもうおにぎり10個目だぜ!?その前にパンも15個食ってるってのに…!どうぞ。」

  『うん。少食だった彼とは考えられないね。彼のお財布が心配だよ。どうぞ。』

  「だから普通に話せばいいのに…。今だって遊具一個分しか離れてないし。」

  竜牙達がそうコソコソと話していた、その時だった。

  「なあ、オイラと一緒に遊ばねぇか?」

  「うん!あそぶあそぶー!」

  「じゃあボク、だるまさんがころんだやりたーい!」

  なんと貫太は小学生数名に話しかけ、一緒に楽しく遊び始めたではないか。

  『…取り憑かれてるとはいえ、性格も喋り方も全く違うな…。』

  『なんていうか…まるで子供みたいだね〜。』

  羽流や彪斗も困惑しながら呟く中、貫太は小学生に混じってはしゃいでいる。

  そんな彼の頭やお尻からは、ぴょこっ!と獣の耳や尻尾が飛び出してきた。

  「決まりだな。奴は『化狸怪獣 ブンブク』。性格的には温厚だが、大食いで厄介な能力も持ってる怪獣だ。」

  「そんなことより耳や尻尾が出ちまってるじゃねぇか!早く止めないと大変だぞ!?」

  『わかった。くれぐれも慎重にね。』

  そうお互いに頷くと、竜牙達は隠れていた遊具の裏から出て貫太…もとい怪獣ブンブクの前に現れた。

  「あれ?おめぇら、たしか同じクラスにいた奴…?」

  「おい怪獣ブンブク!お前、耳とか尻尾が出ちまってるぞ!?早く隠さねえと!」

  「ひゃっ!?ほっ、ほんとだべ!?…って、なんでおめえ、オイラの名を!?」

  「えっ!?いっ、いやぁ、それはだなぁ…」

  「まっ、まさかおめえ、オイラを倒そうと!?んなことさせねぇぞ!?」

  「ちょ、ちょっと待てよ!俺達はただ…!」

  突然話しかけられたことで、慌ててしまった怪獣ブンブク。

  そんな彼の身体は小学生達が見守る中ぼよんっ!ぶよんっ!と膨らみ、身体中が栗色の毛が生えてぐんぐんと建物を越すほどに大きくなっていき…

  「ポンポコポーン!!!」

  [uploadedimage:16826092]

  小柄な少年が変身したとは思えないようなまるで狸のような巨大怪獣へと姿を変え、ずしんっ!!!と大地を響かせた。

  「ふえぇっ!?お、お兄ちゃんが狸の怪獣に!?」

  「ひっ!?早く逃げないとつぶされちゃうよぉ!」

  「んなこたぁしねぇぞ?でも…♪『妖術・葉っぱ変化』‼︎」

  「「「わあぁぁぁぁぁぁっ!!??」」」

  怯える数名の小学生に向けて、ブンブクは手から無数の葉っぱを浴びせかける。

  すると小学生達の身体にも毛が生えはじめ、ぐんぐん巨大化していき…

  「「「ぽんっ!!!」」」

  まるで巨大な狸獣人の忍者のような姿に変えられてしまった。

  「小学生を自分の手下にしただと!?そんなこともできんのかよ!?」

  「けどボク達は5人もいる。あれくらいは余裕だろう。」

  「そーそー。それじゃ、変身しちゃおーよー。」

  そう言うと竜牙達4人は自身の相棒怪獣と融合し、昇太は変身アイテムを使い、それぞれ姿を変えて巨大化していく。

  そして…

  「ギャアァァァァァッス!!!」

  「シュシュシュシュシュシュ!!!」

  「グオォォォォォォォォォッ!!!」

  「ガメエェェェェェェェェェッ!!!」

  「ゴオォォォォォォォォォッ!!!」

  それぞれ竜牙は黒い身体に青い稲妻が走る『怪獣 バグラ』に、羽流は男子ながら蛾のような女性型怪獣『モスガ』に、彪斗は虎のようなメカ怪獣『ガドン』に、渚は亀のような怪獣『ガメス』に、そして普段ならヒーロー『ドラゴフレイム』へと変身しているはずの昇太は黒い身体に赤い溶岩がほとばしる怪獣『ボルグ』へと変身し、街の一部を埋め尽くした。

  「ええっ!?なっ、なんでボルグの姿に!?」

  「おお!今日はボルグの姿で戦うんだな!カッコいいぜ!」

  「バグラになった竜牙君の声が聞こえる…?もしかしてこのためにボスがアップデートしてくれた影響か!?それにしても恥ずかしいなぁ…。」

  ぶつくさ言いながらも、昇太は竜牙達と共に狸怪獣達に向かっていった。

  [newpage]

  「ギャアス!!!」

  「ぽんっ!?」

  元小学生なので少し優しめに尻尾を振るった竜牙…もといバグラだったが、それだけで狸忍者は勢いよく吹っ飛ばされてビルを崩壊させながら倒れこんだ。

  「シュシュシュ。数はいるようだけど、そんなに大したことなさそうだね。」

  「グオォォォ…。おれ達も数多いし、これならすぐ勝てそうだね〜。」

  「ぐう…やばいべ…。こうなったら!」

  そう言いながら、ブンブクは余裕綽々で近づいてくる羽流…モスガと彪斗…ガドンに向かって、唐突に自身の腹を太鼓のように叩き始めた。

  ぽんぽんぽんぽんぽんぽこぽんっ♪

  「な、なんだ?これ…」

  「ねー…いきなり何してんの〜…?」

  戦闘中という場に似合わない間抜けな音に、一同は困惑する。

  しかし…

  『まずい!貴様等、耳を塞げ!!!』

  「えっ!?なんだよ、アレヤバいのか!?」

  突然竜牙と融合中のバグラが焦ったように叫んだ。

  それを受けて慌てて耳を塞ぐ竜牙と渚…ガメスと昇太…ボルグだったが、近距離で腹鼓を聞いていたモスガとガドンは間に合わず…

  「シュシュゥ…❤️な、なんだかこの音、癖になるぅ…❤️」

  「グオォォォ…❤️おれ、ブンブクさまが魅力的に見えてきたぁ…❤️」

  すっかり目をハートにして魅了されてしまい、フラフラとブンブクの方へとついてしまった。

  「ポンポコポーン!どおだべ?オイラの腹太鼓は、聞いた奴をオイラのしもべにできんだ!」

  「ガメェ…。これで3対3か。ちょっと厳しいね。」

  「あの狸忍者もいるしそれ以上に面倒だね。竜牙君、僕達は羽流君と彪斗君、それに狸忍者達と戦うからブンブクは頼めるかい?」

  「ああ!任せておけ!」

  「シュシュシュ!ふふっ。狸忍者達を味方につけたボクに勝てると思ってるのか?」

  「グオォォォ…。おれ、ブンブクさまに良いとこ見せるんだから、邪魔しないでよ〜。」

  「ポンポコポーン!さあ、かかってくるがいいべ!」

  こうして、怪獣達の大決戦が繰り広げられた。

  [newpage]

  「ギャアスッ!くらえ!俺の尻尾攻撃‼︎」

  ブンッ!!!とド派手に尻尾を振り回すバグラ。

  その太い尻尾は見事ブンブクの尻尾に命中したものの…

  「ふん。そんなのオイラのデカ腹には効かないべ。」

  「なっ!?俺の渾身の一撃が!?」

  なんとブンブクの巨大な腹に威力が吸収され、ぼよよんっ!と跳ね返されてしまったのだ。

  『能力も厄介だが、その耐久力もなかなか面倒だな。』

  「くそっ!こんなのどうすれば!?」

  『一応奴の能力にも弱点はある。奴の腹を見てみろ。』

  「えっ!?弱点?」

  そう言われて竜牙がブンブクの腹を見ると、彼の腹は攻撃を受ける前よりも一回りぼよんっ!と大きくなっていた。

  『攻撃を吸収できる腹だが、それにも限界がある。奴の腹ををキャパオーバーにするほどの攻撃を喰らわせ、限界まで膨らませることができれば勝機はある。』

  「よし!それじゃあ!」

  そう叫ぶと、竜牙は尻尾や巨体を駆使しながら何度も様々な攻撃を喰らわせる。

  しかしそのたびにぼよんっ!ぼよよんっ!と攻撃は跳ね返されてしまった。

  『ポンポコポーン!もしかしてオイラの腹が最大まで膨らむのを狙ってるんだべか?そんなチンケな攻撃じゃ全然足りんべ!』

  「ぐっ!?攻撃し続けても全然膨らんでる気がしねぇ!?」

  『キリがないな。こうなったら、必殺技を喰らわすしかあるまい。』

  「っても俺の最大出力使っても膨らみきるのか!?1対1じゃかなり厳しいぜ…!」

  『仕方ない。ガメスとボルグの力を借りるとするか。』

  「なるほどな。おい!渚と昇太!必殺技だ‼︎」

  「…そういうことね。わかった!」

  「ああ。僕達に任せろ!」

  そう言いながら、それぞれモスガとガドンと戦っていたガメスとボルグは、彼等に向けて必殺技の体制を取った。

  「ふうん?結構ボロボロなのに、もう必殺技なんて大丈夫?」

  「面白いじゃ〜ん。ほら〜。やってみなよ〜。」

  そう挑発する2体の怪獣に向けて彼等はエネルギーを貯め…

  「ガメス・甲羅スピンアタック!!!」

  「ボルグ・ボルケーノタックル!!!」

  それぞれ凄い勢いで迫り、自信に残された最大エネルギーを込めて必殺技を放とうとした。

  しかし…

  「はい、残念。」

  「ほいっと。おれ達体力有り余ってるから、こんなの避けるのなんて余裕なんだよね〜。」

  彼等の渾身の一撃は、いとも簡単に避けられてしまった。

  だが、彼等の勢いはまだ止まることはない。

  「シュシュ!?まっ、まさか!?」

  「グオッ!?ブンブクさま、避けて‼︎」

  そう。彼等が標的に見据えていたのはモスガやガドンではなくブンブクだったのだ。

  ドガッ!!!

  自身の意識の範疇外から来た強烈な攻撃を、動きの鈍い彼はモロに喰らってしまう。

  そして…

  ぷくぷくうっ!!!

  2体の怪獣の渾身の必殺技を受け、彼のお腹は一気に大きく膨らんでしまった。

  「ポンッ!?な、なかなかやるべ…!だけんど、まだこんなもんじゃ…!」

  「いや、終わりだぜ?ブンブク‼︎」

  そう上空から声が聞こえ見上げると、そこには電流を纏い空高く飛び上がったバグラがいた。

  そして…

  「バグラ・ライトニングフットスタンプ!!!」

  どしいぃぃぃぃぃぃんっ!!!

  勢いよく落下し、その巨大な足裏をブンブクの大きなお腹に直撃させた。

  するとぷくぷくぷくうっ!!!とブンブクのお腹は身体を覆い尽くすほどに膨らみ…

  「も…もう限界だべ…‼︎」

  ぐぐっ!と膨らんだ腹はミシミシと音を立てて限界を迎えてしまい…

  パァァァァァァンッ!!!

  「ぽおぉぉぉぉぉぉぉぉぉんっ!!??」

  派手な音を立てて破裂してしまうのだった。

  [newpage]

  「う〜ん…ぼく、今まで何して…っ!?」

  狸忍者にされてしまった小学生達や催眠にかかってしまったモスガやガドンが元に戻ったその数分後、ブンブクの姿で気絶していた貫太は目を覚まして驚愕した。

  [uploadedimage:16826091]

  「おっ、ようやく目を覚ましたか。」

  「えっ!?ニュースとかで話題になってる怪獣!?っていうかその声、竜牙君!?」

  「大丈夫?派手にやっちゃったけど、身体とか痛まない?」

  「はあ…。ボクとしたことが操られるなんて、一生の不覚だな。」

  「けっこ〜羽流ノリノリだったよね〜。隣で見てても面白かったよ〜。」

  「彪斗君も操られてたでしょ…。」

  「昇太君に羽流君、彪斗君に委員長まで!?あの怪獣達、みんなクラスメイトだったんだ…。」

  『みんな、本当に申し訳ないことしたべ…。』

  貫太が困惑する中、彼と融合していたブンブクがぽつりと口を開いた。

  『オイラ、故郷の星に飽きちまってこの星に来たんだ。最初の頃は山で木の実とか食べて生活しとったんだけど、そのうち街の食いもんにも興味湧いちまってな。貫太を乗っ取って色々食ってたんだが、おまえらに話しかけられてパニックになっちまっただ…。』

  「ブンブク…。」

  『貫太にも本当に悪いことしたな。身体乗っ取って好き勝手やって…。』

  「ううん、むしろありがとう、ブンブク。」

  『へ?』

  思わず貫太に感謝の言葉を告げられたブンブクは、困惑のあまり素っ頓狂な声を上げた。

  「ぼく、あんまり食べられないし運動も苦手だしさ。でもブンブクに取り憑かれてから、美味しいものいっぱい食べられたし運動神経抜群になれたしで楽しかった。勉強はあまりできなかったけどね。」

  『そ、そうか…?』

  「だからさ、これからもぼくと一緒に暮らしてくれないかな?怪獣になれたのも…正直ちょっと楽しかったし。」

  「貫太…!ありがとう!オイラも、貫太と一緒に暮らしたいべ!」

  そう嬉しそうに話す貫太とブンブクを、竜牙達は微笑ましそうに見つめるのだった。

  [newpage]

  「おーし!今日はカレーか!何杯もおかわりしてやる!」

  数日後の給食の時間。

  竜牙は大盛りに盛られたカレーをご飯にかけて、凄い勢いで食べ始めた。

  「はあ…。今日も気合い入ってるな、竜牙。」

  「見てて気持ちいいくらいの食べっぷりだよね〜。見てるだけでお腹いっぱいになりそ〜。」

  「よし!食い終わったぜ!おかわりだ!」

  そうして数分も経たないうちに大盛りのカレーを平らげ、大量に余っていたカレー鍋の前に向かった竜牙だったが…。

  「あ…竜牙君、お先…。」

  なんとその目の前で貫太が大量のカレーを全て盛り、持っていってしまったのだ。

  「はあっ!?か、空になってる!?貫太食い過ぎだろ‼︎」

  『むふふ!オイラの食べっぷり、舐めたら駄目だべ?』

  動揺する竜牙を前に一瞬で目の色を変え、ブンブクの声色で煽る貫太。

  その直後に元の貫太に戻り、意気揚々と超大盛りカレーを自分の席に運んでいった。

  「なあ貫太、ちょっとだけ!ちょっとだけ分けてくれないか!?」

  「ごめんね、ブンブクがまだまだ食べたいって…。」

  『そうだべ!お前のカレーをよこすくらいの誠意を見せてくれたら考えないこともないべ!』

  「おまっ!?俺のカレーまで奪おうとすんなよ!もう食っちまったけど‼︎」

  羽流や彪斗達が呆れる中、騒がしくも楽しい給食の時間は過ぎていくのだった。