Ad
[chapter:ヤングドラキュラVSシリウス]
特別列車861号車内に乗り込むと列車とは思えない程に薄暗く、広い空間があった。
「なんか……酷く淀んでいますね」
「だな。列車とは思えねぇぜ」
「本当にお化けでも出てきそう」
ある意味不気味にも感じる車内に一同が不安になるとバルジが説明をする。
「違和感があるのは当然だ。この特別列車861号は令嬢直々に設計した列車だ。その為、銀河鉄道の列車の中でも独特な特徴を持つ。ともあれ所詮、人が用意したものだ。怖じ気づくなよ」
「「「了解」」」
一同が納得をすると、海賊姿のデイビットが今後について質問をする。
「んで、これから俺たちはどうするんですか、隊長?」
「とりあえず、乗客に紛れて事が起こるのを待つ。それとお前らに一言忠告だ」
「急に改まってどうしたっすか?」
「俺を隊長と呼ぶな」
「「「へ?」」」
いきなりの発言に各々から間抜けな声が漏れると、呆れ顔で一同に説明をする。
「あのな…ドラキュラ姿の男を隊長と呼べば不自然だろ」
「あ!確かに…」
「よくよく考えたらそうね」
「んじゃ!伯爵って呼びますか?」
「変な呼び方は止めろ」
「けっ!意外と我が儘だな」
「何処がだ」
「じゃあ…なんて呼べばいいんですか?」
「普通にバルジさんと呼べ」
「バルジさんって…違和感半端ないですって」
「仕方がないだろ、これも任務だ」
「「「はぁ…了解」」」
一同はため息を付いて気乗りがしないまま、パーティー会場の指定されたテーブルに向かった。
立食式のテーブルで周囲に警戒をしつつ談笑をしていると、テーブルを巡回していた青年が声を掛けてきた。。
「おや~~これはまた可愛らしい魔女っこだな」
見た目は若いドラキュラ男。下心丸出しでルイにちょっかいを掛けてきた。
「ちょっとやめてください!」
「え~~このハロウィンイベントで何いっちゃってんの?そんな事言っていると、俺がお前の血を吸っちまうぞ」
「嫌!やめて!」
青年がルイに絡んでいる中、怒りを覚えた有紀が強引にルイから青年を引き離した。
「おい!やめろ、ルイに触るな!!!」
「有紀くん」
「なんだよ?お前?」
「俺は有紀学だ。嫌がる相手に無許可で触るなんて失礼だろ!ちゃんと謝れ!!」
突然の有紀の介入にドラキュラ姿の青年は徐々に怒りを露わにした。
「あ“~ん?このイベントで何言ってるんだよ。それにオオカミ男如きがドラキュラ様に楯突こうなんて場違いもいいところだぜ」
「なんだと!!!」
だんだんヒートアップする二人をデイビットとバルジは呆れながら遠目で傍観していた。
「なんだよ…あの餓鬼。急に現れてセクハラってやべぇ奴だな」
「はぁ……やれやれ。そう言えばそんな話だったな」
「ん?そんな話ってどういう意味っすか?」
「まぁ……ただの遊びだ。ちょっと行ってくる」
「え?ちょ、バルジ隊…じゃなくてバルジさん???」
何か心当たりのあるバルジがゆっくりと揉めている有紀の元に向かう。
現場に着くと、バルジは有紀の肩をそっと叩いて静かに告げた。
「有紀、一度落ち着け」
「隊、、バルジさん?」
「バトンタッチだ。ここは俺に任せてお前は下がっていろ」
「へ?」
意外な返答に呆気に取られていると、バルジは青年の前に立った。
突然の登場に青年はさっきよりも挑発し始める。
「へぇ~~今度は同業のドラキュラさんが相手かよ?もしかして俺の獲物を横取りしようってか?」
意地の悪い顔で挑発を続ける青年に、動じることはなく冷ややかな瞳で対応する。
「私はドラキュラのバルジという。お前の名前は?」
「は?なんであんたに名乗らないといけねぇんだよ」
「そうか。まぁ興味は無いから名乗らないのならばそれはそれでいい。ところで…お前は何か勘違いしているぞ」
「は?何の事だよ?」
青年が疑問に感じているとバルジはルイの肩を掴み自身に引き寄せて悪魔的な笑みで告げた。
「これは……俺の獲物だ」
「は?」「へ?」「え?」「ふぇ?」
突然の意外な発言にその場の一同から乾いた声が漏れた。
唖然としていると、発言者のバルジが話を続けた。
「聞こえなかったのか?この魔女は元より俺の獲物だ。横取りしようとしているのはお前の方だぞ」
「な、、何を言っていやがる?!そんな証拠は何処にもねぇだろ!」
「私が嘘をついていると言うのか?誇り高きドラキュラ伯爵が聞いて呆れるな。そのような対応では紳士的な部分で減点対象だな」
「な、なんだと?!」
「実力行使してもいいが、私は無駄な戦いは避けたい。お前も目的の為に、これ以上印象を下げたくないだろ」
「うっ…」
「闇雲に絡むのは控えるべきだ。警告する。これ以上恥を晒されたくなければ、とっとと失せろ」
少し覇気を纏って警告をすると、為す術がない青年は悪態を吐く。
「……ちっ!格好つけやがって。しょうがねぇ、今回だけ見逃してやるよ」
文句を吐き捨てて、青年はふて腐れながらその場から去っていった。
姿が見えなくなるまで離れた事を確認するとルイから手を離した。
「ふぅ…突然、触れてすまなかったな。大丈夫か?」
「いえ、大丈夫です。あの……ありがとうございました」
二人が安堵していると、離れていた有紀とデイビットが合流して事情を確認した。
「ふぇ~ヒヤヒヤしたけどよ。一体なんなんですか?今の演技は?」
「そうですよ!いきなりルイを掴んで『俺の獲物だ』なんて…」
「そうね、流石にびっくりしました」
デイビット、有紀、ルイが疑問に思っていた事を尋ねると、少し恥ずかしそうに先程の件について説明は始めた。
「あ……その件については驚かせてすまなかった。実はひとつ説明を失念していてな」
「「「説明?」」」
「今回の仮装にはゲーム要素が含まれている。仮装したキャラクターに成りきってその立ち振る舞いを令嬢に評価してもらうということだ」
バルジの説明を聞いた一同が顔を合わせると、ルイがぼそっと再確認する。
「それってつまり…評価がいいと選ばれし者にも近づけるということですか?」
「そういうことだ」
「へぇ~そんなルールがあったんだ」
「知らなかったわ」
「だな。てか!!!そんな重要な事は先に言っておいてくださいよ!」
「だから失念していたと言っただろ」
バルジの無責任な回答に一同は下を向いて呆れていた。
「これじゃ…先行きが不安ね」
「本当に…こんな調子で選ばれし者達になれるのかな」
「こりゃ…行方不明者の運命はお先真っ暗だな」
「何とでも言え。ともかくお前らも恥ずかしいと思うが、それぞれのキャラクターに成りきるように。いいな」
「「「は~~い」」」
それぞれが不安に感じながら相互確認をしていると、突然会場の照明が消灯し、正面のステージにスポットライトが照らされた。
[newpage][chapter:ミッションゲーム]
『皆さん~~~~ハッピーハロウィン!!!』
ステージには車掌服の骸骨男が立っていた。
骸骨とは思えないほどに陽気にマイクを持って、司会進行を始める。
『この度は特別列車861号にご乗車いただき誠にありがとうございます!さて…当列車はハロウィン列車861号惑星メーデイア行きでございます。ハロウィンの聖地、魔女の星に向かうあなた方に今年も深窓の令嬢より挑戦状が届いております。この挑戦に合格したもののみ、魔女の館へご招待されるのです。さぁ~逃げることは許されません。早速、試練の始まりでございます』
骸骨車掌が一通りの説明をしていると、有紀がバルジの元に行きそっと尋ねた。
「これが…例のミッションですか?」
「恐らくな。どうやらこれから始めるようだな」
「確か、ミッション内容は毎年変わるって言ってましたよね?」
「あぁ、今年は何が出るかは検討も付かん」
二人の会話を聞いていたルイとデイビットも予測できないミッションに不安を抱えていた。
「いよいよミッションね。大したことでないといいけど…」
「だな。念のためっと!」
デイビットがポケットから1エイブルを取り出しお馴染みのコイントスをする。
チャリーーーーン、パシン!!
恐る恐る二人がみると、コインは表。
「とりあえず、女神様は俺たちの味方だな」
「はぁ…だといいけどね」
デイビットの言葉にルイが呆れていると、骸骨車掌から一つ目の司令が発令される。
『それでは…早速ですが、まず組み分けをさせていただきます』
((((組み分け!?))))
『今年は仮装ごとでの組み分けです。Aテーブルにはドラキュラ・吸血鬼、Bテーブルには海賊・骸骨、Cテーブルにはオオカミ男・フランケンシュタイン、Dテーブルには魔女、魔法使い、Eテーブルにはその他で別れていただきます』
予想外の事態にシリウス一同は動揺の表情で愚痴を漏らした。
「まさか……いきなり分裂をしてくるとは…想定外だ」
「これじゃ、皆そろって同じ仮装した方が良かったじゃねぇか!」
「確かに。でも今更悔いても仕方がないよ」
「そうね。こうなったらそれぞれで頑張るしかないわよ」
予想外の事態に陥ってしまうと状況を見たバルジは決断して各自に指示を出す。
「やむを得ん。ここはイベントの指示に従おう。各自指定されたテーブルへ移動。何かあれば周囲にバレないように各自が身につけているイヤホンから連絡をしろ。散開」
「「「了解」」」
相互確認を済ませると、それぞれが指定されたテーブルに向かう。
各自が移動した事を確認するとバルジも指定を受けたAテーブルに足を運んだ。
Aテーブルに到着すると、見慣れた青年にいきなり声を掛けられた。
「あ!さっきのキザなおっさん!」
「ん?あ~さっきの小僧か。そういえば一応ドラキュラだったな」
いきなり睨んでくる青年にバルジは冷ややかな対応でさらっと流していた。
周囲を見渡すと、Aテーブルには15名のドラキュラが集っていた。
各々の仮装姿を見るとヤングタイプもあれば、白髪が目立つ伯爵風のタイプもいる。
(それにしてもドラキュラだけでこれ程にも差がでるとは仮装とは恐ろしいな。俺の立ち位置はよく見積もって上の下くらいか)
これから対戦すると思われる人々を見て不可解な分析をしていると、気が付けば先程の青年が側で怒鳴り散らしていた。
「おい!おっさん!!聞いているのかよ!!!」
無視を貫くつもりだったが、あまりにやかましかったので仕方が無く応対することにした。
「その質問に関して答えるならノーだ」
「なんだと?!てめぇ!人の話を聞かねぇなんて失礼だろうが!!」
「それはこっちの台詞だ。さっきも言ったが、誇り高きドラキュラとして君の言動は紳士的に欠けている。まずは自身から名乗るのがマナーではないか?」
「な、なんだと!また俺を小馬鹿にするのかよ!」
「小馬鹿にはしていない。事実を言っているだけだ」
「この~~~」
青年がバルジの態度に激昂していると前方から声がかかった。
「ははは、その通りだぞ。小僧」
二人が振り向くと、目の前には白髪なドラキュラ姿の老人が不気味な笑みで話しかけてきた。。
「お初にお目に掛ける。私はフランツと申します。貴方の紳士的な考えに敬意を表そう。して其方の名前は?」
「初めまして、私はバルジと申します。紳士的なご理解に感謝致します」
「気まぐれじゃ。ところでそこの無礼者はなんという名だ?」
「俺は……ピンツ」
名前を確認したフランツは今までの微笑んだ笑みが消え、凄みさえ感じる声で静かに話し始める。
「ピンツよ。それ以上バルジさんに迷惑を掛けるのならば、スタッフを呼んで会場から退場して貰うがどうする?」
「え?!そ、それは勘弁してくれよ!」
「ならば、もう少し大人しくしておれ。それに自身でドラキュラを選んだのならば、紳士的な心得を忘れるな。よいな」
「は、はい…」
フランツに一喝されると、先程の勢いはなくなりしゅんと大人しくするようになった。
その姿を横目に眺めていると、フランツが再びバルジに目を向けた。
「突然、失礼しましたな」
「いいえ。こちらこそありがとうございました」
「いえいえ、ところでバルジさんは何度目のご参加ですかな?」
「初参加です」
「ほぅ~そうでしたか」
どこか不思議そうにしている事に疑問に感じると、思わず聞き返した。
「あの…なにか問題がありましたか?」
「いえいえ。初参加にしては仮装のキャラクターに成りきっておられると思いましてな」
「はぁ……そうですかね。あまり実感はありませんが」
「おや、そうですか。ご自身では分かりにくいかも知れませんが、周囲のドラキュラよりも浮き出ていますぞ」
(浮き出ている?そうか?そんな感じは全くしないが)
「そ、そうですか。それは良かった…であっていますか?」
「ほほほ、あっておりますとも。このまま選ばれし者達になれるといいですな」
(なんなんだ。この人といい、このよく分からん世界観は。気を抜くと変な世界に引き込まれそうだ)
下らないやり取りにため息をしていると、組み分けの完了を確認した骸骨車掌から次の指示が発令される。
『皆さん、それぞれテーブルへの移動が完了しましたね。それではこれより今年のミッションについて発表させていただきます』
ようやく本題に入った骸骨車掌にバルジは注目をした。
(さて……一体どんなミッションになるか。ジュリアの情報では、過去にはミステリーボックスや謎解きゲーム、ロシアンルーレットゲームなどがあったとか。どれも碌でもないが運要素を持ち込まれてはどうにも出来んな)
脳裏で悩みを抱えている最中、骸骨車掌がミッションについて発表をした。
『今年のミッションはクイズです。これより9問のクイズを出題します。どれもハロウィンに因んだクイズですので、今年はサービスミッションと言えるでしょう』
骸骨車掌の話を聞いて、バルジの気が一気に緩んだ。
(クイズ大会か。それもハロウィンクイズならばなんとかなるかもしれん。……おそらく)
自身の事よりもシリウス一同に若干不安を感じながら安堵をしていると、骸骨車掌から命令が下った。
『それではこれよりクイズを始めます。その前にこれより我が下部がタブレットをお配りします。受け取りましたら、登録画面の内容に間違いがないかご確認をお願いします』
骸骨車掌が説明をすると、会場内に複数の黒ずくめの者達がタブレットを配り始める。バルジもタブレット受け取ると、登録画面が表示され自身の名前と顔写真、職業を確認した。
(なるほど。これで個別に成績を見て判断するというわけか。何処までも手間の掛かることだな)
若干面倒に思いつつ、登録の確認を終えると骸骨車掌が進行を再開させる。
『それでは早速クイズ大会を始めようと思います。先程にもお伝えしましたが、今回のクイズは全部で9問ございます。それぞれの問題を正しく解答されると、最後にキーワードが出てきます。それが分かるとボーナスポイントとさせていただきます。なお今回は同グループでの相談を許可します。皆さん精々協力し合ってくださいね』
不気味な笑い声で告げてくる骸骨車掌に、思わず少しため息をついた。
「はぁ…」
(なんとも白々しいことだ。選ばれた者の争奪戦である以上、端っから協力させる気などないくせに。寧ろお互いに邪魔をさせてつぶし合いをさせるのが目的か)
骸骨車掌の意図を読み取ったバルジは、なるべく周囲に絡まれないようにクイズに参加をした。
『まず前半は基礎編です。では第一問。ハロウィンは何月何日?』
『s』…10月31日
『g』…11月30日
『j』…10月28日
早速出題されたクイズ内容に、思わず気の抜けた声が漏れる。
「は?」
(な、なんだこの簡単すぎる問題は。この骸骨車掌、参加者を舐めているのか?)
若干怒りを覚えながら、内心で文句を言っていると、側にいたピンツがニヤニヤしながら話しかけてきた。
「なぁ~バルジさん。特別に教えてやるよ。答えは10月28日だぜ」
明白に邪魔をしようとしているピンツに嫌気がさしてきた。
(これまた見え透いた嘘だな。そもそも今日がハロウィン当日の10月31日で間違える時点で論外だろうに)
「そうか。わざわざ教えてくれてありがとうな」
皮肉を込めて伝えるが、どうも理解はしていないようで再びニヤついていた。
「いいって!これも紳士的な行動の一つだからな」
「……そうか」
素っ気ない声で言い返すと、バルジはピンツの回答を無視して、黙って正解の『s』を選択した。
その後も基礎編の問題が出された。
『第2問、『ジャック・オー・ランタン』はもともと何で作られていた?』
・『a』カブ
・『s』スイカ
・『l』リンゴ
『第3問、ハロウィンにおこなわれる占いをなんという?』
・『v』キャンドルディビネーション
・『c』バーニングナッツ
・『j』ビタービッカー
『第4問、ハロウィンのお祭りで食べられるケーキの名前は?』
・『r』ソウルケーキ
・『d』アイスケーキ
・『p』モンスターケーキ
『皆さん順調ですか?それでは後半の問題は謎かけです。ひらめきで答えてください』
『第5問 ハロウィン会場のゲートで光っている恐ろしい星はなに?』
『i』…〇〇〇〇〇
『p』…〇〇
『s』…〇〇〇
(今度は謎かけか。〇は恐らく答えの文字数を表しているのか…)
バルジは腕を組んで、天を仰ぎながら考え始めた。
(ゲートで光っている恐ろしい星…か。恐らく〇〇星とはではないな…違う言い回しをするとしたら、星ではなくスター…か。ゲートで光るスター。門で光るスター。あ~なるほどな)
答えが閃くと脱力しながら文字数を数えてタブレットで回答をした。
その後も骸骨車掌から子供だましとも思える謎かけの問題が出題される。
『第6問 ドラキュラが目覚めたときに時計を見るとドラキュラにとって苦手な時間だった。その時、ドラキュラはなんと言ったでしょうか?』
『d』…〇〇
『f』…〇〇〇〇
『w』…〇〇〇
第7問 「ストライキに行くよ!」と言って、ハロウィンパーティに来なかったのはどなたでしょう?
『r』…〇〇
『i』…〇〇〇〇
『w』…〇〇〇
第8問 ハロウィンが近づくと透明になるゴツゴツしたブタは?
『a』…〇〇〇
『h』…〇〇〇〇〇
『c』…〇〇
第9問 ドラキュラ達がいつも気軽にする挨拶ってなに?
『x』…〇〇〇〇〇
『e』…〇〇〇
あまりの下らないクイズに呆れながら一通り問題を解き終えると念のため振り返りをする。
すべての答えを確認すると、あるキーワードが出てきた。
(『s』『a』『c』『r』『i』『f』『i』『c』『e』…『sacrifice』か。確か…生贄という意味だったか?)
無事にキーワードを入力し終わると、ふと他の隊員のことが脳裏に過ぎった。
(さて、一先ずこれでミッションはなんとかなりそうだ。しかし、あいつらは大丈夫だろうか。まさか分からずに困り果てているのではないだろうな…)
ふと有紀の事を考えると困り果てている顔が容易に想像出来た。
「間違えなく、困っているな……やれやれ」
バルジは周囲にバレないようにイヤホンで答えを伝達した。
伝達が終わると、再びタブレットを見ながらクイズ問題を確認するとある疑問が過ぎる。
(それにしても最後の問題はハッキリ言って駄洒落だったな。それに全般的に問題が幼稚だ。こんなことで選定して伯爵夫人は何が目的なのだ?それとも、本当に気まぐれで選定しているだけなのか?)
伯爵夫人の意図を腕を組んで考えていると、隣でピンツが大声を上げた。
「うわ~~~分からね!!!どんな激ムズ問題だしてやがるんだよ!!!」
その子供じみた態度に呆れていると、見掛けたフランツが声を掛けていた。
「やれやれ困った青年じゃの…仕方がない。ワシが答えを教えてやろう」
「え?!いいの?!」
「今回だけだからな」
その様子が気になり横目で見守っているとフランツは本当にすべての答えを教えていた。
あまりに正直に教えていた為、不思議に思うとフランツに尋ねた。
「いいのですか?正解をすべて教えてしまっても?」
「構わんよ。どのみち全問正解をしたところで、その他の部分で奴は失格じゃ」
「なるほど。貴方は食えない方だ」
「ほほほ、おぬしもな」
不気味な微笑みをお互いにしていると、クイズ大会はそのまま終了した。
[newpage][chapter:異色の選ばれし者]
タブレットを返却して再び自由時間となりシリウスは再集合をする。
集まった一同からは先程のクイズについて愚痴を漏らしていた。
「は~~~なんかすげぇムズかった…」
「本当…あのままだったら、私ほとんど不正解になるところだったわ」
「ありがとうございました、バルジさん」
予想通りにクイズで苦戦していた一同を見てため息をついた。
「全く…お前らな。あれくらいの問題も答えられんとは…情けないにも程があるぞ」
「「「スミマセン…」」」
バルジに一喝されて一同が頭を下げて謝罪をする。
しばらく会話をしていると、有紀が今後について話を始める。
「後は…選ばれし者達の発表を待つだけですか?」
「そうだな。無事に選ばれればいいのだが……しかしな」
「どうか…したんですか?」
何か引っかかるような声を漏らすバルジに不安そうに尋ねると、胸の心中を口にした。
「どうにも……嫌な予感がする」
「嫌な…予感ですか?」
「あぁ。さっきのクイズもそうだが、内容が簡単すぎる。それにキーワードにも違和感がある」
「あの…『sacrifice』のことですか?あまり聞いたことがないですけど、アレってどういう意味だったんですか?」
「あれは生贄という意味だ」
「い、生贄?!それって……」
「恐らくただハロウィンに因んでの意味だとは思うが、どうも気になってな」
バルジが難色を示していると、デイビットとルイが陽気に話をし始めた。
「ひょっとして、選ばれし者達がなんかの儀式の生贄にされたとか思ってるんっすか?」
「流石それは考えすぎですよ」
「そうだと……いいのだがな」
二人が話しても未だに納得をしていない姿を見てシリウス一同はお互いに顔を合わせる。
「大丈夫ですって。コインは表でしたし、気にしすぎですよ」
「ならデイビット。もう一度やってみろ」
「え?!いいっすけど…」
予想外の言葉に困惑しながら、デイビットは再度コイントスをした。
チャリーーーーン、パシン!
再び、手の甲をみるとそこには1000年女王の微笑みはなかった。
「げ?!う、裏?!」
「嘘でしょ」
「わ、笑えないよ」
一同が動揺していると、徐々に嫌な予感が警鐘を鳴らし始める。
(別にデイビットのコイン占いを信じる訳ではないが、やはり…今回の任務はいつも以上に用心した方がよさそうだ。場合によっては切り札を使うしかない…か)
バルジは出場時と同じように警戒心を持つとそっと腕時計に触れた。
しばらく自由時間を過ごしていると、再び骸骨車掌がステージ上に登場した。
『皆さん、おくつろぎ中失礼いたします。先程、我が主人の深窓の令嬢メディア様より今年の御招待の方々のリストが届きました。これより発表をさせていただきます』
骸骨車掌の言葉に会場の一同が注目をする。
シリウス一同も息を飲んで発表を見守った。
「今回の御招待に選ばれたのは、6名様です。フランツ・エーゲン様、ピンツ・コックス様、シュワンヘルト・バルジ様、有紀学様、デイビット・ヤング様、ルイ・フォート・ドレイク様です。この6名様には招待状をお渡ししますので、ステージ横までお越しください」
発表を聞いたシリウス一同は肩の力を抜いて安堵の息を漏らした。
「ふぅ~~なんとか選ばれたみたいですね」
「本当にね。これで任務は続行にね」
「それにしても、まさか全員選ばれるなんてな」
呑気に話をしている3人だったが、バルジの心情はどこか腑に落ちずにいた。
(確かに全員が選ばれたことは任務としては良いことだが…そんな都合の良いことがあるか?それにあのフランツさんとピンツ青年もか。一体…深窓の令嬢メディアは何を考えているのだ)
まだ出会っていない深窓の令嬢に不信感を感じながら、一同は招待状を受け取った。
その後は何もイベントはなく、特別列車861号は惑星メーデイアへ到着した。
骸骨車掌の案内で列車を降りると、先程のフランツさんとピンツと合流した。
「あ~~!!またこいつらと一緒かよ」
大げさに残念そうにしているピンツを見て、シリウス一同も嫌な顔で答えた。
「あ!あの時のくそ生意気な餓鬼だな!」
「なんであんたまで選ばれているのよ!」
「お前!ルイに危害を加えようとしたら許さないからな!」
明らかにけんか腰のデイビット、ルイ、有紀を見て年長者のフランツとバルジが制止させる。
「お前ら落ち着け。いきなりけんか腰とは大人げないぞ」
「そうじゃな。仮にもあのメディア様に選ばれたのですから、仲良くするのがいいですな」
どこか気の合う二人の様子を見た有紀が不思議そうに首を傾げた。
「バルジさん。随分と仲が良いみたいですけど、その方はお知り合いですか?」
「ん?あぁ。紹介がまだだったな。この人はフランツさんだ。さっきのクイズ大会で知り合いになってな。なかなか理解力のあるお方だ」
バルジがフランツを紹介すると、和やかな笑みで話し始める。
「そんなに棚に上げないでください。ちなみにそちらの方々はお知り合いですかな」
「はい。今回仲間と参加をしまして、右からデイビット、ルイ、有紀といいます」
「そうでしたか。それにしてもまたご一緒になるとは意外でしたな」
「そうですか?私は貴方ならば選ばれてもおかしくはないと思っていますが」
「ほほほ、バルジさんはお世辞もお上手ですな」
「事実を言っているだけですよ」
どこか楽しそうにしている年長者二人をみて、シリウス一同とピンツがコソコソと話し始めた。
『見ろよ…おっさん相手に笑っているぜ』
『やっぱり年上だけに気が合うのかしら…』
『あのおっさん達、クイズ大会でも不気味な笑みで笑い合っていたぜ』
『これはなかなか関わりづらいよな…』
『だな。変に絡まれても返しがムズいもんな』
『『『確かに…』』』
「ん?なにか言ったか?」
老けたくないと言う目で見ていたが、突然のバルジの声に4人は一斉に目を逸らした。
そうこうしていると、一同のところにタキシード姿の男性がやってきた。
その男は長身で短髪の黒髪の若いバトラーだった。
「皆様、長旅お疲れ様でした。私はメディア様のバトラーのメフィストと申します。失礼ですが、招待状を拝見しても宜しいでしょうか?」
何処か不気味なオーラを出すメフィストに困惑しながらも、各自が招待状を提出した。
「……確かに皆さんが選ばれた者達のようですね。それではこれより魔女の館へ参ります。私に付いて来てください」
メフィストの案内で一同は目的地である魔女の館へ到着した。
外見は洋風のお城と言ったところだが、外壁は黒く、どこか淀んだ空気が立ちこめていた。
「なんか…いかにもって感じの館ね」
「あぁ…本当にお化けとか出てきそうだな」
「お、お化けなんて怖くないぞ」
どこか怯えながら呟く有紀・ルイ・ピンツにデイビットがちょっかいを掛けた。
「なら賭けるか?この城にお化けが出るか出ないかで?」
突然の提案に3人は白けた目でぼやいた。
「それ……賭けになるかしら」
「実際出てこられても困るしな」
「海賊のおっちゃんって…空気読めねぇって言われるだろ」
「お前らそこまで言わなくてもいいだろうが!!」
下らない事で言い争っている4人にバルジは頭が痛くなった。
「全く…あいつらは何をしているのだ…」
「まぁまぁ、これも若き感覚なのでしょう」
「はぁ…そんなものですかね」
フランツの言葉に呆れていると、案内人のメフィストが館の扉を開いて声を掛けた。
「お待たせ致しました。皆様、どうぞ…お入りください」
案内に従って館の中に入ると、広いエントランスで正面には大きな階段があり、その上に一人の白銀で長髪の女性が立っていた。
「皆様、あちらが当館のご主人様、深窓の令嬢メディア様です」
「Happy Halloween。よくお越しくださいました。あなた方に巡り会った運命に感謝を…」
バルジが見上げると、白銀の女性は何処か嬉しそうに少し微笑んで出迎えた。
(あれが深窓の令嬢メディアか…さて問題はここからだな)
【次回予告】VOICE デイビット
俺たちはついに魔女の館に侵入したぜ!
晩餐会のフルコースたまらねぇな
あれ?隊長…なんでたべないんっすか?
次回、『ハロウィン失踪事件 魔女の館編』
俺たちは次の駅で誰かの罠に嵌まる。
[newpage][chapter:クイズ大会答え合わせ]
Q2、『ジャック・オー・ランタン』はもともと何で作られていた?
←カブ
Q3、ハロウィンにおこなわれる占いをなんという?
←バーニングナッツ
Q4ハロウィンのお祭りで食べられるケーキの名前は?
←ソウルケーキ
Q5ハロウィン会場のゲートで光っている、恐ろしい星はなに?
←モンスター
Q6ドラキュラが目覚めたとき時計を見たら、ドラキュラにとって苦手な時間だった。その時、ドラキュラはなんて言った?
←10時か(じゅうじか)
Q7「ストライキに行くよ!」と言って、ハロウィンパーティに来なかったのはどなたでしょう?
←ゴースト(ゴー、ストライキ)
Q8ハロウィンが近づくと透明になるゴツゴツしたブタは?
←スケルトン(透ける豚)
Q9ドラキュラ達がいつも気軽にする挨拶ってなに?
←チース!(血を吸うから)
Ad