オーダーとレディなら

  「ホルガー、自動二輪車と一緒に入国するぞ。この国は治安維持部隊が常時滞在しているし、この国の警備兵は相当鍛錬を積んでいる。」

  自動二輪車のスピードを落とすと並走する自動二輪車にむけて声を掛けた。

  「オーケー!!いい子ちゃんでいればいいんだろ!?」

  すると光を反射していたゴーグルが上がり、青い瞳と目が合った。

  ……コイツにいい子ちゃんが務まるのだろうか。

  国境近くまで来ると互いにヘルメットを外して自動二輪車を手押しした。

  平たい巨石、一枚岩の中をくり抜いたようなウルールロックで護られた国の周囲は木々が少ない草原地帯となっており、ホルガーの短い芦毛色の黒髪と俺の肩まで伸びた芦毛色の白髮の間をすり抜けて涼やかに[[rb:戦 > そよ]]いだ。

  「間違ってもホルスターに手をかけるな、女子供に手を出すな手を上げるな。物をくすねようとするな。」

  コイツは直ぐにキレるし予測不能な動きをして場をかき乱すから、何かあったら他人のフリをして警察隊か警備兵に突き出すか、最悪は協共国間治安維持部隊に今迄の罪をひっ被せて賞金をガッポリ頂こう。

  「クラウス……入国する前に、一度重要な確認をしたい。……大切な事なんだ。」

  ……この相棒のような曖昧な関係に契約ごとを結ぶのか?

  あの日、背を預ける仲に至る以前に話し合ったはずだ。

  備蓄塹……備蓄掩体壕を二人で共有し、場所に関することを機密とする。

  各自で金品や宝飾類、弾薬庫や武器庫は管理する。

  文句があれば直接速やかに話して解決する。

  野営する時は互いに警護することもあるが……。

  ……過去や心情に深入りせず、嫌なことがあれば離れるのも自由。

  だから、殺し合いしても構わない。

  そんな簡単な口約束すら守れないのなら、いっそのこと……。

  「この薬品が有名な国では……」

  前に説明した筈だ、ここで盗みを働くなら切り捨てると。

  「……なんだよ。」

  言ってもわからぬ馬鹿なのならば……。

  「生のtransfurが見られるんだろ!?人間の女のハーピィ化!!オレ……オレ、ずっと生でtransfurを見たくて……腕と腕がミシミシとひしゃげて、生えたばかりの嘴で自傷行為をする女……羽根を毟って産卵しながら鳴く女……。」

  [newpage]

  「クラウスのウソつき!!transfurができる風俗店なんかありゃしない!!」

  ホルガーは婦女子や子供も通行する大通りで業を煮やして叫びだした。

  「静かにしろ!国の警備兵だけでなく協共国間の治安維持部隊が私服で彷徨いているかもしれない。……お上品にしろ。」

  口元に人差し指を立てて口を窄める仕草をすると、今にも暴れ出しそうにソワソワしていた動きが収まった。

  当たり前だ、transfurは人体を変形させる。

  風俗店ならば嬢は商品であるから人間からケモノ化した場合は打ち消すtransfurをして人間に戻さねばならないが、一度ケモノ化した者を『完全に元に戻す』のは非常に困難である上その度に莫大な金がかかり、やや人間に戻った者を再びケモノ化すればその度に劣化し、状態変化を繰り返すほど商品価値は無くなり、やがて摩耗した人体は壊死や変質が始まり死に至る。

  ほぼほぼ初めての変化が一番見応えがある『一度きりのエンターテインメント』であって、それは奴隷や風俗嬢の個体を買い上げた場合に成立する贅沢な催し物であり、買ったら買ったでペットにするか加工するか処分するかを所有を選択した買い主が主となって事後書類を提出しなければならない。

  変化が容易となる特殊な薬剤を投入された『特定形状変化体』もいるにはいるが、薬剤は高価であったてそもそも軍事や医療等の研究用に用意された実験体でしかお目にかかれない。

  まれに本人の希望や同意があって一般市民がtransfurを行う場合もあるが、個人の範囲であるため公開される申請番号と対象者の名前等の情報は把握できたとしても、実行される様子は公開はされないのが一般的だ。

  ホルガーは整備された歩道の剥がれた表面部分の欠片を爪先で蹴るのを繰り返しながら項垂れてトボトボと隣を歩いた。

  「人間の女のハーピィ化……変形した関節の軋む音……」

  特に人間の女をハーピィ化させた場合、腕が翼となり関節が変形するため禄に動くことができなくなり、炊事や洗濯等のハウスメイドやコックメイドといった従者の作業をさせられず、オナホール用か鑑賞目的でしか使えなくなる。

  これは四足歩行ではないもの全般に言えることで、例え四足歩行が可能なケモノになったとしても人間だった頃と同じ遂行力を保てている者の存在はあまり耳にしない。

  仕方がない、コイツとは腐れ縁のドルーグシュピーラーだ。

  観光がてらに機嫌をとってやるか。

  「そうだ、協共裁判所附属の実刑措置所に併設してある装飾品店とレストランに行ってみなか?」

  欠片を蹴る足をとめる気配のないホルガーはハァと深い溜息をついて下を向いたままだ。

  タイミングが合えば被害者が受刑者に対してtransfurを望んでおり、ハーピィ化のようなピンポイントではなくともケモノ化の状態変化を拝めるかもしれない。

  刑の執行は金を払えば傍聴可能だからな。

  「絞首刑や鞭打ち刑、よくて拷問だろ?……そんなのオレたちだってやってるじゃん……」

  [newpage]

  「うーむ、やはりケモノ化は無いなぁ……。」

  実刑措置所のここ数日間の予定表にはtransfurを指し示す刑の記載はなく、被害者当人による拷問や斬首刑等の当たり障りのないものしかない。

  そして受刑者も男が多く、若い女の名前はほとんど無い。

  「ハーピィ化……」

  コイツ、そんなにハーピィ化が見たいのか。

  他人の性癖は得てして理解し難く、外見からは想像もつかず一見しただけでは分からないものだ。

  「とりあえず装飾品店に行こう。」

  、、、

  「へぇー……刑務所の中にインテリアショップがあるのか……。」

  ホルガーは黒い内装から一転して白を基調として黒色の装飾が施されているアンティークショップのような宝飾品店の内装と飾られている商品を見て廻った。

  協共裁判所の附属なだけあって強盗事件で押収されたものの持ち主が殺害されたため行き場のない宝飾品、重要視されていない民間人が発行した書物、同じく持ち主不在の衣類や雑貨類等や武器といった様々な物がカテゴライズもそこそこに雑然と並べてある。

  「お……いいナイフだな。」

  刃物類が置かれている棚に保護箱や防犯チェーンにより剥き出しで保管されている刃渡り17cmのサバイバルナイフを手に取った。

  先端は切れ味が鋭くなっているナイフそのものだが柄に近づくにつれノコギリな細かい刃が連なりトゲのように返しが付いている。

  「お目が高いお方だ……そうです、そのナイフは対象の臓物を一刺しで抉り出すことを目的として作られたもので、通称『リパーナイト』死神の夜といいまして……大戦中に使用禁止となった逸品にございます。」

  カウンターの中から支配人と思わしき恰幅のいい中年男性がスタスタと歩み寄ってきた。

  「これだけ値札が無いようだが。」

  他の武器庫には紙のラベルが括り付けられているようだが、このナイフだけ何もない。

  「ええ……3,150万エドルですから……非売品のようなものです。」

  そんな貴重品を……わざと目につく場所に置いていとは嫌らしいな。

  「そうですか、俺が買います。……アッチの方の商品を見せてもらえますか?」

  財布から協共銀行の黒いカードを取り出すと支配人はニヤッと笑って奥の扉の鍵を開けた。

  「おいホルガー!スナッフビデオなんか後にしろ!!一緒に来い。」

  [newpage]

  「なんかスゲー……女と男のオブジェばっかりだ……。」

  支配人に通されたのは刑務所と同じ材質で出来た鉄板の壁で出来た換気扇のプロペラが回る宝飾品や収集品の陳列室、いわゆる『不思議の部屋』を表すヴンダーカンマー、コレクターが所有する『驚異の部屋』クンストカンマーのそれであった。

  見回すと60cm大の四十八手の再現であろう性交中の男女や女同士が乳繰り合っているドール、女の上半身がハンティングトロフィーのように壁付け飾りになっているフィギュアヘッド、男の勃起した肉棒と女の膣からチョロチョロと水が流れる噴水等様々な種類の人形またはスタチューが所狭しと並んでいる。

  「これは実刑に処された者たちの成れの果てか、なかなかに趣深い……。」

  とりあえず目についた女の上半身のトロフィーオブジェの前に近づいた。

  「そうでしょうそうでしょう……お客様は船舶をお持ちでしょうか?もし所有されておりましたら、この柔い表皮を錆び止めや劣化防止加工で固めて船舶の船首像にするのがポピュラーにございます。」

  柔い表皮……?

  「触ってもいいか?」

  支配人は満面の笑みを浮かべて頷いたのでトロフィーオブジェの乳房を両手で包み込むように感触を確かめつつ触りながら揉み込むと実物までとはいかないが柔らかく、顎も開くことが可能で口腔内も湿り気を帯びている。

  魔化学シンギュラリティ以前まで一般的だった完全な人形化、つまり蝋人形のように肉体全てを硬化させたり剥製のように皮で形を再現しているわけではないのか……?

  「驚きましたか?最近では魔化学の発達により切断後臓器類が生きたまま加工出来るようになったのです。」

  ならば臓器類が動いているとするなら生きているのか?

  「加工技術について詳しく話を伺いたい。」

  横を見るとホルガーは関節が動く男女のドールをまぐわせて一人遊びを始めていたので、話に集中出来そうだ。

  「はい!当ヴンダーマスターの私めがご説明させていただきます。」

  [newpage]

  「魔化学シンギュラリティ以前までは内臓を取り除くか無理やり固めておりましたが、冬虫夏草の一種である魔化的菌糸類の魔虫草に繁殖力の強い魔化的植物のサクタバギクとマツナ、成熟期から未成熟期に戻るカタヤワラクラゲとルリベニクラゲの発見により人間の生体の特質的移行、任意的特殊分化転換……つまり、ある程度若返りと老化といった肉体の状態についてコントロールが可能となりました。」

  確か、以前襲った水産加工を営む夫婦の店で論文を読み、備蓄塹壕に収納した気がする。

  ……どのエリアに置いたかな。

  「若返りをさせて肉体を保存しているとして、エネルギーは何処から?」

  トロフィーオブジェの乳首をつねるも弾力に変化はない。

  「裏側にカートリッジ接続部がございまして、そこに嵌め込まれた本体の栄養源である苔ブロックからエネルギーを吸収します。いわゆる電池式ですね。舌が乾いてきたら交換の合図です。口淫をさせるオナホールとしても使えますし、しばらくの間は会話も可能です。」

  とのことだったので声をかけてみるが反応がない。

  「……あはは、すみません。ついうっかり電池交換を忘れてしまいまして……。記憶や意識は脳がすり減らない限りは理論上保てるはずなんですが、これに関しては口がきけなくなってしまいました。」

  支配人は照れくさそうに頭を掻いた。

  「……カートリッジ部分に記憶媒体を差し込める基板が見えるようだが。」

  裏側を見ると苔ブロックとは逆方向に配線が見える。

  「あ!はい……そうなんです。記憶や意識のデータが吹っ飛んだ時にはバックアップとして人格チップとメモリカードを使えるんです。」

  そう言うと支配人は壁に備え付けられたラックからメモリカードを取り出してきてトロフィーオブジェに差し込むと、上半身がカタカタと震え出して白目を剥いて舌を突き出した。

  「あへぇ……♡おにいちゃんの濃厚せーし♡お口に入れてぇ……おにいのお◯んぽみるくがのみたいのぉ……♡」

  トロフィーオブジェの上半身は手首の先が無く、手首が板に結合された状態でヘソから上の部分を上下に振って白い乳房バルンバルンと揺らし始めた。

  「い、妹さんでしたか……。」

  思わず後退りすると支配人は苦笑いをしてペコペコと頭を下げた。

  「その……そういうプレイを好む紳士の方に向けた人格チップでして……。私めの趣味趣向ではありませんので……。」

  [newpage]

  「そうだお客様……当ヴンダーカンマーでは製作工程見学ツアーも行なっておりまして……当店でお買い上げた今なら通常価格1,000万エドルのところ……18%OFFの820万エドルでご紹介が出来ます!!お連れ様もご一緒でこのお値段!!併設するレストランの割引券や次回ご利用に便利な協共裁判所附属の実刑措置所内併設施設全店舗でご利用いただける会員証兼ポイントカードをお付けします!!」

  ……協共裁判所等の協共国間施設の一部エリアを利用するには協共国国家資格の保持が必須であり、この実刑措置所にも俺が保有する認定資格者証明書で入ったわけだが。

  会員証やポイントカードなんて減るもんじゃないし、あることで困ったりしないからな。

  「製作工程見学ツアーに2名、参加する。」

  、、、

  「なークラウス、ここ排水処理設備からして拷問室だぜ?……もし支配人以外に人が居てオレたちを殺そうとしたら多分、負けるぜ?」

  ホルガーは腕を頭の後ろに組みながらこちらを睨んだ。

  コイツの回転式拳銃『フーガ』『ロンドソナタ』、そして俺の回転式拳銃『リート』『オーバード』の合計装填数は25弾、狭い監獄のような場所では私設兵や部隊員が待ち構えていた場合ならば、ひとたまりもない。

  「ま、その時はその時だ。」

  支配人は一際大きい換気扇が回る部屋の鉄の扉の中から鎖に首が繋がれた手枷をした女を引っ張ってきた。

  「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。」

  女はひたすらに謝罪の言葉を述べて支配人に縋り付いた。

  「先ずですね、先に飲食を抜いて下剤を飲ませて腸から糞を出し切っておくのです。基本的に加工する場合はこうします。今しがた浣腸が完了致しました。」

  一見すると受刑者というよりも病人のような刑務服を着た女は必死に支配人の気を引こうとするがあまり、手枷をされた両手で服を捲りあげて綺麗に剃り上げられた秘裂を開いて見せた。

  「お……お◯んこしますから許して……」

  それを見たホルガーはようやく興味を持ったのか支配人に声をかけた。

  「なあオッサン!その女犯してもいい?金ならクラウスが払うからさ。」

  ……コイツ。

  「はい!かしこまりました。……まあ若くないんで1万エドルでかまいませんよ。」

  [newpage]

  「ハァー……やっぱり体を動かさねーと……。」

  ホルガーは女のワンピースのような刑務服を捲りあげて突き飛ばした。

  「おっと!商品にしますので丁寧に扱って頂かないと……。」

  買取はごめんだぞ。

  「わーかーりーまーしーたー!!」

  そのまま四つん這いになった女の腰を持ち上げると秘部をクパァと指で開いた。

  「やめてください……いやです……」

  涙を流して手枷を祈るように天に突き出す女を尻目にホルガーの指は割れ目をこじ開けていく。

  「パイパンじゃん!!オレ、パイパン好きなんだー!」

  ホルガーはすっかりテントを張っているズボンのファスナーを下げると我慢汁が垂れている亀頭をズブズブと膣に埋めていく。

  「いやぁ……やぁ……あ……あっ……あっあっ」

  そしていつものように前後のピストン運動を始めた。

  「旅の疲れを癒すのはやっぱりレ◯プだよなー……」

  腰を掴まれて手枷のため上手くバランスを保てない女は、前のめりと言うより、つんのめる不安定な体勢で前後左右に揺さぶられ、乳首が金属の床に擦れそうになっている。

  「ホルガー、皮膚が擦れて傷物になったらどうするんだ。」

  仕方がなく女の目の前に立ち、手枷を掴んでファスナーを下げた。

  「オイ女!!やさしいクラウスの◯ンポを舐めてやれ!!」

  ……戦火での強姦、レ◯プは状況的に殆ど女から反撃されることはないが、この女は死刑に等しい加工の刑に処されるほどの大罪人なわけであって。

  ◯ンポを噛みちぎられたりしないだろうな。

  「はひぃ……んふ……りゅ……れろ……」

  よかった、心配のしすぎだった。

  女はフェ◯チオが存外上手く、裏筋から玉、カリまで丁寧に肉厚な舌で舐め取った。

  手枷を持ち上げているのもあって女は喉で◯ンポを咥えてイマ◯チオもこなしてみせた。

  「女の喉◯ンコも中々いいな……。」

  ついつい腰を前後に振って喉奥の粘膜のぬめりと止めどなく流れる唾液が絡みつく感触を楽しんだ。

  「アー……そろそろ出す……」

  ホルガーが腰を掴んで思い切り女の膣奥を突き上げた瞬間、自分も喉奥に射精した。

  「……お楽しみいただけましたか?では、本番へと移行しましょうか。」

  [newpage]

  「それではお二人とも、大事なものをしまっていただきましたら、そのままの体制で女を掴んでいて下さい。」

  そう言と支配人はジュラルミンケースから注射器を取り出して薬剤を吸い上げた。

  「いやぁ……いやぁ、お◯んこします、お◯んこしますから」

  泣き喚く女に向かって支配人からナフキンが投げられ、それを受け取って女の口に詰めた。

  「この薬剤、通称『ドールフィギュア化凝固処置に係る薬品』のうちの一つ『臓器固定剤』を先に投与します。ええと、クラウス様でしたかな?手枷の錠を解錠いたしますので、お連れ様に腕を引かせてください。」

  女は手枷の錠が外れてカタンと金属板と当たる音がすると暴れ出したが、ホルガーと俺の力には敵わず泣きながら体を動かしただけに終わった。

  そして支配人が首と背中、腰に注射を打つとだんだんと女の目は虚ろになり、身体全体が蝋で固めた蝋人形のように自然に空中で固定されていた。

  「成る程、この段階で剥製のように形を決めるのか。」

  支配人は人差し指を左右に振ってチッチッチと口から警告音を出した。

  「甘いですね。見ていてくださいね?」

  おもむろに壁に立てかけてあった巨大な肉切り包丁を取り出すと思い切り女の腰から上に振り落としと身体を真っ二つに分けた。

  「ウワー!!血飛沫が!!……ってアレ?血が噴き出してこない……」

  女の上半身がバランスを保てているうちに横に移動すると切断された内臓が凝固して氷のように固まっている。

  「これが『臓器固定剤』の力ですよ。周辺の皮膚や骨、臓器と密着して固まっているのです。これの断面をカートリッジ化します。そうすることで形を保ったままのトロフィーヘッドが出来上がるのです。」

  支配人は上半身側と下半身側の断面に透明なスプレーをかけると、瓶からジェル状の液体を取り出してヘラで臓物の切断部に塗り込んだ。

  「そのジェル状のものは余白を埋めるためのものですか?」

  こちらの問いかけよりも作業に集中しているようで、その後の機械化作業の粗方が終わるまで終始無言で製作工程見学ツアーは終わった。

  「オッサン!!見学ツアーだっつったじゃん!!」

  ホルガーが呆れたように肩を落とすと、支配人は照れ笑いをした。

  「すみません、つい作業に熱中すると周りが見えなくなるものでして……お詫びとして当施設に併設するレストランの裏メニューについてご紹介いたします。もちろんお代はいただきません。飲食代も講義代無償です。ついでに宿泊施設も二泊三日プランを無償にしますよ。」

  大丈夫なのかよ、そんなに適当で……。

  「では、よろしく頼む。」

  [newpage]

  「先程の下半身はどうなる?」

  案内された蝋燭の灯りだけの特別なテーブルの席につくと支配人は微笑んだ。

  「それはもちろん脚をつけて家具のオットマンとしての……もう、お分かりでしょうに。オナホールやダッチワイフとして使用される方が多いですよ。」

  そう言って手を叩くと執事のような男が現れてメニュー表を差し出した。

  「お客様、大変申し訳ございません。当店は本来予約制でして……。」

  まあ本来ならばこの男が案内をするところだろうからな。

  「クラウス!!シュリンカーがあるぞ!!」

  ……ホルガー。

  「シュリンカーが可能になったと技術紙報で把握はしていたが、質量保存の法則などはどうなっている?」

  こういうことは百聞は一見にしかず、紙面で理解した気になるより実際に携わっている人間に聞いたほうが早い。

  「はい。シュリンカーは生物を縮小することに成功したという事実の一点においては間違いはございません。」

  となると、縮小した残りの部分は余財となるのか?

  「魔化的生物のプラチナリア、ソガイギンチャク、ムラメーバの研究の成果によってその個体を『分裂』させ、小型化をするのです。」

  ……確かに、縮小にはなっているか。

  「え?そいつらって分身したってこと?それって同じ人間だって言えんの?」

  おいおいホルガー、いきなりスワンプマンやらテセウスの船みたいに同一性に疑問を呈する思考実験をするなよ。

  「それに関しては未だ議論は続いておりますが、加工職人としては都合がいい。おかげさまでパズル化やアクリルスタンド化、輪切り達磨落とし等の小型の新商品開発に精を出せますから。」

  ということは、先程まで居たクンストカンマーに並べられていたドールやスタチューは小型に加工刑が処されたものだったのか。

  「ならばシュリンカー料理のおすすめを貰おうか。」

  支配人は執事のような男に顎で指示をすると周囲が動き出した。

  「それでは当店おすすめのシュリンカー料理をお楽しみください。」

  [newpage]

  「キィーキィーキィーキィー」

  小エビくらいの大きさのシュリンカーがボウルの中に入れられて運ばれてきた。

  「協共国直属組織ではシュリンカーにった食のように供するものを『リンカーゴ』と呼びます。」

  ……配慮ってことか。

  「なあニイチャン、リンカーゴを食べて病気にならないのか?プリオン病やらクルー病やらさ……。」

  確かに、危険性はあるな。

  「ご心配なきよう、食後の臭み消しに魔化的植物のクレトクとサワボウシとアクワサビと同じく魔化的生物のチュウシビルの和え物をご賞味いただければ、そのような心配はございません。」

  やっぱりそのままでは多少の摂取でもまずいか。

  「それで……生で食べるのか?」

  流石にキィーキィー叫んでいるのを口にするのは……。

  「いっただっきまーす!もが!もが……ゴクッ……おっ!おっおっ!!腹の中で暴れてる!!お腹を蹴ってる〜!!」

  ホルガーの方を見ると犬歯を見せながら血まみれの口を袖で拭っている。

  「こら!!ちゃんとナフキンを使いなさい!!」

  ますます踊り食いをしたくなくなった……。

  「ご安心下さい。茹でたり蒸したり揚げたりをテーブルの上でご覧いだきつつお食事を楽しんでいただけます。まずは生で口内を傷つけず食するには……」

  男はリンカーゴを一匹捕まえると鋭いピックで額を貫いた。

  「脳締めにごさいます。より動きを止める神経締めはグロテスクとなりますがいかがいたしますか?」

  ……どっちでも変わらないだろ。

  「そのままで頂くよ……。」

  意を決して口に含むとラビ肉とレーズ肉の中間ような味がした。

  触感はホト肉に近い?

  染み出る血汗はヘタ刺しと刺身とも言えず、ニカ味噌の味もするような?

  骨は硬いので噛み切れない部位と一緒に吐き出した。

  「それでは活造り、素揚げに参りましょう。」

  、、、

  「ハァー……あんまりリンカーゴ料理は上手くなかったな……。」

  まあ好みは人それぞれということで。

  「ごちそうさま。会員証とポイントカードをどうも。」

  支配人から渡された2枚のカードを眺める。

  「なあオッサン……オレ、transfur……人間の女がハーピィ化するのを見たいんだ……。」

  まだ言ってるのか。

  「すみません。コイツ、ハーピィ化に異常なこだわりかあって……。」

  遮るようにホルガーの前でて頭を下げると、支配人はニコっと笑った。

  「加工刑が求刑されたもののなかでも特段処置の指示がない受刑者の加工権を買えば出来ますよ?ただしその後の所持には更に料金を頂きますが。」

  要らない要らない。

  「ヤッター!!ハーピィ化の権利だけを買います!!な?クラウス!?」

  ……まったく、仕方がない奴だ。

  「すみません、ポイントカードは使えますか?」