狼獣人が近親相姦について色々と勘違いを拗らすお話

  注意!

  キャプションでも説明した通りの内容であります。それでも良いという方のみ次にお進み下さい。

  [newpage]

  ある日の昼過ぎの事。とある会社で働く1人の狼の獣人はある事に悩んでいた。一言で言うなら、自分の息子…次男との関係である。昔は仲良かったが、つい最近は息子に煙たがられており、目すら合わせてくれないどころか舌打ちまでする始末である。如何にかして昔の様に関係を修復出来ないかと狼が勤める会社の喫煙所、その近くにある自販機の隣に備え付けられていたベンチに腰掛けて大いに悩んでいた。

  「…でさ、前に借りた仲不仲の親子が仲良くなるBLコミック…なんだけどさ」

  ふと、近くの喫煙所から聞こえて来た女性社員の会話に狼は聞き耳を立てた。普段なら聞き流す話だが、絶賛親子仲悪化中の彼に『仲不仲の親子が仲良くなる』というワードはどうも気にかかったらしい。狼は全神経を集中させ、その話に耳を傾ける事にした。

  「それで、感想は?」

  「うん、最初は殴り合いするほど仲悪いんだけど最終的に体を重ねて前以上に仲良くなるわけ。なんかベタな展開だけど、やっぱりいいわね」

  「分かるわ。因みに外にいる仲の良い親子はみんな近親相姦してるって思ってるわ」

  「そう思ってるのあんただけよ」

  これだ!仲を深める方法!

  狼は目を見開き、腰掛けていたベンチから勢いよく立ち上がるとスタスタと早歩きで自分のデスクに戻り、尋常じゃないスピードで仕事を進めていく。

  そのあまりの速さに、周りの社員はおろか滅多な事では普段動じない社長ですら驚きを隠せずに唖然と口を開いていた。そして、何時より早い時刻に仕事を終える事に成功した狼は、荷物を纏めて半ば飛び出す勢いで帰路に着く。仲良くなる方法を試すがために。

  それが、混沌とした展開を産む事になるとはこの時はまだ誰も知らない。

  「兄貴、ちょっといいか?」

  「何ー?」

  「ここの問題なんだけどよ…」

  時刻は夕方を迎えた頃、狼が暮らす一軒家。リビングでは、机に置かれたプリントと睨み合いをしている体格の良い狼の獣人と、手慣れた手つきでき料理を作る童顔が特徴のエプロンを身につけた人間が居た。

  どちらも狼の息子で、人間の方が長男、狼獣人の方が次男である。

  長男は『細身だが頭も良く家事全般が得意』で次男は『勉強は少し苦手だが、筋骨隆々でスポーツが得意』という特徴がある。ぶっちゃけこの特徴、今回意味をあんまり持たない為、忘れても構わない。

  「はいはい…今向かうから」

  「サンキュー」

  長男は料理の手を一旦止めて、次男の宿題のサポートをし始める。長男の的確なアドバイスが功をなし、次男は難なく問題を解く事に成功する。次男は和かな笑みを浮かべて長男にお礼を述べるや否や、プリントと持って2階にある自分の部屋に向かって走り去ってしまう。どうやら明日学校に持っていくのを忘れない為にカバンの中にプリントを仕舞いに行ったのだろう。えらい。

  そんなドタバタとする次男に苦笑しつつも長男は手を止めていた料理を再開し始めようとする。

  その時だった。

  バァンッと、勢いよく玄関が開く。突然の騒音に驚いた長男と2階に居た次男は何事かと思い、慌てて玄関に向かう。すると、そこに居たのは息絶え絶えになりながら息を整えている狼の姿があった。全力で帰って来たのは側から見て理解はできた2人だが、何だか何時もと様子の違う父を見て、互いに顔を見合わせ、首を傾げる。

  「…ただいま」

  「お、お帰りなさい…どうしたの?」

  「ああ、次男に話があってな…」

  突然父に指名された次男は更に困惑した表情を浮かべる。次男本人からすれば、普段辛辣な態度で接している父と話は少々しづらさがある為あんまり話したくはない。しかし、こうも息絶え絶えになってまで自分としたい話があるらしいという事に、多少何の話をされるのか少し気になる反面、恐怖もあった。次男は何かをされるのだろうか…?と身構えながら狼の話を待つ。

  狼は何とか落ち着きを取り戻し、何度か深呼吸をして呼吸を整えた後、次男に向かって口を開いた。

  「近親相姦で仲を深めてみないか?」

  刹那、世界が凍りついた。

  「あんた何言ってんだ!!?」

  次男は父から放たれた言葉に全身の毛が逆立つ次男。一旦ここで補足を挟むが、狼は温厚である反面昔から何処か抜けてる所があり、更に人の話を聞かない、頑固という一面がある。それに加えて他の大人と比べると性知識が緩く、一言で言うならピュアな心を持っている。SEXという単語も知らない。え?そうしたらどうやって長男と次男は生まれてきたのかって?ミラクルだよ。嘘だよ偉大な母のお陰だ。

  それはさておき、そんなポンコツお花畑狼の特徴を以前から理解している長男はというと、特に動ずる事もなく持ち前の頭脳をフル回転させて、今回もまた何かに感化されて突発的な勘違いしてるんだろうなと1人納得していた。まさしくその通りである。

  しかし、冷静な長男とは対照的な次男はSANチェックに失敗したのかパニックに陥っている。まぁ、実の父に実質SEXを強要されているわけであり、もはや父に恐怖を抱かずにはいられないのは仕方ない事である。ドンマイ。

  まて、待ってくれ。聞き間違いかもしれない。突発性難聴かもしれない。最近東京ドームをコンドームと間違える程だ。きっとそうだ疲れてるんだ。だから俺は聞き間違えているんだ。とここで言い聞かせ、ありもしない可能性を胸に抱いて次男は震えながらも確認の為に聞き返す事にした。

  「親父、よく聞こえなかったんだが…?」

  「…?近親相姦で仲を深めようって言ったのだが」

  聞き間違えじゃなかったコンチクショウ。聞き返したお陰で余計この状況と対峙しなくてはならなくなってしまった。そもそもなんで俺とSEXしたいのだろう?体か?こんな筋骨隆々な体だからか?それが父の好みにジャストフィットしたからか?

  次男は思考回路がショートしそうな程悩みに悩みまくるが、理由がどうであったにしろ近親相姦を迫られている現状はどうにもこうにも変わってないし、変わる事はない。

  現実は非情である。

  「…そんなに嫌なのか?」

  「いや、普通に嫌だが!?」

  次男は自分でも驚くほどの素っ頓狂な声音のツッコミを放つ。こんな声を出すのは生まれて初めてであるが、父も兄も特に気に留めていない。どちらかというと、狼のカミングアウトの方がインパクトが強かった所為で、そんな些細は事はどうでも良くなっている。

  「そもそもだけどさ!近親相姦って何か分かってんのか?」

  「…?愛を深める行為だろう?」

  実質、親子同士の性行為ではあるが、互いに愛がある故行う行為である。なんなら愛を深める行為ということは強ち間違ってはいないという事と、狼自身が性行為という事を理解してないからこそこの話は幾分タチが悪い。

  そして、今の話を聞いていた長男は狼の発言で「父が近親相姦をハグとか近しい何かと勘違いしている」のだと確信する。声を掛けて止めようする。

  しかし、台所からゴトゴト、ゴトゴトという音が聞こえてくる。その音の正体を思い出した瞬間、長男は慌てて台所に急いだ。実は音の正体は蓋をしたスープであるのだが、狼の元に向かった際に、火を消し忘れてゴトゴトと音がなっていた。それを止めに行ったまでは良かった。が、この場に長男が居なくなった事により、この状況を止められる者が居なくなってしまった。つまり、狼の独壇場である。どうすればいいのか?泣けばいいと思うよ。

  「それで済まされるもんじゃねえよ!!あんた何言ってんだ!?」

  「だって、俺はお前ともっとより親密になりたいし…」

  長男が居なくなってカオスな空間にさらなる混沌が這い寄ってくる。ニャルラトホテプではない。因みに狼が思う親密というのは、親子の絆を深めたいという意味である。まぁ、本来の意味での言葉の使い方であり、何よりそれが狼の真意であるのは確かだ。

  しかし、次男は近親相姦から今に至るまでの流れを汲み取り、導き出された答えは『父は俺と恋人になりたいのではないか』という誤解をしだす。今までの流れからそう誤解しても仕方はないが、誤解した結果、元々すれ違ってたのに更にすれ違いが加速する、すれ違いのミラクル交換である。

  「ちょっと待て!いつからだ?いつから親密になりたいって思う様になった??」

  「えっとだな、お前が辛辣に接してくる様になってからだな。その頃から毎日お前と親睦を深めたかったんだ」

  え?何?嘘、親父ってMだったの?マゾヒストファザーなの??俺に冷めた行動に興奮してたの???え?え?

  それを聞いた次男は困惑した表情を浮かべ、狼に対して先ほど抱いたばかりの恐怖が更に加速する。勿論狼はMでないし、そもそもそんな性癖を持ち合わせていない。単純に『お前との親子関係を直したい』と思っているだけだ。それに対して『辛辣に接したからMである父が俺に恋心を抱かせてしまった』と次男が誤解をしている訳で、この2人、ほんとどうしようもない所まで誤解が加速してしまったのだ。それもこれも近親相姦という意味を狼が履き違えている所為でこうなったのだが。

  「それでより良い関係となる為にお前と近親相姦で申しているんだ!」

  「いやいやいやいや!無理ッ!!!」

  必要に近親相姦…もといセックスをしたいというせがむ狼に対し、全力で首を横に振り断り続ける次男。一般家庭では見られない光景、誠にシュールである。チュールではない。

  なんで?なんでこんな事に?辛辣に接し過ぎたから?やり過ぎたから神様怒ったの??罰として父親とSEXしなきゃならないの???まだ女と性行為に更けた事もないのに。あ、これもしかしたら処女も喪う事になるの?嫌だ、父が持つ息子に貫かれたくない。いや、俺は父の息子だけど父の息子に処女を奪われたくない。助けて。誰か助けて。

  混沌とした展開に次男は一層混乱を極める。因みに長男は台所で溢れたスープの後片付けをしてる為、助けには来ない。どう足掻いても絶望である。

  「…どうしても駄目か?」

  「駄目ェ!!」

  涙目になり、叫んでまで拒否する次男。すると、あれほど騒がしかった空間に静寂が訪れる。次男の言葉を聞き、狼は耳を伏せて肩を落とすと酷く落ち込んだ。次男は別に悪い事は何一つしてないし、強いていうなら辛辣に接していたことだが、ここまで酷く落ち込まれると、何故か罪悪感が湧きでてくる。

  「…それは、私の事が嫌いだからか」

  「は?」

  「お前は、私の事が嫌いなのだろう?だから辛辣に接するのだろう?」

  次男は今日何度目かの困惑した表情を浮かべる。え?親父ってもしかしてMじゃないの?辛辣に接して興奮するんじゃないの?Mじゃない??

  次男は漸く、父がMでないことに気付いた。いや、そもそもMじゃなければ、次男に対して恋愛感情を抱いていないのだが。

  次男は追いつかない展開に苦悩しながらも、取り敢えず父がとても悲しんでいるのだと漸く察する事はできた。

  「いや…あの…別に親父は嫌いじゃ…ない」

  「え?」

  「その…最近辛く当たってゴメン」

  因みに辛辣に接していた理由だが、単純に反抗期が原因である。初めは長男にも当たっていたが、一度フルボッコにされてから恐怖に慄き、逆らう事をやめた。長男強し。結局、その矛先を今まで狼に向けていた次男、今頃になって漸く反抗期も終わりを迎えた為に、いつか言おうとしてた謝罪を悲しむ父に向けて贈ることにした。というか、送らなければいけないと感じたので謝罪した。

  「う、ううっ〜…よかったぁ…私は、お前に嫌われたのかと……」

  狼は涙を流しつつ微笑みを浮かべながら次男に抱きつく。40を過ぎているはずなのに、微笑むその顔は何処か子供っぽさを感じさせて心を燻る。笑顔がとても似合うのが狼の一番のチャームポイントなのだ。

  そんな笑顔を次男が眺めている訳だが、突如異変が起きた。

  動悸がする。それも、父の顔を見れば見るほどドキドキが止まらない。顔が火照ってきた。なんだ?この気持ちは?もしかして、恋??生まれてこの方恋に落ちた事がないからよく分からないが、これが恋というものなのか?じゃあ、俺は実は親父のことが好きなのか?そうか…それなら、俺は親父としても………。

  新たな扉が開いた。

  「…父さん、ちょっと良いかな?」

  後片付けを終えて、長男がカオスティックワールドを展開している狼と次男の元に慌てて戻ってくる。3分でカタをつけてきたのだが、長男が居なくなってからの3分間この2人に何があったのか、長男は知る由もない。

  そんな2人の様子を伺っていた長男は、先程から次男の様子がなんかちょっとおかしくなっている事に気付く。だが、しかし、優先すべきは諸悪の根源である狼だ。そう判断した長男は、取り敢えず次男の事は置いとい、抱きついている狼を引き剥がしてから肩に手を置くと苦笑しつつ口を開く。

  「あのね、近親相姦っていうのはね。親と子が性行為をする事を指すんだよ。多分父さんハグとかそんな感じとか思ってるだろうけど、違うからね?」

  「え」

  唐突に突きつけられた真実に身を固める狼。そして、今まで馬鹿みたいに必死になって次男に近親相姦をせがんでいた事を鮮明に思い出し、恥ずかしさのあまり顔を真っ赤に染める。

  「ちが、え?ハグ、え?う、う、うそだろ…?」

  「残念ながらホント。どうせ何かに感化されたんでしょ?」

  図星を突かれ、狼は押し黙る。羞恥心のあまり目頭に涙が溜まる。出来ることなら、休憩中の時間に戻って近親相姦したいと思った自分を全力でぶん殴りたい。まぁ、無理なのだが。

  「そもそも何でこんな事に?」

  「BL…というコミックというのを社員が話していたんだ…」

  「…ん。ああ、ボーイズラブね…」

  「……?ブルーレイではないのか??」

  「何言ってるの???違うよ??Blu-rayだからBRだよ?更にいうとBlu-ray Diskだから訳すならBDだし、あとそもそもブルーレイはコミックじゃないからね?正直こんな所で天然発揮されてもちょっと困るし、お願いだからしっかりして?40過ぎてみっともないよ?」

  スナイパーの如く精密な狙撃ような長男の指摘が狼の心を貫き果てる。恥ずかしさのあまり赤に染めてた顔色が、より濃い色の深緋色に切り替わる。死にそうな顔色だが多分問題はない。

  先程自分をぶん殴りたいと申したが、寧ろ一旦死んで生まれ変わりたい。フナムシになりたい。

  「まぁ、父さんも勉強になったでしょう。今度からはちゃんと調べてから発言してよ。」

  「はい…」

  狼は顔を伏せ、耳も伏せる。恥ずかしくて死にそうだが、近親相姦と言い放っていたさっきより幾分かマシだ。寧ろ何よりこれを外で言わなかった事が何よりの救いであり奇跡だった。

  長男もそれ以上狼を責める事はなく、ここで話を切り上げる。優しい。だが長男の仕事はまだ残っている。諸悪の根源を漸く討伐を終えた長男は、今まで放置していた様子のおかしい次男と向き合う。

  「さて、父さんが勘違いしたせいでなんかおかしくなってるけど、大丈夫?」

  「…い」

  「うん?」

  どうやら大丈夫そうではない。不安に思っていた長男と狼は互いに顔を見合わせて首を傾げる。もしかしたら執拗な攻防戦に疲れ果てて燃え尽き果ててしまっているのではないか?と思った狼は、先程の詫びも述べようとも思い取り敢えず次男の肩を叩こうとする。

  「おい?大丈夫か?さっきはその…済まなかった…」

  丁度、狼が謝罪を言い終えた瞬間に次男が顔上げて、肩を叩こうとしていた狼の手を掴む。そして、そのまま引き寄せると父である狼の事を優しく抱きしめる。唐突で迅速な行動に狼はおろか長男も驚き目を見開く。

  「親父、セックス……しよう」

  刹那、再び世界が凍った。

  「お前、何言ってるんだ!?」

  先程と立場が逆転した。2round開始である。ゴングが鳴る幻聴が木霊する。狼は自分の事を抱きしめている次男に恐怖を抱き、会いたくて会いたくて震える並みに身体を震わせる。例えでいうなら、携帯電話のバイブレーション並みの速度で振動している。その所為か若干残像が見えるし、何かバイブ音も聞こえる。もはやマナーモードと化している。たけしである。

  しかし、今の次男にとってはそんな事はどうでも良いようで、振動する父の首に顔を埋める。そして、思い切り匂いを嗅ぎ出した。流石のこの行動には長男も顔をしかめて引く。

  「あぁ…父さんって芳醇な香りがするのか」

  何だそのレポート、お前の父はパンか何か?と長男はツッコミを入れる。長男もちょっと思考が追いつかず心の中でよく分からないツッコミをする。

  「何だそのレポート、お前の父はパンか何かか?」

  口から漏れてしまった様だ。

  狼はというと、絶賛バイブレーション続行中である。もう携帯電話のバイブレーション機能として人生やっていけそうである。お賃金弾めなさそうだが。

  「大丈夫か…?私の所為で頭やられちゃったのか?だとしたらごめんな…?何とか直してあげるから…」

  「いや、新しい扉が開いただけだよ。父さん、ありがとな」

  と、狼に対して笑顔を見せる。生まれてこの方貰ってきた謝礼の言葉の中でぶっちぎりで嬉しくない。近親相姦とかほざかなければこんな事にはならなかったのに。先程の自分に殴りたいどころか殺意を抱くが、もはや後の祭りである。もはやフナムシになりたいどころではない。あと、先ほど次男が味わった事を今まさに自分が味わっているわけだが、次男に大変申し訳なく思い、色々と神に懺悔したい気分である。

  「あのさ、ちょっと待って?父さんが近親相姦について色々勘違いしているの分かってる?それを踏まえた上でしたいって言ってるの?」

  流石にこのままではいけないと思ったのか、狼の助け船として長男が間に入り話を止める。勘違いを拗らせているのではないかと思い質問もしてみることにした。すると、真顔になった次男は淡々と口を開く。

  「分かってるよ。父さんはハグと同義っていう勘違いしてたんだろ?俺は最初は嫌だったけど、泣いて笑う父さん見てたら何か胸が締め付けられて動悸がして恋に落ちたんだって思って…」

  それギャップ萌えだと思うんだけど。あ、てかこれあれだ。ギャップ萌えを恋と勘違いしてるんだ。あ、でも新しい扉開いたとか言ってるし、もう恋だと思い込んでるから修正不可能なんじゃ…。

  そして、このままでは、本当に父が犯されるのではないか?とそう感じた長男であったが、正直今の次男を触発すれば何が起こるか分からない。ぶっちゃけ下手したら自身まで犯されそうだし、何よりそんなことに巻き込まれたくない。なので、長男はその場で2人の成り行きを見守ることにした。とどのつまり逃げである。

  「なぁ、私が悪かったから、もうやめような…?」

  「嫌だね」

  「…なんでこんなことをするのだ?」

  今にでも泣き出しそうな表情の狼。それを見た次男は優しく狼の頭を撫でる。

  「親父の事が大好きだからに決まってるだろ」

  その言葉に狼の震えが止まる。そして、次男は狼の肩に手を置き、笑みを浮かべたのち口を開く。

  「勿論、今でも親父の事は好きだ!だけど、体を重ねればよりお互いのことを知れるだろ!?だから俺は親父とセックスがしたいんだよ!!親父はより俺と親密になりたかったんだろ!頼むよ、セックスしようぜ?」

  「えっと、その…」

  真剣な眼差しで自らの思いを告げる次男。熱意満々に語っているが、言ってる事は即ち「セックスがしたい」という訳である。つまり、彼の口から吐き出る言葉の全てはセックス以外に深い意味はないということだ。ど畜生クソゴミエロ狼である。こんなクソ解答でだというのにも関わらず、もう片方の脳みそお釈迦ポンポンコツ狼はこの熱烈な説得に返答を迷いはじめた。そして、熱意に負けて狼が顔を赤く染めて、ゆっくりと頷く。アホである。

  「親父……」

  「その、あの、優しく頼む」

  そして、次男は優しく狼を抱きしめる。その様子を傍で見ていた長男の心境は『何…この……何??』であるが、絶賛ハッピージャムジャムおつむフェスティバル継続中の2人には、そんなことどうでも良いようである。

  そして、次男は自慢の肉体を駆使して、軽々と狼をお姫様抱っこで抱える。互いに見つめ合い、2人とも顔を赤く染めると、そのまま2階の次男の自室に入った後、出てくることはなかった。

  「……ご飯食べよ」

  その場に取り残された長男はというと、1人台所に向かって作り上げた夕飯を黙々と食べ始める。中々と良い出来だったのだが、頭が先程の出来事を消化できてない所為か、料理の味がしなかった。寧ろ消化できるのだろうかそれは。

  そして、長男はそのままリビングのソファで眠る事にした。…なんでソファに寝るのかって?私の部屋、次男の部屋の真隣で壁薄いんだ。つまりは……お願い察して?

  可哀相である。

  そして、翌日。旅行から帰って来た姉にに長男が昨日に起きた事を話した。因みにあの2人はそれを気に親密になって姉と入れ違いに旅行に行ってしまった。もう意味が分からない。ハネムーンか何かなのだろうか。

  「ってな訳で、あの2人は一線を超えたわけで…」

  「それで!?2人は以前より親密になったのよね!?」

  「う、うん」

  「くーっ!!何そのBLコミックみたいな展開!!私もそこに居合わせたかったわ!」

  「え、あの、姉さ」

  「こうしちゃいられないわ!次の同人誌のネタを提供してくれてありがとね!」

  「嘘だ。姉さん腐女子…つか同人作家だったのか…」

  そう言って、姉は嬉々とした表情で自室に篭ってしまった。

  次男と父の近親相姦という事と腐女子の姉という事実。その出来事に長男の脳のキャパシティが限界値を超えてオーバーフローする。結果どうなったか……

  長男は一ヶ月家出した。