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「こはく…?」
アザミはウマラから受け取った石を上にかざす。
石を通して蜂蜜色に変わった光が顔の上に落ちた。
新越国で採れる石は赤や青みがかった紫の石だ。わずかに光を通すものもあるが、向こう側を覗いて見られるほど透き通ったものはない。
「珍しいの…」
まるで子供のように石をひっくり返すアザミを、ウマラはほほえましく眺めた。
「嶮国(カザシノクニ)で採れるそうだ。柔らかくて彫りやすいからそれほど熟練した石工も必要無いらしい」
「へぇ…」
さほど興味もなさそうに聞き流しながら、次は石を鼻に寄せ眉をしかめている。
「何だよ」
「松脂みてぇな色しとると思っての」
言われればよく似ている。ウマラは石の取引を持ちかけてきた男の話を思い出す。
「それ、燃えるらしいぞ」
アザミは大きく目を見開くと、あっと笑い声をあげた。
「石が燃えるかよ。持ってみりゃ軽いし、傷もつく。燃えるとすりゃ、石じゃねぇじゃろよ。ヌシぁまがいもん掴まされたってもんぞ」
ウマラはどれくらいとは伝えていないが、そこそこの財とこの石を引き換えた。このように嗤われるのは、心外である。そもそもこれは…
「なんぞ石など手に入れてきた?飾り物には興味なかろ?」
川原の石でも扱うように、指先で弾きながらアザミは意地悪い笑みを浮かべる。意中を突かれたようで、ウマラは思わずたじろいだ。
「…それはその石の色が」
口を開きかけた瞬間、石が空を飛んだ。
「あ…」
灯明皿の縁にカタリと音を立てて落ちる。うっすらと煙が上がり、松の香りが鼻をさした。
「ほれ、石じゃねぇじゃろよ?ほんで、なんじゃと?」
己の見立てを誇るようにアザミは大きく肩を揺らし、目の前でゆっくりと溶けていく石を見ながらウマラは肩を落とした。
「石の色が、お前の瞳の色に良く似ている。国を離れる時は懐にでも入れていこうと思った。国を離れられぬお前の代わりにな」
溜め息混じりに漏らされた告白。アザミは思わず皿に飛び付く。
溶けた石は黒く変色しはじめ、皿の一部へと変わりつつあった。
「もう遅いよ。お前のそういうとこな…がさつでよ?」
頬杖をつく姿は、落胆そのものである。ばつが悪そうにアザミはうつむいた。
「…まぁ、燃えちまったもんは元には戻らねぇし。縁ありゃまた手にも入るだろ」
珍しく反論もしない妻を慰めるように言葉を改めたが、うつむいたままである。
日頃豪気な妻もこう見ればなかなかに可愛いものだとウマラは目を細めた。
「代えの利かん玉は今目に前にある。そもそも代用を求めようしたのが間違いだったかもしれんし。…な?」
白い指先で、優しく頬に触れる。
「…すまんの」
アザミはようやく一言呟いた。
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