第6話「我慢と努力の相撲大会」

  ケモノ小学校埼玉校の相撲部顧問である、ホッキョクグマの保良 部亜先生。

  これは、彼がまだ中学生であった頃の話。

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  保良は小学校時代は町内の相撲教室に通っていたが、中学生になってからは中学校の相撲部に入った。

  小学校時代から熱心に取り組んでいたため、相撲部の3年生も驚くほどのパワーを持っていた。

  それが評価され、中学1年の夏休みに県内の中学生相撲大会への出場が決まったのだ。

  会場は大上区総合体育館。多くの観客が集まっている。

  控室にいる中学生たちは、埼玉県各地の中学校から選ばれた強豪ばかりだ。

  サイ、カバ、狐、ライオン、猪、セイウチ、ツキノワグマ…全員中学1年生だが、筋肉と脂肪の鎧を身に纏っている。

  まわしを締め終わり、準備運動や会話など思い思いの行動をとっている一同。その中で保良はただ1頭緊張している。

  「ああ、どうしよう…これが初めての大会だからな…

  こういう時は、手に『ケモノ』って書いて飲み込むんだっけ?」

  そう言っていると、参加者の中で一番太っているツキノワグマが缶ジュースを5本差し出した。

  「ほら、これでも飲んでリラックスしろ。」

  「あ、ありがとう。」

  保良は5本のジュースを飲み干した。

  「ああ、なんか緊張がほぐれた気がするよ。ありがとう。」

  「礼はいいんだ。頑張ってくれ。」

  そのツキノワグマが去り際にニヤリと笑った事に、保良は気がつかなかった。

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  いよいよ相撲大会が始まった。

  保良の最初の相手は、自分より一回り大きな体のカバ。

  「はっけよーい…のこった!」

  カンガルーの行司の合図で、組み合う2頭。

  保良はカバのまわしをつかみ、土俵の外へと押し出した。

  「すごい!」

  「彼は天才だな!」

  保良の勝利により、会場は拍手と歓声に満ち溢れた。

  「全力で稽古をしたが、やはりお前には勝てなかった…今度はもっと力をつけてやるからな!」

  カバは悔しそうに言った。

  勝ち残った保良は、次の取り組みに進んだ。

  次の相手は狐。保良よりは小さいが、狐としてはかなり太っている。

  保良は狐にも勝ったが、その時尿意を感じた。

  (まずい…先ほど飲んだ缶ジュースのせいだな…)

  またいくつか取り組みが続き、保良の番が来た。

  次の相手はライオン。筋肉と脂肪が半々ほどの姿で、保良と同じぐらいの身長だ。

  保良は尿意のせいで少し苦戦したが、それでも勝つ事ができた。

  (ああ、そろそろトイレに行った方がいいな…)

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  休憩時間に入ったため、保良はトイレに向かった。ところが小便器も個室もすべて埋まっている。

  「な、なんでこんなに?」

  しかし、参加者が使えるトイレはここしかない。保良はトイレが空くまで我慢した。

  2分ほど待っていると、1匹のスマートな柴犬が小便器を離れて保良の所に来た。

  「我慢してるのか?もう大丈夫だぜ。」

  「ああ、ありがとう、助かったよ…」

  「だが、このトイレを使うには条件がある。俺が出すクイズに正解する事だ。」

  「いや、そんな…」

  「では問題。俺が小学校2年生の時の担任の名前と種族は?」

  (なんだ、この問題は!まあ適当に答えておくか…)

  「鈴木というカワウソ…?」

  「はい残念!お前はこのトイレを使えないぞ!さあ帰った帰った!」

  「そんな問題わかるわけないぞ!使わせてくれ!」

  「それは無理だ。あきらめるんだな!」

  保良は仕方なくトイレを後にした。

  保良の姿が見えなくなると、個室の1つから先ほどのツキノワグマが現れた。

  「お前ら、よくやったな。ありがとう。」

  このトイレにいるケモノは、すべてツキノワグマの手下。

  ツキノワグマは自分よりも強いと噂の保良に勝つため、保良を弱体化させる作戦を自分の仲間とつるんで立てていた。

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  休憩時間が終わり、取り組みが再開した。

  保良の尿意はさらに強くなり、全身の震えが止まらない。

  「ああ、漏れる、漏れる…」

  次は準決勝。相手は保良と同体格のサイだ。

  保良は力が弱っていたが、足技を使ってなんとか勝った。

  いよいよ決勝戦。保良の相手はツキノワグマだ。

  彼は保良よりも大きく太っており、筋肉と脂肪に覆われている。

  ボールのように丸いお腹に、ずんぐりとした手足。表情は自信に満ちている。

  向かいに立つ保良の態度は、ツキノワグマとは正反対だった。

  体は激しく震え、真っ白なはずの顔は真っ青になっている。

  股間に手を伸ばそうとしているが、太鼓腹のため手があまり届かず困っているようだ。

  膀胱は破裂寸前で、いつ決壊しても不思議ではない。

  「はっけよーい…」

  カンガルーの行司が合図を始めた瞬間、2頭はこう考えていた。

  (奴の弱体化には成功だ!あんなに震えてるんだから、ちょっと押せば倒れるだろう!

  ついでに小便も漏らすだろうから、奴の評判も下げられるな!)

  (漏れそうで戦法が思いつかない…よけてやり過ごそう…)

  「のこった!」

  その瞬間、ツキノワグマは保良に張り手を喰らわそうと手を出した。保良は反射的にうずくまる。

  この瞬間、行司も観客も誰もが同じ事を考えていた。

  (これは絶対にツキノワグマの勝ちだな。)

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  ところが保良がいきなりかがんだため、ツキノワグマはバランスを崩してしまった。

  「お、おっと、うわーっ!」

  ツキノワグマは土俵の外に倒れこんだ。

  「保良の勝ち!」

  予想外の結果に、会場から驚きの混じった歓声が上がった。保良自身も驚いた。

  「まさかこんな方法で勝つとは…それより早くトイレに行かせてくれ…」

  この次は表彰式。それまでには15分の空きがあるため、保良はトイレへ向かった。

  走ると漏らす可能性があるため、ゆっくりとしか進めない。

  それでも着実に一歩ずつ、トイレへ向かった。

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  トイレに着くと、先ほど戦ったツキノワグマがいた。

  「さっきはいい勝負だった。お前だけじゃ大変だろうし、まわしを外すの手伝おうか?」

  「ああ、そうしてくれ…もう我慢できないんだ…」

  ツキノワグマは保良の手伝いをした。

  「ああ、これでやっと…」

  保良は小便器の前に立ち、勢いよく放尿した。それは30秒も続いた。

  「やっと…すっきりした…今度はまわしを着けるのを手伝ってくれ…」

  すると、ツキノワグマはこう返した。

  「わかった。しかしその前にする事がある。」

  「それはどんな事だ?」

  「こんな事だ!」

  ツキノワグマは太い足で保良の股間を蹴り上げた。

  「ああーっ!いってー!」

  勢いよく玉を蹴られ、股間に激痛が走る。保良は痛みのあまり飛び上がった。

  「なんで…こんな事を…」

  「さっきは勝てなかったからな!俺はどうしてもお前に勝ちたくて、お前にトイレを我慢させて弱らせるという作戦を練ったのだ!

  それなのにお前は勝ってしまったから、俺はこうでもしないと気が済まないんだぜ!あと10発やらせろ!」

  「そんな!もうやめてくれ!」

  保良が叫んでもツキノワグマは蹴り続け、トイレには叫び声が響き渡った。

  10発蹴り終わるとツキノワグマの気は済み、保良のまわしを締めてからトイレを出た。

  「あと3分で表彰式です。」

  アナウンスが聞こえたため保良は会場へ向かおうとしたが、玉が痛くて仕方がない。

  何度も蹴られた玉は真っ赤に腫れてしまい、まわしの布が触れるだけでも激痛が走る。

  「ううっ!本当にひどい目に遭ったぜ…」

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  保良は初参加となった相撲大会で優勝し、大きなトロフィーを受け取った。

  しかし玉の痛みには耐えられず、その後2週間ほどは苦しむ事になった。

  おしまい