ホワイトデー

  女の子は、バレンタインに好きな人にチョコを渡したり、告白したりする。

  それに対して、男の子がホワイトデーに返す。

  じゃあ、俺はどうすればいいんだ…?

  そうこうしているうちにバレンタインはあっという間に過ぎ去り、もう3月だ。

  千秋さんにあげたいけど、ホワイトデーにあげるのって可笑しいかな…。

  〔恋愛 男同士 バレンタイン〕と調べると、少し出てきた記事。

  その中の一つには、男はあげる認識がないって書いてあった。

  だけどどんなに調べても、日付らしい日付はなくて…

  「…これって、結局いつ作ればいいの…?」

  俺は困り果てて、スマホを机に置くと、ベッドに倒れ込んだ。

  少しぼーっとして、ふと思う。

  千秋さん、今年もらってないのかな。

  千秋さんは会社に、パートナーがいる事を明かしているし、一度だけ俺を連れて行ったこともある。

  それなら、向こうも理解しているから渡さないかな。

  でも…千秋さんは元々顔が良いしお洒落だし気遣いも出来る。

  モテても仕方ないとは思うのだが、、もらったら俺に言いそう。

  千秋さんはあまり俺に秘密を持たないようにしているみたいで、大抵の事は話してくれる。

  勿論俺が傷付かないようにっていう配慮も添えて。

  だから基本秘密はないんだけど…。

  どうなんだろう。

  僅かな不安が俺の心に広がる。

  そこから数日、千秋さんに心配された。

  元気がないとか、目の下に隈がとか…。

  ホワイトデーの前日、色々考えてて、ふと気付く。

  千秋さんが沢山もらうなら、俺がその中のどれよりも美味しいの作ればいいんじゃないか?

  そこから俺のチョコレート作戦は始まった。

  (なんだよチョコレート作戦って…)

  流行ってる、可愛い作り方のを真似ることにした俺は、まず外へ買い出しに行くことにした。

  板チョコ、イチゴとミルクとホワイト。

  あとはトッピングのなんか、シャラシャラした綺麗なやつ。

  それと包む用の袋達。

  それだけ買って帰ると、鉄板にクッキングシートを敷き、そこに板チョコ3枚を並べ、上手く振り分ける。

  色が被らないように入れ替えたらオーブンで少し溶かして、竹串で混ぜていく。

  綺麗だった。

  トッピングを乗せてそれを冷やしたら、完成。

  上手にラッピング出来たら、後は千秋さんの帰りを待つだけ…!

  ガチャ。

  ドアの開く音に俺は玄関に向かった。

  「千秋さん、おかえりなさい!」

  お帰り、そんな意味を込めて、頬に触れるだけのキスをする。

  「フフ、ただいま」

  「っん……ふ」

  そのまま口にキスをされ、段々と深い甘みに落ちていく。

  「…疲れた」

  そう言う千秋さんは、そっと俺の肩口に顔をうずめる。

  その頭を撫でてやると、嬉しそうに微笑んだ。

  「…今日、ホワイトデーですよね」

  「……そうだっけ…ぁー」

  なんかもらったなぁ、つまらなさそうにそう言って、俺の肩を抱いてリビングに進む千秋さん。

  …俺のもそんな感じだったら、、どうしよう…。

  不安になるけど、千秋さんがそんな事しないって信じてるから…!

  「ちょっと待っててください」

  慌ててキッチンにチョコを取りにいく。

  いくつか包装したものを持って戻ると、千秋さんは俺の手元を見て硬直した。

  「ぁ、あの…何が好きか分からなくて…

  いつ渡せばいいかとかも、、よく分からなくて…

  ただ溶かしただけなんですけど、良かった…ら…」

  俺はその言葉を、最後まで言えなかった。

  途中で千秋さんに、強く抱き締められたから。

  びっくりして固まる俺に、千秋さんは本当に幸せそうにキスをした。

  床に倒れ込んでキスをする俺達は、机に置かれたチョコなんかよりずっと甘い…。

  「は、んっんぅ……」

  「嬉しい…貴和が私の為に作ってくれたの」

  ちゅ。ちゅぅ。

  「千秋さ…がっつきすぎ…」

  「だって可愛いじゃん❤

  貴和が私の喜ぶ顔想像して作ったんでしょ?」

  ぎゅうぅ。

  「苦しい…ぐるじ、、

  落ち着いて💦」

  「……貴和、大好き」

  床に押し倒して、片手の指を絡ませてそういう千秋さんは、俺の大切な人。

  見下ろされてることにゾクゾクするのは、Subの本能だ。

  「…俺も、大好きですよ」

  少しの甘々タイムの後、千秋さんはどのチョコより先に、俺のを食べてくれた。

  「美味しい!」

  あんなに喜んでいる千秋さんを見たのは初めてだった。

  俺の事を大切にしてくれてるのが、嬉しかった。

  千秋さんが会社の女性からもらったというチョコは、どれも高そうなものばかりで凄いと思ったけど、千秋さんは高いチョコが苦手みたい…。

  暫く困ったように見ていたけど、ゆっくりと開け始める。

  その手がどうにも重そうで、俺はそっと立ち上がり、隣に座った。

  「…一緒に食べてもいいですか?」

  そう聞くと、千秋さんは驚いたように俺を見つめた後、そっと微笑んだ。

  その笑みには少しの哀しみが浮かんでいる気がした。

  「いいの?嬉しい」

  そう言ったあと、何かを思いついた顔になる。

  「そうだ!美味しく食べられる方法があるよ*°」

  「ぇ?わっ」

  ちゅ。くちゅ。

  「ん、んぅ……」

  「……ん、フフ、」

  「んぁ……っぷは、千秋さん!」

  「フフフ、ごめんね。

  でもこっちの方が楽しいでしょ?」

  楽しいかもしれないけど…キスで口移ししながらなんて……/////

  「…なんか口の中ドロドロ…」

  「高いやつだとそうなんだよね、ガーナの方が美味しい

  まぁ1番美味しいのは貴和の手作りだけど」

  サラッと恥ずかしいことを言う千秋さんに、俺は顔を真っ赤にして千秋さんを押しのけた。

  「っ〜もう!」

  「あはは笑

  怒った?ごめんね」

  そう言いながらも、ずっと笑っている。

  「……ふん…」

  冷蔵庫にあった余りを持ってきて食べていると、千秋さんがスマホを耳に当てて部屋を出ていった。

  …千秋さんは、有名な株式会社のそこそこ偉い立場だ。

  その為仕事は不規則だが、どんな時も俺を優先してくれる。

  やがて電話から戻ってきた千秋さんは、また少し疲れた顔をしていた。

  「…忙しい?お仕事」

  「大丈夫だよ。

  貴和は、何も心配しなくていいよ。」

  「…そっか」

  千秋さんはそう言った後、違うな、と呟いた。

  「……会社で少しミスがあったから、明日は帰りが遅くなるかもしれない。

  早めに終わらせるけど何時になるか分からないから、眠くなったら寝てていいからね。」

  「…うんっ」

  俺は千秋さんが言い直してくれた事が嬉しかった。

  少しでも状況を説明してくれることで、俺は僅かに安心出来る。

  千秋さんもそれに気付いたのだろう。

  何も説明されずに、大丈夫と言われるより、ある程度説明された方が壁を感じない。

  「…ねぇ、千秋さん」

  「うん?」

  「…Play、したぃ…」

  恥ずかしくなりながら上目遣いにそう言うと、千秋さんは少し意地悪そうに笑った。

  「……久しぶりにしようか。」

  「…貴和、“kneel”」

  千秋さんのCommandに、身体の中心が甘く疼いた。

  

  

  END