[chapter:前回のあらすじ]
ファンタスティカ王国に住む人間の少女・エイミーは、ジェームズ王子と結婚する事になりました。
しかし結婚式の当日、実は魔女であるスーザン女王の罠にかかって井戸に落とされ、ケモノ界の大上区にワープしてしまいました。
エイミーは成り行きで、白猫の金子一家に預かってもらう事に。
何もかも珍しい世界に興味を持つエイミー。彼女を探しに来たジェームズ王子やシマリスのジェフ、女王の手下・ピーターも後を追って大上区に来ました。
果たして、エイミーはジェームズ王子と再会できるでしょうか?そしてスーザン女王の目的とは?
[newpage]
[chapter:フード・キャッスルにて]
エイミーと金子一家はフード・キャッスルに到着した。
「まあ、まるで本物のお城ね!」
「ここには世界中の食べ物がたくさんあるんだよ!しかもみんな取り放題!」
「楽しみだわ。扉の両側に狼と虎がいるけど、怖くないの?」
「エイミー、あれは作り物だから大丈夫よ。それに優しい虎や狼はたくさんいるわ。」
「そうなのね。良かったわ。」
20分ほど並び、店内へ。大広間にテーブルと椅子が並び、大勢のケモノが食事を楽しんでいる。
「すごいわ!ジェームズ王子のお城もこんな感じかしら…」
「どんなお城か知らないけど、ここより立派だと思うよ。あっちは本物のお城だからね。」
一同は料理コーナーへ。ここには200種類の料理が用意されている。
「わあ、料理がいっぱい!これを好きなように食べていいのね!」
「もちろん!おいしい物がいっぱいだよ。」
「エイミー、こうやって料理を取るのよ。」
「ありがとう。見た事のない料理もたくさんあるわ!」
夢中で料理を取り続け、たちまち皿の上が山盛りになった。
「いただきまーす!」
食事が始まった。エイミーはもう箸使いを覚えている。
「このご飯の上にお魚が乗っているの、すごくおいしいわ!」
「それはお寿司よ。日本の伝統的な食べ物なの。」
服の下でジェフが騒いだ。
「おいエイミー、俺にも何か食わせてくれ!クルミとか。」
真里ちゃんは洋食エリアのサラダコーナーからクルミを運んできた。
「さあ、見つかると騒ぎになるからこっそり食べさせてね。」
「わかったわ。」
一方、こちらは西口に建つ大上グランドホテル。ジェームズ王子とピーターはロビーで休んでいた。
「この小さな箱から魔法の鏡に命令できるなんて、こんな物を見るのは初めてだ…
さっきから知らない物ばかり映し出されるぞ!珍しくてたまらない!」
ジェームズ王子はテレビに釘付け。ピーターが呆れていると、鏡からスーザン女王が呼びかけた。
「エイミーはフード・キャッスルというレストランにいるわ。大きな城が目印よ。」
「はい、わかりました。
…あー、王子様、ちょっとトイレに行きますね。」
外に出たピーターはヒグマに変身して、フード・キャッスルへ向かった。
金子一家とエイミーはデザートを食べ始めた。ジェフはリンゴをかじっている。
「どれもこれも甘くておいしいわ!」
「良かったわね。この水饅頭もおいしいわよ!」
「喉に詰まらせないように、よく噛んでね!」
「わかったわ。」
ヒグマのピーターは隙を見て、毒入りクッキーを皿に置いた。
「あら、こんなクッキー取ったかしら?まあいいわ、食べましょう。」
エイミーはクッキーを手に取った。
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[chapter:フード・キャッスル大パニック!]
その時、服の下からジェフが飛び出してクッキーを床に叩き落とした。
「食べちゃだめだー!」
「ジェフ、何するのよ!」
ピーターが激高する。
「シマリスめ、邪魔しやがって!」
「熊さん、あなたはシマリスに驚かないの?」
「…あ、大昔のシマリス!すごいぞ!」
ピーターが大声で叫ぶと、店内が騒然となった。
「なんだって?大昔のシマリス?」
周囲の客はエイミーの方に集まった。
「うわあ、本物だ!」
「図鑑で見た想像図は正しかったのか!」
「しかも変な猿がいるわ!」
「猿のくせに女物の服を着てるぞ!」
金子一家のテーブルはフラッシュに照らされ、シャッター音が鳴り響いた。まるで記者会見のようだ。
真里ちゃんと雄二くんは、群衆を鎮めようとする。
「皆さん、落ち着いてください!」
群衆に囲まれているピーターは逃げられず、手間取っているうちに変身が解けてしまった。
「うわ、また猿が増えた!」
店内はますますパニックになり、マスコミまで来た。大勢のレポーターがエイミーにマイクを向ける。
「あなたは何という猿ですか?」
「失礼ね!私は人間よ!」
「つまりニンゲンという生き物ですね。あなたはどこから来たのですか?」
「ファンタスティカ王国です。」
「聞いた事のない場所ですが、どこにあるのでしょう?」
「幸せの野原と魔法の森の先にあります。」
「そのシマリスについて教えてください!」
「これは私の友達で…ああ、皆さん、落ち着いてください…」
エイミーは質問攻めにされて困っている。ピーターは隙を見て猫に変身し、ホテルに戻った。
一方、チャンネルのザッピングをしていたジェームズ王子はある所で手を止めた。
「あっ、これは!」
そこではエイミーへのインタビューが生中継されていた。
「魔法の鏡よ、教えてくれ!エイミーはどこにいるんだ?」
すると、画面に映った三毛猫のレポーターが言った。
「以上、フード・キャッスル大上駅東口店より小鳩 まゆ子がお送りしました。」
「そうか、東か!」
そこへピーターが戻ってきた。
「やけに戻るのが遅かったな。」
「あ、ちょっとお腹の調子が悪くて…」
「それよりピーター、ここを出よう!エイミーは東にいるようだ!」
「は、はい、わかりました…」
「ピーター、お前も来い!」
「私は他の場所を探します。」
「わかった、手分けして探そう。」
ジェームズ王子は走り去った。
その姿が見えなくなると、鏡から声が聞こえた。
「まったくあんたは役立たずね!」
「はい、申し訳ございません…最後の1枚は確実に食べさせてみせます…」
「あんたの事だからまた失敗するでしょうね。」
「女王様、そうなったらまた作ってください。」
「あれはそう何個も作れないのよ。もういいわ、私が食べさせてみせる!」
「どうやって…」
「いい方法が思いついたら私がケモノ界に行って、あんたから毒入りクッキーを受け取るわ。」
「わかりました。ではなるべく早く…」
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[chapter:ジェームズ王子の捜索]
エイミーと金子一家は帰路についていた。
「今日は大変なお食事にしてしまって申し訳ございません…ジェフ、なんでクッキーを叩き落としたの?」
「俺は見ていたんだ!あの熊がエイミーの皿にクッキーを置いている現場をな!あいつは絶対に怪しいぞ!」
「いきなり落とす事もないじゃない!親切心で置いてくれたのかもしれないわよ。」
帰宅してテレビをつけると、ニュースが流れていた。
「本日朝7時頃、さいたま市の大上駅西口でバスに剣が刺される事件がありました。幸いにも被害者は出ませんでした。
犯獣は、猿に似た未確認生物で男性のようです。
目撃者の証言では『鉄のドラゴンを退治した』と言い、どこかへ逃走したそうです。」
「え?王子?まさか…」
「エイミー、ジェームズ王子もこっちの世界に来ているみたいよ!きっと今頃エイミーを探しているわ!」
真里ちゃんの言葉を聞いて、エイミーには希望が湧いてきた。
「ああ、良かった!明日にでも来てくれるかしら…」
「エイミー、良かったな!きっと愛の力で見つけてくれるさ!」
その頃、ジェームズ王子は大上駅東方面の住宅街に来ていた。
「家がたくさんある。このどこかにエイミーがいるんだ!」
ジェームズ王子は家を1軒ずつ回る事にした。1軒目のドアを叩くと、太ったカバの男性が出てきた。
「僕はジェームズ王子だ。この家にエイミーという娘はいるか?」
「エイミー?いませんよ…ってお前、ニュースで見たバスに穴を開けた奴か?」
「バス…よくわからんな。まあエイミーはいないようだ。では!」
その後も探し続けたが、夜になったため寝ているケモノも多い。そのためあまり情報は得られなかった。
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[chapter:2人の再開]
翌日は土曜日。気持ちの良い晴れだ。
金子一家とエイミーが朝食を摂っていると、ドアがノックされた。母親が応対する。
「あの、どちら様ですか?」
「僕は…ジェームズ王子だ…エイミーは…いるか…」
「ええ、いますよ…えっ、王子!? エイミー、王子様が来たわよ!」
「えっ、ジェームズ王子!?」
エイミーは喜んで玄関に走った。
一晩中探し回っていたジェームズ王子は疲れ果てていたが、エイミーの姿を見ると元気を取り戻した。
「ああ、エイミー!」
「ジェームズ王子!」
2人は手を繋ぎ、踊り始めた。
「ああ、僕は最高に幸せだ!」
「私もよ!」
しかし金子一家を見た途端に表情を変え、剣を抜いた。
「そこの猫ども、よくもエイミーをさらったな!」
「待って!この家族は私を助けてくれて、とても親切にしてくれたのよ!」
「そうなのか?」
「本当よ!お願いだからやめて!」
ジェームズ王子は剣を下ろし、謝った。
「すまない、猫どもよ。エイミーをありがとう。
さあエイミー、ファンタスティカ王国に帰ろう!」
「待って、その前にしたい事があるの!」
「何だい?言ってくれ。」
「私、一緒にデートがしたいの。」
「デート?それは何だ?」
エイミーはデートについて説明した。
「わかった。君の頼みならなんでも聞こう。
だが、一晩中探したから眠くて仕方がない。しばらくここで休ませてもらおう。」
「ではソファーにどうぞ。」
母親はジェームズ王子をソファーに寝かせた。
「真里ちゃん、デートの前にする事は?」
「とびっきりのおしゃれをするのがいいわよ。でもうちにはそこまで高級な服はないし…
そうだ、あの手があるわ!」
真里ちゃんは電話をかけた。
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[chapter:最高のおしゃれ]
ホッキョクギツネの雪見カトリーヌ理沙ちゃんが勉強に励んでいると、執事のグリムズ・スカンダー(イギリス出身のスカンク)が呼んだ。
「理沙様、金子 真里さんから電話です。」
理沙ちゃんは受話器を握った。
「はい、理沙です。」
「理沙ちゃん、おはよう。真里よ。」
「おはよう。何かしら?」
真里ちゃんは事情を説明した。
「…というわけなの。理沙ちゃん、お金を用意できるかしら?」
「ええ、もちろんですわ。10万円ほど持って行きますわね。」
「ありがとう!ついでにファッションのアドバイスもお願いしていいかしら?」
「もちろんですわ。エイミーに最高の思い出を作りましょう!」
真里ちゃんとエイミーは、理沙ちゃんと共に駅方面へ。ジェフは留守番だ。
大上駅構内には、アパレルストアが数軒入っている。
「さあ、素敵な服を選びましょう。」
「エイミー、この服はどう?」
「いい色ね。気に入ったわ。」
服を買うと、今度は西口のウルフデパートへ。
「このイヤリングはどうかしら?」
「だめ、どれも大きすぎるわ。ニンゲンの耳はケモノより小さいから合わないみたい。」
イヤリングはあきらめ、ネックレスや靴を買った。
「仕上げは毛づくろいね!」
最後の目的地は美容室。ここには真里ちゃんと理沙ちゃんも時々訪れている。
入店すると、プードルの美容師が出迎えた。
「いらっしゃいませ。昨日ニュースで見たニンゲンという生き物ですね。毛が頭にしかありませんが、どうなさいますか?」
「ブラッシングをお願いします。」
退店後のエイミーは、満足げだった。
「これで準備ができたわ。ジェームズ王子、待っててね!」
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[chapter:大上区でデート]
金子家に戻ると、ちょうどジェームズ王子が目覚めた。
「エイミー、ずいぶんおしゃれになったな。」
「ありがとう!さあ、デートに行きましょう。」
「だが、君はこの辺の地理に詳しいのか?」
「ごめんなさい、知らないわ。真里ちゃん、案内してくれない?」
「うーん、デートに子供は付き添わないから、私がおすすめの場所や必要な事を紙に書いてあげるわ。」
エイミーとジェームズ王子は、大上駅の周辺へ向かった。ジェフも付き添いで一緒に行動する。
デート代は先程の買い物で残った1万円。2人はフライドチキンを食べたり、喫茶店で紅茶を飲んだり、大上スピードシティの展望台、プラネタリウム、ショッピングなどを楽しんだ。
「ジェームズ王子、この町は本当に素敵ね。」
「僕もそう思うよ。」
「俺もだぜ!」
ピーターは東口側の路地裏で待機中。そこへスーザン女王からメッセージが入った。
「良いアイデアが思いついたわ。今からそっちに行くわよ。」
しばらくして、西口側のメンテナンスホールからスーザン女王が出現。彼女は走ってくる自動車に手を向けて言った。
「止まれ!」
緑の光線が発射され、急に自動車が動かなくなった。その間に彼女は道路を渡り、駅を通ってピーターの元へ。
通り過ぎると、自動車はまた動くようになった。
「ピーター、クッキーを渡しなさい。」
「こちらです。」
毒入りクッキーを受け取ると、スーザン女王は老婆に変身した。
「エイミーはペデストリアンデッキにいるわ。私がどうするか見てなさい。」
「はい、女王陛下…」
時刻は18時。エイミーとジェームズ王子はペデストリアンデッキで夕焼けを眺めていた。
「こっちの世界も夕焼けがきれいだね。」
「そうね。夜になったら王国に帰りましょう。」
「ごめん、その前にトイレに行っていいかな?」
「エイミー、俺もトイレに行かせてくれ。」
「いいわよ。ここで待ってるわね。」
ジェームズ王子とジェフはウルフデパートに向かった。
[newpage]
[chapter:毒入りクッキー]
エイミーが1人になった瞬間、誰かに肩を叩かれた。
「ん?あ、あなたは!」
そこにはあの老婆が立っていた。
「あの時は悪かったよ、あんたをこんな世界に追放しちゃって。この世界は知らない事だらけで大変だっただろう?」
「い、いえ、確かにそうだったけど、でも…」
「だが、いい物があるよ。このクッキーを食べれば今までの事がすべて夢になる。つまりあんたは結婚式の朝に戻れるのさ。」
「それ、本当なの?」
「ああ。一口食べれば十分さ。」
「それじゃ、遠慮なく…」
エイミーがクッキーをかじった途端、急に気分が悪くなった。
「何かしら、この感じ…気持ち悪いわ…」
老婆は不気味に笑っている。
「ああ、それでいい。それを食べればあんたは二度と目覚めない。」
「え、それって…まさか…」
「そう、毒入りなのさ。」
「そん…な…」
エイミーが倒れた直後、老婆はスーザン女王に戻った。離れた場所からピーターも登場。
「よし、これでもう心配ないわ。ピーター、こうやって食べさせればいいのよ。」
「さすがです、女王陛下…」
「さあ、すぐに帰らないと。」
その時、ジェームズ王子とジェフが戻ってきた。
「ただいま、エイミー…なぜ母上がここにいるんだ?」
「しかもエイミーが倒れてるぞ!どうしてだ?」
「あ、ジェームズ?えーと、彼女は、その、空気が汚れてて気分を害したみたいなの。」
その時ジェフがエイミーに駆け寄り、悲鳴を上げた。
「なんだ?」
ジェームズ王子はエイミーの胸に手を当てた。
「鼓動がない!それに冷たくなってる!まさか、そんな…」
すると、ピーターが口を開いた。
「女王陛下が殺しました!毒入りクッキーを食べさせたのです!」
「そ、それは本当なのか?」
「そうです!私は女王陛下の手下だから知っているのです!」
スーザン女王が止める。
「ちょっと、何でたらめ言ってるのよ!」
「いいえ、でたらめではありません!これは真実です!」
ピーターはすべてを話した。
「王子様、本当に申し訳ございませんでした。本当は私もこんな事はしたくなかったのですが、女王陛下に従わないと怖いので…」
「ああ、そうだったのか。なんという事だ…
おい、母上!そんな奴だったとは知らなかったぞ!こんなひどい事をするならもう勘当だ!
それから、国に帰ったらこれを全国民に伝えるからな!そうすればお前は王座を追われるだろう。」
「いいわよ。どうせあんたとピーターはもうすぐ死ぬんだから。」
「死ぬだって!? どういう事だ?」
「それは…」
[newpage]
[chapter:ジェームズ王子とドラゴン]
そこに金子一家、栗田一家、稲荷山一家が現れた。一同はエイミーを見送るため、ここに来た。
「知らないニンゲンがいるわ!」
「それにエイミーが倒れてる!」
「大丈夫かな…」
ピーターが一同に話しかけた。
「大変です、女王陛下が現れてエイミーに毒入りクッキーを食べさせ、殺してしまいました!」
「ええっ!?」
真里ちゃんたちは驚いた。
「あのエイミーが死ぬなんて…」
「ジェームズ王子がかわいそうだわ…」
稲荷山くんが提案した。
「ねえ、ジェームズ王子がエイミーにキスしたらいいんじゃないかな?おとぎ話じゃ大体それで目覚めるから。」
「そうか、やってみるよ。」
その時だった。
「そうはさせないわよ!」
スーザン女王は呪文を唱えると、巨大なドラゴンに変身してジェームズ王子とピーターを連れ去った。
「おい栗田、俺を守ってくれ!」
ジェフは栗田くんの元に逃げた。
「あ、王子が!」
「どうしよう…」
ドラゴンは2人を抱えたまま、ウルフデパートの屋上へ。
「母上、どうしてこんな事をするんだ!」
「なぜ手下の私まで!」
「どうせ私の炎でもうすぐ死ぬんだから、最後に教えてあげるわ。ジェームズをいつまでも私の手元に置けるようによ!
あんたがまだ幼い時に国王…つまり私の夫は死んだ。だから私はあんたを大事に育ててきたわ。それを他の誰かに取られるなんて、絶対にさせないわ!」
「それで僕が結婚しないようにしていたわけか!」
「そうよ。でもエイミーを殺した事があんたに知られたらもう別よ。私は一生国の頂点に立ち、もっと優秀な手下を手に入れるわ!」
「なぜだ!なぜ息子の結婚を喜ばないんだ!親ならそうするべきだろう!」
「そうですよ、女王陛下!」
「え、それは…」
ジェームズ王子とピーターは説得する。
「もし僕が結婚しなければ子供は生まれない。そうなったらファンタスティカ王国は滅びてしまうじゃないか!
自分の欲望と王国の将来、どっちが大切なんだ!お前は自分の事しか考えていないじゃないか!それで本当に女王と呼べるのか!」
「女王陛下はこれまで国民にも慕われていたじゃないですか!その国民の事も考えないのですか!」
それを聞いて、彼女は気がついた。
「そ、そうね…確かにそうだわ。私はなんという人だったのかしら…
ジェームズ、本当にごめんなさい。どうか私を許してください…」
「では、僕とエイミーの結婚も許すか?」
「もちろんよ。息子の結婚なんて喜ぶべき事よね…」
「わかればいい。」
一同は、そのやりとりを眺めて感動を覚えた。
「良かったね、女王様が改心して…」
「これで大丈夫だね。」
「ハッピーエンドまでもうすぐね。」
[newpage]
[chapter:別れの時]
スーザン女王は2人を抱え、ペデストリアンデッキに着陸。それから人間の姿に戻った。
「さあジェームズ、エイミーにキスをして。そうすれば目覚めるのよ。」
「わかった。しかしそのクッキーはそういう仕様になっているのか?」
「そうなのよ。もう心配ないわ。キスで目覚めさせてね。」
ジェームズ王子がキスをすると、エイミーはゆっくりと目を開けた。
「あら、私は何をしていたのかしら…」
スーザン女王とピーターはすべてを話し、謝罪した。
「エイミーさん、本当に申し訳ございませんでした…」
「どうかお許しください…」
「いいのよ、もう終わった事だから。
さあ、ジェームズ王子。結婚式を始めなくちゃね。」
「ああ、もちろんだよ。」
18時55分、別れの時が来た。
「金子家の皆さん、いろいろお世話になりました。
こちらの世界の事を教えてくださって、勉強になりました。どうもありがとうございます。」
エイミーは金子一家と握手を交わした。残りのメンバーもメッセージを返す。
「エイミーの事をありがとう。僕はエイミーと幸せになるよ。」
「私は2人の結婚をサポートするわ。息子の幸せは素直に祝ってあげないとね。」
「私も優しい従者になります。もう決して悪事には手を貸しません。」
「栗田、相撲の事を教えてくれてありがとう。それじゃあな。」
ジェームズ王子が一同を代表して、最後の挨拶をした。
「みんな、エイミーを助けてくれて本当にありがとう。
異世界はどんなに恐ろしい場所かと思っていたが、優しい住民ばかりで安心した。まるで世界が広がった気分だよ。ケモノという異種族と交流できた事もいい思い出になった。」
栗田くんが言葉を返す。
「ぼくたちもニンゲンという種族を知る事ができて良かったです。皆さんが来なければ、異世界があると知らないままでした。」
車道の信号が赤に変わった時、エイミーたちは道路を渡ってメンテナンスホールの蓋を開けた。
「皆さん、どうもありがとうございました。さようなら!」
ピーター、スーザン女王、ジェフ、エイミーとジェームズ王子の順でメンテナンスホールに飛び込んだ。
「さようなら!ぼくも君たちの事は忘れないよ!」
「一緒にいた時間は短かったけど、絶対に忘れないよ!」
「しばらく家族が増えたみたいで楽しかったわ!」
「エイミー、ジェームズ王子と幸せにねー!」
一番長くエイミーと交流した真里ちゃんと雄二くんは、声を一段と張り上げた。
エイミーたちはその声を聞きながら、ファンタスティカ王国へと帰った。
「この3日間、不思議で楽しかったわね。」
「ねえ、真里ちゃんはエイミーとどんな事をしたの?」
「レストランで話すわね。」
3組の一家は、談笑しながらウルフデパートへ向かった。行き先はレストラン街だ。
[newpage]
[chapter:ハッピーエンド]
エイミーたちはファンタスティカ王国に帰ってきました。こちらは朝の7時です。
「ああ、懐かしい城だ!」
「やっと帰れたわ!」
「エイミー、今度こそ結婚式を始められるな!」
「早速準備をしなきゃね。」
「ええ、みんなで頑張りましょう!」
その日の昼から、エイミーとジェームズ王子の結婚式が始まりました。
国民や森の動物も、2人を祝福しています。
お祝いは夜まで続き、ファンタスティカ王国は喜びに包まれました。
結婚式の数日後、姫となったエイミーは思いつきました。
「ねえ、あの3日間の出来事を本にしない?」
「いい考えだな!僕もあの不思議な出来事を国民に伝えたいよ。」
「俺もだぜ!俺の事も書いてくれ!」
ジェフも賛同して、本の執筆が始まりました。
1ヶ月後、本が完成しました。
「さあ、できたわよ!」
タイトルは「私たちのケモノ界訪問」。2人と1匹がケモノ界で経験した事が書かれています。当然ですが、女王とピーターによる悪事は書いていません。
この本はたちまちファンタスティカ王国でベストセラーになりました。国民や森の動物はもちろん、凶暴な狼やドラゴンも夢中で読むほどです。
また、ジェフは森の動物たちに相撲を教える先生になりました。
森では、まわしを締めた動物たちが相撲を取っています。このまわしは、エイミー姫がジェフに頼まれて縫った物です。
動物たちは時々町やお城に来て、人々に相撲を披露します。
「ああ、これが相撲なのね!みんな強いわね!」
エイミー姫は初めて相撲を見たため、喜んでいます。
「ジェフ、ありがとう。」
「それほどでもないよ。そうだ、また参加者が増えるみたいだから新しいまわしを縫ってくれないかな?」
「もちろんよ。」
その時、エイミー姫は思いつきました。
「そうだ、私たちがどうなったかを真里ちゃんに報告しておかないと。」
彼女は手紙を書き、スーザン女王に言いました。
「お願いします。この手紙と本を真里ちゃんの家に送ってくれませんか?」
「ああ、わかったわ。」
井戸と真里ちゃんの机が繋がると、エイミー姫は本と手紙を井戸に落としました。
「どうもありがとうございました。」
「用が済んだから、ただの井戸に戻すわ。」
[newpage]
[chapter:エピローグ]
真里ちゃんが学校から帰ると、机に本と手紙が置かれていた。
「あら、これは…」
早速手紙を広げた。
金子家の皆さんへ
皆さん、お元気ですか?
私はジェームズ王子と結婚して、幸せに暮らしています。スーザン女王とピーターも改心しました。
ジェフは相撲の先生になりました。森では動物たちが相撲に夢中です。
私たちは異世界で過ごした出来事を忘れないように、みんなでこの本を書きました。ファンタスティカ王国では大ヒットしています。
私がお世話になった金子家の皆さんもこれを読んで、私たちの事を忘れないでくださいね。
エイミー姫より
「わあ…エイミー、ありがとう!
お母さん、見て!エイミーからの手紙よ!」
真里ちゃんは喜んで、母親と雄二くんにそれらを見せた。
「まあ、良かったわね!」
「さあ、早速読もう!」
夢中で本を読む3匹。読みながら真里ちゃんは言った。
「私もエイミーたちの事は絶対に忘れないわ。」
[chapter:THE END]