第19話「栗田一家、海へ行く」

  [chapter:旅行の始まり]

  ここはケモノ界のさいたま市大上区。

  この話は、ケモノ小学校埼玉校の夏休みが始まって間もない7月後半の出来事。

  ある朝、シマリスの栗田一家は多くの荷物を車のトランクに積み込んでいた。これから1泊2日の旅行に出かける所だ。

  「やっとこの日が来たぞ!」

  息子の栗田 永雄くん(小学4年生)が、リュックサックに荷物を入れながら嬉しそうに言った。彼は丸々と太っており、シャツからは太鼓腹が覗き、ズボンのボタンも外れている。

  「永雄、本当に楽しみだったのね。」

  「ああ、あの喜びっぷり…企画して良かったな。」

  息子と違って標準体型の両親も、準備をしながら微笑ましげに顔を見合わせた。

  「さあ、出発だ!」

  一家は車に乗り込み、旅行に出発した。

  運転席には父親、助手席には母親。栗田くんはリュックサックを持ち、後部座席に座っている。

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  [chapter:祖父母と合流]

  家を出て数分後、高層ビルに囲まれた大上駅に着いた。

  この旅行には、母方の祖父母も同行する。ここが待ち合わせ場所だ。

  父親は車に残り、栗田くんと母親は川獺線の改札口前に行った。祖父母はさいたま市の隣にある川獺市に住んでいるため、大上駅に行く時はこの路線に乗る。

  「ぼく、今日はおじいちゃんといっぱい遊ぶんだ!」

  「永雄は本当におじいちゃんが大好きね。おじいちゃんもきっと嬉しいわよ。」

  「そうだね。」

  しばらくして、祖父母が改札から登場した。

  「おじいちゃん、おばあちゃん、おはよう!」

  「おはよう、永雄。元気の良い挨拶じゃな。」

  「今日から2日間、楽しみましょうね!」

  祖父は相当な肥満体で、横に立つ栗田くんが標準体型に見えるほどだ。栗田くん同様にお腹がシャツから覗き、その中心には饅頭のような出べそもある。

  祖母はぽっちゃり体型で、栗田くんよりは細い。お腹は服で隠されている。

  栗田くん、母親、祖父母は車に戻った。

  「狭いのう。どうやって入ろうか…」

  肥満体の祖父は乗り込むだけでも一苦労。お腹を引っ込めてなんとか体を押し込んだ。

  先程と異なり、後部座席には大きな体の祖父母も座っている。間に挟まれた栗田くんは窮屈だったが、大好きな祖父母と一緒ならあまり気にならなかった。

  「さあ、改めて出発だ!」

  5匹のシマリスを乗せた車は駅前を出発した。朝の町を走り抜け、インターチェンジへ。

  「ねえ、ぼくたちの重さで横転しないかな?」

  普段は元気な栗田くんも急カーブを通る時は不安げだったが、無事に通過できた。

  車は高速道路を進んでいく。まだそこまで混んではいない。

  父親は真面目に運転しているが、母親は助手席で眠っている。

  栗田くんは持ってきた携帯ゲーム機をプレイしたり、祖父母と近況を話し合った。

  「永雄が不眠症になったと知った時は驚いたのう。あんなに痩せ細ってしまうとはな…」

  「私も心配でね、毎日回復を祈っていたのよ。元気になって良かったわ!」

  「ありがとう。あれからもう悪夢には悩まされなくなったよ。それにその事がきっかけで、新しい友達もできたんだ。」

  「ほう、それはすごいのう!」

  高速道路を1時間ほど走った辺りで、父親が言った。

  「みんな、ここらで休憩しようか?」

  「いいね!ぼくはもうお腹空いちゃったよ!」

  今日の朝食はバナナと豆乳のみ。栗田くんは空腹でたまらなかった。

  「よし、それじゃあ休憩だ。ついでに食事にもしよう。」

  車はサービスエリアに入った。

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  [chapter:サービスエリアにて]

  「んー、日差しが気持ちいい!」

  車から降りた栗田くんは、背伸びをした。

  朝のサービスエリアには車がそこそこ止まっており、食欲をそそる香りが漂っている。

  「ああ、いい香り…」

  「永雄、何が食べたいかの?」

  「そうだな…ソフトクリームがいいな!フルーツ系の。」

  「よーし、じゃあわしが2匹分買ってやるぞ!」

  「ありがとう、おじいちゃん!ぼくと一緒に食べようね!」

  「わしは永雄の喜ぶ顔が見たいのさ。」

  栗田くんと祖父は移動販売車へと走った…共に太っているため、歩行とほとんど変わらなかったが。

  数分後、2匹はソフトクリームをなめていた。

  栗田くんはメロン味、祖父はグレープ味。

  「冷たくておいしいね!」

  「そうじゃな!この甘い味がなんとも言えん。」

  その間、両親と祖母は店内でパンを買って食べていた。そこにソフトクリームを食べ終わった栗田くんと祖父が合流した。

  「あ、みんなパン食べてる!ぼくとおじいちゃんのは?」

  「買ってないわよ。」

  「そうなんだ、お母さん…」

  「でも今日は夕食が豪華なんだから、食べ過ぎるとあまり楽しめないわよ。」

  「わかったよ。じゃあ無料の水でも飲もうか?」

  「そうじゃな。それで口の中をさっぱりさせよう。」

  食事を済ませた栗田一家は、店を物色した。

  「あら、このお菓子は見た事ないパッケージね。」

  「お土産にいいかもな。」

  両親と祖母はご当地商品に注目しているが、栗田くんと祖父は試食コーナーを楽しんでいた。

  「うまいのう。これもいい味じゃ!」

  「ほんとだね、おじいちゃん!」

  食いしん坊の2匹は、ソフトクリームと水だけでは満足できないようだ。

  店を出た一家はトイレを済ませ、車に戻った。

  「さあ、また出発だ!」

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  [chapter:海に到着]

  高速道路を走るうち、祖父が言った。

  「おい永雄、海が見えてきたぞ!」

  またゲームで遊んでいた栗田くんは、窓の方を見ようとした。

  「え、どこに?って見えないよ…」

  祖父の太鼓腹と出べそに隠され、窓の外があまり見られない。おまけに祖父は横幅も広いため、栗田くんは頭を動かす事も難しい。

  そのため、助手席に座る母親の方から海を見た。

  「ちょっとしか見えないけど、きれいな海だね!」

  高速道路を降りて、海水浴場の駐車場へ。

  「さあみんな、着いたぞ!」

  「わーい、着いたー!海だー!」

  祖父に続いて降車した栗田くんは大はしゃぎ。

  どこまでも続く青い海に潮風の香り。埼玉県では体験できない物だ。

  「ああ、きれいな景色だな!」

  「永雄、気分はどうだ?」

  「お父さん、もうじっとしていられないよ!さあ、早く行こう!」

  「まずは荷物を用意して、それから着替えましょうね。」

  空はよく晴れ、絶好の海水浴日和だ。海水浴場はケモノたちで賑わっている。

  砂浜の片隅には、そこそこ大きな更衣室が用意されている。一行はそこで着替えた。

  「どう?似合うでしょ。お腹が邪魔で見づらいかもしれないけど…」

  栗田くんは青い海水パンツに着替えた。

  父親は黒い海水パンツ。母親は紫のビキニ。祖母は花柄のビキニ。

  「永雄、わしの水着はどうじゃ?」

  祖父は真っ白なふんどしを着用していた。

  「わあ、ふんどしが水着なんだ!おじいちゃんかっこいいね!」

  「嬉しいのう!わしは海水パンツよりふんどしの方が好きなんじゃよ。

  ただ腹がでかいから、前からだと見づらいかもしれんな…裸と間違えられたらどうすれば…」

  祖父は少し恥ずかしそうだった。

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  [chapter:楽しい海水浴]

  持参したビーチボールや浮き輪を無料の空気入れで膨らませ、ビーチパラソルを立てて準備は完了。

  「さあ、海に入ろう!」

  栗田くんは泳げないため、太った体にもフィットする大型の浮き輪を付けて海に入った。

  (んー、冷たくて気持ちいいし、体が軽くなった気分だ!ぷかぷか浮かぶだけでも気持ちいいな…)

  海に入った栗田くんは、リラックスしている。

  「永雄、来たぞー!」

  父親が走ってきた。

  「待ってくれ、わしも行くぞ!」

  祖父も肥満体に苦労しながら来た。

  「お父さん、おじいちゃん!さあ何して遊ぼうか?」

  「お父さんはもうちょっと深い所で泳ぎたいな!」

  「わしは動くと疲れるから、永雄とのんびりしてるよ。」

  栗田くんは浅瀬で祖父と戯れながら、遠くで泳ぐ父親を眺めていた。

  「お父さんは水泳が得意なんだよ。」

  「そうなのか、永雄。わしは昔から泳げんわい…」

  「ぼくだって泳ぐのは苦手さ。太ってるからね。」

  「だが、泳げなくとも海は楽しい物じゃな。」

  「だね!こうして浮かんでるだけでも楽しいよ!」

  母親と祖母はビーチパラソルの下で話している。

  「んー、今日は暑いけど気持ちいいわね、お母さん。」

  「そうね。それにしても永雄たちは元気ね…」

  「永雄は今日が来るのをずっと楽しみにしてたのよ。部屋のカレンダーを毎日確認して、ここ3日は食事中に旅行の話しかしなかったほどなの。」

  「それほど楽しみだったのね。そろそろ私たちも行かない?」

  「それがいいわね、お母さん。」

  母親はビーチボールを持つと、海の方へ向かった。祖母も後に続く。

  「あ、お母さんにおばあちゃん!」

  「永雄、来たわよ!ビーチボールで遊ばない?」

  「いいね!お父さんもおいでー!」

  父親は栗田くんたちの方へ泳いできた。

  「さあ、来たぞ。ビーチボールで何をしようか?」

  「海にビーチボールを浮かべて、水面を滑らせてみんなで順番にパスする遊びがいいな!

  投げないから周りのケモノにぶつからないし、おじいちゃんでもできると思うからね。」

  「それはいいな、永雄!」

  「わしの事まで考えてくれるとは、さすが孫じゃ。」

  「じゃあ早速始めるわね。永雄、ボールよ!」

  ビーチボールを持ってきた母親が、海上を滑らせて栗田くんに渡した。

  「はい、おじいちゃん!」

  滑らせると、祖父は太い腕でビーチボールを受け取った。

  「それっ!」

  祖母に渡った。

  「はい!」

  父親へ。

  「それじゃあ、永雄!」

  栗田くんへ。

  「はい、お母さん!」

  ビーチボールは母親に戻ってきた。

  地味な遊びだが、栗田一家は楽しんでいた。

  祖父母も含む5匹が揃い、海で遊ぶ事は初めての体験だった。

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  [chapter:友達との出会い]

  「それにしても、今日は賑わってるね!」

  「そうじゃな。なんたって今日は絶好の海水浴日和じゃからのう!」

  「みんなあちこちで楽しんでいるわね。」

  周囲を見渡すと、様々な種族のケモノが大勢遊んでいる。

  浅瀬では太った象の父親が鼻から水を吸い込み、2頭の子供たちにかけて遊んでいる。

  少し離れた所では、ビーバーとカワウソの少年が泳いでいる。2匹は友達同士のようだ。

  イルカとシャチの青年も、水泳で競走している。元々海で生きていた種族ゆえ、野生時代の血が残っているようだ。

  浜辺で日光浴をするうさぎの女性、浮き輪に入って浮かぶ太った狼の男の子、小さなバナナボートに乗るラッコの女の子、デートをするクズリのカップル…ケモノたちを見ているだけでも楽しめる。

  その時、見覚えのある姿が目に入った。栗田くんと同年代の太った黒猫で、赤い黒猫ふんどしを締めている。

  (あれは、もしかして…いや、太った黒猫なんて日本中に大勢いるだろう。他獣の空似かも…)

  念のため彼の家族も確認した。でっぷりと太った父親にぽっちゃりした母親、黒猫ふんどしを締めている丸々とした弟がいる。

  (うん、間違いない!)

  栗田くんは声をかけた。

  「おーい、猫山くーん!」

  相手はそれに気がついた。

  「あ、栗田くん!ここに来てたんだ!」

  彼の名は猫山 苗太。ケモノ小学校埼玉校の4年生だ。

  クラスは違うが、栗田くんと同じ相撲部に所属している。そのため彼と仲が良い。

  「そうだよ!家族旅行で今日ここに来たんだ!」

  「ぼくは昨日来て、今日帰る。その前に海水浴してるんだ!

  いやあ、まさかここでも出会うなんて思ってもみなかったよ!」

  「ぼくだって予想外さ。せっかくだから一緒に遊ばない?」

  栗田くんと猫山くん、弟の折葉くん(1年生)は一緒にビーチボールで遊び始めた。

  子供たちが遊んでいるため、双方の親たちも会話を始めた。栗田家と猫山家は場所が離れているため、普段の生活ではあまり会わない。

  「お久しぶりですね。」

  「最近、調子はどうですか?」

  「ええ、いつもと変わらず平穏に暮らしてます。」

  祖父は猫山兄弟に話しかけた。

  「おお、お前さんたちの水着はふんどしなのか!最近の子では珍しいのう。」

  2匹は得意げに話す。

  「そうなんです。ぼくたちは学校のプールでは指定の海水パンツを履いているんですが、町のプールや海では黒猫ふんどしを締めるんですよ!」

  「前にお父さんが買ってくれたんだ。かっこいいでしょ?」

  「ああ、とてもよく似合っとるのう。センスがいいな!

  ちなみに、わしが締めているのは越中ふんどしじゃよ。」

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  [chapter:2組の昼食]

  遊んでいるうち、昼が来た。

  「あー、いっぱい遊んだからお腹ペコペコだ…」

  栗田くんの声を、母親が聞きつけた。

  「それじゃ、お昼にする?」

  「もちろん!」

  猫山くんも言った。

  「ぼくたちもそろそろ食事にしたいな。」

  「じゃあ、行くか!」

  2組の家族は、海の家で昼食を摂った。

  「んー、外で食べるといつもよりおいしいね!」

  カレーライスを頬張りながら、栗田くんが言う。

  「ぼくたちはお昼食べたら帰るんだ。栗田くんはこの後も楽しんでね!」

  猫山くんはラーメンをすすりながら言った。

  「うん、楽しむよ!そう言えば、猫山くんたちも車で来たの?」

  「いや、ぼくたちは電車で来たんだ。うちに車はないんだよ。

  お母さんは免許を持っていないし、お父さんは太り過ぎだから運転席に入れないんだ。」

  猫山くんの父親はその肥満度にふさわしく、焼きそばを3杯も食べている。

  「わしもあんなに食べたいのう。ラーメン1杯じゃ腹が減って仕方ないわい…」

  祖父はうらやましそうに見ていたが、母親に止められた。

  「今は我慢よ。今日は夕食が豪華なんだからね、お父さん。」

  「ああ、そうじゃったな。」

  「ごちそうさま!」

  2組の家族は食事を終えた。

  わずかにお腹が大きくなった猫山一家は、栗田一家に別れを告げて帰路についた。

  「栗田くん、またね!」

  「うん、また大上区で会おう!」

  栗田一家はビーチパラソルの下に戻った。

  「食べてすぐ水に入るのは良くないから、しばらく休みましょう。」

  母親の提案で、栗田一家は疲れた体を休めた。

  父親がペットボトルのお茶を全員に買ったため、栗田くんはそれを飲んでリラックスしている。

  (んー、冷たくておいしい…ボトルを顔に当てるのも最高!)

  祖父は疲れたようで、昼寝を始めた。

  (ぼくも寝よっと。)

  栗田くんは祖父の太鼓腹を枕にして眠った。その他の家族も昼寝を始めた。

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  [chapter:海でのいろいろな遊び]

  約30分後、栗田くんが一番に目覚めた。

  「ねえみんな、起きて!遊ぼうよ!」

  その声で、家族は次々と目覚めた。

  「ああ、おはよう永雄。」

  「次は何するの?」

  「んー、何がいいかな。ビーチボールではさっき遊んだし…」

  すると祖父が提案した。

  「海草相撲はどうじゃ?」

  「え、おじいちゃんと相撲を?いいけどぼくは勝てそうにないよ…」

  「永雄は何か勘違いしているようじゃな。海草を使った遊びじゃよ。

  2本の海草を絡ませて引っ張り合い、先にちぎれた方が負け。そういうルールじゃ。」

  「そうなんだ。面白そう!」

  「懐かしいわね。お母さんも子供の頃海に行くと、必ずやってたのよ。」

  「へえ、お母さんもやってたんだ!」

  栗田一家は海に入った。

  「それじゃ、始めるかの。永雄、海草を2本取ってくれ。」

  海に浮かんでいる細い海草を用意すると、栗田くんと祖父で1本ずつ持ち、それを絡ませた。

  「では、行くぞ。はっけよーい、のこった!」

  祖父の合図で、2匹は海草を引っ張り合う。しばらくして栗田くんの海草がちぎれた。

  「ああ、負けちゃった…よし、もう1回!」

  相撲の好きな栗田くんは夢中になり、相手を変えて何回も海草相撲をした。

  彼は何度も勝ち、何度も負けた。

  「あー、楽しかった!こんな相撲は初めてだよ。」

  「じゃろう?あまり体を動かさなくていいから、何度でもできるのがいいわい。」

  「そうだね、おじいちゃん。次は何しようかな…」

  「んー、砂遊びはどうじゃ?」

  「そうか、それがあったね!」

  栗田くんは砂で何かの形を作り始めた。

  「こうして、こうして、ここに貝を置いて…」

  「永雄、それは何だい?」

  「お城じゃないみたいね。」

  砂で作った形の上に、海草や石、貝などが並べられていく。

  「おっ、わしはわかったぞ!永雄の作っているのは…」

  「ちょっと、おじいちゃん言わないでよ!完成したらぼくが言うんだからね!」

  「おお、そうか。すまんな。」

  数分後、作品が完成した。

  「はい、完成!ぼくの顔だよ!」

  「わしの予想通りじゃ!」

  顔全体は砂、白目や出っ歯は貝殻、黒目は石、口や頬などは海草を使っている。

  「永雄、うまいじゃないか!」

  「本当に永雄そっくりね!」

  「でしょ?」

  「次はわしの顔も作ってくれんかの?」

  「うーん、それじゃ、ここに貝を足して…」

  白い眉毛と髭を追加すると、祖父の顔になった。

  「おお、わしそっくりじゃ!」

  祖父は満足そうに笑った。

  「ねえ、またボールで遊ばない?」

  「そうだな。ちょっと暑いからまた海に入ろうか。」

  一家はその後もビーチボールなどで遊び、海を楽しんだ。

  15時になると、砂浜からケモノたちが少しずつ帰り始めた。

  「たっぷり遊んだから、そろそろホテルに行くか。」

  「うん、そうだね。ホテルに行こう!」

  栗田一家は荷物を片づけ、海水や砂をシャワーで洗い流した。

  肥満体の祖父は手の届かない所が多いため、栗田くんが体洗いを手伝った。

  シャワーに併設されている全身ドライヤーで毛皮を乾かすと、服に着替えて車に乗り込んだ。祖父はまたしても苦労しながら乗り込んだ。

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  [chapter:ホテルに到着]

  車を数分走らせると、宿泊先のオーター・ファミリーリゾートが見えてきた。10階建ての大きなホテルだ。

  駐車場には何台もの車が並び、ホテル名の通り家族連れでにぎわっている。

  栗田一家も駐車場に入り、荷物を持って車から降りた。

  「さあ、ゆっくり休むとしよう。」

  ホテルに入ると、スマートなキリンのボーイが出迎えてくれた。

  「オーター・ファミリーリゾートにようこそ。荷物をお預かりします。」

  ボーイは大きな荷物をカートに乗せ、運んでいった。

  父親がチェックインをする間、栗田くんはロビーを眺めていた。

  中央には椅子が複数置かれ、片側には自動販売機が並び、土産物コーナーやキッズコーナーもある。

  奥の大きな窓からは、海の景色が見える。

  (他にはどんな施設があるんだろう?早く探検してみたいな…)

  チェックインを済ませた父親が、ルームキーを手に戻ってきた。

  「さあ、早速部屋に行こう。717号室だ。」

  一家は廊下を進み、エレベーターに乗り込んだ。

  7階で降り、廊下を通って717号室へ。キリンのボーイが先回りしていた。

  父親が荷物を受け取り、ドアを開ける。その部屋はオーシャンビューの和室だった。

  「ああ、やっと床に寝れる…」

  部屋に入った栗田くんはリュックサックを下ろすと、畳に寝転んだ。

  残りの4匹も同じように寝転ぶ。今日は何時間も暑い中で遊んだため、一家は非常に疲れていた。

  「もうくたくただ…」

  「冷房が効いてて最高ね…今日はほんとによく遊んだわね…」

  「ええ、こんなに遊んだのは久々ね…」

  「わしはもう動く気力も残っとらんわい…」

  しばらくして体を起こした栗田くんは、机に置かれた饅頭に気がついた。

  「ねえ、この饅頭をみんなで食べようか?」

  「そうね。これくらいならいいわよ。」

  「そうだな。夕食が豪華なんだから、これくらいがちょうどいい。」

  「わしはこれっぽっちじゃ物足りんが、夕食のためじゃ!」

  「それじゃ、食べましょうね。」

  栗田一家は饅頭を食べ、部屋でくつろいだ。

  「んー、おいしい…」

  「饅頭はよく食べるけど、ホテルで食べるといつもよりおいしく感じるわね…」

  食べ終わった栗田くんは、窓から海を眺めていた。

  (ロビーよりも絶景だ…埼玉じゃ見られないから、じっくり見ておこう!)

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  [chapter:ホテルを楽しもう]

  入室から30分ほどすると、栗田くんはホテル内の見物に向かった。

  「永雄、迷子にならないように気をつけてね!」

  「20分ぐらいで帰るんじゃよ。」

  「はい、もちろん!行ってくるねー!」

  「行ってらっしゃい。」

  栗田くんはエレベーターでロビーに戻った。

  (さて、どこに行こうかな?)

  壁の案内図を見て、行きたい場所を決めると、そこに向かって歩き出した。

  初めに行った場所はゲームコーナー。

  クレーンゲーム、レースゲーム、格闘ゲーム…様々な筐体が何台も並んでいる。

  栗田くんはゲーマーのため、見ているだけで心が踊った。

  (よーし、何で遊ぶか考えておこう!)

  次に行った場所はカラオケルーム。中からは歌が響いてくる。

  (楽しそうだけど、カラオケなら大上区にもあるからいいや。)

  その後も各所を見物した。

  (おっ、漫画コーナーだ!後で読もうっと。)

  (ここはパソコンコーナーか。別に行かなくていいや。)

  (卓球台もあるけど、太ったぼくには難しそう…)

  (ここが大浴場の入り口か。おじいちゃんと入るの楽しみだな!)

  (食堂はここか。ここが一番楽しみだ!)

  見たい場所はすべて見たため、717号室に戻った。

  「ただいま!」

  「永雄、お帰り。いい物あった?」

  「うん。ゲームコーナーや漫画コーナーがあったよ!」

  「まあ、そうなの?お母さんも漫画を読みたいわ。」

  「わしもそろそろ永雄と遊びたいのう。」

  「それじゃ、みんなで行くか!」

  栗田一家は部屋を出た。

  エレベーターで移動し、廊下の途中で2つのグループに分かれた。栗田くんと祖父はゲームコーナーへ。

  「おじいちゃん、どのゲームで遊びたい?」

  「そうじゃな…永雄がやりたいゲームを一緒にやろう。」

  「わかった。じゃあこの相撲ゲームにしよう!」

  栗田くんは財布から200円を出し、ゲーム機「相撲魂」に投入した。

  まずはCPU相手の通常プレイか対戦プレイを選択。もちろん栗田くんは対戦プレイを選んだ。

  「おじいちゃんと一緒にゲームができるなんて夢みたいだ!」

  続いて、力士を30種類の中から選ぶ。栗田くんは固太りの狼力士、祖父はかなり太ったシマリス力士にした。

  それから取り組みがスタート。お互いにボタンを押して、技をかけていく。

  「わしは相撲が強いから負けないぞ!」

  「ぼくだって現役の相撲部員なんだ。負けないぞ!」

  このゲームは5回勝負。2匹は全力を出して戦った。

  「よーし、やったぞー!」

  ゲーム画面では、シマリスの力士が優勝トロフィーを抱えている。

  結果は3勝2敗で、祖父が勝った。

  「あーあ、負けちゃった…でも楽しかった!おじいちゃんは強いね!」

  「じゃろ?わしはいろいろな事を経験しているからのう。さあ、次は何のゲームがいいかい?」

  「おじいちゃんとゲームできたから、これくらいでいいかな。あんまりゲームをやるとお金がなくなっちゃうから。」

  「ちゃんと財布の事も考えているとは偉いのう。じゃ、漫画コーナーに行こう。」

  漫画コーナーでは、両親と祖母が漫画を読んでいた。

  「永雄、もう来たのか。何のゲームをしたんだ?」

  「相撲のゲームだよ。ぼくは負けちゃったけどね…」

  「そうか、それは残念だったな…」

  「ううん、大丈夫だよ。おじいちゃんとゲームができただけで十分さ。」

  それから栗田くんは大流行の漫画「狐の刃」を手に取った。

  一家はしばらく、好きな漫画を楽しんだ。

  18時頃になると、部屋に戻ってくつろいだ。

  「夕焼けの海はきれいだね…」

  海を眺める栗田くん。母親は彼をスマートフォンで撮影した。

  「永雄と海の写真よ。思い出に残るといいわね。」

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  [chapter:待ちに待った夕食]

  18時45分、父親が言った。

  「そろそろ夕食だから、食堂に行こう。」

  栗田くんと祖父は喜んだ。

  「わーい!待ってました!もうお腹ペコペコだよ!」

  「わしも同じじゃ。思う存分食べてやるぞ!」

  エレベーターで5階に移動し、廊下を進むと食堂に出た。宿泊客が列を作っている。

  夕食の時間は19時から21時。食堂からは食欲をそそる香りが漂ってくる。

  (どんなごちそうが待ってるのかな…)

  お腹を空かせた栗田くんは、楽しみでたまらない。

  19時、ドアが開いた。宿泊客たちが次々と着席していく。

  ここの食堂はビュッフェ。つまり好きな物を好きなだけ食べられる。

  席を取った一家は、交代で料理を取る事にした。先に行く組は栗田くんと祖父母。

  食いしん坊の栗田くんはトレーに皿をいくつも置き、料理を次々と盛り付けた。

  (これも食べたい!これもおいしそう!これも、これも…)

  カレーにワニ肉ハンバーグ、天ぷら、サラダ、スープ…

  海沿いのホテルゆえ、海鮮料理も豊富だ。刺身や寿司も次々と盛り付ける。

  その後ろでは、祖父が栗田くん以上の量を盛り付けていた。祖母も量が多い方だが、栗田くんよりは控えめだ。

  (さてと、これだけあれば十分だ!)

  栗田くんは席に戻った。

  「永雄、ずいぶんたくさん取ったな。」

  「思う存分食べるのよ!今度はお母さんたちが料理を取りに行くから、永雄たちは先に食べていていいわよ。」

  両親はそう言って席を立った。

  「よーし、食べるぞ!いただきます!」

  栗田くんは満面の笑みで料理を食べ始めた。

  (ああ、おいしい!)

  料理を頬張っていると、祖父母が戻ってきた。

  「わしらも食うぞ。いただきます!」

  祖父母が食べ始めてしばらくすると、両親も戻ってきた。共に普通の量を盛り付けている。

  全員揃ったため、会話が始まった。

  「今日は久々に海で遊べて、楽しかったね!」

  「そうだな、永雄。お父さんは子供に戻った気分になったよ。」

  「わしも楽しかったのう。こうしてみんなで話すだけでも楽しいわい!」

  「お母さんもとっても楽しかったわ!こんな時間がいつまでも続くといいわね…」

  「永雄、どの料理もおいしいみたいね。」

  「そうさ!お腹が空いてるから何食べてもおいしく感じるよ!

  おっと、料理がなくなりそうだ。新しいの取ってくるね!」

  栗田くんはまた料理を取りに行った。

  「そろそろデザートにしようかな。」

  食事を始めて約1時間。栗田くんは少し重くなった体を立ち上がらせ、デザートコーナーへ向かった。ここにも魅力的な物が並んでいる。

  何種類もの小さなケーキやアイスクリーム、プリン、ゼリー、水饅頭…中央ではチョコレートファウンテンが稼働している。

  (ああ、どれもこれもおいしそう!全種類食べよっと。)

  早速デザートを盛り付け始めた。ケーキを全種類皿に盛り、ゼリーや杏仁豆腐を器に盛り、マシュマロやクッキーをチョコレートファウンテンに付け…

  「永雄、チョコが付け放題で嬉しいのう。」

  いつの間にか隣に祖父が立っていた。

  「おじいちゃんもデザートにするの?」

  「そうじゃよ。おかずをたらふく食べたが、デザートは別腹じゃ!」

  祖父もデザートを次々と盛り付けている。

  「そうだね、別腹だよね!さあ、まだまだ食べるぞ!」

  「その意気じゃ、永雄!わしも負けんからな!」

  [newpage]

  30分後…

  「あー、食べた食べた!」

  お腹をパンパンに膨らませた栗田くんは、満足そうに言った。

  「もう食えんな…」

  祖父も元から大きなお腹がさらに膨れている。

  「どれもおいしかったな、永雄。ああ満腹だ…」

  「食べ過ぎちゃったけど、幸せね…」

  「みんなほんとにたくさん食べたわね。私もだけど。」

  両親と祖母も、お腹をぽっこりと膨らませていた。

  栗田一家に限らず、食堂にいるケモノの大部分がそうなっていた。

  「お腹が重くて歩きにくいな…」

  「重すぎて転びそう…」

  一家は膨れたお腹と重くなった体に苦労しつつ、エレベーターに向かった。

  「ぐっ…腹が出過ぎて…通れん…」

  一番食べた祖父はお腹が膨らみ過ぎた上に出べそのため、横向きで入ろうとしてもエレベーターのドアに詰まってしまった。

  すでに乗っていた父親と栗田くんが中から祖父を引っ張り、なんとか全員乗れた。

  「ああ、入れた…しかし行きより狭くなったのう…」

  幸い重量オーバーにはならず、エレベーターは7階に上がった。

  部屋に戻った一家は、また畳に寝転んだ。

  「もうとても食べられないや。ゲエ~ップ!」

  「また胃袋が広がりそうじゃな…」

  お腹が膨らんだ今は、休む事が一番。

  栗田一家は大きなお腹をなでつつ、しばらく休憩した。

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  [chapter:大浴場にて]

  約1時間後、消化が進んでお腹が落ち着いた。

  「さあ、そろそろお風呂に入ろう。」

  父親の一言で、一家は浴衣や下着を持つと1階の大浴場に向かった。

  男女に分かれてそれぞれの浴場へ。栗田くんは祖父との入浴を楽しみにしていた。

  「さあ、お風呂だ!」

  裸になった栗田くん、父親、祖父は大浴場の扉を開けた。

  中年の虎や牛、若いネズミなど数頭のケモノが入っているが、22時が近いため子供は栗田くんしかいない。

  3匹はまず、体を洗った。

  「おじいちゃん、背中を洗ってあげようか?」

  「おお、嬉しいのう。頼むぞ、永雄。」

  栗田くんは縦横に大きい祖父の背中を洗った。

  「ああ、気持ちいいのう…」

  それを見た父親は言った。

  「なあ、お父さんの背中も洗ってくれるか?」

  「えー、お父さんは細身だから自分で洗えるでしょ?」

  「いや、永雄はここ数年自分だけで風呂に入ってるじゃないか。一緒に入る事なんてそうそうないんだから、たまにはいいだろ?」

  「んー…わかった。」

  栗田くんは父親の背中も洗った。

  体を洗い終わると、大きな浴槽でくつろいだ。

  「ああ、気持ちいいのう…やっぱり風呂は最高じゃ。」

  「そうですね。こうしてみんなで入ると落ち着きます。」

  「そうだよね。今日1日の疲れが取れていく気分だよ。気持ちいいな…」

  3匹はリラックスしていた。

  その後、露天風呂にも入った。

  「夏だけど夜は涼しいね。」

  「ああ、気持ちいいな…」

  「永雄、空を見てごらん。きれいな星が輝いとるぞ。」

  「本当だね。大上区じゃこんな星空は見られないよ!ああ、本当にきれいだ…」

  外に出て全身ドライヤーで体を乾かし、脱衣所へ。体重計にも乗ってみた。

  「ぼくは67キロ。いつも通りだね。」

  「お父さんは45キロ。細身だからな。」

  「わしは200キロか。これだけ太ればそりゃ動くのは大変じゃな…」

  3匹は浴衣に着替え、男湯を出た。栗田くんは祖父の帯締めを手伝った。

  大浴場前のベンチで待っていると、女湯から浴衣を着た母親と祖母が出てきた。

  「お母さん、おばあちゃん、気持ち良かった?」

  「ええ、とっても!」

  「私も気持ち良かったわ。それにお母さんと2匹で入ったのも久々だし、懐かしい気分になれたの。」

  母親は久々に祖母と風呂に入ったため、子供時代を思い出していた。

  [newpage]

  [chapter:寝る時間]

  部屋に戻ると、ホテルのスタッフによって布団が敷かれていた。

  「もう遅いや。みんな寝ようね。」

  「そうだな、永雄。」

  「おやすみ。」

  「おやすみなさい。」

  栗田一家は電気を消して、布団に入った。

  (今日は楽しかった。みんなでいっぱい遊んで、いっぱい食べて、夢のように最高の1日だったな…)

  栗田くんは今日の出来事を回想しながら、眠りについた。

  [newpage]

  [chapter:ホテルで迎えた朝]

  翌朝6時半。一番に目覚めた栗田くんは、洗顔や着替えなどを済ませると持ってきたゲームを窓辺でプレイした。

  (美しい海を眺めながらゲームをできるなんて、夢みたいな気分だ…)

  7時になると、残りの家族が次々と起きてきた。

  「みんな、おはよう。」

  「おはよう。永雄は早起きだな。」

  「朝ご飯の事考えたら、お腹が空いちゃってね。」

  「やはり永雄は食いしん坊ね。」

  「ぼくは食べるために生きていると言っても過言じゃないね。」

  残りの家族も準備を済ませ、7時25分には食堂の前に着いていた。7時半から朝食が始まる。

  「お父さん、朝も食べ放題なんだよね。」

  「ああ、そうだよ。」

  「昨日の夜はあんなに食べたのに、もうお腹が空いてるよ。またたくさん食べるぞ!」

  栗田くんは意気込んだ。

  扉が開くと、夕食と同じように宿泊客たちが次々と着席していった。

  一家は場所を取り、早速料理を取りに行った。

  (いつも朝にはパンを食べるから、たまにはご飯を食べよう。)

  栗田くんはご飯を大盛りにして、トッピングの漬物や明太子も用意した。みそ汁、焼き鮭、卵焼きなどおかずも盛り付ける。

  (たくさん食べて、元気をつけるぞ!)

  それから喜んで席へと戻った。

  「いただきます!」

  一家は朝食を食べ始めた。

  栗田くんは様々な物を取った。1回目は和食、2回目はパンやオムレツ、チキンソーセージなどの洋食、3回目はフルーツやゼリー、ジュースなどのデザート。

  もちろん、すべて大盛りだった。

  1時間ほどで、一家は食堂を出た。

  「んー、お腹いっぱい!だけどもうちょっと食べたかったな…」

  「永雄、朝から食べ過ぎるとまた動くのが大変になるわよ。」

  「そうだね、お母さん。今日はこの後、水族館に行くんだもんね。」

  部屋で1時間ほど休憩してから荷物をまとめ、ロビーへ。

  「チェックアウトの前に、お土産を買おう。」

  父親の提案で、お土産コーナーへ。

  「わあ、おいしそうなお菓子がいっぱい!相撲部のみんなへのお土産、どれがいいかな?」

  「わしの銭湯仲間に向いているのはどれかのう…」

  「会社の部下に何を買おうかな。」

  「自宅用の物もいるわね。」

  最終的に、自宅用には饅頭など賞味期限が短い物、贈答用はクッキーなど日持ちがする物を選んだ。

  ホテルをチェックアウトして、車に乗り込んだ。

  「さあ、水族館へ出発だ!」

  5匹が乗る車は、オーター・ファミリーリゾートを出た。

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  [chapter:幻想的な水族館]

  1時間ほど走って、水族館に着いた。こちらもかなり大きな建物だ。

  チケットブースには多くの家族連れが並んでいる。20分ほど並んでようやくチケットが買えた。

  栗田一家は入り口へと足を踏み入れた。

  中に入って通路をしばらく進むと、巨大な水槽がそびえ立っていた。その中では何種類もの魚が泳ぎ回っている。

  「まあ、きれいね!」

  「幻想的だな。」

  「まさにファンタジーね!」

  「ほんとだね!」

  「見ているだけで涼しくなるのう。」

  一家は5分ほど、その水槽を眺めていた。

  その後も館内をあちこち見て周った。様々な生物が飼育されている。

  クラゲやクリオネを眺めて癒されたり、マグロの回遊水槽に見入ったり、星型のスターフィッシュに触ってみたり…一家は海洋生物と共に楽しんだ。

  昼食は大きな水槽の見える館内のレストランで、サンドイッチやカレーを食べた。

  「口も目も同時に楽しませられるなんて、素敵なレストランだな。」

  「そうだね。お父さん。海鮮料理がないのがちょっと残念だけど…」

  「まあ、泳いでいる魚を見ながら魚を食べるってのは微妙だからな。」

  午後にはまだ見ていなかった魚やペンギンを見たり、生物の進化図も見た。

  「魚たちは海の中に残ったけど、イルカやクジラはさらに進化して上陸し、ケモノの一種になったのか…進化は不思議だね。」

  「もしタイムマシンがあったら、昔のイルカやクジラが泳いでいる所を見てみたいわ。さぞ雄大な光景だったでしょうね…」

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  [chapter:帰り道]

  16時。一家は車に乗り込んで帰路についた。

  栗田くんは2日間の思い出を振り返りながら、家族と話していた。

  「本当に楽しい旅行だったね!海はきれいだし、ホテルにもいろいろあったし、水族館も良かったし…」

  「お母さんも楽しかったわ。思い出がいっぱいできたわね。永雄の写真もたくさん撮っちゃった!」

  「わしも楽しかったよ。永雄といろいろな事ができて、最高の2日間になったわい!」

  「私もよ。みんなで過ごしたこの日はいつまでも残る思い出になりそうだわ。」

  夕焼け空の下、車は高速道路を進む。

  途中、行きに寄った場所の反対側にあるサービスエリアで夕食にした。

  栗田くんの希望により、彼と祖父はパンを3種類ずつ。残りの3匹はフードコートでラーメンやカレーを食べた。

  「これが旅行で最後の食事だ。しっかり味わって食べなきゃ!」

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  [chapter:旅行の終わり]

  サービスエリアを出発してまた走り続け、車はさいたま市に入った。

  「だんだん知ってる景色になってきたぞ!」

  20時頃、車は大上駅の東口に着いた。祖父母とはここで別れる。

  祖父母は荷物を持ち、駅の構内に向かった。栗田くんと母親も付き添っている。

  「それじゃあな、永雄。またお盆に会おう。」

  「思い出がたくさん作れて良かったわね!またね。」

  栗田くんと母親は、祖父母が川獺線の改札口に入った事を見届けると車に戻った。

  「さあ、後はうちに帰るだけだ。」

  父親は家に向けて車を走らせた。

  「本当に楽しい旅行だったな…明日はみんなにお土産を渡しに行こう。」

  栗田くんは明日の計画をもう立てていた。

  [chapter:おしまい]