第36話「デベソ・ウォーズ」

  [chapter:プロローグ]

  ここはケモノ界のさいたま市大上区。2023年5月4日の昼、住宅街を4匹の小学生が歩いていた。

  シマリスの栗田 永雄くんと縞野 くるみちゃん、キタキツネの稲荷山 紺助くん、白猫の金子 真里ちゃん…つまり男女が2匹ずつ。男の子は丸々と太っており、女の子は細身だ。

  行き先はスーパーVRシアター。4匹はここを行きつけにしている。

  スーパーVRシアター──2022年9月、突然住宅街の一角に現れた店。

  1円を払ってタッチパネルに設定を入力すれば、現実としか思えないほど完成度の高いVRを体験できる。

  VR世界でどれほど過ごしても、現実では30分しか経たない。このため、ここに来れば設定次第でどのような体験も可能だ。

  また、なぜかこの4匹しか利用できない。それ以外のケモノにはただの空き地にしか見えないようだ。

  オープン以来、4匹は何度もここを使っている。

  どれほど大食いしても、太らない。

  どれほど豪華な旅をしても、費用は1円のみ。

  どれほど大冒険をしても、安全が保障される。

  練習せずとも、世界レベルの天才になれる。

  空を飛んだり、魔法を使ったりと現実では不可能な事もできる。

  望みを何でも叶えられる、ローコスト・ハイリターンな施設だ。

  今日は2週間ぶりに4匹揃って来た。ゴールデンウィークだが、4匹とも旅行や外出の予定はない。

  「栗田くん、今日はどんなVRにする?」

  「SFさ。とある映画を元に、設定を書いてきたんだ。」

  シアターに到着すると、4匹は機械に1円ずつ投入した。タッチパネルのスイッチが入り、合成音声が流れる。

  「いらっしゃいませ。どんな体験をお望みですか?」

  「ぼくが入力するから、みんなはモニターを見ないでね!」

  栗田くんは持参したノートを見ながら、設定を入力。「ぼくはここに書いた設定を、VR体験中にすべて忘れる」と締めた。

  この文章を追記すれば、新鮮な気分でVRを楽しめる。

  それから決定ボタンを押した。

  「はい、それでは行ってらっしゃい!」

  [newpage]

  [chapter:DEBESO WARS]

  [chapter:デベソ・ウォーズ]

  遠い昔、はるか彼方の銀河系で…

  宇宙空間を、小型宇宙船が飛んでいた。

  のんびりした旅行ではない。その後ろからは超大型の宇宙戦艦・デヴェソテイターが近づいていた。

  艦首には出べそのような砲台が付いており、そこからレーザーが発射されている。

  なぜ追われているか…それはいずれわかる。

  宇宙船の乗員は、白い服を着たシマリスの少女と狸型ロボットが2体。

  シマリスの名前はヘイゼル。フルネームや素性は後述する。

  美しさを漂わせる彼女と対照的に、ロボットはどちらもコミカルな印象を与える見た目だ。

  1体は全身が金色で、ボールのような太鼓腹には出べそ、股間には2つの玉が付いている。

  個体名はC-3PON。おしゃべりなムードメーカーで、知能は高いがどこか抜けている。

  もう1体は銀色で、円筒形のボディに狸の耳やしっぽ、出べそなどがデザインされている。

  個体名はRC-DG。こちらは電子音で会話するため、C-3PONにしか意味が通じない。その一方で、機械を動かす技術には長けている。

  上述したように、ヘイゼルたちは敵から逃げていた。

  レーザーが船体をかすめ、小さな爆発音が上がる。彼女は必死になり、パイロットに無線を送る。

  「お願い、もっと早く飛んで!」

  「すみません、これが限界です!」

  「早くしないと捕まってしまうわ。そうなったらせっかくのデータが…」

  困っていると、RC-DGが声をかけてきた。

  「ポンポン!ポンポコポン、ポコポコポン、ポンポコポン!」

  C-3PONが通訳する。

  「この僕にデータとメッセージを託し、2体で脱出しようと言っています!」

  「脱出ってどこへ?」

  「幸いにも現在はウルフウォード星の近く。そこにはあのマスターが住んでいます。どうにかしてマスターの元へ向かいましょう。」

  「わかったわ。急いでメッセージを録画しないと!」

  ヘイゼルは心を落ち着かせると、救援メッセージを口にした。それをRC-DGが撮影する。

  「ポンポンポコポコ!」

  「撮影完了だそうです。」

  「ありがとう。もう覚悟はできた。あなたたちは脱出用ポッドに入って!私の事はいいから!」

  「それでは行って参ります!また無事に会いましょう!」

  C-3PONとRC-DGはポッドに入り、ウルフウォード星へ出発した。

  その直後、宇宙船をレーザーが直撃。爆破はしなかったものの、エンジンが故障した。

  「ああ、ついに捕まってしまったわ…」

  トラクタービームで捕獲される宇宙船。ヘイゼルは悲しみを浮かべ、窓の外を眺めた。

  その後…

  「ヘイゼル様を捕獲しました!」

  「よくやった。それでデータはどこだね?」

  「それが船内のどこにも見つかりません!パイロットに聞いても答えてくれません!」

  「そうか…こうなったらどんな手を使ってもデータのありかを聞き出してやるぞ!あのデータが流出したら一大事だからな。」

  [newpage]

  [chapter:リークとロボットコンビ]

  ウルフウォード星は、ケモノたちが暮らす小さな惑星。砂漠の中に町が点在している。

  そこの住宅街に、シマリスの少年が住んでいた。名前はリーク・ロングウォーカー。

  丸々と太った体に、元気そうな表情。のんびり屋で食いしん坊だが、いざとなれば力を出す。

  家はそこまで大きくないが、両親と共に満ち足りた生活を送っていた。

  服装はローブ。この惑星では一般的な衣装だ。

  その日、リークはロボットを買いに出かけた。最近、子供たちの間でロボットを持つ事が流行っている。

  住宅街を抜け、商店街へ。

  「ブルーソイミルク、いかがですか?」

  「天の川模様のドレスが入りました!」

  「ギャラクシービートルの幼虫だよ!ペットにいかが?」

  多くの店から呼び込みの声が響き、大勢の客で賑わっている。リークはこの雰囲気が大好きだ。

  目的の中古ロボット屋は、商店街の外れにある。様々なケモノをイメージしたロボットが並んでいた。

  「これとこれください!」

  2体の狸型ロボットを買い、配達サービスで自宅へ運んでもらった。

  その2体──それはポッドでこの星に到着し、紆余曲折を経て店に並べられたC-3PONとRC-DGだった。

  「さあ、ここがぼくの家だよ。今日から楽しく暮らそう!

  ぼくはリーク・ロングウォーカー。君は?」

  「私はC-3PONです。こちらはRC-DG。」

  「ポコポコポン!」

  「可愛いね。買って良かったよ。さあ、君たちのボディをきれいに磨かないと。」

  挨拶を済ませると、リークはロボット磨きを始めた。C-3PONはリークの事が気に入っていたが、RC-DGは考えていた。

  (こんな所にいる場合じゃない。早くマスターにメッセージを届けなくては…)

  その夜。リークが寝静まった後、RC-DGは家を抜け出してマスターを探しに出かけた。

  翌朝、目覚めたリークはガレージを見て驚いた。

  「RCがいない!PON、何か知らない?」

  「いいえ、私もスリープモードに入っていたため、よくわかりません。

  リーク様と出会って1日も経っていないのに、こんな失態を犯してすみません…」

  「スリープモードに入っていたなら仕方ないよ。何とかしよう。」

  「一緒に探しましょう!私も責任を持って協力します。」

  両者はRC-DGの捜索に出かけた。

  町を抜けて砂漠へ。広がる砂の中に、岩山が点在している。

  「ここならすぐに見つかりそうですね。視界を遮る物があまりありませんから。」

  「見て、これ!RCが進んだ跡だよ!」

  それをたどると、RC-DGが見つかった。砂漠の中を動き回っている。

  「やっと見つけた!さあ、もう勝手にいなくなっちゃだめだよ。」

  「ポコポコポコ、ポンポコポコ、ポコポン…」

  「この辺に目的地があるはずだと言っています。そうでした、私たちがここへ来た目的は…」

  その時、岩陰からワニのような生物の群れが現れた。

  「リーク様、あれは…」

  「そうだ、この辺には危険な生物がいるから近寄らないように言われていたんだ…」

  それらは鋭い目で一同を睨み、牙をむき出し襲ってくる。

  「早く逃げろ!」

  3名は散り散りになったが、いずれも動きが鈍い。リークは太っており、C-3PONは関節がそれほど大きく動かず、RC-DGの移動速度も成獣の足より少し速い程度だ。

  生物の動きも遅い方だが、リークたちに比べれば速い。次第に迫ってくる。

  「誰か、助けて!」

  [newpage]

  [chapter:マスター・ポー・ラン]

  そこへ、ホバーバイクに乗ったホッキョクグマの中年男性が現れた。リーク以上に太っている。

  「危ないぞ!」

  彼はバイクから降りるとローブの前をはだけさせ、太鼓腹と大きな出べそをあらわにした。

  次の瞬間、出べそから青い光線が発射され、それに当たった生物たちは動けなくなった。

  「今のうちに離れろ!乗るんだ!」

  リークは慌ててホッキョクグマの方へ逃げ、バイクの後ろに乗った。2体のロボットも後を追う。

  「RC、私たちはラッキーだな!探していた相手が向こうから来てくれるとは!」

  ホバーバイクはしばらく走り、岩造りの家に着いた。

  「もう大丈夫だ。子供が1匹でこんな所に来ちゃだめじゃないか。」

  「すみません、昨日買ったロボットが行方不明になったから、探しに行っていたんです…」

  「そうだったのか。見つかって良かったな。」

  すると、C-3PONが口を挟んだ。

  「待ってください。あなたはポー・ラン・ケノーベア様ですね!」

  「ああ、確かにそうだ。しかしロボットにまで知られているとは思わなかったよ。」

  「PON、このケモノってそんなに有名なの?」

  「はい、偉大なネブルスの使い手です。

  私たちはあなたを探して、この惑星に来たのです。RC、メッセージを!」

  RC-DGの出べそから、立体映像が投影された。シマリスの少女が映っている。

  「私はラッカー星のヘイゼル・ウォルナット姫。

  私たちの星は、帝国軍の指導者ダース・デベイソーに占領されてしまいました。この状況を打開するには、偉大なるネブルスマスターのポー・ラン・ケノーベア様の助けが必要です。

  どうかラッカー星まで来て、私たちを救ってください。お願いします…」

  ポー・ランは驚いた。

  「なんという事だ!これはすぐに行かないと…」

  「お姫様はポー・ランさんを知ってるみたいですけど、お互いに知り合いですか?」

  「ああ、会った事はないが彼女については知っている。ラッカー星はナッツの生産が盛んで、このウルフウォード星にもナッツを輸出しているのだよ。

  私はナッツ入りのチョコレートが好物でね、そのためにもラッカー星を救わなければならない。」

  「ぼくも好きです…頑張ってください!」

  「いや、君も行ったらどうだね?ヘイゼル姫はお前と同じ種族で、年齢も割と近いみたいだぞ。」

  「でもぼくには家族が…とにかく、そろそろ家に帰りたいです。もう用は済んだので…」

  「わかった。徒歩は危ないから私のホバーバイクで送ろう。」

  [newpage]

  [chapter:突然の悲劇]

  全員でホバーバイクに乗り、町へ戻った。

  「ぼくの家はこの先で…えっ!?」

  リークの家は完全に破壊され、がれきと化していた。両親の姿も見えない。

  「何があったか聞いてきます。そこで待っていてください!」

  慌てて聞き込みを始めるリーク。

  「そう言えば先程、アーマーを着けたデブ兵士たちが『2体の狸型ロボットを見ていないか』と聞いて回っていたな。」

  「白い鎧のケモノたちが、あの家に武器を持って押し入っていたわ!」

  情報をまとめると、C-3PONとRC-DGは狙われていたらしい。兵士たちは恐らく敵側で、2体のロボットを探し回り、買った家を突き止めて襲撃したようだ。

  「ああ、どうしよう…ぼくのせいで家や家族が…」

  泣き崩れるリークに、ポー・ランが優しく声をかける。

  「かわいそうに、さぞかし辛いだろう…これからは私が親代わりになろう。」

  「ありがとうございます、ポー・ランさん…」

  「さん付けはしなくていい。そうだ、君の名前もまだ聞いていなかったな。」

  「ぼくはリーク・ロングウォーカーです。」

  「わかった。ありがとう。」

  「それでは早速、ヘイゼル姫を救う旅に出ましょう!家も家族も失い、あなたが親代わりになった今となっては、もうここにいる理由はありません。」

  こうして、リークの旅が始まった。

  [newpage]

  [chapter:旅の始まり]

  「まずは一旦私の家に戻ろう。お前に渡す物がある。」

  ポー・ランの家で、リークは懐中電灯のような物をもらった。

  「これはフラッシュライトビームだ。何もない方に向けてスイッチを入れてみな。」

  その通りにすると、強い光線が放たれた。

  「こんな風に光線が出る。直視すれば相手は気絶する。万が一の事があれば使え。

  私がネブルスを使えるようになるまで使っていた物だが、今でもあの頃と変わらないな。」

  「ありがとうございます。ところで先程から気になっていましたが、ネブルスとは何ですか?」

  「へそから出るパワーを使う様々な能力だ。出べそになると効果が強くなる。

  私はその使い手となるため、若い頃に大食いしてへそを飛び出させ、ここまで大きな出べそを手に入れた。ネブルスでもかなりの能力を使いこなせるようになった。」

  「そういう物があるのですね。ぼくも使ってみたいです!」

  「悪いが、今から習得している時間はない。リークはそのビームで我慢してくれ。」

  武器を手に入れ、いよいよ出発。リーク、ポー・ラン、C-3PON、RC-DGは中心街へ行った。

  砂漠の中に建ついくつもの高層ビル。ここには数多くの商業施設が並び、中央には宇宙空港もある。そのため、いつでもにぎやかな場所だ。

  リークとポー・ランは宇宙空港に併設されたビュッフェレストランへ。ロボットコンビは外で待機中だ。

  「旅の前に腹ごしらえだ。私のおごりだから気にせず食べろ。」

  「ありがとうございます!」

  料理を頬張っていると、ポー・ランが小声で切り出した。

  「なぜここまで来たかわかるかね?」

  「宇宙空港を使うためですよね?」

  「そうではない。今から当日分のチケットが買えるわけがないだろう。

  ここはあちこちの惑星から多くの住民が集まる場所。だからラッカー星まで連れていってくれそうな相手を探しに来た。

  料理を取りに行くついでに、耳を澄ませて客の会話を聞いてみよう。良さそうな相手が見つけるはずだ。」

  リークは早速それを実施した。料理を選びながら、客席に耳を傾ける。

  すると、次のような会話が聞こえてきた。

  「まったく、あと5日で借金が返せるわけないよな…」

  「どうにかして返さないと、私らの首が飛んじまうね…」

  そのテーブルには、太ったキタキツネの男性と細身な白猫の女性が座っていた。

  (あれは使えるかもしれない…)

  ポー・ランを呼び、2匹の座るテーブルへ。

  「君たちは借金の事で困っているようだが、いくら必要かね?」

  「ああ、10万円だな。」

  「それにしても、あんた一体誰だい?私たちを助けてくれるのか?」

  「実はこちらもある任務に行かなければならない。そのためには宇宙船が必要だ。君たちは大型の宇宙船を持ってるか教えてくれ。」

  「それなら持ってる。仕事で使う物だ。」

  「10万なら払える…いや、20万円出そう。だから私たちの任務を手伝ってくれないか?」

  ポー・ランはローブの懐から20万円の札束を出した。

  「助かった!感謝するぜ、おっさん。」

  「いや、まだ渡さないからな。任務が終わったらだ。」

  [newpage]

  [chapter:ついに宇宙へ]

  食事を終えた一同は、キタキツネに案内されて路地裏へ。そこには狐の顔を模した大型の宇宙船が止まっていた。

  「これが俺たちの宇宙船、イナリアム・コンコン号だ。早く乗れ。」

  乗り込むと、2匹は自己紹介を始めた。

  「俺はコン・ソロ。この宇宙船で様々な星を巡りながら働いている。そして彼女が相棒の…」

  「マリアンヌ。よろしくな。それであんたたちはどんな任務をするんだい?」

  リークとポー・ランは事情を説明した。

  「そうだったのか…ラッカー星なら俺たちも何度か行った事がある。あそこのナッツはうまいよな。」

  「ナッツを守るためにも、行かなければならないね。私も好きだから。」

  お互いに意気投合したため、本格的な旅が始まった。

  「それでは、発進!」

  イナリアム・コンコン号は宇宙空間へ飛び立った。なお船内には重力発生装置が仕込まれているため、乗員が船内で浮かび上がる事はない。

  「ここからラッカー星までは、ハイパースピードを使えば30分で着く。それでは発進!」

  宇宙船は高速で飛んでいるが、乗員はGがかからない構造になっているため、支障なく行動できる。

  リークが宇宙に出る事は、これが初だった。

  「宇宙の風景って、きれいだな…」

  「俺は何度も見ているから、すっかり慣れてしまったな。やっぱり純粋な子供はうらやましいぜ。」

  コン・ソロはそう言いながら、しっかりと操縦桿を握っている。

  ポー・ランとマリアンヌは、奥でボードゲームを楽しんでいる。ロボットコンビは雑談中だ。

  「ポンポコポン、ポコポコポコ、ポンポンポコポコポン…」

  「『C-3PONは名前に数字が入っていてうらやましい』だって?この『C-3』が狸の短い竿と大きな玉の形をイメージしているとも知らないで…

  むしろ、私の方こそ種族名から付けられたお前の名前がうらやましい!私もそういう風に命名されたかったよ…」

  まるで遠足に出かけるバスのような雰囲気だった。ヘイゼル姫の救出という重要な任務が始まる直前とは思えない。

  もっとも、そのようにして少しでも心を落ち着けておきたかったのかもしれない。

  [newpage]

  [chapter:宇宙要塞]

  30分後、ラッカー星の近くまで到着した。

  「早速降り立つとしよう。お前ら、準備はいいか?」

  「もちろんです!」

  その時、イナリアム・コンコン号の操作が効かなくなった。何かに引かれるように、後退していく。

  「いったいどうしたんだ!?」

  「きっとあれだね。トラクタービームだよ。」

  そのビームは、灰色の球体に付いている出べそを模した部分から発射されていた。

  これは帝国軍の宇宙要塞、デベソ・スター。ダース・デベイソーの本拠地だ。

  イナリアム・コンコン号は、デベソ・スターの格納庫へ。

  「これはまずい事になった…」

  「いったいどうすればいいんだ!?」

  「私にもわからないよ。こんな事態は初だからね…」

  「絶体絶命だ!私でも手がつけられない…」

  「ポンポコ…」

  一同が絶望する中、ポー・ランだけは冷静だった。

  「みんな、落ち着くんだ!きっと何か助かる方法はあるぞ。」

  やがて、白いアーマーを着た兵士が2頭乗り込んできた。顔は見えないが、頭部の形状からすると種族は象とサイで、どちらもよく太った体だ。

  下半身部分のアーマーはまわしのような形で、脚の付け根は防護できていない。

  C-3PONが小声で説明する。

  「あれはスモーブ・トルーパー。帝国軍の兵士です。射撃が得意な上に相撲もかなり強く…」

  「それならぼくの出番だ!」

  リークは飛び出し、兵士に立ちはだかる。

  「ぼくだって相撲は強いんだぞ!」

  しかし相手にはかなわず、一瞬で投げ飛ばされた。

  「生意気なガキだ。サイとリスには力の差ってもんがあるんだよ!」

  「それならこれを喰らえ!」

  リークはフラッシュライトビームのスイッチを入れ、2頭の兵士を気絶させた。

  「初めからこれを使えば良かった…

  さて、ヘイゼル姫を助けに行こう。きっとこの要塞のどこかにいるんだ。」

  「しかしリークよ、見張りはまだ大勢いるかもしれないのに、どうやって探しに行くんだね?」

  「あ、そうか…ポー・ラン、何かいい考えは…」

  するとコン・ソロが口を開いた。

  「俺にいいアイデアがある。そいつらのアーマーを俺とお前が着て、スモーブ・トルーパーに変装しようじゃないか。」

  「その手があったか!他のみんなはどうする?」

  しばらく話し合い、役割が決まった。

  ポー・ランとマリアンヌはトラクタービーム制御装置の解除に向かい、ロボットコンビはデベソ・スターのメインコンピューターにアクセスして姫の居場所を突き止める。

  スモーブ・トルーパーに変装したリークとコン・ソロは、RC-DGに付いている通信機を託された。C-3PONはこれを通して、2匹に状況報告をする。

  それを聞きながら進んでいくうち、ヘイゼル姫が囚われている牢屋の前に到着。見張りの兵士を気絶させ、コン・ソロの持っていた銃で扉を破壊し、潜入に成功した。

  驚きの声を上げるヘイゼル姫。

  「兵士が入ってきたわ!」

  2匹は慌ててヘルメットを脱いだ。

  「大丈夫。ぼくはリーク・ロングウォーカー。君のメッセージを見て、ポー・ランたちと助けに来たんだ。」

  「俺はコン・ソロ。成り行きで協力する事になった。」

  「まあ、ありがとう…」

  「さあ、ぼくたちとここから脱出しよう。」

  「ええ、そうするわ!」

  リークが先頭に立ち、時々現れるスモーブ・トルーパーをビームで気絶させながら道を戻った。

  途中でロボットコンビやポー・ラン、マリアンヌとも合流。

  「マスター・ポー・ランにC-3PON、RC-DG。会えて嬉しいわ。予想以上に多くの助けが来たのね。」

  「さあみんな、急いで宇宙船に戻るぞ!トラクタービームのスイッチは切っておいたからラッカー星まで行ける!」

  [newpage]

  [chapter:宿命の対決]

  全員が格納庫に着いた時、突然不気味な声が響いた。

  「姫を連れ去ったのはお前らだな!」

  声の主は、黒いアーマーを着けたケモノだった。ポー・ランと同じぐらいの肥満体で、出べその周辺のみアーマーから出ている。

  「あれがダース・デベイソーよ。かなり強いネブルスの使い手なの。」

  ポー・ランはダース・デベイソーの声に聞き覚えがあるようだ。

  「その声…お前はまさか!」

  「ポー・ラン・ケノーベア、久々だな…」

  ダース・デベイソーがヘルメットを取ると、その下からセイウチの顔が現れた。

  「やはりお前だったか、アナスノン・スカイウォーラス…」

  「知ってるんですか!?」

  驚きの声を上げるリークに、ポー・ランが説明する。

  「ああ、私のライバルだ。長らく見ていないと思ったが、まさかこうなってるとは…」

  「ポー・ランよ、ちょうどいい機会だ。ここで決着を着けようではないか!」

  「望むところだ。お前がどれほど強くなったかこの目で確かめる。」

  2頭は離れて向かい合うと、出べそから光線を発射させた。ポー・ランは青、ダース・デベイソーは赤い光線だ。

  それらがぶつかり合い、火花を散らす。リークたちは固唾を飲んで見守った。

  「頑張れ、ポー・ラン!」

  「ネブルスマスターとして勝ってください!」

  「お前の勝利には20万がかかってるんだぞ!」

  「そうだよ!全力で戦いな!」

  「頑張ってください!」

  「ポンポコポン!」

  しばらくぶつかり合いが続いていたが、突然ポー・ランの姿が消えてしまった。

  「ああ、そんな!」

  「マスター・ポー・ラン…あなたが負けるとは…」

  「なんて事だ!まだ20万もらってないのに!」

  落ち込むリークたち。ダース・デベイソーは光線の発射を止めた。

  「よし、俺の勝ちだ!帝国軍の指導者となった俺に勝てるわけがないのだ、ポー・ラン!」

  ポー・ランを目の前で消されたリークは怒りの表情を浮かべ、フラッシュライトビームを使おうとした。

  ところが、ダース・デベイソーはネブルスによる念力でそれを奪い取り、空中分解させてしまった。

  「あっ、武器が!」

  「さあ、これでお前はただのシマリスだ。」

  「家族にポー・ラン、そして武器まで…絶対に許さない!」

  [newpage]

  [chapter:帝国軍と対決]

  その時、リークの背後でポー・ランの声が聞こえた。

  「リークよ、帝国軍と戦うのだ!それがお前に残された使命だ。」

  「ポー・ラン…魂だけになったのか…」

  「私の指示を聞くのだ。格納庫の隅に小型の宇宙船がある。それに乗り込んで戦え!」

  「わかった、そうするよ。

  コン・ソロ、マリアンヌ、PON、RCはイナリアム・コンコン号に避難して!ここはぼくだけで決着を着けるから!」

  目的の宇宙船に乗り込み、宇宙空間へ飛び立つリーク。

  デベソ・スターの全体が見える位置まで来ると、出べそのような無獣機が次々と飛んできた。帝国軍のOUTIEファイターだ。

  「こちらは1機だけ、向こうは大量。こんなの勝てるわけないよ!」

  思わず弱音を吐くと、またポー・ランの声が聞こえた。

  「そう思っていたらお前は負けてしまう!絶対に勝てると強く思い込めば、きっとお前は勝てるだろう。」

  「わかった、やってみる!」

  ポー・ランの言葉は信じられる。今のリークはそう考えていた。

  その通り、彼は強く信じた。

  (ぼくは強い。ぼくは無敵だ。絶対に勝てる!)

  それからOUTIEファイターの攻撃をかわしつつ、レーザー弾で次々に撃墜した。

  (すごい…本当に勝てた…)

  リークは一度もダメージを受けず、見事に勝利した。

  「おのれシマリスめ!こうなれば究極の最終兵器を使ってみせる!」

  ダース・デベイソーが機械の操作を始めると、デベソ・スターの出べそ部分が緑に光り始めた。

  ここから発射されるレーザーを喰らえば、何でも一瞬で爆破されてしまう。

  リークが焦った時、通信機からヘイゼル姫の声が流れた。

  「デベソ・スターには弱点があるの。出べその反対側にある排熱孔にレーザーを1発打ち込めば、爆発四散するわ!

  ちなみにこのデータはRCに入れておいた物よ。ダース・デベイソーが私を捕獲した理由は、今の話が外部に出ないようにするため。」

  「ありがとう、早速やってみるよ!」

  言われた通りにすると、デベソ・スターが赤く光り始めた。

  「もうすぐ爆発するわ!早くイナリアム・コンコン号へ!」

  そちらへ逃げた直後、デベソ・スターは爆発四散して宇宙の塵と化した。なお、ダース・デベイソーとスモーブ・トルーパーは、爆発寸前に脱出用ポッドで宇宙の彼方へ逃げていった。

  「なんという強い子供だ!我々にはとても勝てない。もうこの辺りからは退散しよう!」

  [newpage]

  [chapter:表彰式]

  その後、一同はラッカー星へ。シマリスの王とヘイゼル姫による表彰式が始まった。

  「この者たちは帝国軍を打ち破り、我が星を救ってくれた。国民諸君、拍手を!」

  ステージに並ぶリーク、コン・ソロ、マリアンヌ、ロボットコンビはラッカー星の住民たちに手を振った。

  「ヘイゼル、みんなにメダルを。」

  「わかりました、皆さんの活躍を讃えるメダルを授けます。

  まずリーク・ロングウォーカー。あなたは全力で戦い、たった1匹で帝国軍を打ち破りました。

  続いてコン・ソロとマリアンヌ。あなた方は大型の宇宙船を提供して、隠れ場所を用意してくれました。

  最後にC-3PONとRC-DG。あなた方はマスター・ポー・ランの元にたどり着き、この星を救うきっかけを作ってくれました。」

  全員の首にメダルが掛けられた。RC-DGは円筒形のため、かなり長い紐の付いたメダルだった。

  「さて、本来ならマスター・ポー・ランにも授けたかったのですが、残念ながら彼は犠牲に…」

  その時だった。

  「いや、私はここにいるぞ!」

  声と共に、ポー・ランが現れた。

  「無事だったのか!」

  「やったぞ、20万円もらえるぜ!」

  「良かった…でもどこにいましたの?」

  「私はネブルスを使って、今まで姿を消していたのだ。リークの戦う姿もしっかり見ていたぞ。」

  「そうか、あれは地声だったのか!狭くなかった?」

  「ああ、少しな。」

  ヘイゼル姫はポー・ランのメダルを用意するため、会場を離れた。

  その直後、ステージにスモーブ・トルーパーが2匹現れた。

  「まだ残っていたか!」

  「落ち着け、リーク!」

  よく見るとスモーブ・トルーパーの割に細身で、アーマーもサイズが合っていない。

  「そうだ、この声は…間違いない!ヘルメットを取って!」

  2匹はその通りにした。

  「やっぱり…無事だったんだね!」

  「そう、私はお前の父だ。」

  「リーク、あなたの母よ。」

  3匹はステージの上で抱き合った。その光景に、一同は涙を流した。

  そこへヘイゼル姫が戻ってきた。

  「まあ、リークの親御さんですか?」

  「はい、そうです。我々は兵士に捕まり、仲間にされかけましたが、隙を見てラッカー星まで逃げました。」

  「デベソ・スターの爆発に巻き込まれなくて良かったですね。」

  「ええ。私たちの家は兵士たちに破壊されてしまいましたが、家族全員が無事だったので良かったです。」

  すると、王が口を開いた。

  「それなら、私たちが新しい家をプレゼントしよう。この星を救った英雄には、それ相応の贈り物をせんとな。」

  「陛下、本当にありがとうございます!」

  会場は拍手と歓声に包まれた。

  [chapter:THE END]

  [newpage]

  [chapter:エピローグ]

  VRが終わり、栗田くんたちは元の部屋に戻っていた。

  「どうだった?面白かったよね?」

  しかし、残り3匹は不満げだ。

  「なんだか説明不足な話だったわ。不自然な所が多すぎるし、私は途中までずっと牢屋の中よ!」

  「栗田くんしか活躍してないよね?クライマックスなんてぼくたちは蚊帳の外だよ!それに悪役もかっこ悪い!」

  「これ、栗田くんだけで楽しんだ方が良かったと思うわ。どんな話かと思って来たら、栗田くん以外ほぼ空気じゃない!」

  栗田くんは微妙な表情を浮かべながら尋ねた。

  「え…不自然な点って、例えばどこ?」

  「ラッカー星が占領されたはずなのに、星に兵士が全くいないとか。」

  「やたらと乗員に都合がいい宇宙船、弱すぎる悪役、セキュリティが甘すぎる宇宙要塞…」

  「私と稲荷山くんの仕事内容が曖昧な所も気になったわ。」

  それを聞いた栗田くんは、泣きながら謝った。

  「みんな、ごめんなさい!そこはそんなに考えていなかったよ!

  ラッカー星に当たる惑星は、映画だと爆破されてしまう。ぼくはそれに心を痛めたから、爆破されないようにしたんだ!

  あの宇宙船に乗ってる2匹も密輸業者だけど、いくらVRの中でも友達をそんな仕事に就かせたくないから、あえて曖昧にしたんだよ!

  それから、ぼくだけにとって都合のいい話にしちゃってごめんなさい!書き直してくるから!」

  [newpage]

  翌日、4匹はまたシアターへ。

  「今度は設定をしっかり書き直したから、みんな満足できると思うよ。」

  それから始まったVRは、栗田くん演じる悪の皇帝をくるみちゃん、稲荷山くん、真里ちゃんが共闘して倒すSFストーリーだった。

  「みんな、どうだった?」

  「すっごく楽しかったわ!もう大満足よ!」

  「今日はしっかり活躍できて、いい気分になれたよ!書き直してくれてありがとう!」

  「私もあんな風に戦う役を一度やってみたかった!」

  「良かった。何時間もかけて書き直した甲斐があったよ。」

  3匹と別れ、家に向かう栗田くん。彼は笑顔を浮かべていたが、どこか複雑な気持ちだった。

  (昨日のお詫びとして、ぼくは悪役になった。みんなぼくを倒す事になったけど、それについてはどう思っていたんだろう?

  まあ、仕方ないか。喜びには犠牲が必要だからね。)

  空を見上げると、鳥が飛んでいた。

  (鳥はいいよね。こんな複雑な想いはしないだろうから…)

  その頃にはもう家に着いていたため、彼は玄関に入った。

  その直後に鳥の動きが止まり、一瞬で消え去った。しかしそれを見ているケモノはいなかった。

  もっとも、見ていたとしても気にする事はないだろう。

  果たしてなぜか…それはまだここでは語れない。

  [chapter:おしまい]

  [newpage]

  [chapter:特別掲載:執筆前に書いた設定集]

  ※本編では没にした設定もあります。

  ・リーク・ロングウォーカー(栗田くん):ウルフウォード星の住宅街に両親と暮らす少年。力士を目指している。

  ・ヘイゼル・ウォルナット姫(くるみちゃん):ラッカー星の王女。シナモンロールが好物。

  ・コン・ソロ(稲荷山くん):油揚げの密輸業者。

  ・マリアンヌ(真里ちゃん):コン・ソロの相棒。勝気な女性。

  ・C-3PON:狸型ロボット。

  ・RC-DG:狸型ロボット。「ポンポコ」と聞こえる電子音で会話する。

  ・ポー・ラン・ケノーベア(保良先生):ネブルスの使い手で、相撲もかなり強い。リークの師匠となる。

  ・ダース・デベイソー/アナスノン・スカイウォーラス(那須野先生):暗黒卿。出べそがかなり大きい。実はポー・ランの旧友。

  ・スモーブ・トルーパー(獣崎小学校の相撲部員):ザコ兵。リークは彼らと相撲で戦う。

  ・ネブルス:へそから出るパワーを使う様々な能力。出べそになると効果が強い。

  ・ウルフウォード星:のどかな町が広がる惑星。中心街は大都会で、宇宙空港がある。

  ・ラッカー星:自然豊かな惑星。ナッツの生産が盛ん。

  ・イナリアム・コンコン号:コン・ソロの宇宙船。

  ・デベソ・スター:帝国軍の宇宙要塞。

  ・デヴェソテイター:帝国軍の宇宙戦艦。

  ・OUTIEファイター:帝国軍の戦闘機。