[chapter:プロローグ]
ここはケモノ界のさいたま市[[rb:大上区 > おおかみく]]。時は7月後半。
ケモノ小学校埼玉校は1学期の最終日。体育館では終業式の最中だ。
児童たちによる校歌の合唱が聞こえてくる。
我らケモノの子供たち
鋭い感覚研ぎ澄まし
関東平野を見渡して
未来に夢をつなげよう
おお 我らの集う ケモノ小学校埼玉校
我らケモノの子供たち
食物連鎖は過去の事
種族の壁を乗り越えて
みんなで仲良く助け合う
おお 我らの学ぶ ケモノ小学校埼玉校
式は1時間ほど続き、[[rb:大神 誠司 > おおがみ せいじ]]校長(太った高齢の狼)による挨拶で締められた。
「以上で終業式を終わります。皆さん、楽しい夏休みをお過ごしください。」
「はーい!」
児童たちは元気に返し、教室に戻った。
4年1組の教室では、児童たちが通知表を見ている。
「あーあ、帰ったら怒られるわ…」
イタチの[[rb:鼬川 卯井是瑠 > いたちがわ ういぜる]]ちゃん(かなりの肥満体)は落ち込んだ。彼女の通知表には1と2が並んでいる。
もっとも、勉強を真面目にしなかったため当然の結果だ。
シマリスの[[rb:栗田 永雄 > くりた ながお]]くんと、キタキツネの[[rb:稲荷山 紺助 > いなりやま こんすけ]]くん(共に太っている)は安堵して息をついた。2匹の通知表には3と4が並んでいる。
「夏休みもいっぱい遊ぼうね!」
「もちろん!」
今日は昼頃で完全下校となる。栗田くんが稲荷山くんに話しかけた。
「今日も一緒に帰ろうよ!」
しかし、彼は誘いを断った。
「ごめん、悪いけどぼくは用事があるんだ。」
「そうなんだ。邪魔しちゃ悪いね。」
栗田くんはドブネズミの[[rb:遠藤 隆志 > えんどう たかし]]くんと帰った。
栗田くんが廊下から見えなくなると、稲荷山くんは4年2組を覗いた。
(よし、まだいるな。)
視線の先には、ホッキョクギツネの[[rb:雪見 > ゆきみ]]カトリーヌ[[rb:理沙 > りさ]]ちゃんが座っている。日本とフランスのハーフで、大富豪の娘だ。
ホッキョクギツネは真っ白な毛皮のイメージが強いが、今の時期は灰色の夏毛だ。
理沙ちゃんが教室から出ると、稲荷山くんは話しかけた。
「あの、理沙ちゃん…」
「稲荷山くん、どうしました?」
「あのね、お泊まりの事覚えてるかな?」
「もちろんですわよ。」
「ありがとう!楽しみだ!」
稲荷山くんは喜んで下校した。
5月のある日、彼は「7月中に妹の[[rb:万梨阿 > まりあ]]ちゃんを連れて、理沙ちゃんの家に泊まりたい」と頼んでいる。理沙ちゃんはそれに快諾してくれた。
家に帰ると、万梨阿ちゃん(3年生)が既に帰っていた。
「お帰り!お泊まり楽しみだね!」
「ぼくも楽しみだよ。一度セレブの生活を体験してみたかったんだ。
さあ万梨阿、宿題しよう。」
「うん!」
母親は子供たちを眺め、微笑んでいる。
(良かったわね。そういえば私も子供の頃、お泊まりした事があったわ…)
[newpage]
[chapter:いざ、雪見家へ!]
3日後の午前中、稲荷山兄妹は必要な物をリュックサックに詰めていた。
2日分の着替え、パジャマ、歯ブラシ…
「向こうで宿題もやってきたら?」
母親に言われて、宿題も入れた。
準備ができると、玄関にリュックサックを置いた。
「万梨阿は何が楽しみだ?」
「やっぱり食べ物!去年クリスマスパーティーで食べた料理はおいしかったからね!」
「ぼくもそれが楽しみだよ。それに家の中ももっと見られるね。」
昼食からしばらく経つと、2匹は玄関に行った。時刻は13時45分。
「お母さん、行ってきます!」
「行ってきまーす!」
「行ってらっしゃい。3日間楽しんできてね!」
2匹は楽しげに住宅街を歩いていた。
自然と足取りが弾み、稲荷山くんの太鼓腹はリズミカルに揺れている。
「さあ、着いたらまずは何をしようか?」
「家の中を見て回りたい!」
「きっと理沙ちゃんが案内してくれるよ。」
2匹は歩き続けた。
「さあ、この角を曲がれば…ここだ!」
そこには3階建ての大豪邸が建っていた。稲荷山くんがインターフォンを押す。
「稲荷山 紺助と稲荷山 万梨阿です。お泊まりに来ました!」
要件を告げると、門が自動で開いた。2匹は庭へ足を踏み入れる。
「本当に広い庭だよね、お兄ちゃん!」
「ああ。この辺りでは一番かもね。」
庭を横切りドアの前まで来ると、鍵が開いた。
[newpage]
[chapter:これがセレブの家]
玄関には理沙ちゃんが立っていた。
両側には若いスカンクの執事、白猫やアライグマ、レッサーパンダなどのメイドが5匹、太ったアライグマのシェフも並んでいる。ドアは白うさぎのメイドが開けていた。
理沙ちゃんが礼儀正しく挨拶をする。
「稲荷山くん、万梨阿ちゃん、ようこそいらっしゃいました。」
2匹も挨拶を返した。
「皆さん、3日間よろしくお願いします。」
「私もよろしくお願いします。」
「そういえば理沙ちゃん、お父さんとお母さんは?」
「2匹とも仕事に行っていますの。夕方には帰りますわ。」
「そうなんだ。ありがとう。灰色の理沙ちゃんもおしゃれだね。」
「ええ、ありがとう。夏毛は涼しくて快適なの。」
「ぼくたちキタキツネも夏毛になったけど、色は変わらないんだよね。」
会話が一段落した所で、スカンクの執事が挨拶した。
「ようこそいらっしゃいました。私は執事のグリムズ・スカンダーです。」
「理沙ちゃん、ここには執事もいたんだね!でもクリスマスパーティーの時にはいなかったよね?」
「ああ、あの時は一時帰国してたんですよ。実家からパーティーに誘われたので、1週間ほどロンドンに滞在していました。」
「えっ、ロンドン?つまりイギリス出身か!日本語が上手ですね。」
「ええ。フランス語も話せますよ。ブルフォード大学で勉強したんです。」
「あの名門大学!? すごいですね!」
次はアライグマのシェフ。
「私はラトン・ラブーシュ。ここの専属シェフでフランス出身です。」
「インターナショナルだね!」
「どんな料理でも作れるんですか?」
「レシピさえ知っていれば作れますよ。私はパリの名門料理学校を卒業したのですから。
それから理沙様のお父様の元で働き、お父様が日本に引っ越された時に私も一緒に行きました。」
「うわあ、すごいですね!」
その後はメイドたちの挨拶が続いた。
それが終わると、理沙ちゃんが言った。
「では、私とスカンダーでこの家を案内します。」
「ぜひお願いします。」
稲荷山兄妹はスリッパに履き替え、玄関に上がった。
(すごいな。お城みたいだ…)
理沙ちゃんとスカンダーは階段を上がり、2匹を3階の客室に案内した。
「こちらがお客様の部屋です。まずは荷物を置いてください。」
「わあ、豪華!」
そこは一流ホテルのスイートルームに匹敵するほどの部屋だった。大きなソファー、テーブル、大型テレビ、2台のベッドなどかなりの家具が揃っている。
2匹は部屋に入り、リュックサックを隅に置いてから室内を見て回った。
「すごい!このベッドふかふかだ!」
「ソファーもふっかふか!クッションなんてお兄ちゃんのお腹みたい!」
「さあ、他の部屋も案内しますわ。」
それから、様々な部屋を見て回った。
理沙ちゃんの部屋、書斎、リビング、大広間…どの部屋も豪華な造りで、高級な家具が並んでいる。
一通り見て回ると、理沙ちゃんは尋ねた。
「私の家はどうですか?」
「高級ホテルみたいですごいね!気に入ったよ!」
「お城みたいですごく良かった!」
「ありがとうございます。」
[newpage]
[chapter:優雅なお茶の時間]
そこへ白猫のメイドが現れた。
「お茶の用意ができました。今日はアフタヌーン・ティーです。」
「理沙ちゃん、アフタヌーン・ティーって何?」
「イギリス風のお茶の時間よ。紅茶と一緒にサンドイッチやケーキを食べるのですわ。」
「わあ、素敵だね!」
「さあ、こちらですわ。」
2匹は広いバルコニーに案内された。テーブルと椅子が用意されている。
「さあ、おかけになって。もうしばらくお待ちください。」
数分後、2匹のメイドがワゴンを押しながら現れた。スカンダーも後に続く。
「お茶とケーキをお持ちしました。」
テーブルにはサンドイッチやケーキを乗せた台とティーセットが並べられた。スカンダーが紅茶を注ぐ。
「おいしそうだね!」
「ほんと!」
「喜んでくれて光栄ですわ。さあ、お茶にしましょう!」
「いただきます。」
3匹はサンドイッチやケーキを手に取った。
「このケーキ、とっても甘いね!」
「理沙ちゃん、サンドイッチもいいね!」
「稲荷山くん、私も紅茶を入れましょうか?」
「ありがとう、理沙ちゃん。」
「お砂糖は入れますか?」
「5さじぐらい頼むよ。甘い方がいいからね。」
3匹はティータイムを楽しんだ。
[newpage]
[chapter:初めての空の散歩]
「ごちそうさま!理沙ちゃん、次は何する?」
「ヘリコプターに乗りましょう。」
「え、ヘリコプターもあるの?」
「ありますわよ。こちらへどうぞ。」
家の裏には大きなガレージが建っていた。中には外車が3台、バイクとヘリコプターが1台ずつ格納されており、スカンダーが待機している。
「ヘアーラビットソンのバイクだ!かっこいい…」
稲荷山くんはバイクに見とれ、万梨阿ちゃんはスカンダーに質問した。
「ヘリコプターを操縦できるんですか?」
「ええ。免許を持っているんですよ。」
「スカンダーさんはすごいですね!うちにもいたらいいな…」
スカンダーはヘリコプターをガレージから出し、ドアを開けた。
「さあ、お乗りください。」
稲荷山兄妹は後部座席に乗り込み、シートベルトを締めた。
「楽しみだな…」
「どこまで行くんだろうね?」
前の座席に理沙ちゃん、操縦席にスカンダーが座る。
「それでは、離陸します。」
エンジン音が響き、プロペラが回り始めた。
「待ってました!」
ヘリコプターは空中に浮かんだ。
「すごいすごい!飛んでるよ!それでどこに行くんですか?」
「今日はどこにも行きません。この家の敷地だけです。」
「そうですか。わかりました。」
スカンダーは屋根の高さまで上昇させ、そこで一旦停止させた。
「さあ、しばらくここからの景色をお楽しみください。」
兄妹は周囲を眺めた。
「お兄ちゃん、見て!あそこに学校が見えるよ!」
「ぼくたちの家はあの辺だね。」
「ほら、駅も見えるよ!」
「本当だ!新幹線が入ってきたね。」
「あの塔はフード・キャッスルだね。」
「そしてあっちが大上スピードシティ!ここからでもよく見えるね!」
この位置から眺める景色は、学校からよりも圧倒的に遠くまで見える。
5分後、ヘリコプターはゆっくりと着陸した。
「稲荷山くん、万梨阿ちゃん、どうでした?」
「すごかった!ヘリコプターに乗れるなんて思ってもみなかったよ!」
「最高の眺めだった…あんな景色、初めてだよ!」
「ありがとうございます。それではしばらく部屋でおくつろぎください。」
2匹は冷房の効いた客室に戻り、ソファーに座った。
「アフタヌーン・ティーにヘリコプター…万梨阿はどっちが良かった?」
「ヘリコプターかな。生まれて初めて乗ったもん!」
「ぼくもヘリコプターだよ。でもアフタヌーン・ティーも良かったよね。」
「だね!なんか疲れたね…」
「昼寝しようか?」
「うん。」
稲荷山くんがソファーに寝転がると、万梨阿ちゃんが太鼓腹に頭を乗せてきた。
「い、いきなり何?」
「だってお兄ちゃんのお腹、気持ちいいもん!毛の生えたお餅みたいで最高!」
「その『毛の生えたお餅』って言い方、気持ち悪いからやめてよ…」
「いいじゃん!だってそんな感じなんだもん!」
「それにお腹が重いし暑い…」
「冷房効いてるし、いつも丸出しなんだからいいじゃん!」
「まあ、それもそうか…」
そのうち、2匹は眠りに落ちた。
[newpage]
[chapter:ディナータイムはごちそうだらけ]
数時間後、室内のスピーカーからスカンダーの声が流れた。
「夕食の用意ができました。1階の大広間へどうぞ。」
稲荷山兄妹は、その声で目覚めた。
「わーい、待ってました!夕食だー!」
「何が出るんだろうね?」
「きっと豪華な食事だよ!」
勇んで階段を降り、1階の大広間へ。2匹が寝ている間に理沙ちゃんの両親(父のフィリップ・ルナール、母の雪見 すみれ)も帰ってきた。
「ようこそ、紺助くんに万梨阿ちゃん。」
「お久しぶりです。」
テーブルにはワニ肉のステーキ、ピザ、ブイヤベース、天ぷら、稲荷寿司など豪華な料理が並んでいた。クリスマスパーティーの時よりは少ないが、それでも十分な量だ。
「おいしそう!」
「まるでパーティーだね!」
「これはすべてラブーシュが作ったんですわ。」
「へえ、これ全部1匹で?」
「そうですわ。彼は料理が趣味ですの。今日はかなり気合を入れて作っていましたわ。」
「そうなんだね。どれもこれもおいしそう…もう我慢できないよ!」
「見てるだけでお腹が空くね!」
「皆さん、席にどうぞ。」
稲荷山兄妹、理沙ちゃんと両親は席に着いた。
「稲荷山くん、万梨阿ちゃん、たくさん食べてくださいね。」
「もちろんです!」
「それでは、いただきます!」
夕食が始まった。兄妹は夢中で食べている。
「この稲荷寿司、おいしいです!油揚げと醤油の絶妙なハーモニー…」
「感想ありがとうございます。」
「こっちのピザももっちりしてて最高ですね!」
「ありがとうございます。これは自信作ですよ。」
ラブーシュが開いた皿の回収に来ると、2匹は感想を述べた。理沙ちゃんの両親は、それを見て嬉しそうに言う。
「感謝しながら食べるなんて感心だね。」
「いやあ、それほどでもありませんよ…」
その後も会話を楽しみながら食べた。お互いの家族や生活、楽しかった思い出…話の種は尽きない。
「理沙ちゃん、これまで行った中で一番良かった国は?」
「やっぱりフランスですわ。私のお父様やラブーシュの出身地ですから愛着がありますの。
その次はイタリアね。本場のオペラを聞いたり、パスタを食べたりして素敵な思い出になりましたわ。」
「いいなー、ぼくもそのうち行きたいな…」
約1時間後、すべての皿が空になった。料理の大部分は、稲荷山兄妹が食べた。
「稲荷山くん、万梨阿ちゃん、どうでした?」
「うーん、どの料理も本当においしかったよ!もう満腹!」
「おいしすぎて最高だった!ついつい食べ過ぎちゃったかも…」
2匹ともお腹がボールのように丸くなっている。
「皆様、次はデザートを用意します。」
「やったー、待ってました!」
「稲荷山くん、つい先程は満腹って言ってましたけど…」
「大丈夫!デザートは別腹だからまだまだ入るよ!」
「本当によく食べますわね。」
「大きくなるためさ!」
数分後、デザートが運ばれてきた。
品目はフルーツの盛り合わせ、ケーキ、アイスクリーム、ゼリー、水饅頭。飲み物はオレンジ、マンゴー、パイナップルなど10種類のフルーツジュースだ。
「それでは改めて、いただきます!」
稲荷山兄妹は、高級なデザートを堪能した。
「お兄ちゃん、水饅頭おいしいね!」
「日本の夏って感じだよね。フルーツもみずみずしいな!」
「ほんとだね![[rb:新湖 優香 > あらこ ゆうか]]ちゃんのフルーツパーラーみたい!」
新湖 優香ちゃんは、4年2組にいるコアラの女の子。自宅は駅の近くでフルーツパーラーを経営している。
「よく食べてくれて嬉しいよ。良い子たちだ!」
ラブーシュは微笑ましそうに2匹を見ている。
約40分後、デザートもすべて片付いた。
「ご、ごちそうさま…こんなに食べたのは初めてかも…」
稲荷山くんのお腹は風船のように膨らんでいた。シャツはほとんど意味をなしていない。
「あー、食べたー…お腹が狸みたい…」
「万梨阿、ずいぶん丸くなったな。動けるか?」
「なんとかね。でもお腹が重い…お兄ちゃんはよくこれで動けるね。」
重くなったお腹に苦労しながら客室に戻り、ソファーに寝転がる2匹。
「ゲエエエエ~ップ!ああ、食べた食べた…」
特大のげっぷを出す稲荷山くん。今まで我慢していた分を一気に解き放ったため、かなりの大きさと長さだ。
「クリスマスパーティーの時以上に食べた気がするよ…」
食べ過ぎた2匹は、食休みを取った。
「お腹…苦しい…」
「パンクしそう…」
「しばらく何もいらないよ…」
「服が…きつい…」
話し合ううちに眠気が押し寄せ、2匹は眠りについた。
[newpage]
[chapter:優雅なお風呂の時間]
数十分後、室内のスピーカーから声が流れた。
「お風呂の準備ができました。」
それで目覚めた稲荷山くんは、万梨阿ちゃんを起こした。消化が進んだため、お腹は元に戻っている。
「万梨阿、お風呂だ!」
「どんな感じなんだろうね?さっき見なかったから気になる!」
「さあ、着替えの用意だ。」
2匹はリュックサックからパジャマや下着を取り出し、メイドに案内されて風呂に向かった。
「こちらです。」
そこはかなり広い脱衣所だった。服を脱いでタオルを持ち、浴室へ。
「これがお風呂だって!?」
「外国みたい!」
浴室も一般的な家庭とかなり異なっていた。浴槽のサイズは通常の3倍で、レンガ模様のタイルが貼られている。床も同じタイルだ。
天井には星空と惑星、壁にはベニスの風景が描かれている。シャワーは2つ用意されている。
2匹は体を洗い、浴槽に入った。
「なんだかお姫様になったみたい…」
「じゃあぼくは王子様?」
「お兄ちゃんは…召使い!後で背中洗ってね!」
「えー?まあいいか。」
浴槽から上がると、稲荷山くんは万梨阿ちゃんの背中を洗った。
「お兄ちゃん、しっかりやってね!」
「わかった。でも後でぼくの背中も洗ってよ!」
「もちろん!お兄ちゃんのためならなんでもするよ!」
その通り、彼女は兄の背中を洗った。
「やっぱりお兄ちゃんの背中は大きいね。」
「相撲部所属だからな。」
背中以外はすべて自分で洗い、シャワーで泡を流すとまた浴槽に入った。
「お兄ちゃん、ずっと入っていたいね…」
「そろそろ上がるよ。」
「私はもうちょっと入りたいな。お姫様気分を味わいたいの!」
「万梨阿、明日も入れるよ。」
「まあ、そうだね。それじゃ上がろう!」
タオルである程度体を拭いてから外に出ると、バスタオルが2枚用意されていた。
「ふっかふかのバスタオルだな…」
「お兄ちゃんのお腹とどっちが気持ちいいかな?」
「さ、さあ…」
[newpage]
[chapter:もうすぐ寝る時間]
全身ドライヤーで毛皮を乾かし、パジャマに着替えて廊下へ。そこでは理沙ちゃんが待っていた。
「稲荷山くん、万梨阿ちゃん、お風呂はいかがでしたか?」
「お城みたいで最高だったよ!壁や天井に絵が描いてあるなんて思わなかった!」
「お姫様の気分になれて嬉しいな!」
「ありがとうございます。あの絵はイタリアの芸術家に描いてもらいましたの。」
「理沙ちゃんの家族はやっぱりすごいね!」
「さあ、冷蔵庫から出し立てのココナッツミルクを用意しましたわ。」
「ありがとう。気が利くね。」
2匹はココナッツミルクを一気飲みした。
「あー、おいしかった…」
「喜んでくれてありがとうございます。そろそろ寝る時間ですわね。」
時計は21時を指していた。
「ねえ、理沙ちゃんはまだ寝ないの?」
「食器の後片付けやお風呂があるから、まだ起きていますわ。」
「メイドさんがやってくれるんじゃないの!?」
「私は普段から家の手伝いをしていますの。自分でできる事は手伝っていますわ。」
「理沙ちゃんは偉いね!」
「明日はもっと楽しいことが待っていますわよ。それではおやすみなさい。」
「おやすみ。」
稲荷山兄妹は歯磨きとトイレを済ませると、柔らかなベッドに寝転んだ。
「お兄ちゃん、楽しい1日だったね。」
「そうだな。あのお風呂なら毎日入りたいよ。」
「明日は何があるんだろうね?」
「さあ…ラブーシュさんがフランス料理のフルコースをごちそうしてくれるとか?」
「だといいね。お兄ちゃん、おやすみ。」
「万梨阿、おやすみ。」
[newpage]
[chapter:すがすがしい朝]
2匹は翌朝7時に目覚めた。カーテンを開けると、抜けるような青空が広がっていた。
「お兄ちゃん、今日は何があるんだろうね?」
「それよりまずは朝ごはん!もうお腹ペコペコだよ!」
「昨日あんなに食べたのが嘘みたいだね。」
2匹は朝の支度を済ませ、1階に降りた。
大広間には雪見一家が揃っていた。
「おはようございます。朝食をどうぞ。」
テーブルには豪華な朝食が用意されている。サラダにスープ、スクランブルエッグ、フレンチトースト、スタンドに入ったゆで卵、鶏肉製のハムやソーセージ、グレープゼリー。飲み物は豆乳とオレンジジュースだ。
「わあ、豪華!」
「おいしそう!」
稲荷山家の朝食は和食がメイン。このような朝食は久々だ。
「いただきまーす!」
「音楽をお願いしますわ。」
理沙ちゃんはアライグマのメイドに指示を出し、席に着いた。メイドはバイオリンで優雅なクラシック音楽を演奏する。
「この雰囲気、どうでしょうか?」
「最高だよ!」
「お城かホテルにいるみたい!」
大広間の窓からは朝日が差し込み、室内には美しい音楽が流れ、高級な食器で食事をする…庶民はまず体験しないことだ。
「理沙ちゃん、いつもこんなに豪華なのを食べてるの?」
「もちろんですわ。和食の日もありますわよ。」
「へえ、いいなあ…」
[newpage]
[chapter:お出かけの日]
朝食後。
「ねえ、今日は何をするの?」
「ここに行きますわ。このために予約しましたのよ。」
理沙ちゃんは小さな紙を出した。
「なんだろう?」
よく見ると、それはミュージカル「ライオン・エンペラー」のチケットだった。
「わあ、やった!」
「ミュージカルも初めてなの!楽しみ!」
「開演は午後の1時ですから、10時半に家を出ますわ。それまで庭で遊びません?」
「うん、もちろん!」
稲荷山兄妹は歯磨きを済ませると、庭に出た。理沙ちゃんも後に続く。
それから2時間ほど、3匹は庭で追いかけっこやかくれんぼを楽しんだ。
稲荷山くんは太っているため、追いかけっこでは不利になる。それでも楽しい時を過ごした。
「理沙ちゃんは意外と活発なんだね!」
「こんなに遊んだのは久しぶりですの。昔は両親やスカンダーとよく遊びましたが、最近はめっきり…」
「そうなんだ。遊べて良かったね!ぼくもこんなに広い庭で遊んだのは初めてだよ。」
「お兄ちゃん、楽しかったね!」
その時、理沙ちゃんの両親が呼びに来た。
「そろそろ出かける時間よ。」
「はーい、わかりました!何匹で出かけますか?」
「子供3匹と私たちだから、合計5匹だ。」
「スカンダーさんとかは行かないんですか?」
「みんな仕事があるからね。」
一行はスカンダーの運転する車で大上駅へ。そこから電車に乗り、1時間ほどして東京都のとある駅に到着した。
「あと1時間で開演だから、それまで食事ね。」
「お母様、どこでですの?」
「そこまで時間がないから、パンにしましょう。」
一行は駅ビル内のパン屋へ。稲荷山兄妹は値札を見て驚いた。
「このパン、1個で450円もするんだ!」
「普通のパン4個分の値段だね…」
「気にしないで好きなパンを1個ずつ選んでいいですわよ。」
「わかった。どれにしよう…」
会計を終えると、イートインスペースでパンを食べた。稲荷山くんはチーズカンパーニュ、万梨阿ちゃんはブリオッシュ、理沙ちゃんはベーコンエピ、フィリップはサンドイッチのセット、すみれはバゲットサンド。
「稲荷山くん、万梨阿ちゃん、おいしいですか?」
「うん。初めて食べるパンだからね。」
「ブリオッシュって最高!」
食べ終わった一行は10分ほどモノレールに乗り、目的の駅に到着。そこから劇場に向かって歩き出した。
「さあ、こちらですわよ。」
「わあ、すごい!」
「大きな劇場だね!」
劇場の壁には「ライオン・エンペラー」の大型ポスターが貼られている。
中に入り、予約席へ。時刻は12時半だ。
「ここに連れてきてくださってありがとうございます。」
「稲荷山くんはしっかりお礼が言えて、偉いですわね。」
「いやあ、それほどでも…」
「稲荷山くん、可愛いですわ!」
理沙ちゃんは彼のお腹をつついた。
[newpage]
[chapter:初めてのミュージカル鑑賞]
その時、聞き慣れた声が聞こえた。
「あれ、稲荷山くんたちだ!」
振り向くと、後列に栗田くんと両親(父の[[rb:純一 > じゅんいち]]と母の[[rb:幸江 > ゆきえ]])が座っている。
「わっ、栗田くんも来てる!」
「夏休みだから、お父さんが連れてってくれたんだ。ここで会うなんて偶然だね!」
「ぼくは昨日から理沙ちゃんの家にお泊りしてるんだ。」
「理沙ちゃんの家?うらやましい!ぼくも泊まりたかったな…」
話に花を咲かせているとブザーが鳴り、劇場内が暗くなった。
「見て、始まるよ!」
舞台に注目する稲荷山くんたち。幕が上がり、物語が始まった。
「ライオン・エンペラー」はアフリカのライオン帝国を舞台にしたミュージカル。同名のアメリカ製アニメ映画が原作だ。
観客たちは、目の前に広がる物語に魅了された。
約3時間後、ミュージカルが終わった。
「栗田くん、楽しかったね!」
「まさか稲荷山くんに会えるなんて思ってもみなかったよ!」
「お兄ちゃん、どのシーンもすごかったね!」
「ああ。オープニングとかバトルのシーンとか感動したよ!」
「私はこれまで、何作ものミュージカルを鑑賞しましたわ。『DOGS』『コアラズ・ライン』『美女と竜』…
でもやっぱり、これが一番好きですの。」
2組の家族は同じモノレールに乗り、それから電車に乗り換えた。
「あー、疲れた…」
稲荷山くんは、車内で眠りに落ちた。
「着きましたわよ。」
目を覚ますと、大上駅に着いていた。
電車を降り、駅の西口へ。空は夕焼けに近づいている。
「さあ、これから夕食ですわよ。」
「どこに行く?フード・キャッスル?」
「いいえ、大上グランドホテルの中華レストランに行きますのよ。」
「それじゃここでお別れだね。稲荷山くん、またね!」
「栗田くん、また会おうね!」
栗田一家はウルフデパートに向かった。行き先はレストラン街だろう。
「さあ、私たちはグランドホテルへ!」
[newpage]
[chapter:夜も楽しみがいっぱい!]
稲荷山くんたちはウルフデパートの横を通り、大上グランドホテルへ。
「ここですわよ。フルコースを予約しておりますの。」
「理沙ちゃん、ありがとう!楽しみだな…」
中に入って席に着くと、エビやキノコなどを使った前菜が運ばれてきた。
「それでは、いただきます。」
普段は元気な稲荷山くんも、控えめに挨拶をした。
フルコースのため、次々と料理が運ばれてくる。北京ダック、点心、チャーハン…
最後のマンゴープリンを食べ終わると、稲荷山くんはお腹をなでた。
「あー、おいしかった!理沙ちゃん、こんなおいしい中華料理を食べたのは初めてだよ!」
「マンゴープリンおいしかった!」
「ありがとうございます。それではそろそろ帰りましょう。」
フィリップが会計を済ませると、5匹はホテルを出た。
時刻は19時。空は暗くなり、ビルの窓やネオンが輝いていた。
(昨日は食べ過ぎて苦しかったけど、今日は程よい満腹感だ。幸せだなあ…)
ホテルの前にはスカンダーの車が止まっていた。フィリップが連絡をしたようだ。
家に戻ると、スカンダーが言った。
「皆様が出掛けている間に、花火を買っておきました。」
「わあ、花火!楽しみだな…」
「さあ、庭へどうぞ。準備ができていますよ。」
庭に行くと、水入りのバケツ数個と火のついたろうそく、打ち上げ花火を立てる台が用意されていた。
「さあ、まずは線香花火から!」
理沙ちゃんは線香花火に火をつけた。パチパチと火花が飛び散る。
「稲荷山くんと万梨阿ちゃんもどうぞ。」
2匹も続いた。
「お兄ちゃん、きれいだね…」
「どっちが長く燃えるかな?」
その次はスパークラー花火に入った。稲荷山くんは両手に1本ずつ持ち、円を描くように振り回す。
「理沙ちゃん、きれいでしょ?」
「ええ、そうね。」
それから、打ち上げ花火が始まった。フィリップが筒を台に立て、導火線に点火する。
「皆さん、離れてください。」
10秒ほどして花火が噴き出した。まるで暗闇に花が咲いたようだ。
「すごいな、こんなの初めてだよ…」
稲荷山家では打ち上げ花火を買った事がなかったため、2匹は興奮を覚えながら見た。
その後もロケット花火やヘビ花火を楽しみ、最後は残っていた線香花火を使い切った。
「万梨阿、楽しかったな。」
「あんなにたくさんの花火をしたのは初めてだね!」
その時、家の中からメイドが現れた。
「お風呂の準備ができました。」
「わーい!お姫様タイムだー!」
万梨阿ちゃんは喜んで家に入った。
「よし、ぼくも行こう!」
稲荷山くんも後を追う。
昨日と同じように風呂を楽しみ、パジャマに着替えて上がると、理沙ちゃんがよく冷えたコーヒー豆乳を持って現れた。
「今日もありがとう!」
2匹は一気飲みした。
「ほんとにサービス満点だね。理沙ちゃんがいろいろしてくれて嬉しいよ!」
「感謝してくださってありがとうございます。それではおやすみなさい。」
「おやすみ、理沙ちゃん。」
歯磨きとトイレを済ませ、ベッドへ。
「明日はもう帰るのか…」
「大きなお風呂も、ふかふかのベッドも、当分は体験できないね…」
「明日の午前中は、何をしようか?」
「それは明日になったら考えよう。」
2匹は眠りについた。
[newpage]
[chapter:みんなで化け比べ]
翌朝。朝食からしばらく経つと、理沙ちゃんが提案した。
「ねえ、みんなで化け比べしない?」
「化け比べ?いいよ!ぼくはあんまり得意じゃないけど…」
化け比べとは、狐や狸、カワウソなどがする遊びだ。これらの種族は、全身の細胞や着ている物を自由に変質できる能力を持っている。
「ねえ、まずは何に化けようか?」
「そうね…ティーポットに化けましょう。」
3匹は精神を集中させ、姿をティーポットに変えた。
稲荷山くんは取っ手の部分がしっぽのまま。万梨阿ちゃんは耳が生えたまま。
一方、理沙ちゃんは豪華な装飾が施されたティーポットに化けた。耳やしっぽは生えていない。
「理沙ちゃんのティーポット、素敵な模様ね!」
「稲荷山くんのしっぽがあるティーポットも可愛いですわよ。」
「ありがとう。ぼくも上手に化けたいな…」
「さあ、今度は楽器に化けてみましょう。」
思い思いの楽器を想像して、また化ける。
稲荷山くんはしっぽの生えたリコーダー、万梨阿ちゃんは耳が生えたバイオリン、理沙ちゃんは耳もしっぽもないパイプオルガンになった。
「理沙ちゃん、上手だね!どう見ても本物だよ!」
その後も1時間ほど化け比べが続き、3匹とも様々な物に化けた。
特に理沙ちゃんは上手だった。クラシックカー、ダイヤの指輪、ガラスの彫刻…どれも高級感のある物だ。
「やっぱり高級品を見慣れているとそうなるんだ!ぼくもセレブに生まれたかったな…」
「私は時々、庶民の生活を体験したくなりますの。お父様もお母様も豪邸暮らしですから…」
「そうか。じゃあそのうちぼくの家においでよ。」
「時間がありましたらね。」
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[chapter:2匹だけのひととき]
「あー、疲れた…」
化けると体力を使うため、万梨阿ちゃんは眠ってしまった。そのため、稲荷山くんは理沙ちゃんと落ち着いて話せた。
「ねえ、8月には何をするの?」
「毎年8月はヨーロッパ旅行に行きますわ。いろいろな国を巡りますけど、パリとロンドンには必ず立ち寄りますの。」
「いいなあ。その2ヶ所に行く理由は?」
「パリには私のお父様とラブーシュの実家、ロンドンにはスカンダーの実家がありますのよ。」
「そうなんだ。お父さんの実家はどんな所?」
「ここよりも大きいお城のような家ですの。ヘリコプターの他に潜水艦も持っていますわ。」
「すごいな…おじいちゃんとおばあちゃんは優しい?」
「ええ、おじい様は私を可愛がってくれますのよ。
おばあ様は私が小さいときに亡くなりましたわ。でも毛皮提供書にサインをしていたから、その後毛皮がコートに加工されて売られて行きましたの。」
「そうなんだ。今はどんなケモノが着ているんだろうね?」
「きっと象やサイなど、毛皮のない種族でしょうね。毛皮のある種族にコートは必要ありませんから。」
その時、スカンダーが呼びにきた。
「昼食の準備ができました。庭へどうぞ。」
「万梨阿、起きろ!お昼ご飯だ!庭で食べるみたいだ。」
「庭で?」
「きっとあれですわよ。」
「何だろう?とにかく行ってみよう!」
3匹は庭へ出た。
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[chapter:楽しいランチタイム]
庭にはテーブルと椅子が並び、大型のバーベキューコンロも用意されていた。雪見夫妻、スカンダー、ラブーシュ、メイドたちが最終準備をしている。
「やった!バーベキューだ!」
用意を終わらせたラブーシュが言った。
「材料はたくさん用意してあります。鶏肉、ワニ肉、カエル肉、ロブスター、アワビやサザエもありますよ。稲荷寿司や餃子も作りました。」
「わーい!たくさん食べるぞ!」
「ロブスターにアワビ!すごいね!」
稲荷山兄妹は喜んでテーブルに走った。
「頑張って用意した甲斐があったよ…」
雪見夫妻は微笑みを浮かべた。
「それでは、いただきまーす!」
一同は高級食材のバーベキューを楽しんだ。
「ワニの足、おいしいね!」
「万梨阿、ロブスターもうまいぞ!」
「稲荷山くん、アワビもどうぞ。肉厚ですわよ。」
「理沙ちゃん、ありがとう。アワビなんて初めてだよ!
ああ、こんな生活がずっと続けばいいのにな…」
「でもあと1時間ぐらいで帰る時間ですわよ。」
「そうか…残り少ない時間を楽しもう。」
「そうだね、お兄ちゃん!」
デザートは特盛マンゴーかき氷と10種類のフルーツジュース。
残さず食べた稲荷山くんは、お腹を軽く叩いた。
「あー、満腹だ!今日もお腹いっぱい食べちゃった!」
万梨阿ちゃんも膨れたお腹をなでた。
「私、ちょっと太ったかも?理沙ちゃんはよく太らないね。」
「そこまで食べませんし、しっかりと運動してますからね。」
「ぼくも相撲部で鍛えてるから、ただ太ってるだけじゃなくて、ちゃんと筋肉もついてるんだ。目立たないかもしれないけど…」
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[chapter:お家に帰ろう]
2匹が部屋に戻ると、ベッドの上にこの2日間で着た服が置かれていた。メイドが洗濯した物だ。
それをリュックサックにしまい、玄関へ向かう。
「万梨阿、楽しかったな。」
「あと1週間はいたかったな。できれば夏休み中ずっとここに…」
「いや、そんなに滞在したらさすがに迷惑だよ!」
「それもそうだね。」
「帰ったらお母さんに話をしようね。」
「だね!」
2匹は玄関で靴を履き、お礼を言った。
「皆さん、どうもありがとうございました。食事もサービスも最高でした。」
「おかげさまで楽しいお泊まりができました。」
理沙ちゃんたちもお礼を返す。
「喜んでくださって嬉しいですわ。また来てくださるのをお待ちしております。」
「稲荷山くん、万梨阿ちゃん、ありがとうございました!」
雪見家の住民に見送られ、家を出る2匹。
「お兄ちゃん、楽しい3日間だったね!」
「思い出がいっぱい作れたな、万梨阿。」
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[chapter:エピローグ]
会話を楽しむうち、家に着いた。
「お母さん、ただいま!」
「お帰りなさい。楽しかった?」
「とっても楽しかったよ!」
「理沙ちゃんと一緒なら、宿題はかどったでしょ?」
「宿題…しまった、すっかり忘れてた!」
「私も全然やってない!」
「あらまあ、仕方ないわね…」
「じゃあ今からやるか。お母さん、何があったかは夕食の時に話すね!」
稲荷山兄妹は宿題に取り掛かった。
[chapter:おしまい]