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━歌の王国メソング ━
アルベルト
「ここが――音の国、メソングか」
目の前に広がるのは、風が吹けば楽器のように音を奏でる街並み。
石畳の道路には音階を模した模様が並び、歩くたびに「ポン」「ティン」と控えめに音が鳴る。
遠くからは合奏のような音色が風に乗って流れてくる。
カラスト(目を輝かせて)
「すごい…!空気が歌ってるみたい!」
マリーナ(感慨深く)
「懐かしいわ…ここで何度も歌ったの。芸術が生きる国よ、ここは」
シシオ(少し気圧されて)
「俺みたいな無骨な奴が来ていいのかって気になるが……あの塔は何だ?」
遠くに見えるのは、**「音の塔(トゥール・オルソニア)」**と呼ばれる、
音の迷宮へと繋がる中心施設。
そこに王子・レフィアスが閉じこもっているという。
グランジャス
「この国が王を継げず止まってる理由…見に行こうか。お前ら、準備はいいな?」
カリン
「もちろんよ、ご主人様♡あんなに不安そうな王子様、放っておけないわ」
メルディス(静かに頷いて)
「“音”で閉ざした心なら、“音”で開いてあげましょう」
カラスト(見上げながら)
「うわぁ……大きな鐘だね。音が響いたら、空まで届きそうだよ」
グランジャス(微笑んで)
「ああ、**“平和の鐘”**って呼ばれてる。この国のシンボルさ。
戦や災いを鎮めたって言い伝えもあるし――結婚式なんかでもよく鳴らされる。
“心と心をつなぐ音”ってわけだ」
鐘は、**白銀の金属と透明な音石(おんせき)**でできており、
日差しを受けてきらきらと反射している。
塔の天辺から吊られたその鐘は、
誰かの「本音」が届いたときにだけ、自然と鳴ると言われている。
マリーナ(そっと目を閉じて)
「“誰かの本音”…それが鍵なのね。音の国らしいわ」
シーフェ(腕を組んで)
「ロジックで鳴らす鐘じゃないってことね。面倒くさいけど、ロマンはあるわ」
アルベルト
「ってことは、王子の心を開かせない限り、鳴らせないってことか…?」
グランジャス(うなずいて)
「そうだ。レフィアス王子が自分自身の殻を破り、“本音”で語らなきゃ…この国は進めねぇ」
鐘の音が、まだ遠く眠っているように静かに揺れる。
風が吹き抜けるたび、かすかに「キィン…」という微かな音が聞こえた。
シシオ(眉をひそめながら鐘を見上げて)
「おい…平和の鐘が縄で縛られてるぞ。あれじゃ鳴るもんも鳴らせねぇだろ」
鐘の上部、**音を揺らす振り子(クラッパー)部分が太い縄でぎっちりと固定されている。
誰かが意図的に――「鐘が鳴らないように」**しているのだ。
アルベルト(険しい表情)
「…まさか、王子自身が?」
グランジャス(腕を組みながら考え込む)
「可能性はあるな。王位継承の試練を拒んでるとしたら、その象徴を封じるのは理にかなってる。
それか……**何かの“恐怖”や“拒絶の意志”**か」
ティミス(静かに)
「鐘の音を怖がってる人がいるのね。きっと、それを聞きたくない理由があるんだわ…」
城門に立つメソング国の兵士たちは、異国の旅人たちに一瞬警戒の視線を向けるが、
使者の少年の案内と、グランジャスの名を告げると、すぐに敬礼し扉を開いた。
兵士A「お通しします。王命により、謁見の間へ――」
重厚な音の門がゆっくりと開かれる。
中は荘厳な装飾で満ちていたが、特徴的なのは、壁や柱に楽器が彫刻されていることだ。
それはこの国が「音楽と調和」を何より重んじてきた証だろう。
一行は赤絨毯の上を歩み、奥の玉座に向かう。
だが――そこに王は座っていない。
玉座の隣に立っていたのは、年老いた家臣長。
家臣長「ようこそ、世直しの剣士アルベルト殿――そしてドルセニア男爵グランジャス殿。
陛下は体調を崩され、現在は御子息であるレフィアス王子に政務を任せておられます。
ですが……王子は今、部屋に引きこもり、誰にも会おうとされませぬ」
アルベルト「ああ、それで鐘も封じられてたのか」
グランジャス(ひとつ頷き)
「つまり俺たちは、国を背負うはずの王子を――まず、“外の世界”に連れ出さなきゃいけないわけだな」
家臣長(静かにうなずきながら)
「どうか、お願いします。王子は心優しき者……
かつて鐘を鳴らした時、“ある出来事”が起きたのです。
その日から、音に怯え、人に会うことも、笑うことすらなくなったのです」
マリーナ「音楽の国で、音を恐れる王子……皮肉ね」
ティミス「でも、そんな子だからこそ……誰かがそばに行ってあげるべきなのよ」
家臣長は一枚の鍵を差し出す。
家臣長「この鍵で、王子の部屋の前までは通れます。ただし……入室はできませぬ。
扉の前で、どうか、想いを届けてやってはもらえませんか?」
アルベルト「ホルスター、王子のことは――頼む。お前に任せた」
王子の部屋の前に立つ、優しくて大きな手。
ホルスター・パイランは一歩進み、扉にそっと触れた。
ホルスター「……私の名はホルスター・パイラン。
修道院に隣接する孤児院で、子どもたちを育てている者です。
あなたに話したいことがあります。……聞いてくれますか?」
扉の向こうからは返事がない。だが、確かに気配は感じる。
誰かが、その扉のすぐ向こうで耳を澄ませている。
ホルスター「私も昔、心を閉ざしていた時期がありました。
誰にも話したくなくて、何も信じたくなかった。
でもね――誰かが、私の扉の前に立ってくれた。何度も、何度も。
そのたびに、心が少しずつ動いたのです」
沈黙。
けれど、扉の下から音もなく一枚の紙が差し出された。
そこには震えた文字で、こう書かれていた。
「……鐘が、壊したんだ。僕のせいで」
ホルスター(その紙をそっと拾い)
「壊れてしまったのは、鐘じゃなくて――あなたの“心”でしょう?
大丈夫。それは、また鳴らせます。あなたの音は、まだ止まっていないわ」
扉の内側。王子の肩が、震える。
涙がぽつりと床に落ちた音が、静かに響く。
ホルスター「私には、守るべき命があります。あなたにも、あるでしょう?
音が怖くても、少しずつ、一緒に鳴らしていきましょうよ。
……扉の鍵は、あなたが持っていていい。
でも、その代わり――声を、聞かせてくれませんか?」
王子の小さな声が、初めて返ってきた。
???「……名前は、レフィアス。僕の名は、レフィアスです」
グランジャス「俺はドルセニアの男爵、グランジャス。
同じ“権力を持つ者”として、お前の気持ちは――よくわかる」
王子・レフィアスはホルスターの後ろからそっと顔を出し、グランジャスを見つめる。
その瞳には、長い間抱えてきた不安と、揺れ始めた希望が同居していた。
グランジャス「プレッシャーに押し潰されそうになる夜もあった。
失敗した時、民にどう顔向けすればいいか分からなくなったこともある。
けどな――そんな時に、俺を支えてくれたのは“他人の声”だった。
家族でも、友でも、部下でもない。……他人の、まっすぐな声だ」
レフィアス「……それで、立ち直れたんですか?」
グランジャス(少し笑い)
「立ち直っちゃいねぇ。今も迷ってばかりだ。
だが、それでも歩けてる。それで十分だと、俺は思う。
だからお前も、自分を“失敗作”なんて思うな。
王子ってのはな――“完璧”より“人間”の方がよっぽど信用されるもんだ」
カリン「ご主人様は私があれだけ求愛してるのに、全然構ってくれなくて……。
だからね、前に“お仕置き”してやったこともあるのよ♡」
グランジャス(苦笑しながら)
「……それ、失敗っていうより、お前の趣味じゃねぇか?」
メルディス(静かに目を伏せながら)
「私は……以前は“ピグニアード”という粗暴な伯爵の元にいました。
失敗ばかりで、何をしても叱られて、時には……ね」
(しばし沈黙)
「でも、今は違う。あの伯爵が倒されて……この、ダーリ――じゃなくて、“ご主人様”に出会えて、私はようやく……幸せだって思えるの」
(その言葉に、一同が一瞬しんと静まり返る)
グランジャス(少し照れながらも、真剣な眼差しで)
「お前ら……。まったく、俺の周りは強い女ばっかりだ。
でもな、俺はその全部に助けられてる。
失敗だって、無駄じゃなかったんだよな。こうして“今”があるんだからさ」
ホルスター(微笑みながら)
「失敗のない人生なんてないわ。でも、誰と歩くかで全部が変わる。私たち、そうでしょ?」
ホルスターが静かにうなずき、レフィアスの背をそっと押す。
ホルスター「あなたは一人じゃない。私たちも一緒よ」
レフィアス(小さく、でもはっきりと)
「……ありがとう。僕、まだ怖いけど……でも、ちょっとだけ進んでみたい」
その言葉に、部屋の空気が一気に変わった。
まるで長い冬を越え、春の風が吹き込んだかのように。
グランジャス「よし、なら次は“迷宮”ってやつだな。
鐘を鳴らす旅――一緒に行こうぜ、レフィアス王子」
シシオ 王子は何歳だ?
城の侍従「お答えいたします。王子レフィアス様は――十八歳におなりです。」
シシオ「十八か……まだ若いな。
けど、顔つきは甘えより責任が勝ってる。たいしたもんだ。」
グランジャス「あの年で王位継承の重圧か。そりゃ引きこもりたくもなるわな……。
だが――そんな王子を支えるのが俺たちの役目だろ?」
アルベルト「ああ。立ち止まる理由も、前に進む理由も、俺たちで教えてやればいいさ。」
王子レフィアス(控えめに微笑みながら)
「……皆さんの言葉に、少しだけ勇気が湧きました。
僕も……“平和の鐘”を鳴らしたい。その意味を、知るために。」
グランジャス「たしか“音の迷宮”じゃ魔法が封じられるんだったな。
カラスト、お前の得意分野は封じられるってわけだ。」
カラスト「ええええ⁉ それ本当!? じゃあ僕、ただの器用な鳥じゃん!」
シーフェ「でも、逆に言えば地力が試されるってことでしょ?
頭と身体を駆使して突破するの、燃えるわね。」
王子レフィアス「僕も、共に参ります……自分の足で、この国の“象徴”に触れてみたいんです。」
アルベルト「それは当たり前だ。
――これはお前さんの“試練”だからな。」
一瞬の沈黙――。
王子レフィアスは目を伏せていたが、ふと顔を上げ、
決意を宿した瞳でアルベルトたちを見つめる。
レフィアス「……ありがとうございます。
逃げてばかりじゃ、国も、僕自身も変えられないから。」
グランジャス「そうこなくっちゃな。
王子サマの尻を叩くのも、男爵の役目ってな。」
カリン「ご主人様♡またそうやって張りきって……ふふっ、素敵よ♪」
ホルスター「道は険しいけど、仲間がいるわ。何より強い味方よ。」
マリーナ「迷宮の中でも歌が届けばいいんだけど……まぁ、静かにしとくわね♡」
「音の迷宮」 へと足を踏み入れた。
中は薄暗く、空気がひんやりと湿っており、
天井は低く、壁は音を吸い込むように静かだった。
カラスト(肩をすぼめながら)
「狭いなぁ……僕、羽があるから引っかかっちゃうよ……」
シシオ(低い音を立てて)
「ゴンッ! いってぇ……頭打った……」
(額をさすりながら)
「誰だよこの通路設計したの、デカブツ泣かせにもほどがあるぜ」
王子(少し笑いながら)
「ハハハ……皆さん同じ反応しますよ。僕も最初そうでした」
グランジャス(天井を見上げながら)
「こりゃあ、最初の試練ってやつだな。“身を低くして進め”って意味かもな」
ティミス(前屈みで)
「姿勢を低くしないと通れないってことね……それって“謙虚さ”の象徴かも」
マリーナ(鼻歌まじりに)
「ふふ、いいじゃない、たまにはみんなでしゃがんで進む旅路も……♪」
カリン(やや不満気に)
「でもここじゃ尾も髪も擦れちゃうし、私の美しい毛並みが台無しじゃない!」
メルディス(肩をすぼめながら)
「羽も引っかかるし……あーもう、ダーリン、先導して〜」
グランジャス
「さて……“音”がカギか。
静かな場所だからこそ、音をどう使うかが重要になるかもな」
壁面は鈍い灰色の石でできており、ところどころに不規則な光沢が走っている。まるで魔力を吸い込んでいくような感覚に包まれる空間だ。
迷宮・第一の間——魔封の広間
シシオ(手のひらで壁を軽く叩きながら)
「……この壁、魔封石でできてるな。こりゃ魔法が使えねぇわけだ」
カラスト(指先に魔力を込めようとしながら)
「ほんとだ……全然反応しない……なんか不安になるよ」
カリン(声を上げて)
「ちょっと、ご主人様っ! 今、変なところ触りましたよね!?」
グランジャス(困ったように汗をかきつつ)
「ご、ごめんて! 狭いからちょっと身体が当たっちまったんだよ……わざとじゃないって!」
メルディス(ムッとしつつも呆れ気味に)
「……まぁ、あの通路幅じゃ無理もないけど……変に意識して触らないでくださいよダーリン」
ティミス(苦笑しながら)
「……ふふ、なんだかんだでいつもの調子ね。でも、気をつけて。魔法が使えないなら、接近戦が頼りになるわ」
アルベルト(剣を抜きながら)
「ああ。迷宮での戦闘は体力勝負になるな。油断は禁物だぜ」
迷宮の先に続く道は二手に分かれており、左の道からは風に揺れる鈴のような音が微かに聞こえる。
グランジャス(静かに耳を澄ませながら)
「……音が鍵になる迷宮、か。
“音無き者、道を閉ざされる”って刻まれてたな……行ってみよう。まずは音のする方だ」
迷宮・第二の間――響奏の広場
石壁に囲まれたその空間はドーム状に広がり、天井の高い構造になっていた。
壁や床、柱のあちこちには古びた楽器が埋め込まれており、触れると微かに共鳴するような音が響く。
アルベルト(辺りを見回しながら)
「広いな……今までの狭さが嘘みたいだ」
シシオ(壁に手をつき、床を蹴ってみて)
「おい、グランジャス。ここは銃弾が反射して戻ってくる。撃てば自分に当たるぞ。剣の方だけ使え」
グランジャス(肩をすくめつつ苦笑い)
「……厄介だな。俺の十八番が封じられるとは。でも、まぁ……剣術はパイランに仕込まれたからな。やれないことはねぇ」
カラスト(辺りを歩きながら、埋め込まれたハープに触れる)
「うわ……至るところに楽器があるよ。これ……何か意味あるのかな? ハープ、太鼓、笛、鐘……音が鍵になるって言ってたし」
王子(少し不安そうに)
「ここの楽器、一定の順番で演奏しないと……音の呪いが発動するって聞いたことがある……」
ティミス(きょろきょろしながら)
「つまり、間違った音を鳴らしたら罠ってことね。こういうの、嫌な予感がするわ」
マリーナ(真剣な表情で壁に耳を当て)
「何か……響きが重なるポイントがある。きっと、それが正しい“旋律”になる場所よ」
グランジャス(剣を肩に担ぎつつ)
「音を使って道を開くってわけか……カラスト、マリーナ。お前らが鍵になるな」
カラスト(頷きながら)
「任せて! 僕、こういう音の魔法は得意なんだ」
マリーナ(軽く笑って)
「美しい音を紡げば、この迷宮だって応えてくれるはずよ」
一行は慎重に、迷宮に並ぶ楽器を順番に奏でていく。
石壁に埋め込まれた古代の楽器たちが、静かにその時を待っていた。
カラスト(譜面のかけらを手にして)
「この譜面……“風が鳴りて、水が踊り、火が踊れば、地は静まる”……って書いてある。順番を表してるのかな?」
マリーナ(頷いて)
「“風”はたぶん……笛ね。“水”はハープかも。“火”は太鼓? “地”は鐘?」
アルベルト(腕を組んで)
「その順番でいくと……笛、ハープ、太鼓、鐘だな。よし、やってみようぜ」
【順番に演奏】
1. カラストが笛に手を伸ばす。
細く澄んだ音が広場に響く。風が流れるような軽やかな音色だ。
2. マリーナがハープの弦を弾く。
水滴が水面に落ちるような、透明感のある優しい音が空間に広がる。
3. シシオが太鼓を叩く。
ドン! と深い音が響き、地面がわずかに揺れた。
4. グランジャスが鐘を鳴らす。
――ゴォォォォン……
重厚な鐘の音が、空間全体に共鳴する。
【音の解答が正解だった時】
ギィィィ……
中央の音叉柱が低く震え、地面に埋め込まれた魔法陣が青白く光り出す。
すると、壁の一部が崩れ、新たな通路が現れる。
王子(驚きと感動の面持ちで)
「……すごい、本当に道が開いた!」
グランジャス(にやりと笑い)
「ほらな、音楽は心の鍵を開くってやつさ」
アルベルト(軽く背伸びをして)
「よし、行こうぜ。この先にメソングの鐘があるはずだ」
そして、一行は次のフロアへと足を踏み入れていく――。
次の通路を進むと、一行の前に広大な床が広がっていた。
しかしその床は、一枚一枚が音階付きのタイルのようになっており――
グランジャス(しゃがみ込んで床を叩く)
「こりゃ…ピアノみたいだな。踏むと“音”が鳴る仕組みか」
カラスト(譜面の紙を見つけて)
「あった!ここに“正しい旋律を踏め、さもなくば沈む”って書いてある!」
アルベルト(剣を軽く構えて)
「ってことは、間違った音を踏んだら……」
ゴォォン!!
前方の床が一瞬で開き、石のブロックが奈落へと沈んだ。
シシオ(手にした石を床に投げて音を確かめる)
「こっちは“ミ”……ふむ。あっちは“シ”か」
マリーナ
「“ド・ミ・ソ・シ・ド”なら……音階でいうとC・E・G・B・Cだわ。間違えないでね!」
王子(不安げに)
「ぼ、僕……できるかな……?」
グランジャス(にっこり)
「心配するな、王子。お前の“音”はきっと正しい。俺が手を貸す」
シシオ(足を踏み出しながら)
「こっちだったか……?」
ベチャァン!
重い音がして、シシオの乗ったタイルが沈み始める!
シシオ
「うおっ!? あっぶねっ!!」
体が傾き、今にも下に奈落の闇へと落ちそうになる!
【瞬時の反応】
グランジャス
「おいシシオッ!」
咄嗟に手を伸ばし、シシオの腕をガシッと掴む!
カリン(叫びながら駆け寄る)
「ご主人様、落とさないで!」
メルディス(床の安全な音階に飛び乗って)
「下手すりゃ死んでたわよ!? もう少しでダーリンの腕ちぎれるとこだったじゃない!」
グランジャスが力強く引き上げると、シシオはなんとか無事に元のタイルに戻る。
シシオ(肩で息をしながら)
「はぁ……悪ぃ、気を抜いたわ……
ドとレを間違えた……この歳で音感テストかよ」
カラスト(半笑い)
「大丈夫だった? シシオさん、マスクがズレてたよ」
ホルスター(心配そうに)
「落ちなくてよかったわ……でも、ちゃんとルート覚えておいてよね?」
グランジャス(ニヤリと)
「お前がいなくなったら、俺の装備相談誰にすりゃいいんだよ。頼むぜ?」
シシオ
「へっ、次は間違えねぇよ……まったく、心臓に悪ぃなこの迷宮」
王子(微笑みながら)
「この曲は……“黎明の賛歌”だね。メソングではよく演奏されるよ」
彼は足元のタイルの音を確認するまでもなく、
正確な音階をステップで奏でながら、まるで踊るように進んでいく。
トン…トン…ドン…♪
軽やかな音が響き、まるで床が王子の演奏を歓迎しているかのよう。
【一同の反応】
アルベルト(ぽかんと)
「お、おい…まじかよ、あの王子すげぇな」
シシオ(汗をぬぐいながら)
「苦労してた俺がアホみてぇじゃねぇか…」
カラスト(拍手しながら)
「すごいすごい! 体で音楽を覚えてるんだ!」
ホルスター(穏やかな笑みで)
「やっぱり、この国の“音”に育てられた人なのね」
グランジャス(腕を組みながら感心して)
「見事だな、王子。これなら……“鐘”まで行けるかもしれねぇ」
【王子の笑顔】
王子は振り返り、少し照れながらも自信に満ちた笑顔を浮かべる。
王子
「僕……音楽だけは、小さいころから誰よりも好きだったから」
「この迷宮の音も、“僕の国の声”なんだよ。だから迷わない」
【音の迷宮・第三層「舞闘の間」】
次の扉が開かれると、そこは広大なホール。
中央には音響装置のような巨大なスピーカー柱が立ち、重低音が鳴り響いている。
足元の床はキラキラと光る音階パネルで、まるでライブステージのようだ。
すると――
【敵の登場】
サウンドウォーリア(6体)
音叉のような武器を持ち、リズムに乗って滑らかに動く人型の敵。
攻撃のたびに衝撃波を発する。
メロディゴーレム(3体)
体が鐘や鉄琴でできており、踏まれるたびに不協和音が鳴る巨人。
一体一体が重く鈍重だが、破壊力は絶大。
メロディゴーレム(唸りながら)
「……ボオォォン……ゴワワァァン……」
【グランジャス一行・戦闘開始!】
アルベルト(剣を構え)
「さあ、やろうぜ――音楽の国らしい派手な戦いをな!」
グランジャス(銃剣を構えながら)
「メロディだかリズムだか知らねぇが、俺のリズムは”乱打”だ!」
カラスト
「タイミングを合わせて!ビートバースト!」
→ リズムに連動した魔法でサウンドウォーリアを一掃する狙い。
ティミス
「サウンドキラー!テンポずらしで混乱させるわ!」
→ 音波に反応する敵の感覚を狂わせ、動きを止める。
メルディス
「そんな鉄クズ、斬殺乱舞でまとめてスクラップよ!」
→ ゴーレムの一体に向かって連撃し、外殻をバリバリと割っていく。
カリン
「私のご主人様をノイズから守るのよ!白狼連撃!」
→ グランジャスを守るようにサウンドウォーリア2体を一気に撃破!
ゴーレムの1体が拳を振り下ろす。
グランジャス(回避しながら)
「遅ぇな!だったら…これでどうだッ!」
→ 銃剣連斬!
床を蹴って飛び上がり、メロディゴーレムの胸を連続で突き、コアとなる鐘を破壊!
【王子の成長】
王子も果敢に戦いに参加し、手にした**音槍(ハーモランス)**を巧みに扱う。
王子
「音の国の誇りは、僕が守る!」
→ 敵の攻撃のリズムを読みきり、パリィして反撃。
崩れ落ちたサウンドウォーリアとメロディゴーレムの残骸が、突如として光を放ち始める。
⚙️ギギギ…ギギギギギギィィィ!!
アルベルト「な、なんだ……!? まだ終わってねぇのかよ!」
バチバチと火花が走る中――
合体開始!
• サウンドウォーリアの俊敏なボディが「機構部」となり…
• メロディゴーレムの巨大な胴体が「フレーム」として融合…
• 中央には鐘とスピーカーを組み合わせた「音核」が嵌め込まれ…
全高6メートルを超える、巨大ロボのような魔物。
背中には複数の管楽器パイプが突き出し、動くたびに音が鳴る。
カラスト「ヤバいよ!あれ、音で魔力を乱してる!魔法がまた通じない!」
ティミス「だったら…身体で音を奏でて合わせるしかない…!」
【グランジャスの推理】
「“旋律を奏でよ”ってのは、あいつの音階に俺たちが合わせろってことだ」
アルベルト「つまり…戦いながらセッションってことか!?」
カラスト(手を叩いて)「やってみるしかない!リズムは4拍子!」
• カリン:「タン!」(足踏みしつつ狼の咆哮)→【打楽】
• カラスト:「ビュワッ!」(風魔法の残響)→【木管音】
• マリーナ:「ラ〜〜♪」(高音の歌声)→【ソプラノ】
• ティミス:「ヒュッ!」(爪で金属を擦る)→【効果音】
• グランジャス:「カッ!」(銃剣で鐘を叩く)→【主旋律】
• アルベルト:「フィニッシュいくぜ!回転斬り・旋律斬ッ!!」→【終止音】
クライマックス!
6人の“旋律”が揃った瞬間、敵の胸の「音核」が共鳴・膨張し始める!
シンフォギガス「――ガァァァ……ァアアアア……」
重低音と高音が入り混じるような悲鳴を上げ、体が振動し、やがて爆発的に崩れ落ちる!
戦闘勝利!
王子(感動しながら)
「すごい……皆の音が、心が、一つになってた……」
グランジャス
「この国に必要なのは“力”じゃねぇ、“ハーモニー”だ」
厳かな空気の中、一行は音の国のシンボル――
**巨大な“メソングの鐘”**の前に立つ。
周囲の壁や天井には、過去の歴代王たちの名が刻まれており、
荘厳な旋律が風のように鳴り響いている。
王子以外、全員が跪く
グランジャス「……さあ、王子。君の音を、この国に響かせるんだ」
アルベルト(無言で頷き、静かに頭を下げる)
ティミス、マリーナ、ホルスター、カラスト、カリン、シシオ、シーフェ、メルディスも
それぞれの流儀で、地に膝をつき、敬意を示す。
王子、静かに鐘の前へ歩を進める
王子の表情は、もう怯えでも迷いでもない。
仲間たちの存在が、彼に**「責任」ではなく「希望」**を背負わせていた。
王子(小さく呟く)
「僕は…もう逃げない。僕の音で、この国を変える」
…ゴォォォォォォォン!!
鐘が鳴り響いた瞬間、メソング全土にその平和の音が届いた。
風が舞い、天窓から光が差し込む。
まるで天が、新たな王の即位を祝福しているかのように。
鐘の共鳴により、過去の王の霊たちがうっすらと浮かび上がる
彼らは誰もが微笑み、頷いていた。
「よくやった」とでも言うように。
【王子の継承完了】
兵たちの歓声、外の民の祝福が鐘の音に重なり、
音の国に新たな時代の幕開けが告げられた。
鐘の音はメソング中に響き渡る
アルベルト 王子 王に報告だな
【音の国メソング・王城 謁見の間】
鐘の音が静かに収まり、
城門は大きく開かれ、王子とアルベルトたちは王の待つ謁見の間へと戻る。
王は、玉座に腰をかけながら、
その荘厳な音の余韻をまだ感じているかのように、目を閉じていた。
王(微笑みながら)
「その音――確かに聞こえたぞ。お前の手で国に希望が響いた…よくやった、息子よ」
グランジャス(王子の背を軽く押す)
「さあ、王子よ。いや、次代の王よ――
王に、自分の歩みと音を報告してこい」
王子、一歩進み深く礼をして語る
「…はい、父上。
私は皆とともに、音の迷宮を踏破し、メソングの鐘を自らの手で鳴らしました。
恐れや劣等感もありましたが、それでも…仲間の力が、私を前へ運んでくれました」
王(ゆっくりと立ち上がる)
「王たる者は、決して一人では在れぬ。
民の声を聞き、痛みに寄り添い、仲間に支えられ歩むもの――
お前は、それを知ったのだな」
王は王冠を取り、王子の頭上へとゆっくりと差し出す。
王「音の継承者として、国を照らす者となれ――!」
王子の額に王冠が乗せられると同時に、
黄金の音波が空に放たれ、メソングの国章が天に輝いた。
王位継承、正式完了!
王子は「王」として正式に即位し、
人々は新たな音と平和の時代の始まりを祝福した。
アルベルト(小声で)
「よかったな、あの王子…ちゃんと立ち上がれた」
王への謁見を終えた一行は、城の中庭で一息ついていた。冬の空気は澄んでいるが、まだどこか緊張が抜けない空気が流れている。
そんな中、マルがふらりと現れた。
アルベルト(眉をひそめて)
「……マル。お前、なんでここにいるんだ?」
マル(いつものとぼけた笑顔で、手をひらひら)
「やぁやぁ、アルベルト君。偶然にも……って言いたいところだけど、まあ半分は本当」
アルベルト(少し睨むように)
「偶然で済むかよ。あの場にいたってことは……裏があるだろ」
マル(肩をすくめて)
「鋭いな。実はね、リンセンカ王女から“君たちに同行してほしい”って直接頼まれたのさ。理由は──いざという時、王家が外の動きを把握できるように……ってね」
ティミス(腕を組みながら)
「王女がそこまで信頼してるとは思わなかったわね。あなた、ただの道化師じゃなかったのね」
マル(ウィンクして)
「“ただの”なんて、どこにも書いてないよ。俺はどこにでもいる道化で、どこにもいない旅人さ。……まぁ、実際のところ、個人的な好奇心もあるんだけどね」
カラスト(不安げに)
「ううん……なんだか掴みどころがないよ、この人……」
グランジャス(苦笑して)
「掴みどころがないからこそ、情報屋にもなるし、予想外の活躍もしてくれる……はずだな?」
マル
「期待には応えるつもりさ、みんな。
ただし、俺のやり方でね。そう──自由に、軽やかに、したたかに」
(彼は中庭に落ちていた花を拾い、くるくると指で回してみせる)
マル
「じゃ、改めて……道化師マル、正式加入! よろしく頼むよ、相棒たち」
グランジャス(にやりと笑って)
「ふっ…次は何処の国の王子を立ち上がらせようかね?」
アルベルト次は何処の国を世直ししようかな
シシオ フォーゼリアが良いんじゃないか?このままなら
グランジャス そうだな 陛下 次はフォーゼリアに向かいたいのですが豪雪地帯に入るので防寒装備を用意して頂けますか
王(新王子)は微笑んでうなずき、玉座の脇に控える従者に目配せをする。
メソング王(かつての王、息子を誇らしげに見ながら)
「この国の音と平和を紡いでくれた者への礼だ――遠慮は無用じゃ。
フォーゼリアは冬の牙を剥く土地……準備させよう」
数刻後、大広間には立派な防寒装備がずらりと並ぶ。
すべてが軽量・防水・耐寒性抜群で、メソング独自の技術による「温音布(おんおんふ)」と呼ばれる布地が用いられている。
グランジャス(ローブを羽織りながら)
「ぬくいな……こりゃ下に何も着なくていいくらいだ。いや、着るけどな?」
ティミス(すかさず)
「着てください。あとでカリンとメルディスに叱られますよ?」
カラスト(魔導通信機を手にして)
「わあ、これで雪山でも迷子にならないぞ!」
王子(新王)
「アルベルト殿、そしてグランジャス殿――
フォーゼリアの王、ウィンゼル公は我が父とも古くからの友です。
この推薦状をお持ちください」
彼は一通の銀封筒の手紙をグランジャスに手渡す。
王の推薦状(内容抜粋)
『この者たちは音の鐘を鳴らした勇士であり、
メソングの未来を導いた旅団である。
フォーゼリアの冷たき風すら、彼らの意志は凍てつかせぬ。』
グランジャス(手紙を胸にしまい)
「感謝する。王の音は、次の地でも響かせてみせるさ」
アルベルト達は宿屋へに入り一休みする
マル「踊れや唄えや酒がうまい♪ 傘が無ぇなら踊って濡れろ〜♪」
(テーブルの上でコサックダンスを披露)
ティミス「ちょ、ちょっと危ないわよマル! テーブル壊れるって!」(笑いながらも手を伸ばして支える)
マル「大丈夫だってティミス姉〜、この身体は軽さが売りよ! フワッとした人生、フワッとしたおしり♪」
カリン「……うるさいわよ、夜なんだから少しは静かにしなさいよ」
(そう言いながらも、口元には笑み)
グランジャス「でも、マルの言うとおりだ。天気に勝てねぇのも、人に勝てねぇのも、自然の摂理ってやつさ」
(窓の外の雨を見ながら、酒をぐいっと)
アルベルト「でも勝てないからって止まってたら、何も変わらない。俺たちは…進みたいんだよな」
マリーナ(窓辺に立って)「雨音も、歌に変わる。そう思えたら…きっと今日も悪くない」
マル「そう! 露天風呂に薬湯、泡風呂に打たせ湯…風呂好きにはたまらん宿ですよ〜♪」
(腰に手を当てて得意げに)
グランジャス「おお…そりゃあ中年の腰にも効きそうだな」
(ごきげんで肩を回す)
シシオ「この歳になると、打たせ湯で肩にズドンとくるのが癖になるんだよな」
(筋肉モリモリの肩をぐるりと)
マリーナ「泡風呂か〜、爪先から癒されそう♡」
(目を輝かせて)
ティミス「ほんと助かるわ。髪の毛も体毛もバチバチ静電気で、手がバシバシ痛いのよ…」
(ぼさぼさの髪を撫でながら)
カリン「じゃあ、女子組は先にいただきま〜す♡」
(既にタオルを持ってウキウキ)
メルディス「ダーリンの視線が無いと落ち着くわ…ふふっ♡」
(グランジャスを見て小悪魔的な微笑)
グランジャス「おいおい、男湯にいたって覗かねぇよ! 健全だよ俺は健全!」
マル「…でも混浴があってもいいと思いませんか?(小声)」
ティミス&ホルスター(同時に)「だまらっしゃい(無表情)」
宿屋のロビーの椅子に腰掛けてスルメを食べる
グランジャス「カリンはな、引き取ったばかりの頃は夜が怖くてな…よく一緒に風呂に入ったもんだ。湯船の中で震えてたっけ」
(懐かしそうに笑って)
ティミス「可愛いわね。…でも、きっとそれだけ辛かったんでしょうね」
(少し目を細めて)
マリーナ「今じゃご主人様♡ってベッタリだけど、そういう過去があったのね」
ホルスター「…子供って、心に傷があっても誰かに愛されれば少しずつ癒されていくものよ」
(静かに頷いて)
カリン「…だって…初めてだったの。ちゃんと温かくて、誰かに『おやすみ』って言ってもらえる夜…」
メルディス「…あんた、そういうとこだけズルいのよね。泣かせるの禁止♡」
女子たち「あははは!」
ー女湯ー
ティミス「そういえば新しい櫛買ったんでしょ?」
ホルスター「ええ、これよ」
(湯船の縁に座りながら、櫛を取り出して髪を梳かす。木製で滑らかな仕上がり、持ち手には花の彫刻がある)
マリーナ「まあ、素敵な櫛ね~。ホルスターって物選びのセンスが優しいのよね」
カリン(ごく自然に背後から手を伸ばして)「梳いてあげます♡ ご主人様の髪、柔らかくて気持ちいいんだから」
ホルスター「ふふっ…やっぱり、あなたに任せると丁寧で助かるわ」
(目を閉じて気持ちよさそうに)
メルディス「なんだか女子会って感じね、平和でいいわぁ~」
(タオルを巻きながら洗面の鏡前で髪をまとめ始める)
ティミス「メルディスもあとで使ってみなさいよ。頭皮もほぐれるし、毛もツヤ出るわよ」
メルディス「じゃあ…代わりに背中洗ってあげるわ。順番ね」
カリン「えー、私も順番に混ぜて!」
マリーナ「じゃあ私、髪乾かし担当する~。歌いながら乾かすとすごく早く乾くのよ?」
一同「ほんと?あははは!」
ー男湯ー
カラスト「わっ、あっつ!あつつつ……でも気持ちいい〜!」
(バシャバシャとお湯をはしゃいでかける)
グランジャス「カラスト、だから走ると転ぶって――あ、言わんこっちゃない」
(滑って尻もちをつくカラスト)
カラスト「いたた……でも、楽しいからいっか!」
シシオ「グラン、悪ぃな、背中の垢取ってくれ」
(ごつごつした背中を差し出す)
グランジャス「ったく、お前の背中は岩盤浴かよ。よし、ほら、ゴシゴシっと……」
シシオ「サンキュ。あー、これぞ男の風呂って感じだな」
アルベルト「シシオ、その筋肉……なんか、斧の威力が倍増しそうだな。俺も鍛え直そうかな」
(自分の少し出てきたお腹をペシッと叩く)
グランジャス「お前は甘い物減らせばすぐ戻るって。砂糖断ちは勇者の第一歩だぞ」
(からかいながら笑う)
マル(ひょっこり現れて)「おっ、こりゃ豪勢な男湯だな!……ところでカリンちゃんたちの女湯ってどこ?」
一同「出てけーっ!!!」
(バシャーーンッ!!と桶が飛んでくる)
グランジャス こういうのはこっそり除くから楽しいんだよ 髪を洗いながら
マル 男は堂々とですぜ
グランジャス それで制裁食らってたら意味無いだろ
シシオ「お前らまたくだらんこと言ってんのか。…ったく、騒がしい風呂だぜ」
(苦笑しながら湯船にどっぷり)
アルベルト「っていうかグランジャス、そんな発言カリンに聞かれたらまた締め落とされるぞ」
(頭にタオルを乗せながら)
カラスト「えっ、グランおじさん、また首絞められるの? 僕、そのときカウントしてあげるね!」
(無邪気に指を折る)
グランジャス「やめてくれ、カリンの寝技は冗談じゃ済まないんだからな……」
(髪の泡を流しながら、少し震える)
マル「だがよ~、風呂ってのは裸の付き合いって言うじゃねぇか。男同士、遠慮なんざいらねぇ!」
(桶を頭に被りながら威張る)
アルベルト「いや、それも使い方次第だろ……その姿で言うな」
男湯 脱衣所にて
(それぞれが体を拭きながら、湯気の立ちこめる中)
グランジャス「やっぱ風呂上がりは格別だな。…戦闘服ばっかだと、変なとこに締めつけ癖ついちまう」
(腰にタオルを巻きつつ、ストレッチをする)
マル「全くだ。たまにはゆるい服でも着て飴でも舐めないと、心まで締まっちまうぜ」
(口に飴玉を入れながら、フンと鼻を鳴らす)
アルベルト「それにしてもマルさん、風呂上がりでも飴って…甘党すぎない?」
(濡れた髪をタオルでわしゃわしゃ)
マル「俺はな、いつも“人生にもうひと味”ってやつを求めてるんだよ」
(ウインク)
カラスト「僕はパジャマが一番好き〜。戦闘服重いしさ」
(既にふわふわの寝巻きに着替えている)
シシオ「昔は裸のままでも平気だったがなぁ、年をとると冷える」
(背中をトントン叩きながら)
グランジャス「シシオ、お前もう“昔は~”って言い出すあたり、完全にジジイの仲間入りだぞ」
シシオ「お前にだけは言われたくないわ、グラン坊」
メソング国 宿屋のホール
(暖炉の火が優しく揺れるホールに、皆が風呂上がりのリラックスした姿で集まっている。少し湿った髪や浴衣姿も見え、旅の緊張感から解き放たれた穏やかな空気が漂っている)
アルベルト「夕飯どうする? この辺、店とか多くなさそうだけど」
シシオ「夜はフォーゼリアの冷たい風がくるらしいな。あんまり歩かなくていい場所がええ」
グランジャス(腕を組んでうなずき)「んじゃ、あそこしかねぇな……なあ、マル?」
マル(胸を張って)「ええ、大食堂《ワルツ&ロンド》。王都でも有名な店でさぁ。踊りながら料理が出てくるんですよ」
カラスト(目を輝かせて)「大食堂!? そんな楽しそうな場所あるの!?」
カリン「あそこなら安心ですね、以前ご主人様と一緒に行きました♡」
メルディス「そうですね、雰囲気も素敵でしたし……ふふ、ダーリンの隣ならどこでも安心だけど」
(そう言いながら、カリンとメルディスがグランジャスの両腕にしがみつく)
グランジャス(肩をすくめつつ)「おいおい、両サイドからってのは反則だぞ」
ティミス(苦笑しながら)「あんた、嬉しそうじゃない」
マリーナ「踊りながら料理が出るなんて最高ね。美味しいものは心も体も温めてくれるわ」
ホルスター(微笑みながら)「子供たちがいたら、きっと大喜びだったでしょうね」
グランジャス「よし、じゃあ出発といこう。今夜はワルツを食らって、ロンドで眠ろうぜ」
メソング国 王都・大食堂《ワルツ&ロンド》
(建物の外観は、音符の装飾が散りばめられた美しい石造り。扉を開けると、室内には円形のステージ、そして客席を囲むように配置されたテーブル。その中央で、軽やかなバイオリンとピアノの生演奏が鳴っている)
カラスト「わぁ……ステージがあるんだね! 本当に踊ってる!」
マリーナ(うっとり)「こういう場所、私ほんとに好き……まるで歌劇場みたい」
ティミス(イスに座りながら)「こういうのも悪くないわね。うるさくないし、上品」
シシオ(メニューを開いて)「肉料理が多いな。これはありがたい」
カリン「ご主人様、今日はいっぱい食べてくださいね♡」
メルディス「ダーリンには甘いものも必要ですね。デザートも頼んでおきましょう」
アルベルト(笑いながら)「なんか俺より甘やかされてるんじゃないか? グランジャス」
グランジャス(どっかり座って)「愛されるってのはこういうことだ、アルベルト君。修行が足りんぞ」
(料理が届く。リズムに合わせてくるくる回るプレート、盛りつけが音符や五線譜を模した創作料理)
ホルスター「……なんてきれいな盛り付け……子どもたちが見たら、きっと目を輝かせたわね」
シーフェ(ワインを回しながら)「舌も目も耳も、全部で味わうって感じね。久々に贅沢だわ」
(しばらく食事と音楽を楽しんだ後、店のスタッフが告げる)
給仕の男性「お客様方、よろしければダンスフロアへどうぞ。今宵は《ペア・ワルツ》のお時間です」
カリン「ご主人様! 私と踊りましょう♡」
メルディス「いいえダーリン、今夜は私の番ですわよ」
(火花散る視線を交わすカリンとメルディス)
メソング国 大食堂《ワルツ&ロンド》――ワルツタイム
(柔らかなバイオリンの旋律がフロアに流れる。客席が少し引き下がり、照明がやや落とされる。中央のフロアが自然と注目を集める中……)
グランジャス「飯の前に身体を動かさなきゃな。よっこいしょっと、踊るか」
(重たい腰を上げて、ネクタイを少しゆるめながら、ゆったりと歩み出る)
アルベルト「ティミス、踊ろうぜ」
ティミス「えっ……う、うん」(頬を赤らめ、戸惑いながらも手を伸ばす)
マル(ニヤリ)「アルベルトくんも、すみにおけないなぁ。よっ、青春だねぇ」
シシオ「ホルスター、俺らも踊ろうか。せっかくだしな」
ホルスター「ええ……久しぶりだけど、よろしくお願いしますね」(微笑みながらも、どこか恥じらいを見せる)
(ペアたちがフロアへ滑り出す。優雅なテンポに乗って、それぞれがぎこちなく、けれど心地よくステップを踏み始める)
マリーナ「私は中央で踊らせてもらうわ。こういうの、血が騒ぐの♡」
(ひらりとスカートを翻し、ひとりでフロア中央へ。軽やかに舞いながら旋回し、観客の視線をさらう)
シーフェ「私も。体幹を鍛えるには、ダンスが一番だもの」
(大人の色気をまといながら、腰を滑らかに揺らし、旋律と完全に一体化する動き)
カリン(ぱあっと笑顔になって)「ご主人様♡ 私と踊りましょう♡」
(ぐいっとグランジャスの腕を取り、スキップしながら連れ出す)
メルディス「だ〜め♡ ダーリンは私とでしょ♡?」
(反対の腕を取って引き合いになる二人)
グランジャス(汗)「お、おい……手を引っ張るなって、両方取れちまう……!」
カラスト(手をパチパチと叩いて)「ヒューヒュー! グランジャスさん大人気だね!」
マル「よし、カラスト坊、今日は俺と踊るぞ。いいか、回転は腰だぞ、腰!」
カラスト「うわっ、マルさん手が軽くて逆に怖いよ! でも楽しい!」
(ダンスの余韻がまだ残る中、一行は各自テーブルにつき、にぎやかにメニューを開く)
アルベルト「色々あるな……よし、俺はトンカツ定食にしよう!」
(甘党らしく、ソースもたっぷりで)
ティミス「私は鯖のムニエルにするわね。ダンスのあとって、魚がちょうどいいのよ」
(背筋を伸ばして頼む姿は、どこかお上品)
カラスト「僕はオムライスにする! 旗が立ってると嬉しいな!」
グランジャス(くすっと笑いながら)「まだまだ子供だな、カラストは」
ホルスター「私はコーンと野菜のクリームシチューにするわね。身体を中から温めないと」
(すでにパンも頼む気満々)
マリーナ「私はメソングパスタにするわ。鹿肉としじみなんて、珍しい取り合わせね」
(味より歌詞のネタになりそうで楽しみにしている様子)
シーフェ「私はかぼちゃとにんじんのパイにするわ。色合いも栄養も完璧ね」
(ついでにスープも注文)
メルディス「私は水牛のステーキにします。肉、食べたい気分♡」
カリン「私はハンバーグ定食にしますっ♡ ご主人様と一緒に食べたいな~」
グランジャス「俺は唐揚げ定食だな。やっぱり揚げ物は外で食べるに限る」
(メルディスとカリンが左右から「一口ちょうだい♡」と迫ってくる)
シシオ「俺は焼肉定食だ。食った分、明日動くぜ」
マル 「私は穀物たっぷりの野菜スープにしますかな」
(食べ終え、テーブルから立ち上がる一行)
アルベルト「食った食った~。トンカツの最後の一切れが最高だったな!」
グランジャス「俺はちょっと散歩してくるわ。腹ごなしにもなるし、街の空気も吸いたいしな」
(立ち上がった瞬間、カリンがすかさず駆け寄る)
カリン「ご主人様、ここに……ご飯粒付いてる♡」
(ぺろっ)
グランジャス「お、おい、外だぞカリン……って、もう一個どこ?」
メルディス(にっこり)「こっちの頬にも。私が取ってあげます♡」(ぺろっ)
グランジャス「お前ら……こういうのは宿屋に帰ってからにしろっての!」
(すっかり頬が赤い)
シシオ「おー寒ぃ寒ぃ……けどよ、せっかくのメソングだし武器屋と防具屋、ちょっと見てくるか。いい素材があれば強化できるしな」
マル「へっへ、俺も気になる品があるんでご一緒しますかねぇ、シシオさん」
ホルスター「私はみんなの洗濯物を片付けておこうかしら。宿屋に先に戻るわね」
ティミス「じゃあ、私も一緒に。部屋の鍵も受け取っておかないとだし」
(街灯がぽつぽつと灯る石畳の道を、2人の男が歩いていく)
マル「へっへっへ、この街の武具ってどんなもんか楽しみですなぁ~。王都フェルドニアとはまた違う匂いがしますよ」
シシオ「ああ。音楽の国だし、見た目も派手なもんが多いかもしれねぇな。でも、機能性がよけりゃ俺は文句ない」
(やがて、街角に暖かい灯りが漏れる店を見つける)
店の看板:「名匠ロルドの店《響鉄工房(きょうてっこうぼう)》」
マル「おっ、なんだか良さげな名前じゃないですか」
(扉を開けると、風鈴のような軽やかな音が鳴る)
ロルド(店主)「いらっしゃい。おお、旅の戦士かい? 見ての通り、うちは**“音”にこだわった武具**を取り扱ってる」
シシオ「“音にこだわった”?」
ロルド「例えばこれ——」
(棚から取り出されたのは、振ると鈴のような音を出す斧)
ロルド「攻撃の際に“衝撃音”を発し、仲間の士気を上げる《咆哮斧バロル》。素材は音鳴鉄、魔法は使ってねぇが響きが違う」
シシオ「……悪くねぇ。見た目以上に重さのバランスも良さそうだ。値段は?」
ロルド「ふっ、気に入ったら値引きも考えるさ。そっちの陽気な兄ちゃんもどうだい?」
マル「わたくしにはこう……女性にモテそうな装備あります?」
ロルド「ハッハッハ! ならこれだな」
(出てきたのは、羽飾りと銀の縁取りが美しい軽装鎧)
ロルド「《踊剣の衣(ダンシングメイル)》って名でね。軽い、目立つ、そして動きやすい。夜会や祭りにも最適だ」
マル「おお~! これはもう口説き専用装備ってやつですね。買いだ買い!」
(2人はそれぞれ、気に入った装備を吟味し、値段交渉を始める)
ロルド「装備の引き渡しは明日でもいいが、今晩メンテしてもいいぞ。旅人は手入れが難しいだろ?」
シシオ「助かる。じゃあ頼むわ」
《メソング・響鉄工房の奥で》
(マルが羽飾りの軽装鎧を試着して鏡の前でポーズをとっている間、シシオとロルドは店の奥の作業場に足を踏み入れていた)
ロルド「……へぇ、あんたも武器屋やってたのか」
シシオ「ああ、フェルドニアでな。今は旅に出ちまってるが……鍛冶場の熱と金属の音は、やっぱ落ち着くな」
ロルド「ふっ……分かるぜ。旅先であれこれ見たあと、最後に帰ってくるのはこの”音”なんだよな」
(ロルドが作業台の上から一つの金属塊を持ち上げる)
ロルド「これがうちで使ってる“響鉱石(きょうこうせき)”だ。山で取れる音鳴鉱を、ルド石と混ぜて鍛えるんだ」
シシオ「……音鳴鉱か。そいつは確か、打ち込むほど共鳴して、力を逃がさず刃に通すんだったか。俺も一度だけ扱ったことあるが、癖が強ぇ素材だ」
ロルド「おぉ、わかってるじゃねぇか! 熱しすぎりゃ音が死ぬ。冷ましすぎりゃ割れる。まるで女心だ」
シシオ「どっちも扱い難いが、手懐けりゃ最高だ。……フェルドニアじゃ“雷石”を芯に埋めるって流派が多かったな。衝撃と一緒に痺れを残すやつだ」
ロルド「それも聞いたことあるな。あんた、もしまた店出すなら、俺と素材交換でもしようぜ?」
シシオ(口元を少し緩めて)「いいだろう。……その代わり、俺の斧、見本に置かせてもらうぜ? “闘牙斧シシラガル”。こいつが俺の誇りだ」
(ごつく重厚な斧をそっと作業台に置く)
ロルド「おお……これは……! 芯が黒曜石で周囲が斑鉄、熱の入れ方が絶妙じゃねぇか。手元のバランスが良すぎる……旅してる間にこれ、作ったのか?」
シシオ「いや、昔の作だ。でもこいつを見るたびに初心を思い出す。まだ弟子だった頃のな」
(2人はしばし無言で、斧を眺めながら炎の音だけが作業場に響いている)
マル(奥から)「お~い! お二人さん、あんまり盛り上がってると晩飯冷めちまいますぜ!」
シシオ(肩をすくめて)「へいへい、今行くよ。ロルド、また話そう」
ロルド「いつでも来い。お互い、旅先でいい鉱石に出会えるといいな」
(街灯の明かりが柔らかく雪を照らし、吐く息が白く溶けていく。グランジャスは両腕にカリンとメルディスを抱かれながら歩いていた)
グランジャス「おぉ、寒い寒い……こんな夜に出歩くもんじゃねぇなぁ」
(すると、ちょうど角を曲がった先に、小さな灯りのもとに立つ男が目に入る)
ロールド「こんばんは、冷えますな。道に迷われたのかと思いましたよ」
(サンショウウオのようなぬめりを持つナヌマーレン族の中年男性。マントの下からは滑らかな皮膚が覗いていた)
グランジャス「いえいえ、ただの散歩ですよ。にしても、そちらもなかなか……モテてますな」
コバル「ロールド様~、早くサウナ行きましょ♡ 雪が肌に染みて凍っちゃいそう」
アモリ「まったく……外で話し込んでたら粘液がカピカピになりますわよ?」
(彼女たちはそれぞれ、艶やかな声色で彼に寄り添っている。まるで昔の自分を見ているようだとグランジャスは内心で思う)
グランジャス「サウナがあるんですか? こんな寒い夜にぴったりじゃないですか」
ロールド「ええ、“蒸風の館”という、ちょっとした名所ですよ。音と蒸気の癒し効果で、心も身体もとろけるように温まります」
カリン「ご主人様ぁ♡ 私たちも行きましょうよ! ご主人様と一緒にとろけたいなぁ♡」
メルディス「ダーリン、最近寒さで肌が乾燥してて……一緒にしっとり温まりましょう?」
(グランジャスは背中に冷たい風を受けながら、目の前のサウナと女性陣のキラキラした目を見比べる)
グランジャス「……行くしかないな」
《蒸風の館・受付前》
(中に入ると、木と石を基調にした落ち着いた空間が広がっている。柔らかい照明と静かな音楽が流れ、何種類ものハーブの香りが立ち込めていた)
受付の女性「混浴と男女別とございますが、どちらに?」
カリン&メルディス(同時に)「混浴で♡」
グランジャス「……(小声で)俺の理性が持つかどうかの試練がまたひとつ増えたな」
(こうして、癒しと誘惑と、ときどきスケベなサウナ夜会が始まる――)
《蒸風の館・サウナルーム内》
(湿度たっぷりの木造サウナ。静かに石に水が注がれ、ジューッと蒸気が立ち上る。香りはシトラス系のハーブと木の芳香。サウナの上段にグランジャスとロールドが座っている)
ロールド「いやぁ〜〜、やっぱりこの時間が最高ですな。女と酒とサウナ……あとは生きてる実感だけですよ」
グランジャス「ははっ、まったくだ。気楽に話せる友がいりゃ、それで十分ってこともある」
(グランジャスはタオルを首に巻き、額の汗を拭いながら深く息を吐く)
ロールド「あんた、噂には聞いてましたよ。ドルセニアの“変わり者の男爵”ってな」
グランジャス「お、噂になってんのか。どうせ『庶民と遊ぶ変わり者』ってオチだろ?」
ロールド「いやいや。『誰とでも対等に話すくせに女好きでスケベで、だけど信頼されてる』ってね。世の男にとっちゃ理想像じゃないか?」
(ロールドは嬉しそうに、横に座るコバルの手を握る)
グランジャス「理想かはともかく……俺ぁ、自分の欲に素直でいたいだけさ。だけどな、欲を押し付けちゃいけねぇ。それが俺の流儀ってやつよ」
ロールド「へぇ……似てるな、俺と。俺もさ、昔は女のこと何も分かってなくて、ただ“好き”って気持ちだけで突っ走って失敗したことがあった」
グランジャス「ああ、その道はみんな一度は通る。大事なのはその先、どう改めるかってとこだ」
ロールド「グランジャスさん、あんた……女をただ抱くんじゃなく、心を抱いてるって感じだな。俺はまだそこまではいけてねぇかもな」
(しんとした蒸気の音だけが響く空間。互いに肩を並べるように座る中年男たちは、無言でしばらく汗を流す)
グランジャス「なあ、ロールド。男ってのは、“誰を抱いたか”より“誰に抱かれてるか”の方が大事かもしれんな」
ロールド「……いい言葉だ。女の方が強ぇってこと、最近よく分かるようになったよ」
(小さく笑い合うふたり)
(バスローブを羽織って、涼しい外気に当たりながらベンチに座るふたり。夜の街明かりが静かに揺れている)
ロールド「今度、ドルセニアに遊びに行ってもいいかい?」
グランジャス「もちろん歓迎するさ。こっちも“サウナ紳士”が一人増えるだけだ」
(その言葉にロールドは大きく笑い、肩を揺らした)
《蒸風の館・女湯サウナルーム》
(木のベンチにタオルを敷いて、女性陣がリラックスして座っている。湯けむりの中に、しっとりした空気と和やかな笑い声が交じる)
ティミス「ふー……迷宮も越えてやっと一息ね。あれ以来、背中にバチバチ静電気くる気がするのよね」
ホルスター「分かるわ。あの時、ティミスの毛がふわって逆立ってて、少し笑いそうになったもの」
(全員くすくす笑う)
マリーナ「私も今回はたくさん汗かいたわ。お風呂とサウナがこんなにありがたいなんて」
シーフェ「あなたたち、日々の疲れが溜まってるのよ。こういう時こそ、ゆっくりほぐすのが一番。……ティミス、ちょっと背中見せて。ほら、やっぱり張ってる」
(シーフェがティミスの肩を軽く揉む)
ティミス「あぁっ、うまっ……あんた、ただの医者じゃないでしょ?」
シーフェ「ふふ、伊達に旅してないのよ」
カリン「ねぇねぇ、皆さんグランジャス様のどこが好きなの?」
(唐突に投げかけると、場がしんとなる)
メルディス「なっ、なんでそんな急に……でも、そうね……。私はあの人に初めて“あたたかさ”を教えてもらったの。過去を見ても否定せずに受け止めてくれた。だから…」
カリン「うんうん、それでダーリンって呼んでるんだもんね♡」
ホルスター「私は……そういう気持ちは分からないけど。でも、あの人が困ってる人を放っておけないのは昔から。あれはね、本物よ」
ティミス「私から見たら、正直スケベ親父よ? でも……子どもに優しいし、立場とか見た目で人を決めつけない。その点は、すごく尊敬してる」
シーフェ「スケベでもね、命の選り好みをしない。ああいう人は、見た目よりずっと…誠実。ちょっと悪ノリが多いけど」
マリーナ「ふふ、なんだかんだ皆、信頼してるのね。…でも、私はアルベルトの方が可愛いと思うけど」
(全員の視線がマリーナに集中し、ティミスがぴくりと反応する)
ティミス「……あんた、何か言った?」
マリーナ「え? な、なんでもないわ♪」
(再び笑いが広がる)
カリン「でも、こうして皆とお喋りしてる時間が、いちばん好きかも」
ホルスター「ほんとね。家事も冒険も、みんなで乗り越えてきたからこそ、今があるのよね」
メルディス「ダーリンがどうこうはさておき……この旅、嫌いじゃないわ」
シーフェ「うん、こうしてる時間も、きっと誰かの治癒になる」
(しばらく、蒸気の音だけが部屋に満ちる)
(しばらく静寂の中で、ぽつりとティミスがつぶやく)
ティミス「……カラストにも、いいガールフレンドができればいいのにね」
ホルスター「あら、急にどうしたの?」
ティミス「いや、ほら、あの子ってまだ子どもっぽいけど、優しいし頑張ってるしさ。誰か、そばで応援してくれる子がいれば、もっと強くなれると思うのよ」
マリーナ「確かに、カラストって繊細なところあるから、支えてくれる存在がいたら変わりそう」
カリン「うふふ、じゃあ将来が楽しみね~♡ でも今はまだ私の弟って感じかな」
メルディス「あの子が誰かとくっついたら、きっとグランジャス様が“あのガキが大人になりやがって”とか言いそうね」
(一同、くすっと笑う)
シーフェ「私はね……“医療”を語れる男が欲しいわ」
(しん、と静まるサウナの空気)
ホルスター「あら、それはまた専門的な……」
シーフェ「ふふ、別に医者じゃなくてもいいの。でも、病気や痛みに無関心な人って、結局どこかで他人を突き放すから。そういう人と一緒にはいたくないのよね」
ティミス「……ちゃんと向き合える人、か」
マリーナ「なんだか大人な話になってきたわね。私も誰かと歌の話で夜を明かせたら素敵だけど……まだそんな人いないのよね」
ホルスター「きっと、そういう人はふっと現れるわ。家事でも、旅でも、恋でもね」
カリン「そーゆー話してる時のホルスターさん、すごくお母さんっぽい♡」
ホルスター「それ、褒めてるのかしら?」
(サウナの中、グランジャスが汗を流しながらのんびりと座っていると、扉が開き、シシオとマルが入ってくる)
シシオ「よう、空いてるか? ここのサウナ、あったけぇって評判だったぞ」
グランジャス「おう、ちょうどいい時間だ。……ってか、見ろよ。向こうのガラス越しにロールドの粘液がちょっとずつ蒸発してんぞ」
マル「サンショウウオってすげぇな……にしても、やっぱサウナは最高ですぜ。戦いのあとはこれに限る」
(マルがどっかり座り、桶でお湯を頭からかぶる)
シシオ「にしても、あんたらよく女を従えて歩いてて羨ましいぜ。俺なんか、ホルスターさんと飯の話しかしてねぇよ」
グランジャス「あの人とちゃんと向き合ってりゃ、向こうから歩いてきてくれるさ。なぁ、マル?」
マル「俺ぁ基本的に追いかける側っすけどねぇ……でも、本当に惚れた女には、逆に頭上がんなくなりますぜ。ははっ」
(サウナの蒸気が立ちこめ、しばし無言)
シシオ「……なぁ、マル。お前、何か失敗してきたことってあるか?」
マル「そりゃあ……言えないくらいありますよ。だけど、道化師ってのはそれを笑いに変えてなんぼっす。涙を見せたら客が泣く。だから笑いにする。でも……忘れちゃいませんよ。あのときの顔とか、言葉とか」
(珍しくシリアスな空気に)
グランジャス「……皆、背負ってんだな。そう思うと、俺なんかまだまだだわ」
シシオ「バカ言え。お前がいなきゃアルベルトたちもここまで来れなかっただろ。お前は……俺らの太陽って感じだよ」
(グランジャス、少し照れたように笑って)
グランジャス「言うなよ、そういうこと……泣いちまうだろ……くそっ、サウナのせいで目に汗が入ったわ」
(サウナの扉が再び開く。湯気の中から、タオルを肩にかけたアルベルトとカラストが顔を出す)
アルベルト「おーい、ここか。みんな居たんだな。……おぉ、あっつ!」
カラスト「うわっ、メガネが曇った……って、僕メガネしてないや。えへへ」
グランジャス「おう、若ぇのも来たか。ちょうど今、男の語りってやつをやってたとこだぜ」
アルベルト「語り? あぁ、そういうの、ちょっと憧れてたんだよな。こうやって湯気の中で語るやつ」
(アルベルトとカラストが空いている場所に座る)
カラスト「ねぇグランジャスさん、なんか格好良く見えるね……蒸気でむんむんだけど」
マル「おっ、カラスト坊っちゃんも来たか。将来有望なイケメンだ、いっちょモテる男の心得でも伝授しようかね?」
カラスト「え、ホントに? それなら教えてほしい!……でも、グランジャスさんもシシオさんもモテてるし、僕なんてまだまだ」
シシオ「お前はこれからだ。知識もあるし、器用だし……ちょっと子供っぽいのが、逆に女子ウケいいかもな」
アルベルト「そうそう。まぁ、もうちょい落ち着きがあったらモテるかもな?」
カラスト「えー、僕そんな子供っぽいかな……?」
グランジャス「ま、焦んな。大事なのは、自分のことをちゃんと見てくれる相手を大事にすることだ」
(少し間があり、湯気の中で全員がのんびりとした表情になる)
マル「……それにしても、こうしてみんなでサウナ入るなんて、いい旅になってきましたな」
アルベルト「ああ、本当にそう思う。なんかこう……家族って感じがしてきたよ」
(全員、黙ってうなずく。湯気の向こうで、微かに誰かの笑い声が聞こえる)
(サウナの湯気が少し落ち着いたころ、グランジャスがタオルで額を拭きながら、カラストに視線を向ける)
グランジャス「なあ、カラスト……お前はどんな子が好みなんだ?」
(いきなりの質問に、カラストがびくっと肩を震わせる)
カラスト「えっ⁉ な、なにいきなり聞くのさ、グランジャスさん!」
マル「おっ、興味深い話になってきましたぜ……♪」
シシオ「聞きたいな、それは。男同士だしな」
アルベルト(ニヤニヤ)「そうそう、お前もそろそろそういう年頃だろ?」
カラスト(顔を真っ赤にしながら)
「う、うーん……やさしくて、ちょっとお姉さんっぽい子が好き……かな。あと、話聞いてくれる子」
グランジャス「ふむふむ、つまり……ホルスターさん系だな?」
アルベルト「いや、それティミスにも当てはまるんじゃ……」
マル「もしくはマリーナ嬢みたいな癒し系?」
カラスト「ち、ちがーうっ! そんなんじゃないってばっ!」
シシオ(笑いながら)「そのうち誰かが気になって仕方なくなるもんだ。今は旅を楽しめ」
グランジャス「ま、焦るな。お前の人生はまだ始まったばかりだ。だがな──好きな子ができたら、ちゃんと大事にしろよ」
(カラスト、少し照れながらもうなずく)
カラスト「……うん。グランジャスさんも、ありがとう」
(夕暮れ時の街角、ふとした拍子に声がかかる)
???「おや? ……ある坊やじゃないか」
(その声に、アルベルトが足を止め、振り返る)
アルベルト「えっ……その声は──バーナード爺さん⁉」
(そこには、どこか懐かしい笑顔を浮かべた、セントバーナードのニアマーラ族の老紳士が立っていた。厚手のマントに身を包み、杖を片手にしているが、その目の奥には変わらぬ優しさが宿っていた)
アルベルト(駆け寄って肩を叩きながら)
「なんでこんなところにいるんだよ!? ラート村にいたんじゃなかったのか?」
バーナード(少しさびしそうに微笑む)
「……ばあさんが先に逝っちまってな。ひとりで家にいるのが堪えられなくて、旅に出たんじゃよ。思い出をたどってな」
(アルベルトの表情が少し曇る)
アルベルト「……そうだったのか。ばあさんにはよく世話になった。食べきれないくらいのシチュー作ってくれて……」
バーナード(ふふっと笑う)
「お前さんがよく腹空かせて来てたからな。あの子はお前のこと、孫みたいだって言ってたよ」
(しばし、夕暮れの風が吹き抜ける)
グランジャス(近づいてきて)
「ほう、アルベルトの知り合いか。……いい目をしてるな、あんた」
バーナード「男爵殿か。ありがたいことに、こうして再会できて嬉しいよ。旅先で会えるなんて、思い出話の神様も粋なことをしてくれる」
カラスト(小声でアルベルトに)
「なんか……すごく、いいお爺さんだね」
アルベルト「ああ……オレの小さい頃を見てくれてた人なんだ」
アルベルト「そうだ、師匠見なかった? ナミハチさ」
バーナード「……ああ、ナミハチの奴なら、つい最近見かけたぞ。フォーゼリアに向かうと言っていた」
アルベルト「ほんとに!?」
バーナード(少し苦笑しながら)
「なんでも、奥さんと派手に喧嘩してな。『頭を冷やすまで帰りたくねぇ』って言って、重たい背中で北の道を歩いて行ったわ」
グランジャス「はは、それであの辺りに妙に頑固そうな男の足跡があったわけか……。面倒くさい男だな」
カリン「ご主人様もたまに同じこと言って旅に出そうになるじゃない♡」
メルディス「でも帰ってくるのよね、結局」
アルベルト(軽く拳を握り)
「よし、フォーゼリアで師匠と再会できるかもしれないってわけか……会ってやりたいな。迷惑かけっぱなしだったし、今のオレを見てほしいんだ」
バーナード「きっと、あいつもお前に会いたがってるさ。……ただ、相手が雪国で冷えてる分、心もさらに固くなってるかもしれん。手強いぞ?」
アルベルト「ふふっ、だったらオレの熱血で溶かしてやるさ」
バーナード(真剣な目つきで)
「間違っても、フォーゼリア地方にあるシンズタワーには行くんじゃないぞ……」
アルベルト「シンズタワー……?」
グランジャス(腕を組み、渋い顔で)
「ああ、別名『エビルタワー』。忘れ去られた古塔だ……。かつて大陸を震えさせた『七つの大罪』――それぞれの悪徳を象徴する魔が封印されてると聞く」
カラスト(やや緊張しながら)
「聞いたことあるよ……。傲慢、嫉妬、憤怒、怠惰、強欲、暴食、色欲――それぞれに対応する“悪魔の化身”が眠っているって」
シシオ(眉をひそめ)
「そいつらが目覚めたら、世界がまた戦火に包まれるって噂もある。俺がまだ若ぇ頃、塔の扉を開けようとした奴らは、誰一人帰ってこなかった」
ティミス「あんたが行こうとしたんじゃないの?」
シシオ「行こうとはしたが……ホルスターに止められてな。あの時は……正解だったかもな」
ホルスター(ふっと笑って)
「あの場所は“力だけでは越えられない”って、私の恩師が言ってたわ。心の闇を映す場所――だからこそ、今の私たちじゃ危険すぎる」
マル「こ、怖っ……じゃあ俺は絶対近づかないでおきます……特に色欲の階層なんて何が出るか分かんない!」
カリン「それ、アンタがいちばん危ないわよ?」
グランジャス「……だが、いずれ通る運命かもしれんな。世直しの旅を続けていれば、いずれ“あの塔”の扉を叩く時が来る。だが今はまだ、その時じゃない」
バーナード(にっこりと)
「じゃあな、ある坊や。お前さんの旅路が実り多きものになるよう祈ってるぞ」
アルベルト
「ああ、爺さんも体には気をつけてな!」
グランジャス
「またどこかで会おう、旅人同士ってのは不思議と縁があるからな」
バーナードに手を振って別れた一行は、すっかり夜の帳の降りた街を歩き、温かな灯りのともる宿屋へと足を運ぶ。
宿屋「ホワイトベル」
中は木のぬくもりが感じられる、落ち着いた雰囲気の宿。フロントの女性がにこやかに出迎えた。
「お待ちしておりました」と、彼女はにこやかに言う。
宿屋の奥では、薪の暖炉がパチパチと音を立て、外の寒さとは対照的に、柔らかな光が広がっていた。旅の仲間たちは、ここで装備を点検し、雪の国に備えて防寒や食料の準備を進める。
アルベルトは地図を広げ、雪道のルートを確認しながら、仲間に声をかける。
「ここで十分に準備を整えておこう。フォーゼリアは雪が続くだろう。油断はできない。」
仲間たちはうなずき、それぞれの荷物を整理し、必要な道具を確認し始めた。宿屋は次の冒険への拠点として、静かに彼らを包み込むようだった。
宿屋の部屋に荷物を広げ、仲間たちはそれぞれ準備を始めた。
アルベルトは地図を広げ、雪道の危険箇所を指し示す。
「ここから先は雪崩の危険が高い。ルートを少し変えたほうが安全だな。」
ティミスは毛皮のコートを整えながら、軽口を叩く。
「アルベルトさん、真面目すぎますよ。雪を楽しむ余裕も必要ですって。」
マルは荷物の隅に置かれた小さな袋を見て眉をひそめた。
「…これ、誰が持ってきたんだ?この量の食料はちょっと多すぎる気がするが。」
「それは俺だ」と、グランジャスが肩をすくめる。
「雪国に行くんだから、食料は多めに持って行かないとな。道中、何があるかわからんしな。」
そのとき、宿屋のフロントから声がした。
「お飲み物はいかがですか?寒い夜にはホットミルクがよく合いますよ」
仲間たちは笑いながらカップを受け取り、火のそばで暖を取る。
「…やっぱり、こういうひとときがあると旅も悪くないな」と、アルベルトは穏やかに言った。
しかし、準備の途中、小さな騒ぎが起こる。
ティミスがうっかり毛皮のマントを引っ掛けてランタンを倒してしまい、炎が小さく揺れる。
「わっ、危ない!」
グランジャスがすぐに駆け寄り、炎を押さえながら笑う。
「…大丈夫、火は消えた。でも、ティミス、もう少し慎重にな。」
「すみません…でも、焦らなくても大丈夫ですよね?」とティミスも笑い、和やかな雰囲気に戻った。
一行は男部屋と女部屋それぞれに入る
宿屋に着いた一行はフロントで名前を告げ、チェックインを済ませた。
鍵を受け取り、二手に分かれて部屋へ向かう。
男部屋。
暖炉の火が赤く揺れ、ほのかに木の香りが漂っていた。荷物を置いたアルベルトが仲間たちに声をかける。
アルベルト「これからどうするか」
グランジャス「とりあえず確認しておけよ。荷物とかはな」
そう言うと、彼は鎧を外すのもそこそこにベッドへ倒れ込んだ。
「ふぅ……」と息をつき、もう目を閉じている。
シシオ「俺も眠い」
カラスト「僕も寝る」
次々とベッドに潜り込む仲間たちに、マルが肩をすくめる。
マル「まだまだ夜は長いですが、寝る方が良さそうですぞ」
アルベルトは少し考え込んだが、仲間たちの寝息を聞いて苦笑し、毛布を引き寄せる。
アルベルト「……仕方ないな」
こうして男部屋は静けさに包まれ、一日の疲れを癒す夜が訪れるのだった。
女部屋。
窓の外では夜の風が吹き、カーテンがゆらりと揺れる。
暖炉の火が静かに揺れ、女性陣はベッドや椅子に腰を下ろして、ひとときの会話を楽しんでいた。
ティミス「疲れたわね」
マリーナ「本当にね。それにしてもマルは相変わらずすけべで……ある意味安心したわ」
ホルスターは苦笑しながらも、少し真剣な口調で続ける。
ホルスター「困りますけどね。でも抜け目はないですし、時々助けられることもありますから」
カリンは微笑みながら、ベッドに腰掛ける。
カリン「ご主人様は最近、前よりずっと紳士的よね」
その言葉に、メルディスが毛布を抱きしめながら頬を赤らめる。
メルディス「ダーリンになら、いくらでも見られていいのに……」
一同は顔を見合わせ、思わず笑いがこぼれる。
こうして女部屋は、にぎやかな女子会のような雰囲気に包まれていった。
女部屋はやっと静けさを取り戻したかに見えた。だが、ふと小さな声が漏れる。
カリンが鼻を鳴らすように「クーン」と言い、メルディスが愛おしげに囁く。
メルディス「ダーリン……」
二人の声は寂しげで、どこか我慢できない気持ちを含んでいた。
カリン「ダメ、我慢できない」
メルディス「私も」
そっと、二人は寝静まった廊下を抜け、男部屋へと向かう。戸を開けると、グランジャスは深い眠りの中にあり、毛布に丸くなっていた。静かに布団にもぐりこむと、カリンがそっと息を漏らす。
カリン「やっぱりご主人様の匂いがないと安心して寝れない」
メルディス「私も、ダーリンが居ないと安心出来ない」
二人は互いに寄り添いながら、グランジャスの両脇にぴたりと体を預ける。暖かな呼吸と、彼の安らかな寝息が、夜を優しく満たしていった。グランジャスはまだ目を覚まさず、薄暗い部屋には三人の穏やかな影だけが揺れる。やがてカリンもメルディスも、安心したように眠りに落ちていった。
翌朝。
まだ空が白み始めたばかりの頃、カラストとアルベルトは早く目を覚まし、洗面所で顔を洗い終えて部屋に戻ってきた。
アルベルトはふと、部屋の隅に並んだ布団に目をやる。
アルベルト「……おっさんの布団、やけに大きいな」
首をかしげるアルベルトの横で、カラストも不思議そうに覗き込む。確かにグランジャスの布団だけ、妙に膨らんでいる。
その時、隣の布団からシシオがむくっと上体を起こし、大きなあくびをした。
シシオ「んん……ふぁぁ……」
彼は寝ぼけ眼のまま、のそのそと立ち上がり、洗面所に向かって歯磨きを始める。
アルベルトとカラストは顔を見合わせた。
「……なあ、あの布団の中、ほんとにおっさんだけか?」
二人の視線の先では、まだ布団がかすかに動き、誰かが潜り込んでいるようだった――。
布団がもぞもぞと動いた。
アルベルト「うおっ……!」
驚いて身を引くアルベルトの前で、毛布の中からメルディスがゆっくり顔を出す。
メルディス「うーん……よく寝た。……あら、おはよう」
にっこり笑うメルディスに、アルベルトもカラストも目を丸くした。
カラスト「メ、メルディスさん!? なんでおっさんの布団に!?」
さらに布団の反対側から、寝ぼけたカリンがひょこっと顔を出す。
カリン「……ん……? あれ、もう朝?」
アルベルトは頭を抱え、ため息をつく。
アルベルト「おいおい……おっさんの布団がやけに大きいと思ったら、こういうことか……」
布団の中でまだ眠っているグランジャスの顔を、カリンがそっと覗き込む。
カリン「ご主人様、朝だよ……」
そう言って、彼の頬や額に、ちゅっ、ちゅっと小さなキスを繰り返す。
グランジャスはむにゃむにゃと寝言を言いながらも、眉を動かした。
その様子を見ていたメルディスが頬をふくらませる。
メルディス「カリン、ずるい! 私もする!」
そう言って、彼女もグランジャスの反対側から抱きつき、同じようにキスを落とし始める。
二人に挟まれたグランジャスは、ついに目を開けてしまった。
マルは腕を組み、にやにやしながら一言。
マル「あさからお熱いですな」
グランジャスは大きなあくびをして、目をこすりながら体を起こした。
グランジャス「ふわぁ……そうだな。準備したら、朝のバイキング食うぞ」
その言葉に、カリンとメルディスはぱっと顔を見合わせ、声を揃える。
「「やったぁ!」」
マルはにこやかに頷き、
マル「旅の楽しみは食事ですからな」
アルベルトは苦笑しながら地図を畳み、カラストも肩をすくめて微笑む。
シシオは歯磨きを終えて戻り、
シシオ「よし、しっかり食っておかねぇとな。雪国は腹が減る」
ルプスが腕を組んで、せっかちな声をあげた。
ルプス「ほら、行くぞ」
シーフェも腰に手を当て、少し呆れたように笑う。
シーフェ「置いていくわよ」
その言葉にアルベルトが慌てて叫んだ。
アルベルト「おい、待ってくれ!」
慌てて荷物を背負い直した一行は、ぞろぞろと列をなしながら食堂へ急ぐ。
扉を開けると、焼き立てのパンの香りや温かなスープの匂いが一気に広がり、仲間たちの顔に笑みが浮かんだ。
グランジャス「よし、好きなもんを山ほど取ってこい。今日から雪の国だ、しっかり腹ごしらえだぞ」
仲間たちは一斉にテーブルに向かい、皿を手にしてわいわいと盛り付けを始める。
旅立ちの前のひととき、宿屋の食堂は小さな祝宴のように賑やかだった。
宿屋の食堂はバイキング形式で、長いテーブルにパンや焼き魚、肉料理やスイーツまで並んでいた。
香ばしい匂いに包まれながら、一行はそれぞれ好きな料理を選び始める。
アルベルト「俺はクロワッサンにイチゴジャム……それにスイーツ各種だな」
甘いものがずらりと並んだ皿を手にして、にやりと笑う。
ティミス「私は焼き魚をメインの和食にするわ」
和やかに盛り付けられた朝ご飯は、彼女らしい落ち着いた雰囲気を漂わせていた。
グランジャス「俺は納豆とかのスタミナ定食風にしよう」
大皿に盛られたご飯と味噌汁を抱え、豪快に席へと向かう。
カリン「私は、焼肉定食風にしますね」
香ばしい肉をたっぷりと皿に盛り、満足げに笑う。
メルディス「私はパンとミルクスイーツの洋食に」
小ぶりなケーキやプリンを選び、嬉しそうにフォークを手にしていた。
マル「私は穀物系にしますかな」
カラスト「そしたら一緒に穀物のシリアル、ミルクにしよう」
マル「そうですな」
シシオは少し豪快に、
シシオ「俺は中華にしよう」と、大皿に炒め物や餃子を盛る。
ホルスターは静かに笑みを浮かべ、
ホルスター「私は野菜中心にしましょう」と、色とりどりのサラダを選んだ。
ルプスは医者らしく、バランスを考えた食事を意識して皿を整える。
ルプス「医者として健康に行かないとな、バランス良く」
シーフェも微笑みながら、ナースとして気を配る。
シーフェ「私もナースとして、バランス良く」
こうして、各々の個性が反映された朝食がテーブルにそろい、食堂は笑い声と活気に包まれる。
甘い香り、焼き魚や肉の香ばしい匂い、色とりどりの料理の華やかさ。
旅立ち前の朝、仲間たちはこうして束の間のひとときを楽しむのだった。
一行が朝食を終え、満足そうに皿を片付けようとしたその瞬間、食堂の入り口付近で気取った雰囲気の貴族が現れた。
貴族「どけ、下民ども!」
その一言に、食堂の空気が一瞬で張りつめる。
アルベルトは眉をひそめ、すぐに反応した。
アルベルト「朝からうるさいな、貴族さんよ……」
貴族は胸を張り、鼻高々に声を張り上げた。
貴族「下民の分際で逆らうな!」
アルベルトは腕を組み、涼しい顔で反論する。
アルベルト「そうやって偉そうにしてるから、嫌われるって知らねぇのかよ」
貴族はむっとして顔を赤らめ、怒りを露わにする。
貴族「この!」
その瞬間――食堂の天井や壁から、突然触手のようなものが伸び、貴族を絡め取り、ぐいぐいと遠くへ引きずり込んでいった。
周囲は悲鳴と驚きで騒然となる。
カリン「きゃっ!」
ティミス「な、何ですか今の!?」
アルベルトは肩をすくめ、少し呆れた顔をしながら仲間を見渡す。
アルベルト「……まあ、朝から静かになったな」
グランジャスはにやりと笑い、
グランジャス「うむ、下手に偉そうにするからこうなるんだよ」
マルも楽しげに笑いながら、
マル「朝から勢いがありますな……旅はこれだから面白い」
宿屋のチェックアウトを済ませ、外に出た一行の目に、先ほどの騒動の後の光景が飛び込んできた。
そこには――ウツボカズラのリリフフ族と人間のユヒン族のハーフの女性が立っていた。
彼女は静かに、しかし確実に、先ほどの貴族を捕食し、体を溶かしていく。
アルベルトは一瞬言葉を失い、口を開く。
アルベルト「……お、おい……ちょっと待て……」
ティミスは顔をしかめ、後ずさる。
ティミス「……すごい……これが、自然の摂理……?」
グランジャスは冷静に、しかし少し興味深げにその光景を見つめる。
グランジャス「……見事だな。下手に逆らった貴族は、こうなるわけか」
マルは少し笑いながら肩をすくめる。
マル「なるほど……朝から教訓ですね。下民が逆らうとどうなるか、目の当たりにしましたな」
カリンとメルディスは互いに顔を見合わせ、少し震えながらも、アルベルトの方へ体を寄せる。
リリフフ族とユヒン族の女性は、何事もなかったかのように静かに立ち去る。
その背中を見送る一行は、朝の一件がこれで完全に片付いたことを理解しつつも、少し緊張感を残したまま旅を続けるのだった。
リリフフ族とユヒン族のハーフの女性は、一行を見やり、にこやかに言った。
???「私はリセリナ。ウツボカズラと人間のハーフよ。あんた達、旅人? なら私も連れてって。暇だし、それにこのキンカチョウ……可愛いし」
手元の小さな鳥を抱きながら、軽やかに笑うリセリナ。
その堂々とした雰囲気に、一行は少し驚きながらも視線を向ける。
マルはにやりと笑みを浮かべ、少し警戒しながらも言った。
マル「光栄ですが……恐ろしい存在ですな」
アルベルトは腕を組み、半ば呆れ顔でリセリナを見つめる。
アルベルト「まあ……一緒に行くなら、朝からの貴族騒動を含めて、かなり刺激的な旅になりそうだな」
グランジャスは目を細め、興味深そうににやりと笑った。
グランジャス「ふむ……面白そうじゃないか。新しい仲間、歓迎だな」
リセリナは胸を張りながら、笑みを浮かべて言った。
リセリナ「私の袋はね、捕食と捕縛に分けられるのよ」
彼女の手元の蔦のような器官が、するすると動いてみせる。
片方は粘液で相手を絡め取り、もう片方は吸収するように揺れていた。
マルは目を細めて腕を組み、少し震えながらも口を開く。
マル「……恐ろしいですな。だが……捕虜を入れるのにはうってつけですな」
アルベルトは苦笑しながらも頷いた。
アルベルト「便利っちゃ便利だが……扱い方を間違えると相当やばそうだな」
ティミスは額に手を当ててため息をつく。
ティミス「……これ以上トラブルの種が増えるのかしら」
グランジャスは豪快に笑い飛ばす。
グランジャス「ははは! 面白いじゃないか。捕食に捕縛……戦力としては申し分ない。歓迎するぜ」
リセリナは嬉しそうに頷き、一行に歩み寄る。
こうして、リセリナは旅団に加わることとなり、メソング編の締めと同時に、新たな冒険への布石が打たれたのだった。
アルベルトは仲間たちに声をかける。
「さあ、準備は整ったな。フォーゼリアへ向けて出発だ。」
ティミスはマントを羽織り、毛皮の手袋を確かめながら微笑む。
「雪の国、楽しみですね。…無事に行けますように。」
マルは荷物を肩にかけ、グランジャスはいつものように軽く背伸びをする。
「それじゃあ、行こうか」とグランジャスが仲間を見渡す。
フロントの女性が窓から手を振る。
「お気をつけて、そしてまた無事にお戻りくださいね」
一行は宿屋を後にし、メソングの町を抜け、雪が振り続けるフォーゼリア地方へと足を進めた。
冬の風が吹き抜ける中、彼らの冒険は新たな章へと続いていく――。
道物語(ロードストーリー )メソング編 [完]
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