「荒ぶる獣」
山猫と化したブラムは前に駆けだした。
バートリーが怒りにまかせて槍を振り回す。
ブラムは、それを素手で受け止めると、剣を魔物の肩に突き刺した。
鱗に軌道を乱されたが、剣は深々と肉体に埋まり相手に更なる苦痛を与えた。
「ケダモノが!」
バートリーが声を上げ、尾を鞭のように振るいブラムの脇腹を激しく打った。
「うっ!」
腹部の内と外に激痛が走る。
損傷した内臓から血が込み上げ、ブラムは吐血した。
魔物は、よろめく彼に向かって爪を振り下ろす。
胸に三本の赤い線が刻まれ、真っ赤な血の噴水が噴き出した。
だが、彼も攻撃を受けるだけではなかった。
ブラムは、とっさに胸を引き裂いたバートリーの腕を片手で掴むとそのまま自身に引き寄せもう一方の手を魔物に首に添えた。
ビリビリ。
爪を立て、蛇の皮膚を鱗ごと剥す。
「や、やめろおおおおおおおおおおおお!」
バートリーは、痛みと恐怖に悲鳴を上げながら暴れ回る。
魔物の尾と爪と牙がブラムの身体に襲いかかりブラムの身体を突き飛ばした。
ブラムは、文字通り猫のような身のこなしで体制を立て直し着地すると、再び敵に向かって駆けだした。
正面から突っ込み、相手が攻撃したところをかわす。
その後、ブラムは素早くバートリの後ろに回り込むと無防備な背中に飛びつき先程皮を剥した首筋に鋭い歯を突き立てた。
「ぎゃああああああああああああああああああああ!」
ブチブチブチ…!
魔物の首が、おぞましい音をたてて千切れた。
ブラムは、頭を振り首から肉塊を引き千切ってその場に吐き捨てた。
魔物は天井に届くほど高く血飛沫を上げながら絶命した。
バートリーの死体を一瞥し、ブラムはマリとスヴェートいる方へ歩き出した。
「ブラム!」
マリが真っ直ぐブラムのもとに駆けつけ彼の身体を抱き締めた。
マリの肩越しにスヴェートを見ると彼女は壇にもたれ掛かりながら薄目を開けてこちら側に微笑みかけていた。
どうやら、命に別状はないらしい。
そう思った瞬間、身体から力が抜けブラムはマリの身体にもたれかかる様に倒れた。
「ブラム? おい、しっかりしろ、ブラム!」
「大丈夫。ちょっと力が抜けただけ」
ブラムは、弱々しい声で答えた。
一度に多量の血を失ったせいか、妙に身体が軽く感じる。
「何か…、眠いな…」
彼は、そう言うとゆっくりと意識を失っていった。
マリが何か言っているのが聞こえる。
スヴェートの匂いが近づいて来た。
だが、それも全て闇の中に埋もれてしまった。