狭間の守護者達ー秘密のなりそこない淫魔ー(前篇)

  ―わたしには秘密がある―

  ―オレには秘密がある―

  この世界に生きる淫魔にとって己の影・裏の姿である淫魔としての生に比べれば表・光の姿である人としての生はあまりに儚く脆い。

  しかし、淫魔達は影の生を振りかざし光の生を嘲笑う事はしない。

  いかに仮初めの生だとしても影の生も己の姿なら光の生もまた己の姿。

  仮に光の生が仮染めとしても裏の生と表裏一体である事に変わりはない。

  長いも短いもなく生命は尊ぶもの。

  それを軽視し踏みつける事は淫魔達そのものへの侮辱でありその罪は地獄の大裁判、あるいはかの最高処刑者の裁きを受けてもおかしくはない程に重い。

  ただ、すべての淫魔達が正しくシャドウサイドへの覚醒を行えるとは限らない。

  これは思わぬ形で自らのシャドウサイドと向き合う事になった者の物語である……。

  [newpage]

  とある夜。

  いわゆる「眠らない町」と呼ばれる領域が広がろうと陽の領域―ライトサイドに生きる者が基本休息に就いている、いや「就いているべき」頃合い。

  そんな中、裸の男が一人、暗がりの中で本能のまま動いていた。

  「ううっ……ううっ……うううっ……」

  凛々しくも荒ぶる声を上げながら仁王立ちしたままの姿勢でそそり立つ己の証たるモノを握りしめる男。

  筋肉質とはいかないが相応にたくましく整えられた肉体と凛々しい顔つきをしかめさせる度にその筋肉がしなる。

  その度にそのたくましいモノを握りしめる手に力を入れていく光景はかなり異様とも取れる。

  そんな男をよく見るとたくましく引き締まった尻の辺りからは黒く相応の長さと太さを持った尾が伸びている。

  更に相応の弾力も秘めているのか、男が腰を震わせる度に力強く震え幾度となくその先が大きく弧を描く。

  相応に筋肉の付いた体格の良い体の先にある頭部には一対の巻き角が金色の輝きを覗いている。

  その凛々しい顔つきは恍惚に震え、金色に光る目も更に光を増している様だ。

  そう、この男もまた淫魔―インキュバスであり、今はその「お楽しみ」の最中でもあるのだ……。

  ―ふうっ、ううっ、うう……。

  出掛けのこいつはやっぱたまんない。

  これから「食事」としゃれ込むつもりだけどヘタすりゃこれだけでも腹が満ちそうだ。

  そもそもオレ達淫魔は他の奴らとスる事でその精気を頂いて生きている。

  さすがに朽ちちまうまで吸い尽くすってこたぁなかなか無いが、オレ達には欠かせない行為って訳さ。

  ただ、オレの場合こうしてオレ自身のモノをつかんでシているだけでけっこう―「腹にたまる」んだ。

  なぜかって?そいつはオレが普通の淫魔とはちょっと……っと、そろそろ……来るか。

  握りしめたモノを尻から何度も打ち込んでいく。

  「うっ、ううっ、うあっ、うおっ!」

  モノを握る手の中でオレのモノが激しく震え、そして熱くなっていく。

  さらにモノ―から伝わる様にオレの中が熱く、熱くなっていく。

  ああ……たまんない……オレの中で熱いものが満ちていく……。

  オレの体の中で熱いものがはち切れそうになりながらオレはひたすら尻を打ちつけ、両手で受け止める。

  「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」

  そして―来る!

  「うあっ!」

  熱いものがオレの中で爆ぜる感覚。

  その熱いものがモノを通じてオレの中から盛大に吹き出す―事はなかった。

  ただ全身が思い切りビクリと震え、文字通り「イッた」のは間違いない。

  そして吹き出す事なくオレの中に溜まっていた熱いものがオレの中に静かに吸い込まれて行く……。

  ああ……良い心地だ……それに……うまい……。

  体中に熱い精気が染み込んでいく。

  本当に「うまい」位に。

  思えば変な話だ。

  他の女性とスる様にオレは一人でこうスる中で自然と精気がいただけている。

  その代わりどんなに激しくシようと自分の熱いもの―精を吹き出せない。

  女性の精気を吸い己の精を放つ事で本能を満たすインキュバスとしてはこれは欠陥に近い。

  それでもオレは淫魔の本能に従い、獲物を求めて夜の闇に消える。

  流石に丸裸ではなくいつの間にか体中にびっちり張り付いた黒い全身スーツと肩・腕・足・腰についた金色の装飾品を身にまとい。

  一対の黒い羽と尾を夜空になびかせて……。

  暗がりの中で裸の男女が絡み合っている。

  「……」

  「あぁ……あぁ……あぁ……」

  男は大した動きをしていないにも関わらず女は声を上げ身をよじらせる。

  激しくしなる細い体をさながら時に荒馬をいなすカウボーイの様に押さえ込み、時にろくろの上で回る粘土を陶器の形にする様に沿わせながら。

  その両手、そして女と繋がっているその箇所に力を込めながら男は静かに腰を、体を震わせている。

  「ああぁっ―あああぁっーああぁっ―」

  荒々しい獣の様なそれとはまた違い、静かでありながらも熱く力強い交わりに女は今まで感じた事のない熱い喜びに声と身体を震わせる。

  ここまでなら良くある男女の睦み合いで済む話で有る。

  しかし、女性はともかく男性は黒い尾と羽を伸ばし、激しく震わせながら女性に彼自身を打ち込んでいる。

  そう、先程のインキュバスである。

  ―ううっ……やっぱりいいぜ……。

  こうしてつながっているとオレが淫魔だって事を嫌でも感じさせられる。

  美味そうな気配をしてたこの女の前にヒョイと顔を出して驚く間もなく魅了して……。

  あとは焦らす様に脱がせたあとじっくりと撫でて揉んでつまんで。

  そうして良い具合に女が熱くなった所で「繋げる」のさ。

  あとはこうして軽く腰を振る事で……。

  ううっ、ううっ……効くなぁ……、

  「ああっ―ああっ―ああっー!」

  オレのアレが女の中で熱くたぎっている。

  そして女もまた熱くなっているのがオレのアレから伝わってくる。

  その熱さに体をよじらせながらオレのアレを引き締めて押し込んで来る。

  リズムこそやや単調に聞こえるけど彼女がそうとうキている事は間違いない。

  ううっ、うおっ!今夜も良い獲物だ。

  女、そしてオレの内側が良い具合に熱く弾けそうな具合に熱く溢れているのを感じるぜ。

  さて、そろそろ仕上げといくか……うっ。

  押し込む動きを強める。熱くて厚い壁がオレのモノを抑え込むがその奥にある熱いもの共々貫いて……うっ!

  貫いた瞬間、オレの中に溜まった熱いものがオレの中から吹き出す事無く爆ぜる。

  「ああ―ああっ―ああっ―あああっ!」

  女もビクンと一瞬震えたあと糸が切れたように倒れ込む。

  無理もないだろう。

  淫魔であるオレにヤられてイかされりゃ嫌でもこうなるってものさ。

  それに……感じる……。

  この女の中にあった熱いものがオレの中に吸い込まれていく、オレの糧になっていく感覚。

  オレが吹き出さない代わりにオレのモノが女から精気を吸い取って行く。

  安心しな、ちょっといただくだけさ。

  オレの外から女の精気が、オレの中から熱いものがオレの中に染み込んでいく。

  うう……おお……ああ……。

  いい……この感覚、それ自体は悪い事じゃない。

  オレは淫魔だ。

  女とシてその精気をいただくのは本能だ。

  でも……やっぱり違う。

  女の中に精を打てず淫魔の―インキュバスとしての本能と快楽を満たすには何かが足りていない。

  それが何か―わかってはいる。わかっているが……。

  「良い夢見なよ、”先生”」

  とことんヤったせいか良い寝顔で眠っている女にそうつぶやくとオレは再び装束をまとい部屋を去る。

  それと入れ替わる様に女もまた着ていた寝間着を素肌にまとっていく。

  彼女にとって全ては疲れて見ていた一夜の淫夢。

  あとはヤりきった心地よさと適度にヌけた感覚と共に目覚めるだけ。

  しかし、当のオレは……。

  とりあえず今夜は「表の寝床」に帰る事にしたオレは夜を駆けていく。

  その道の中でかすかに感じた強く淫らで……純粋な気。

  しかし、その時のオレはそいつをいただくまでには気が回らなかった。

  いつかその日は来るという確信だけを残し、オレは闇に消えていった……。

  [newpage]

  翌朝。

  とある学園の教室でいつもと変わらぬ講義が行われている。

  壇上に立つ教師のいつになくいきいきとした表彰と雰囲気は生徒達の中に静かな話題の種をもたらしている。

  ―高津先生、何か良い出会いでもあったのかな。

  ―宝くじでも当たったとか。

  ―案外昨夜どんちゃん騒ぎでもしていたりして……その割には元気そうだけど。

  講義にも生徒達にも真摯であり生徒達の支持も高い故にしばらく疲れ気味だった教師の変化は色々な憶測を走らせていた。

  そしてその真実を知る者もまた―。

  「夜中にいきなり忍び込んだ淫魔に色々サれちゃいました・か……」

  ―ふとそうつぶやいてしまう。

  元気に教壇に立つ先生を見ていると昨夜「獲物」にして良かったと思う。

  高津先生はわたしにとっても本当に良い先生だし色々お仕事が大変な中で潰れてほしくない。

  だから昨夜先生を……。

  何気に昨夜の事を考えるうちに気持ちが軽く緩んでくる。

  ちょっとどこかずれていたみたい。

  だから―。

  「―加村さん、加村悠さん?予習復習は寝不足までしてするものじゃないですよ?」

  先生が優しくもしっかりとした声でそう言った時つい、

  「加村悠とは世を忍ぶ仮の姿、その正体は……」

  と言いそうになった。

  いけないいけない。

  危うく「本名」を言いかける所だった。

  わたしの秘密。

  わたしの「本当の姿」。

  わたしの「本当の名前」。

  そして今ここにいるわたしの姿も名前も言うなれば「偽りの姿」だと言う事。

  それはここにいる誰にも言う事はできない。

  今は「偽のわたし」でいる以上こらえないといけない……。

  「高津先生、念の為加村さんを医務室に連れていきます」

  「わかったわ。嶋さん、ひとまずお願いするわね」

  そんなやりとりのあと「嶋さん」―景子はわたしに付き添う形で教室をあとにする。

  教室を出て二人して廊下を歩く二人。

  整った濃いブラウンのショートカットと顔立ちの悠は身長としてはそこそこ平均的。

  その分ふんわりした黒いロングヘアと幼さを残した顔立ちと悠より一回り身長のある景子は印象的に見える。

  「ありがとう景子。でも医務室なら一人で行けたしそれに―休む事はなかったわ」

  「ううん、わたしが勝手に言った事だし付き合うのは当たり前じゃない。それに、ホントに倒れたら一大事よ?」

  「うん―ありがと」

  「どういたしまして」

  そんなやり取りをしながら歩いていたがー。

  「きゃっ?」

  「悠!?」

  わたしが「本当のわたし」に目覚めてから「疲れる」と言う事はそうそうない。

  夜通し飛び回り―「ああ言う事」をしていても疲れも眠気も感じない。

  ただ、それでもつい足をもつれさせて倒れかける事はある。

  「悠!?」

  景子がとっさに手を伸ばして支えてくれて助かった。

  「まったく、気をつけてね?」

  「う、うん……ありがと」

  その瞬間、わたしは感じてしまった。

  恵子の伸ばした手が、服越しの肌が、そしてそのわたしよりは大きな胸の膨らみがわたしの体を抑え込むように支えていたと言う事に。

  そして思い出す。

  昨夜、「本当のわたし」が感じた強く淫らで純粋な気。

  あれは間違いなく景子だった。

  人が誰かを思う時に出る気の高まり。

  それが「本当のわたし」達好みに高まっていたあの感じ。

  そのせいかその長い髪が体にかかる感覚にをつい反応してしまう。

  さらにわたしは聞いてしまった。

  軽く潤みかけた瞳。

  少し火照った顔。

  その口元からかすかに聞こえる「悠……」の声。

  「偽りのわたし」でも感じてしまうのを止められない。

  そう、「本当のわたし」の本能に従うならこのまま……。

  「景子……」

  その時、わたしは「本当のわたしに戻る」つもりで声をかけた。

  それこそ人目のつかない所に連れ込んで。

  いや、いっそこの場で……、

  でも、景子はその声に我に返ったのか。

  即座に体を離し、何事もなかった様にわたしを促す。

  「とにかく、しばらく休めば落ち着くだろうし。夜ふかしは体に悪いわよ?」

  わたし自身も我に返ってしまったのか、彼女に先程の艶を感じられなかった。

  改めてわたし達は医務室に向かう。

  その中でわたしは訪ねた。

  「景子、今日……わたしの部屋に来ない?」

  [newpage]

  その夜。

  幸か不幸か共に一人暮らし、しかも明日は休日と言う気軽さもあり景子は悠の部屋に遊びに来ていた。

  昔からの付き合いと言う事もあり、軽いのりで何気ないやり取りやゲームに興じたり。

  ごく何でもないガールズトークな時間が流れている。

  そうこうしている間に時計は一般的にはひとり歩きにはやや危険な時間を指していた。

  「景子、泊まって……いかない?」

  やや思う所を込めながら悠は声をかける。

  景子は少しだけ考え込んでいた様だが、

  「オッケー。さすがに着替えは持ってきてないけれどね」

  と明るく返す。

  「はは……さすがに景子に合うブラは用意してないし」

  「こらこら」

  そんな感じで明るく笑う2人。

  しかし、悠の顔に意味ありげなものが浮かんでいた事を今の景子は知る由もなかった。

  浴室から流れていた温かいシャワーの音が止みしばしの後、バスタオルを巻いただけの姿で景子が外に出る。

  「あれ……?着替え出してない?入っている間に用意するって言ってたのに」

  カゴに着替えどころか自分の着ていた下着さえ入ってない事に少しムッとなる。

  ふと見ると小型の洗濯機が音を立てていたので洗濯しているらしいのはわかる。

  「まったく……」

  普段はしっかり者の印象がある友人の思わぬポカに軽くぼやきながら景子はバスタオル姿のまま悠の部屋に向かう。

  「悠?着替え用意してなかったけど……」

  扉を開けたその部屋は暗がりに包まれていた。

  只厚いカーテンから漏れるほのかな外の明かりだけが部屋の形をかろうじて示している。

  「……悠?」

  その部屋の奥に友人の姿を見て声をかけるが、その空気はどこか異様だった。

  「―待ってたわよ景子」

  いつになく落ち着いた、それでいてどこか怪しげな声で悠は返す。

  「着替え、ね……別に良いじゃない。今夜は着替えなんて必要ないし」

  そう言いながら一歩歩み出す悠は―何も身につけてはいなかった。

  「悠、ふざけてるとかは……ない……よね?」

  素肌に只一枚巻いているバスタオルをぎゅっと握りながらおそるおそる尋ねる。

  「ふざけてる―違うよ。わたしは本気。本気で景子が「欲しい」の。そう……景子がわたしを「欲しがっている」様に」

  口調を変える事なく悠の言葉に一瞬景子の動きが止まった。

  その時、ふと手が当たったのか巻いていたバスタオルが解け落ち、景子のスタイルの良い裸身が露わになる。

  向き合う裸の二人。

  スタイルについては景子の方が上だが、今の悠にはそれを圧倒する様な妖しい空気が満ちていた。

  「見ていて景子。あなたがわたしを思ってシてた事と同じ事をスるのを。そして―」

  いつの間にか荒く甘い呼吸を交えながら語る悠の股間―彼女の「女性の証」の真上にいつの間にか怪しげな紋章がほんのりと浮かぶ。

  その姿に景子は露わになった裸身を隠す事さえ忘れ息を飲んだ。

  そして、悠は続ける。

  「わたしが「加村悠」なんて言う偽りの姿を脱ぎ捨てたわたしの「本当の姿」を!」

  そう言って悠は自分の足の間―自身の秘めたる場所におもむろに指を突っ込んだ。

  「ううっ!」

  [newpage]

  ―言っちゃった。言ってしまった。

  景子の前で裸になりそして……。

  わたしの秘密―「加村悠はわたしの仮の姿」と言う事実を告白した。

  景子はやっぱり驚いてる。

  無理もないか。いきなり友達が裸で現れて「わたしはわたしじゃない」と言って一人で始めるんだもの。

  かつてのわたし―自分が加村悠だと思い込んでいた頃のわたしもきっと驚いていたはず。

  でも今のわたしには当たり前の事。

  偽りの姿を脱ぎ捨てて「本当の自分」を解き放つ為の大事な儀式。

  始める、始まるわ……。

  「あんっ、ああんっ!ああんっ!」

  わたしの中で、その入り口にあるもので、わたしの指が荒れ狂う。

  本当はもう肌や胸、そしてそこの周りをじっくり味わって気持ちよくなってからシている事だけど今回は特別。

  早く気持ちよくなりたい。

  早くイきたい。

  早く―「本当の姿」に戻りたい。

  そして、そして―。

  「あっ、ああっ!ああっ!みてっ!わたしっ!イクっ!イクっ!あっ!あっ!あっ!」

  何度も身をしならせ、よじらせながらも踏みとどまりながらわたしは必死にそこをいじり続ける。

  そこの上にある紋様―わたしの「本当の姿」の証が熱を帯びていく。

  その熱さに導かれながらわたしの両手の指がねちゃねちゃ音を立てながらそこをつまむ。押し込む。ねじり回す。

  髪を振り乱し、景子程じゃないけどそれなりの胸を激しく揺らしながらわたしは、わたしは……。

  「あ!あ!あ!あーイクっ……あっ!」

  体を大きくのけぞらせながら―イッた。

  同時にわたしのそこから激しい飛沫が吹き出し目の前の景子の肌を濡らす。

  景子が何か反応してるみたいだけど今はそんな事気にしていられない。

  わたしはいつの間にかそこをまたいじりだす。

  さっきとは比べものにならない熱い波が紋様からそこを通じて満ちてくる。

  「はぁ……はぁ……みてて……わたし……ほんとの……わたし……」

  薄れつつある「偽りのわたし」がうつろにそう告げる中、わたしはそこをいじり続ける。

  もっと強く、もっと激しく、もっと熱く。

  つまむ。押し込む。かき回す。

  「いいっ!イイっ!キテる!キテるぅ!ホントのわたし……キテるよぉ!」

  ふらつく足を踏みとどまらせながら高まり続けるわたしの足元にいつの間にか何かがまとわりついている。

  黒く、重く、それでいて柔らかく。

  それは静かにわたしの足元をうごめいている。

  「あっ!あっ!キて!わたしっ!かわるぅっ!」

  そう言った瞬間、激しく身をそらせ続けるわたしの体をその黒いものは一気に覆い尽くした。

  完全に黒く覆い尽くされぴっちりと引き締められる様に浮かぶわたしの体のライン。

  その姿はまるで黒いマネキンみたい。

  あらぶり続けて熱く火照った肌も、激しく震えていた胸やお尻も、潤んでいた黒い瞳も。

  そして快楽と歓喜に浸っていた顔も。

  全てが覆い尽くされ引き締められる。

  もちろんわたしが必死でいじっていたそこも。

  黒い皮膜と素肌がキュキュっと触れ合うのはすごく気持ちいい。

  皮膜に隠れて表には見えないけど今のわたしはそうとう「良い顔」しているのがわかる。

  いつもならこの気持ちよさもじっくり楽しみたい。

  それこそ目の前にいる景子の素肌も巻き込んで……ひゃうんっ!

  ……そうだった……早く「本当のわたし」を解き放たなくちゃ!

  皮膜に覆われた体がキュンと鳴る感覚で我に帰るとわたしは黒く包まれた指で同じく黒く覆われたそこを―突っ込む!

  「ひぃんっ!ひゃんっ!ひゃうんっ!」

  皮膜越しにそこの中に指をねじ込む。

  一度、二度、三度……。

  何度も押し込んでは指を引き上げる。

  それを繰り返すうちにわたしのそこの上、皮膜からにじむ様に紋様が浮かぶ。

  「はぁ……あぁ……いい……あつい……」

  皮膜と行為の中でわたしの身体は熱を帯びていく。

  ただ肌が熱いとかじゃなくてそう……身体の中、わたしの奥深く。

  頭の中で、そこの中で、そしてそう……全部が熱い。

  その熱いものが皮膜の中いっぱいになっていく中で少しづつわたしがぼやけ始める。

  皮膜に締め付けられた素肌から滲み出す「わたし」が皮膜の中に染み込んていく。

  皮膜と一つになるのを感じながらわたしはさらにそこの中に指を入れていく。

  押し込まれ続けた皮膜はわたしの中一杯に満ち、いつ漏れてもおかしくない。

  その中にわたしはさらに指を入れる!

  「あっ!……ああっ……ああ……でる……でてくる……わたしの……」

  そこの中で指をかき回しまくる。

  皮膜に覆われた顔が軽く歪んでるのがわかる。

  そして……。

  「わたしの……モノぉっ!」

  その声とともに一気に引き出したもの―相応に太くて長くて形の良い……それは本当に「モノ」。

  わたしが男として生まれていたら身につけているはずの、そして……。

  それを両手で掴むとわたしはそのまま腰を動かす。

  付き出すモノを両手で受け止め、腰の中に押し込む様に。

  「あっ、ああっ、いいっ、いいっ!わたし、わたし、わたしぃ……」

  男の様に腰を振り、モノを受け止め押し込むうちにわたしの体が変わり始める。

  いよいよ、いよいよ。

  モノを掴んでいる手が、腕が、肩が。

  体を支えているお尻が、腰が、足が。

  みるみる太く、たくましく整えられていく。

  柔らかい肩や腰の線ががっちりと。

  適度に細くしなやかな腕や足の線がみっちりと。

  皮膜に押さえられながら形よく揺れていた胸がようやく皮膜に押し込まれる様に厚めの胸板に引き絞られていく。

  その下では厚い腹筋も絞られ始めている。

  この体、この体は……。

  「わたしぃ……なった……おとこ……ホントの……オレにぃ……」

  オレの身体。オレの本当の身体。

  それがいよいよ現れる。

  モノを高ぶらせ、腰を押し込む度に皮膜が解けていく。

  「いい……いいぜ……オレが……出てくる……オレに……」

  かつてのオレの肌を少し色濃くした様な肌の色が黒い皮膜の中から現れる。

  筋骨隆々とまでは行かないが相応に引き締まった男の体格。

  ガッチリ引き締まった尻からは一本の尻尾が伸びる。

  そして、全頭マスクの様に顔を覆っていた皮膜が頭の上で突き破られた中から一対の金色の角と黒い髪。

  そそり立つモノの上に光る紋様共々オレの―本当のオレの証だ。

  そして自分で言うのもあれだけどそれなりに良い顔をした男が真っ裸で昂ぶっている。

  熱い。熱いぜ……オレの中で満ちている熱い塊がオレを突き動かす。

  いい、いいぜ……気持ちいい……たまんないぜ……。

  「うおっ!」

  その瞬間、オレはカッと金色の瞳を開きながら身体を大きくそらせる。

  偽りの姿を脱ぎ捨て元のオレに戻っていく、そして戻ったこの感覚……。

  やっぱり何も吹き出しちゃいないけどやこれはたまんないぜ。

  「……悠……?悠……なん……だよね……?」

  ふとオレの耳に震える様な声が聞こえる。

  まっ裸の景子が震えながら、そしてやや火照ってるようなものを感じさせながら立っていた。

  やれやれ、さすがに待たせすぎたか。

  その分これから……だけどな。

  オレはその辺りの思いも込めつつ震える恵子の頭にポンと手をやり言った。

  「加村悠なんて人間の女はたった今脱ぎ捨てた。オレの本当の名・本当の姿は―ハーベイ、インキュバスのハーベイだ!」

  そう名乗った瞬間、オレはまたイッちまったのを感じていた……。

  [newpage]

  景子は裸のままで震えていた。

  ただ着替えを用意し忘れていた事を問いただそうとして悠の部屋に入り込んだ。

  それだけのはずだったのにそこで彼女が見たものは暗がりの中で素肌をさらしながら自身を昂ぶらせ出す友人の姿。

  自分が自分ではない事を何度も言いながら乱れる姿に息を呑み、激しく果てたその素肌を黒い皮膜に覆いつつさらに昂ぶる姿に言葉を無くした。

  そして……。

  悠が言っていた様に「悠を脱ぎ捨てて」現れた裸の男性―ハーベイをただ震えながら見る事しかできなかった。

  湯上がりで寒いのか。

  悠から変異したと言う異様な男の姿に怯えているのか。

  それとも……。

  ―ワタシ、カンジテルノ……?

  目の前で起きた出来事……裸の悠が自分を思い切りイかせながら黒く染まり、全裸の男性―インキュバスに変わっていく一部始終を見届ける中でわたしは……。

  感じていた。

  幼なじみとは行かないかも知れないけど、長い事友達として認識していた悠。

  きりっと整えたショートカットとちょっとクールさも感じさせるけど優しげな顔立ち。

  水着姿とかで何度か目にしたスマートだけど出てる所は出ている体つき。

  そしてぽやっとしがちなわたしを色々フォローしてくれてた悠。

  いつの頃かーつい最近かはわからないけど、ふと部屋で悠の事を考えるうちに気がついたら下着が濡れていたり場合によっては裸になっている事もあった。

  それが何を意味してるのかはなんとなくわかる。

  もし今日悠に呼ばれなかったらきっとあの時一瞬支えた悠の事を思いながら今夜も一人でシてたかもしれない。

  でも、その思いを直接悠に向ける事への迷いもまた強すぎた。

  だからわたしは―無意識に感じていた。

  悠が感じている姿。変わっていく姿。

  それに肌を重ねるわたしを浮かべながら。

  わたしの肌の中で乱れて果てる悠。

  わたしの温もりに包まれながら黒く染まっていく悠。

  わたしの―女の身体の中で男性の姿に変わっていく悠……。

  「悠……」

  逞しい姿となった悠にわたしは魅入られていた。

  「おい、オレを悠と呼ぶな。オレは淫魔、インキュバスのハーベイだ!」

  ハーベイ―悠の正体を名乗るその人物が本当に物語などで知る淫魔だから魅入られた、とは思いたくなかった。

  悠だから。悠だったから。悠が変わった姿だから。

  わたしは目の前の淫魔を名乗る人物に感じていた。

  ホントは悠―女の子の姿の悠とこうなりたかった。ううん、今でもなりたい。

  でも、今の悠だからできる事もある。

  悠のそこから伸びるモノ―それなりに抵抗感もあるはずのそれさえわたしは求めていた。

  「悠……いいよ……わたしと……シて……」

  わたしは静かに目を閉じ身を捧げるように胸を出す。

  「まったく……いつまでオレを仮の名前で呼ぶんだ?どうやら体で教えてやらないといけないようだな……」

  悠はやや怒りを交えた声でそう言いながらわたしを軽くにらむ。

  そして……。

  「あ……あん…あ……」

  悠のその大きな手がわたしの胸を鷲掴みにする。

  そのまま何度も何度も揉み回す。

  「あっ……ああ……」

  「お前の胸……やっぱり良いもみ具合だな……オレの手にちょうどいいぜ」

  荒削りながらも心地よく揉み回すその手付きに声を上げ、身をよじらせる。

  「悠……いい……気持ちいいよ……」

  「悠じゃないって言ってんだろ!」

  そう言いながら悠―だった淫魔は力任せに胸をねじる様に揉む。

  「ひゃっ!」

  その痛みさえつい声が出ちゃう。

  さらにそのままそのたくましい体に抑え込まれるように抱き止められるとうなじから肩、背中から腰、お尻のラインを丁寧に何度も撫で回される。

  他にもわたしの首筋から胸元まで何度も、何度も悠の唇が触れる。

  気持ちいい。とろけるくらいにいい。

  さらに……。

  「あ……当たってる……お腹に……悠の……」

  後ろから撫で回されてる上にちょうどおへその下辺りに悠の……当たってる。

  悠がグイグイ抱きしめる度にわたしに押し込まれてる。

  「オレが誰だか言うまでお預けだぜ……?」

  そう言いながら悠は身体を放すと後ろに回り込み、一気にベッドにわたしを引き込んだ。

  「きゃっ!」

  「もっと焦らさせてやるぜ……」

  仰向けになった悠の手がその上に横たわる形になったわたしの背後から首筋、鎖骨、肩を撫でていく。

  次はやっぱり胸……外された。

  「お預けって言ったろ?」

  「悠……イジワル……」

  ついそんな言葉も漏れる。

  でもそう言いたいくらいわたしは火照ってる。うずいている。

  姿や一応心も変わってるとしても―

  悠に抱かれてる。

  悠に肌を撫でられてる。

  悠を―体で感じてる。

  嬉しい。嬉しい。嬉しい……。

  「悠、悠、悠……」

  いつの間にか一人でシている時以上に強くそこをいじられている事を感じながらわたしはより強く声を上げる。

  「へへ……景子、いつもこんな風にシてるのか?オレの事考えながらこのきれいなそこを濡らしてさあ……」

  悠の手でシてる。悠がわたしでシてる。

  ちょうどわたしのそこの下から生えるように伸びていた悠のアレに支えられながらわたしは体をよじらせる。

  「悠、いいよ、いいっ、いいっ」

  体中に喜びが満ちるのを感じる。

  このままずっと感じていたい。

  悠に抱かれていたい。

  悠を感じて……。

  「きゃっ!?」

  またすり抜ける様に悠がわたしを前―上から押し込む様な姿勢になる。

  わたしは背中からベッドに押し込まれる姿勢となった。

  そこに悠の両手がわたしの肩を、両足がわたしの足を抑え込む。

  まさに至近距離。

  互いの息が感じられる間合い。

  それはさっきまで肌を合わせていた事を考えれば近くて遠い間合い。

  欲しい。もっと悠が欲しい。

  悠を受け止めたい。

  そんなわたしを焦らす様に悠は何度も迫っては離れる事を繰り返す。

  「悠……そろそろ……おねがい……」

  「だから言ってるったろ……悠じゃないって……お前がオレを偽りの名で呼ぶ限りお前をイかせないぜ……お前はずっと焦れたままなんだよ……」

  そう言いながら悠はなおも焦らす。

  確かにもうそろそろ限界に近いかもしれない。

  わたしの身体。

  わたしの肌。

  わたしの胸。

  わたしの―そこ。

  そしてわたしの頭の中。

  わたしの全部が求めてる。

  ―イキタイ―と。

  そんな思いの中で叫ぶ。

  「お願い……悠でも―ハーベイでもいい……イかせて……わたし……イキタイ……」

  押さえ込まれながらわたしは求める。

  でも悠は更に……。

  「悠でもハーベイでも?なら今夜はもうお開きにしてやる。せいぜい朝まで悶てるんだな」

  そう告げる。それはわたしにとって残酷な宣言。

  だから……悠がそう呼べと言うなら―!

  「ハーベイ!お願い!来てっ!」

  わたしがそう叫んだ瞬間、

  ―よくできました―

  その声と共にわたしの中に熱く強い衝撃が打ち込まれた。

  [newpage]

  「あっー!」

  強い痛みと衝撃がわたしの中を突き抜ける。

  でも、顔をしかめながらもわたしはそれを受け止める。

  その結果、よりより強い痛みと衝撃を受けようと。

  「うっ」

  かなり蕩けていたとは言え、景子のそこを一気に貫いた衝撃はかなりキツい。

  景子の奴、相当キツく厚いそこをしている。

  でも……なんだか良い心地だ。

  オレのアレをしっかりガッチリと受け止めてやがる。

  まるで景子そのものに抱き締められてるみたいだ……。

  「あっ……あっ」

  ハーベイのそれがわたしの中で熱くなっている。

  わたしの中に無理矢理入り込んだそれから熱いものがわたしの中に満ちてくる。

  そんな中でわたしの中が少しづつキュキュっと引き締まるのを感じる。

  熱く、強くハーベイを抱きしめる様に。

  「うう……ああ……」

  景子の熱い締り具合にオレもつい声をもらす。

  ふとオレの中からも熱いものが溜まり始めている。

  熱くたぎり、煮え返る様な熱い精気。

  オレの中で沸き立つそれを少しづつ吸いながらオレは軽くアレを震わせる。

  「あっ……あっ……」

  動いてる。

  わたしの中でハーベイが動いてる。

  かき回す様な激しさこそないけど、そのぴくぴくとした熱い震えはわたしの中を震わせ、体中に共鳴していく。

  わたしの身体の内側から熱いものが漏れてわたしの中一杯に広がる。

  そしてそれがハーベイのそれを通じて少しづつ吸い出されている……。

  「うっ、うっ、景子、景子……」

  いつの間にかオレはアレから尻、腰、そして体中を震わせながら景子の中に突き入れていた。

  何度も、何度も腰を振って景子に打ち込む。

  その度に景子の中でオレのアレが荒れ狂う。

  そしてオレと景子はますます熱くなっていく。

  こんな事、人間のまま、女のままじゃ出来はしない。

  淫魔だから、インキュバスだから味わえる感覚。

  でもオレの中、熱くうごめく精気の流れはまるで悠―だった頃のオレみたいに動いている。

  オレの中で跳ね回る様に悠の形をした精気は熱くうごめく。

  そこに景子の精気も流れてくる。

  今恵子の身体が、繋げているオレのアレがより熱く熱を帯びていく。

  「あっ、あっ、はぁっ、ハーベイっ!」

  ハーベイのそれが全身からわたしの中により強く打ち込まれていく。

  何度も、何度も打ち込まれていく度にわたしの中でそれが荒れ狂う。

  わたしの身体はますます熱くなっていく。

  もし女の子のままの悠と結ばれていたとしてもこんな風にはならなかったと思う。

  悠が悠でなくなったと言う事実をわたしはその身体で再確認する。

  でも……それでもあのハーベイの、インキュバスの中に悠を感じてしまう。

  悠が、もとのままの悠がハーベイの中にいる、そう感じずにはいられない。

  その途端、わたしはますます熱く震えだす。

  バーベイの―悠のそれが熱く震えるたびわたしが中から熱くとろける様に崩れていく。

  「ううっ、ああっ、景子、けいこぉっ!」

  オレの中に景子がとめどなく流れ込んで来る。

  まるで景子の身体の全てがおれの中に吸い込まれていく様な感覚。

  オレはアレが熱くなるのを感じながら景子の名を呼んだ。

  「ああっ、ああっ、はあっ……はぁぁ……ゆうーっ!」

  体全体が熱いものを満たした風船になっていく、そしてその熱いものを吸い取られながらも限界まで滾っているのを感じる。

  その熱さの中でわたしは呼んだ名前は―やっぱり「悠」だった。

  その瞬間……。

  「ううっ!」

  オレは達した。

  やはり吹き出す感覚はない。

  その代わり、熱く爆ぜたものが一気にオレの中に流れ込んでいく。

  「ゆぅぅぅうああああっ!」

  わたしは内側から弾け飛んだ―気がした。

  そして一気に吸い込まれ……消えた。

  「はぁ……はぁ……景子……良かったぜ……景子?景子?」

  熱いもの全てを吸い込んだ跡オレはその余韻のまま辺りを見回す。

  しかし、さっきまで抱いていた景子は―跡形もなくいなくなっていた。

  「景子?景子!?……ま、まさか……」

  知らずにオレの手は熱い余韻のままただそそり立っているだけのアレに添えられていた……。

  「そんな……ウソ、だろ……」

  続く